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【完全保存版】商標の区分一覧&選び方ガイド|初心者でも1人で登録できる手順を徹底解説

作成者: 弁理士 杉浦健文|2025/12/06

「自分のブランドを守るために商標を取りたいけれど、『区分』って何?」

「どの区分を選べばいいのか分からない…」

初めて商標登録に挑戦する際、多くの人が最初につまずくのが「区分(くぶん)」の壁です。ここを間違えると、せっかくお金を払って登録しても、権利が守られないという最悪の事態になりかねません。

この記事では、商標登録の専門知識がない初心者の方でも、自分に最適な区分を選び、スムーズに商標登録ができるよう、全45区分のわかりやすい一覧と、失敗しない選び方のコツを徹底解説します。

 

1. 商標の「区分」とは?なぜ重要なの?

 

商標登録をする際、単に「名前」や「ロゴ」を登録するだけでは不十分です。「どの分野(商品・サービス)でその名前を使うのか」を指定する必要があります。このジャンル分けのことを「区分(類)」と呼びます。

 

住所のようなものと考えよう

 

商標権は、「マーク(商標)」と「商品・サービス(指定商品・指定役務)」のセットで権利が発生します。

  • 商標 = 表札(ブランド名)

  • 区分 = 住所(どの分野で使うか)

例えば、「アップル」という商標は、電子機器(第9類)ではApple社が持っていますが、食肉などの分野では別の会社が持っているかもしれません。区分が違えば、同じ名前でも共存できる場合があるのです。

 

区分は全部で45種類

 

区分は大きく2つに分かれます。

  • 第1類 ~ 第34類: 商品(形があるもの)

  • 第35類 ~ 第45類: 役務(サービス・形がないもの)

 

2. 【全45類】商標の区分一覧表(わかりやすい解説付き)

 

特許庁の分類表は難解な言葉が多いので、初心者向けに「具体的に何が含まれるか」を噛み砕いて整理しました。

 

第1類~第34類:商品(形があるもの)

 

まずは「モノ」を作って売る場合の区分です。

区分 主な内容 具体例
第1類 化学品 工業用化学品、肥料、未加工プラスチック
第2類 塗料・インク ペンキ、着色料、防錆剤
第3類 化粧品・洗浄剤 シャンプー、石鹸、コスメ、香水、アロマ
第4類 工業用油脂・燃料 ろうそく、ガソリン、オイル
第5類 薬剤 サプリメント、医薬品、おむつ、除菌剤
第6類 金属製品 鍵、建築用金具、アルミホイル
第7類 機械類 工作機械、モーター、自動販売機
第8類 手動工具 ナイフ、カミソリ、ドライバー、スプーン・フォーク
第9類 電子機器・アプリ スマホ、PC、メガネ、ソフトウェア、DL教材
第10類 医療用機械器具 マスク、哺乳瓶、マッサージ器
第11類 照明・加熱機器 エアコン、冷蔵庫、トイレ、照明器具
第12類 乗り物 自動車、自転車、ドローン、ベビーカー
第13類 火器 花火、銃器
第14類 宝飾品・時計 アクセサリー、時計、キーホルダー
第15類 楽器 ピアノ、ギター、楽器ケース
第16類 紙製品・印刷物 書籍、文房具、段ボール、ステッカー
第17類 断熱・絶縁材料 ゴム素材、パッキン、プラスチック管
第18類 革製品・鞄 バッグ、財布、傘、ペットの服
第19類 建築材料(非金属) セメント、木材、タイル、石材
第20類 家具・プラスチック製品 家具、枕、クッション、鏡
第21類 家庭用品・食器 フライパン、コップ、歯ブラシ、掃除用具
第22類 繊維製品(材料) ロープ、テント、網、帆
第23類 縫い糸、毛糸
第24類 布製品 タオル、ハンカチ、ベッドカバー、カーテン
第25類 被服・靴 Tシャツ、帽子、靴下、靴、コート
第26類 手芸用品 ボタン、ファスナー、ウィッグ、リボン
第27類 床敷物 カーペット、畳、壁紙(織物製でないもの)
第28類 おもちゃ・スポーツ ゲーム機、ぬいぐるみ、釣り具、運動用具
第29類 食品(加工品など) 冷凍食品、肉、魚、乳製品、ジャム
第30類 食品(穀物・菓子) コーヒー、お茶、パン、お菓子、調味料、米
第31類 食品(未加工)・花 野菜、果物、生花、ペットフード
第32類 飲料(ノンアル) ジュース、ミネラルウォーター、ビール
第33類 アルコール飲料 日本酒、ワイン、ウイスキー(ビール除く)
第34類 タバコ・喫煙具 タバコ、マッチ、ライター

初心者がよく使う「商品」の区分

  • アパレルブランド:第25類

  • ハンドメイドアクセサリー:第14類

  • お菓子・カフェの物販:第30類

  • 化粧品販売:第3類

 

第35類~第45類:役務(サービス)

 

形のないサービスを提供するビジネスはこちらです。

区分 主な内容 具体例
第35類 広告・小売・経営 広告代理、コンサル、セレクトショップ(小売)
第36類 金融・保険・不動産 銀行、保険代理店、不動産管理、仮想通貨
第37類 建設・修理・洗濯 建設業、リフォーム、クリーニング、修理
第38類 電気通信 ネット接続、SNS運営、放送
第39類 輸送・旅行 運送、引越し、旅行代理店、倉庫、駐車場
第40類 加工処理 メッキ加工、写真現像、リサイクル
第41類 教育・娯楽・スポーツ セミナー、ジム、イベント運営、YouTube動画配信
第42類 IT開発・デザイン システム開発、サーバー貸与、ウェブデザイン
第43類 飲食・宿泊 レストラン、カフェ、居酒屋、ホテル
第44類 医療・美容・農業 エステ、美容院、病院、整体、農業サービス
第45類 その他(法律・冠婚) 弁護士、占い、結婚相談所、家事代行

初心者がよく使う「サービス」の区分

  • 飲食店経営:第43類

  • ウェブメディア・ブログ:第41類(または第9類・35類)

  • コンサルティング・ネットショップ運営:第35類

 

3. ここが落とし穴!間違いやすい区分の選び方

 

初心者が最も失敗しやすいのが、「商品の区分」と「小売(販売)の区分」の勘違いです。ここさえクリアすれば、登録成功率はぐっと上がります。

 

ケーススタディ:Tシャツを売りたい場合

 

 

パターンA:自社ブランドのTシャツを作って売る

 

  • 正解:第25類(被服)

  • 理由:あなたが売りたいのは「Tシャツという商品」そのものだからです。

 

パターンB:他社のTシャツを仕入れて、セレクトショップで売る

 

  • 正解:第35類(被服の小売)

  • 理由:あなたが提供しているのは、商品を並べて選びやすくする「小売サービス」だからです。

 

パターンC:Tシャツも作るし、ネットショップで他社製品も売る

 

  • 正解:第25類 と 第35類 の両方

  • 理由:商品とサービス、両方の権利を押さえる必要があります。

 

4. 商標登録にかかる費用は「区分数」で決まる

 

「念のため全部登録したい!」と思うかもしれませんが、商標登録の費用は区分の数(カテゴリーの数)に比例して増えていきます。

 

費用の目安(特許庁に払う印紙代のみ)

 

※2025年時点の目安です。弁理士に依頼する場合は別途手数料がかかります。

  1. 出願時(申請時)

    • 1区分:3,400円 + (8,600円 × 区分数)

    • 例:1区分なら12,000円

  2. 登録時(審査合格後・10年分)

    • 区分数 × 32,900円

    • 例:1区分なら32,900円

合計すると、1区分あたり最低でも約45,000円かかります。

2区分にすれば費用は倍近くになります。そのため、「現在の事業」と「3年以内に確実にやる事業」に絞って区分を選ぶのがコストを抑えるコツです。

 

5. 初心者が自分で商標登録をする4つのステップ

 

区分が決まったら、いよいよ申請です。現在はオンライン出願が主流ですが、個人でも簡単にできる方法があります。

 

STEP 1:先行商標の調査(最重要!)

 

自分が使いたい名前が、選んだ「区分」ですでに登録されていないか調べます。

 

STEP 2:願書の作成・提出

 

特許庁へ書類を提出します。

  • 方法: 「インターネット出願ソフト」を使うか、郵送で提出します。最近では、スマホから簡単に申請できる民間の「オンライン商標出願サービス」を使うのが初心者には最も簡単でおすすめです(数千円の手数料で面倒な手続きを代行してくれます)。

 

STEP 3:審査(約4〜10ヶ月)

 

特許庁の審査官がチェックします。何も問題がなければ「登録査定」が届きます。もし似ている商標があった場合は「拒絶理由通知」が届きます。

 

STEP 4:登録料の納付

 

審査に通ったら、登録料を支払います。納付が完了すると、約1ヶ月後に「商標登録証」が届き、晴れて商標権者となります!

 

まとめ:区分選びは「未来」を見据えて

 

商標登録において、区分選びはビジネスの「陣取り合戦」です。

  1. 自分の商品は「モノ」か「サービス」か確認する。

  2. 上記の一覧から該当する番号を探す。

  3. 「小売(第35類)」との違いに注意する。

  4. J-PlatPatで、その区分に同じ名前がないか検索する。

この手順を踏めば、専門家に依頼しなくても、自分で商標登録への第一歩を踏み出すことができます。

ブランド名は、あなたのビジネスの顔であり、資産です。誰かに取られてしまってからでは、看板を書き換えるのに莫大なコストがかかります。

自分の事業を守るためにも、まずは「自分のビジネスがどの区分に入るのか」を確認することから始めてみましょう。