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ソフトウェア・システム特許の出願費用はいくら?IT案件特有の内訳(明細書の分量・図面・中間対応)と減免制度を弁理士が解説

作成者: 弁理士 杉浦健文|2026/07/19

リード:ソフトウェア・システム特許の費用は「特許庁費用」と「弁理士費用」の二本立て

「自社のシステムやアプリで特許を取りたいが、結局いくらかかるのか分からない」──IT企業・スタートアップの方から最も多くいただく質問です。特許の費用は、①特許庁に納める法定費用(印紙代)と、②弁理士(特許事務所)に支払う手数料の二本立てで、さらにIT・ソフトウェア案件には費用が変動しやすい特有の要因があります。本記事では、2026年7月時点の特許庁公表の料金と減免制度、弁理士費用の相場観、そしてIT案件では何が費用を左右するのかを、弁理士が内訳から解説します。

この記事の要点

  • 費用は特許庁の法定費用+弁理士費用の二本立て。法定費用は請求項5項・減免なしで登録まで約19万円
  • 中小スタートアップ・小規模企業は審査請求料・特許料が1/3に軽減(中小企業は1/2。手続は特記事項欄への記載のみ)
  • 弁理士費用に定価はない。出願時の金額だけでなく、成功謝金・中間対応まで含めた総額で比較する
  • IT案件は明細書の分量・図面・請求項カテゴリ・中間対応の4要因で費用が動く

目次

  1. 特許庁に納める法定費用(2026年7月時点)
  2. モデルケース:請求項5項のシステム特許でいくらかかるか
  3. 立場別シミュレーション:個人/スタートアップ/中堅企業
  4. いつ・いくら払う?──支払いタイミング年表
  5. 弁理士費用の相場観──「定価」は存在しない
  6. IT・ソフトウェア案件で費用が変わる4つの要因
  7. 審査請求料・特許料が1/2〜1/3になる減免制度
  8. 特許・実用新案・秘匿の費用比較
  9. 海外出願の費用はどう考える?(PCT・パリルート)
  10. 費用を賢く設計する5つの考え方
  11. よくある質問(FAQ)

1. 特許庁に納める法定費用(2026年7月時点)

まず、誰に依頼しても必ずかかる特許庁の法定費用です(特許庁「産業財産権関係料金一覧」に基づく現行料金。2019年4月1日以降の出願の場合)。

タイミング費用項目金額
出願時特許出願料14,000円
出願から3年以内出願審査請求料138,000円+請求項の数×4,000円
特許査定後30日以内特許料(第1〜3年分一括)毎年 4,300円+請求項の数×300円(×3年分)
権利維持(4年目以降)特許料(年金)第4〜6年 毎年10,300円+800円/項、第7〜9年 毎年24,800円+1,900円/項、第10年以降 毎年59,400円+4,600円/項

ポイントは、審査請求料と特許料が「請求項の数」に比例して増えることです。請求項(クレーム)の数の設計は、権利の厚みだけでなくランニングコストにも直結します(後述の要因③)。なお、権利を維持する年金は年次が進むほど高くなる階段構造で、「使わない特許を惰性で維持しない」棚卸しも中長期のコスト管理では重要になります。

2. モデルケース:請求項5項のシステム特許でいくらかかるか

請求項5項・減免なしの場合の特許庁費用を計算すると次のとおりです。

項目計算金額
出願料14,000円
審査請求料138,000+4,000×5158,000円
特許料(1〜3年分)(4,300+300×5)×317,400円
特許庁費用 合計(登録まで)189,400円

これに弁理士費用(次章)が加わります。後述の減免制度を使える場合、審査請求料と特許料(第1〜10年分)は1/2または1/3になるため、たとえば中小スタートアップ企業(1/3)なら上記の審査請求料は52,660円、1〜3年分の特許料は5,790円まで下がります(10円未満切捨て等の端数処理を含みます。適用条件・正確な金額は特許庁の料金計算システム等でご確認ください)。

3. 立場別シミュレーション:個人/スタートアップ/中堅企業

減免制度の適用で特許庁費用は立場により大きく変わります。請求項5項・登録まで(1〜3年分の特許料含む)の試算です(10円未満切捨て等の端数処理込み。弁理士費用は含みません)。

費目中堅企業(減免なし)中小企業(1/2)スタートアップ・小規模企業(1/3)
出願料(減免対象外)14,000円14,000円14,000円
審査請求料158,000円79,000円52,660円
特許料(1〜3年分)17,400円8,700円5,790円
合計189,400円101,700円72,450円

個人(個人事業主)も小規模企業等の区分で1/3軽減の対象になり得ます(市町村民税非課税者等はさらに免除・1/2の区分あり)。スタートアップなら特許庁費用は7万円台まで下がる──「特許は高くて無理」という思い込みの多くは、減免前の数字で見ているためです。

4. いつ・いくら払う?──支払いタイミング年表

「登録まで約19万円」は一括で払うわけではありません。数年に分散します(減免なし・請求項5項・弁理士費用は範囲表示)。

タイミング特許庁費用弁理士費用(相場観)
出願時14,000円出願手数料(明細書作成含む):数十万円規模。ここが最大の山
審査請求時(出願から3年以内の任意の時点)158,000円(減免で1/2〜1/3)手続手数料(事務所による)
拒絶理由対応時(発生した場合)なし意見書・補正書の作成費(1回あたり数万円〜)
特許査定後30日以内17,400円(1〜3年分)成功謝金(設定している事務所の場合)
4年目以降 毎年年金(4〜6年目 各14,300円→段階的に上昇)年金管理手数料(事務所による)

5. 弁理士費用の相場観──「定価」は存在しない

弁理士費用には定価がありません。2001年に日本弁理士会の報酬額表が廃止されて以降、各事務所が自由に料金を設定しています。公表されている参考値としては、日本弁理士会が実施したアンケート(平成15年・平成18年)で、標準的な特許出願(明細書15頁・請求項5・図面5枚程度)の出願時手数料は25万〜35万円の回答帯が中心でした。ただしこれは20年前の調査であり、あくまで古い目安です。近年の民間調査・解説では、出願手数料でおおむね30万〜45万円、特許査定時の成功謝金で12万〜20万円、拒絶理由対応(意見書・補正書)で1回あたり数万円〜、といった幅が紹介されています(知財タイムズ・各事務所公表値等。事務所・案件により大きく異なります)。

相見積もりのポイント:見積もりを比較する際は、出願時の金額だけでなく「①成功謝金の有無と金額、②拒絶理由対応(中間処理)の単価、③請求項・頁数の加算方式」の3点まで確認してください。出願時が安く見えても、トータルでは逆転することがあります。相見積もり自体は一般的な行為で、失礼にはあたりません。

6. IT・ソフトウェア案件で費用が変わる4つの要因

汎用の費用解説にはあまり書かれていませんが、IT・ソフトウェア案件には費用が動きやすい固有の理由があります。見積もりの妥当性を判断する材料としてご紹介します。

要因①:明細書の分量──「実施形態」の書き込みがモノを言う

ソフトウェア発明は、処理の流れ・データ構造・画面遷移・変形例(クラウド実行かオンプレか、学習済みモデルの差し替え等)まで具体的に書き込むほど、権利範囲の裏付けとサポート要件の充足が固まります。その分、明細書のページ数は機械・構造系より膨らみやすく、頁数連動の料金体系では費用に直結します。

要因②:図面の性質──フローチャート・シーケンス図・画面遷移図

IT案件の図面は写真や外観図ではなく、フローチャート、ブロック図、シーケンス図、画面遷移図といった「設計図的な図」を新規に作成します。処理ステップの粒度を発明のポイントに合わせて描き起こす作業が必要で、図面点数が増えるほど作成工数も増えます。

要因③:請求項の数とカテゴリ──「方法・装置・プログラム」の3点セット

ソフトウェア発明では、同じ発明を「方法」「装置(システム)」「プログラム」の複数カテゴリで請求項に立てるのが定石です(侵害場面ごとに使い分けるため)。カテゴリを増やせば請求項数が増え、審査請求料(+4,000円/項)と特許料(+300円/項〜)に直接跳ね返ります。どこまで立てるかは権利の使い道から逆算する設計判断です。

要因④:中間対応(拒絶理由通知への応答)の回数

出願費用は「出願して終わり」ではなく、審査で拒絶理由通知が来た場合の意見書・補正書の対応費用が後から発生します。ソフトウェア分野では発明該当性や進歩性の指摘を受けることが珍しくなく、応答1〜2回分をあらかじめ予算に織り込んでおくのが現実的です。

7. 審査請求料・特許料が1/2〜1/3になる減免制度

特許庁の減免制度により、審査請求料と特許料(第1〜10年分)が軽減されます(出願料14,000円は対象外)。主な区分は次のとおりです。

対象者軽減率
中小スタートアップ企業(設立10年未満等)/小規模企業1/3に軽減
中小企業(会社・個人事業主・組合・NPO法人)1/2に軽減
大学・研究機関等 ほか1/2に軽減

手続は簡単で、審査請求書や特許料納付書の【特記事項】欄に減免対象である旨を記載するだけです(2019年4月以降の審査請求分は証明書類の提出不要)。なお、令和6年4月1日施行の改正で、中小企業(1/2軽減)の審査請求料の減免には年度あたり180件の件数上限が設けられました。中小スタートアップ・小規模企業(1/3軽減)や大学等はこの上限の対象外で、特許料の減免にも件数制限はありません。ITスタートアップであれば、まず1/3軽減の対象に当たるかの確認をおすすめします。海外出願を見据える場合の補助金は、INPIT外国出願補助金の解説記事もご参照ください。

8. 特許・実用新案・秘匿の費用比較

「守る」選択肢は特許だけではありません。費用の観点で3つを並べると次のようになります(請求項/請求の範囲5項・減免なしの特許庁費用)。

項目特許実用新案秘匿(営業秘密)
権利化までの特許庁費用約19万円約2.2万円(無審査登録・技術評価請求は別途)0円(ただし管理体制の整備コスト)
審査実体審査あり(強い権利)実体審査なし(行使には技術評価書が実務上必要)
期間出願から最長20年出願から最長10年秘密である限り無期限
ソフトウェアとの相性◎(方法・プログラムのクレーム可)△(物品の形状等が対象。方法・プログラムは保護対象外)○(サーバー内部処理など外から見えない技術向き)

ソフトウェア発明では実用新案は選択肢になりにくく、実際の比較軸は「特許で公開して独占するか、秘匿して守るか」です。詳しい判断基準は特許かノウハウ秘匿かの使い分け記事をご覧ください。

9. 海外出願の費用はどう考える?(PCT・パリルート)

海外でも権利がほしい場合、費用は「国際段階」と「各国での権利化(国内段階)」の2階建てで考えます。代表的なPCTルート(日本語・オンライン出願・明細書30枚以内・日本特許庁が国際調査機関の場合)の国際段階の費用は次のとおりです。

費目金額(2026年5月1日以降の国際出願日)
送付手数料17,000円
国際出願手数料(30枚まで)264,900円(スイスフラン建て基準の円換算・為替で改定あり)
電子出願による減額▲59,800円
調査手数料(日本語)143,000円
国際段階の合計(目安)365,100円(軽減前)

国内の減免と同様、PCTの国際段階にも軽減があります。中小企業は1/2、中小スタートアップ・小規模企業は1/3(送付手数料・調査手数料等が軽減され、国際出願手数料分も交付金により実質同率の負担軽減。願書と同時の申請が必要で後出し不可)。その後、優先日から原則30か月以内に権利がほしい国ごとに国内移行し、各国で(a)特許庁費用+(b)現地代理人費用+(c)翻訳費用がかかります。この国内段階が海外費用の本体で、金額は国・言語・分量により大きく異なるため、移行予定国が見えた段階での個別見積もりが現実的です。

ルート選択の考え方はシンプルです。行く国が1〜2か国に確定しているならパリルート(日本出願から12か月以内に各国へ直接出願。国際段階費用が不要な分、総額は安くなりやすい)、国を見極める時間がほしいならPCT(約36.5万円の国際段階費用と引き換えに、翻訳・現地費用の発生を30か月まで繰り延べ、国際調査報告を見てから国を絞れる)。さらに、INPITの外国出願補助金(補助率1/2、特許は1出願あたり上限150万円・1事業者あたり年間300万円以内)が使えれば負担は大きく変わります。詳しくはINPIT外国出願補助金の解説記事をご覧ください。

10. 費用を賢く設計する5つの考え方

  • ①請求項の数は「使い道」から設計する──カテゴリ3点セットが常に必要とは限らない。競合の実施形態・ライセンスの想定から絞る
  • ②審査請求のタイミングを使う──出願から3年以内ならいつでもよい。事業の見極めがつくまで審査請求(請求項5項で158,000円)を保留し、不要なら請求しない判断も可能
  • ③減免・補助金を先に確認する──スタートアップ1/3軽減の該当確認は見積もりの前提になる
  • ④中間対応まで含めた総額で比較する──出願時の安さだけで選ばない
  • ⑤守るものによっては実用新案・営業秘密も選択肢──実用新案は実体審査なしで登録され特許庁費用が小さい(ただし権利は出願から最長10年・物品の形状等が対象で、ソフトウェア自体の保護には不向きな場面が多い)。サーバー内部の処理はあえて出願せず秘匿する戦略もある

11. よくある質問(FAQ)

Q1. 結局、登録まで総額いくら見ておけばいいですか?

A. 特許庁費用は請求項5項・減免なしで約19万円(減免1/3なら約7万円台)。これに弁理士費用(出願時+成功謝金+中間対応)が加わります。弁理士費用は事務所・案件の複雑さで大きく変わるため、発明の内容を伝えたうえでの個別見積もりが確実です。

Q2. 費用を分割で払うことはできますか?

A. 特許庁費用はタイミングが分散している(出願時→審査請求時→登録時→年金)ため、実は一括で払うわけではありません。弁理士費用の支払条件は事務所ごとに異なるので、見積もり時にご相談ください。

Q3. 自分で出願すれば弁理士費用はゼロにできますよね?

A. 可能です。ただしソフトウェア発明は、クレームの書き方(カテゴリ設計・機能的表現)や実施形態の裏付けが審査・権利行使の成否を左右しやすい分野です。費用と、権利の質・ご自身の工数を天秤にかけてご判断ください。判断材料として初回相談だけ利用いただくのも一つの方法です。

Q4. 減免の手続は面倒ではないですか?

A. 簡単です。2019年4月以降の審査請求分は、審査請求書・特許料納付書の【特記事項】欄に減免対象である旨を記載するだけで、証明書類の提出は不要です。代理人経由なら該当区分の確認から記載まで事務所側で行います。

Q5. 権利を維持する年金は毎年いくらかかりますか?

A. 請求項5項なら、第4〜6年は毎年14,300円、第7〜9年は毎年34,300円、第10年以降は毎年82,400円です(減免対象は第10年分まで)。年次が進むほど高くなる階段構造なので、事業で使わなくなった特許は放棄も含めて定期的に棚卸しするのがコスト管理の定石です。

Q6. 途中でやめた場合、払った費用は戻りますか?

A. 原則戻りません(審査請求前の取下げ等、一部に返還制度があります)。だからこそ「出願だけして審査請求は事業を見極めてから」という段階的な支出設計が有効です。

Q7. 発明が2つあります。1件にまとめれば安くなりますか?

A. 技術的に単一性のある発明群なら1出願にまとめられ、出願料・審査請求の基本料は1件分で済みます。ただし無理にまとめると審査で分割を求められたり、権利の使い勝手(個別のライセンス・譲渡)が悪くなることもあります。まとめるか分けるかは費用と権利戦略の両面からの判断です。

相談の準備については発明説明シート付きの相談準備ガイドを、出願後のスケジュール感は出願の流れ完全ガイドをあわせてご覧ください。

IT・ソフトウェア特許の概算見積もり(無料):発明の概要(箇条書きで結構です)をお送りいただければ、請求項の構成案を含めた概算費用をご案内します(概算のご提示まで費用はかかりません)。知財事務所エボリクスのお問い合わせフォームよりお気軽にどうぞ。

この記事の監修

弁理士 杉浦健文(日本弁理士会 登録第19446号/知的財産事務所EVORIX)。IT・ソフトウェア・AI分野の特許出願を中心に扱い、AI関連発明の特許化をテーマとするセミナー講師の実績があります。本記事の法定費用は特許庁「産業財産権関係料金一覧」等の一次資料を確認のうえ記載しています。

【免責事項】本記事は2026年7月18日時点の特許庁公表資料(産業財産権関係料金一覧・減免制度ページ)等に基づく一般的な解説であり、法的助言ではありません(2026年7月19日増補)。法定費用・減免制度は改定されることがあります。弁理士費用の記載は公表アンケート・民間調査に基づく相場観であり、当所を含む特定の事務所の料金を示すものではありません。シミュレーションの金額は前提条件(請求項数等)により変わります。