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クラファンをする人に知ってもらいたい知財の知識

1.Introduction

 最近、クラファン(クラウドファンディング)を利用することで、誰でも容易に資金調達をすることができるようになってきました。しかしながら、その容易さゆえに知的財産に関するトラブルも増えてきております。

 そこで、今回はクラファンをやる上で知っておきたい知的財産の知識をまとめました。

2.クラファンの知的財産に関する注意点

(2-1)新規性の要件

 クラファンを実施(プロジェクトページの公開)すると、動画、写真、説明文に商品の詳細情報が公開されますので、新しさ(新規性)がなります。原則、特許権、実用新案権、意匠権を取得するためには「新規性」が必要です。過去に販売された商品、ホームページ・SNSにアップした商品は、原則、これらの権利を取得することができません。一方、商標については、「新規性」が取得の条件となっていないため、クラファンを実施した後でも商標出願して商標権を取得することが可能です。

(2-2)新規性喪失の例外規定

 特許法等には、「新規性」を喪失した場合でも、これを例外として取り扱う「例外手続」が用意されております(特許法30条など)。いわゆる「新規性喪失の例外」などと呼ばれているものです。この例外規定を受けるためには、新規性を失ってから1年以内に特許出願を行うなど一定の条件を満たす必要があります。ちなみに、意匠も新規性を失ってから1年以内に意匠出願をしなければなりません。

 ここで注意しなければいけないのが、この新規性喪失の例外手続は国ごとに条件(制度)が異なるということです。例えば、中国では、クラファンによって新規性が喪失するケースは、例外手続きの対象外となります。中国では、「中国政府が主催又は承認した国際展覧会」等の一定のケースのみが例外手続きを受けられる対象となります。このため、将来、中国では特許を取得したいなどと思っている方はクラファンを開始する前に出願を完了しておかなければなりません。

(2-3)秘密状態

 一度、クラファンで商品を公開してしまうと、再び秘密状態にすることはできません。このため、ライバル企業にアイデアが知られてしまう可能があります。もし、クラファンが失敗し、資金調達ができないときは、アイデアを再び秘密状態にはできないため、アイデアだけを公開したことになりますので、注意する必要があります。

(2-4)他社の知財侵害につながる可能性

 クラファンを行うと、他者の知的財産権の侵害につながることもあります。クラファンで、アイデアが公開されることになると、他社企業もそのアイデア(商品情報)を知ることができるので、もしクラファンに出品したその商品が、その他社機能の権利を侵害しているものだとすると、将来、その他社企業から権利侵害の主張を受けることになるかもしれません。

3.クラファンを開始する前にやっておきたいこと

 これまでは、クラファンを開始することで起こりうるリスクについて見てきましたが、以下では、クラファンを開始する前にやっておきたいことについて解説します。

(3-1)知財の出願を済ませる

 クラファンを開始する前に、特許出願、実用新案出願、意匠出願などの出願手続きを済ましておくことをお勧めしておきます。

 これは、前回解説しましたとおり、クラファンによる公開行為によって新規性がなくなり、特許等が取得できなくなるからです。新規性がなくなっても新規性喪失の例外規定がありますが、中国等の一定の国では所定の公開行為でしか例外手続手続きを利用できないため、そのような国では特許を取得できないことになります。

(3-2)海外の出願について

 クラファン開始前に、すべての国について特許出願しなければならないかというと、そうではありません。クラファン開始前にまず日本に特許出願しておけば、その後クラファンにより新規性がなくなっても、日本の特許出願から12ヶ月以内であれば、外国に特許出願することができます(意匠・商標は6ヶ月と特許より短い)。これは「パリ条約上の優先権」と呼ばれる制度を利用したもので、その外国での特許出願において優先権を主張すると、日本の特許出願日を基準として新規性などの条件が判断され、地理的な不利益が生じないようになっております。

 このようにクラファン開始前に、少なくとも日本に特許出願しておくことは、とても重要なことだと言えます。

(3-3)クラファン成功で得た資金を活用して知財出願する場合のデメリット

 クラファンで得た資金の一部で特許出願したいという要望はよくあります。資金面ではメリットがありますが、クラファン終了まで特許出願を待たなければいけないため、結果として 特許出願が遅れてしまい、先ほど説明したデメリットが発生してしまいます。

 また、特許取得できるかどうかは早いもの勝ちなので、もし同じ時期に同じような発明をした人がいたら、先に特許出願した方に特許権が与えられます。このため、特許取得の機会を逃すことにもつながるかもしれません。

 これを解消する方法としては、例えば、かかりつけの弁理士に相談して、費用の支払いをクラファン成功後にしてもらうとか、分割払いにしてもらうと良いかもしれません。これは弁理士との信頼関係がないといけませんが、あらかじめ弁理士に特許出願を依頼する際、有効な手段だと思います。

(3-4)特許取得、特許出願済で支援者にアピール

 また、クラファン開始前に知財の出願を済ませておくメリットとして、支援者にアピールすることができます。出願が完了していたら「特許出願済」、すでに登録されていたら「特許取得済」などの表示をすることができます。このような表示をすることで支援者に対して、品質が優れている、独自性があるなどをアピールすることができ、クラウドファンディング成功に導くカギとなるかもしれません。

(3-5)知財調査する

 今までは、特許権などの権利を取得する話をしてきました。これからは、他人の特許権などを侵害していないかどうかの話をしてみたいと思います。これはとても重要な話になります。

 クラウドファンディングが成功後、その商品を支援者に発送すると、見知らぬ特許権者から特許権を侵害していると言われてしまうかもしれません。その商品が他人の知的財産を侵害していたということです。

 このような事態を回避するために、事前にクラファンに出品する商品について、知的財産調査(侵害予防調査)行うことをお勧めします。具体的には技術面・アイデア面では特許・実用新案の調査を行ないます。デザイン面では意匠調査を行います。またすでに商品の名前、ロゴなどが決定している場合、それらが商標に該当するため、商標調査も併せて行うことをお勧めします。

(3-6)プロジェクトページ、資料、動画など

 次に著作権について説明します。プロジェクトに上げる商品だけではなく、プロジェクトの資料・動画などに使われる写真・その他の素材についても、他人の著作権に侵害していないかどうかについてあらかじめ確認しておく必要がございます。

 特にフリー素材だと思って使用していたところ、実はフリー素材というのは個人的使用に限定されていて商業利用の場合は別途費用が発生するとの注意書きがあることを見落としてしまい、後ほど著作権侵害に当たることもよくあることです。

 このため、フリー素材その他の素材を利用する際は、予め素材の規約等を熟読されることお勧めします。

 なお、有料素材であっても、使用用途が限定されており、商用利用の際は別途費用が発生する、という利用規定も見受けられますので、有料・無料に限らず、規約の一読をおすすめします。

4.クラファンのタイプ別留意点

(4-1)海外商品を日本国内でクラファンするケース

 海外のクラウドファンディングに出品されていた商品について、再度、日本国内のクラウドファンディングを実施するというケースが見受けけられます。海外で知的財産の問題がなかったということで安心していると、日本国内でトラブルに巻き込まれる可能性があります。

 これはどういうことかというと、特許権・実用新案権・意匠権、商標権などの知的財産は、国ごとにその権利が発生するため、たとえ海外では抵触する知的財産が存在しなかったとしても、日本では抵触する知的財産が存在している可能性があります。そうなるとその商品を日本に輸入し販売した途端、その知的財産権の侵害となる可能性があります。

 つまり、海外でのクラファンが問題なかったからといって、日本の知的財産調査を怠るのはよくありません。日本のクラファンを開始する前に、日本での知的財産調査を行うことをお勧めします。具体的な調査項目としては、前回解説しましたとおり、特許・実用新案・意匠・商標などの調査となります。

 もし、調査の結果、対応する商品について他人の権利が存続していた場合、日本仕様の商品について設計変更、別ブランドの採用(ロゴマークの変更ブランドネームの変更)を検討する必要があります。

(4-2)日本商品を海外でクラファンするケース

 このようなケースの場合、先ほどの「海外商品を日本国内でクラファンするケース」の逆のことが起こります。つまり、日本国内では抵触する知的財産が存在しなかったとしても、外国では抵触する知的財産が存在する可能性があります。

 もし、日本のクラウドファンディングが成功し、次に海外でクラウドファンディングを行うことを考えている方は、海外でのプロジェクト開始前に、あらかじめその国で知的財産調査を行うことをお勧めします。

 なお、海外での知的財産の調査は日本と比べ高額になったり、言語的なハードルが高く調査が難航することがあります。その国の専門家に助言をもらうのが確実かもしれません。

(4-3)サービスをクラファンするケース

 クラウドファンディングの形態として商品を対象とするものだけではなく、サービスを対象とするものもありますが、このような場合についても、知的財産について十分注意する必要があります。例えば、そのサービス名についてネーミングをつけている場合、商標権侵害にならないように事前に調査をされることをおすすめします。

今後継続して使用されるのを考えている場合は、商標登録もされることもお勧めします。

 クラウドファンディングをしてしまうと、多くの人の目に留まるため、そのようなトラブルになる可能性が高くなります。

(4-4)クラファン成功後にオリジナル限定品をプレゼントするケース

 次にクラファン成功の暁に支援者に対してオリジナル限定品をプレゼントするというような行為が見受けられます。例えば、支援者に対してオリジナルTシャツ、オリジナルステッカーなどをプレゼントするというような行為です。

 特許法等では有償・無償問わず侵害行為となるため、無償であってもこれらのプレゼントが他人の知的財産権に抵触していないかどうか、確認する必要があります。

 Tシャツのデザインについては意匠調査、Tシャツにブランドを付けているようであれば商標調査などをすることをおすすめします。現在、簡単にオリジナルのTシャツを作ることができるようになりましたが、その一方で侵害のリスクも高まってきていると思われますので、十分注意する必要があります。

5.まとめ

 このようにクラウドファンディングを行う上で、知っておきたい知的財産の知識について述べてきましたが、「知的財産権を取得すること」と、「他人の知的財産権の侵害にならないようにすること」は、全く別に問題ですので、分けて考えなければなりません。ご自身で出願や調査されることも可能ですが、可能であれば、より専門的なことは弁理士等の知的財産の専門家にご相談されることをお勧めします。

 もし可能だったら、プロジェクト開始前の早い段階からそのような専門家に相談されるか、専門家もプロジェクトチームに入ってもらって一緒にプロジェクト進めてみてもよいかもしれません。

 

6.お問い合わせフォーム

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