弁理士の杉浦です。海外で自社の技術やブランドを守りたい。しかし、外国出願には高額な費用がかかる。そんな中小企業の皆様にとって強い味方となるのが、ジェトロ(日本貿易振興機構)の外国出願助成金です。
この助成金は、外国への知的財産権出願にかかる費用の一部を補助してくれる制度で、最大300万円(助成率1/2)が支給されます。この機会に、外国出願・国際出願にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
目次
ジェトロ外国出願助成金(正式名称:中小企業等外国出願支援事業)は、中小企業が海外で知的財産権を取得する際にかかる費用の一部を国が補助する制度です。経済産業省・特許庁が所管し、ジェトロ(日本貿易振興機構)および各都道府県の実施機関が窓口となって運営されています。
海外市場に製品やサービスを展開する際、現地での特許・商標・意匠の取得は不可欠です。しかし、外国出願には翻訳費用、現地代理人費用、各国特許庁への手数料など、国内出願の数倍のコストがかかるのが実情です。この助成金は、そうした費用負担を軽減し、中小企業の海外知財戦略を後押しすることを目的としています。
助成金のポイント:最大300万円(助成率1/2)が支給されます。つまり、外国出願にかかった経費の半分(上限300万円)を助成金でまかなうことができます。例えば、600万円の出願費用がかかった場合、300万円の助成を受けられる計算です。
この助成金は毎年、概ね5月から7月の期間に募集が行われます。また、ジェトロ本部だけでなく、各都道府県にも同様の助成金制度(実施窓口が異なるだけで内容は同じ)がありますので、お住まいの地域の窓口にもご相談いただけます。
この助成金は、外国出願(特許、意匠、商標)および国際出願(PCT出願、ハーグ出願、マドプロ出願)にかかる幅広い費用を対象としています。
直接出願:各国の特許庁に直接出願する方法です。米国、中国、韓国、台湾などへの特許出願、商標出願、意匠出願が対象です。
国際出願:PCT出願(特許協力条約に基づく国際出願)、マドリッド・プロトコル出願(商標の国際出願)、ハーグ協定出願(意匠の国際出願)も対象です。
具体的に助成対象となる費用は以下のとおりです。
賢い活用法:あらかじめPCT出願をしておき、その後各国に国内移行する際にこの助成金を使えば、国内移行費用、翻訳料、審査請求料などが助成対象となります。PCT出願から各国移行のタイミングを助成金募集期間に合わせることで、費用を大幅に節約することができます。
助成金額は知的財産の種類と出願方法によって上限が異なります。以下の表をご参考ください。
| 知財の種類 | 出願方法 | 助成上限額(1件) | 助成率 |
|---|---|---|---|
| 特許 | 直接出願(パリルート) | 150万円 | 1/2以内 |
| 特許 | PCT国際出願 | 150万円 | 1/2以内 |
| 実用新案 | 直接出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 意匠 | 直接出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 意匠 | ハーグ国際出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 商標 | 直接出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 商標 | マドプロ国際出願 | 60万円 | 1/2以内 |
| 合計上限 | 1企業あたり年間300万円まで(複数案件の合計) | ||
この助成金を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
個人事業主の方へ:個人事業主であっても、従業員数が上記基準を満たしていれば申請対象となります。また、スタートアップ企業の場合、設立間もない企業であっても申請が可能です。ただし、決算書2期分の提出が必要なため、設立1期目の場合は対応を相談する必要があります。
2022年度は、ジェトロが窓口となる助成金の募集が合計2回行われました。例年は1回の募集であるケースが多いですが、この年は以下のとおり2回実施されました。
| 募集回 | 応募期間 |
|---|---|
| 第1回 | 2022年5月9日(月)〜 5月31日(火) |
| 第2回 | 2022年7月1日(金)〜 7月29日(金) |
申請方法は、jGrants(補助金申請システム)を使うオンライン申請と、郵送による申請の2つがあります。
jGrantsを利用するためには、あらかじめgBizID(GビジネスID)というアカウントを取得する必要があります。gBizIDの発行には印鑑証明書などの書類が必要で、登録完了まで約2週間かかります。
参考リンク:
申請に必要な書類は以下のとおりです(会社の状況に応じて不要な書類もあります)。
| No. | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 申請書 | 所定の様式あり |
| 2 | 協力承諾書 | - |
| 3 | 登記簿謄本 | 法人の場合 |
| 4 | 会社事業概要 | 事業内容がわかる資料 |
| 5 | 役員名簿 | - |
| 6 | 決算書 2期分 | 直近2期分が必要 |
| 7 | 出願書類等 | 出願予定の書類一式 |
| 8 | 見積書 | 印紙代・代理人費用・現地費用等を詳細に明示 |
| 9 | 資金計画 | - |
| 10 | 先行技術調査報告書/先行登録調査報告書 | 最重要書類の一つ |
| 11 | 共同出願の持分割合書類 | 共同出願の場合のみ |
| 12 | 「延長枠」事情説明書 | 延長枠希望者のみ |
| 13 | 賃金引上げ計画関連書類 | 該当者のみ |
当事務所のサポート:
書類の中で特にハードルが高いのが「No.10 先行技術調査報告書/先行登録調査報告書」です。当事務所では、担当弁理士が出願を希望する国ごとに先行技術調査を行い、報告書の作成までサポートいたします。申請書類全体の作成支援も承っておりますので、お気軽にご相談ください。
助成金の採択率を高めるためには、計画的な準備が欠かせません。以下に、弁理士としての経験に基づいた実務的なアドバイスをお伝えします。
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 1〜2月 | 外国出願戦略の検討、出願先の国の選定、弁理士への相談開始 |
| 2〜3月 | gBizIDの取得手続き開始、先行技術調査の依頼 |
| 3〜4月 | 見積書の取得、申請書類のドラフト作成、先行技術調査報告書の完成 |
| 4月 | 申請書類の最終チェック、必要書類の最終確認 |
| 5月上旬 | 募集開始後すぐに申請を提出 |
1. 先行技術調査報告書を丁寧に作成する
審査員が最も重視する書類の一つです。出願する知財が登録される可能性を客観的なデータで示しましょう。
2. 海外事業計画を具体的に記載する
なぜその国に出願するのか、具体的な事業展開計画を明確に示すことが重要です。
3. 見積書は詳細に明示する
印紙代、代理人費用、現地費用など、費用の内訳を項目ごとに詳細に記載してください。大まかな見積もりは審査でマイナス評価になります。
4. 書類の不備をなくす
書類の不備は不採択の大きな原因です。提出前に弁理士のチェックを受けることを強くお勧めします。
5. 締め切り間際を避ける
募集期間の序盤に提出するのが理想的です。締め切り間際は窓口も混雑し、不備があった場合の修正時間も取れません。
ジェトロ本部だけでなく、各都道府県の窓口からも申請が可能です。内容はジェトロの助成金と同じで、窓口が異なるだけです。地域の窓口の方が親身に対応してくれる場合も多いので、お近くの窓口へのご相談もお勧めします。
当事務所でも過去にクライアント様とともに大阪産業局に伺い、特許・意匠・商標のすべての申請が許可され、助成金を獲得した実績がございます。大阪産業局の担当者の方にはとても親身に対応いただきました。
| 地域 | 実施機関 | 所在地 | 電話番号 |
|---|---|---|---|
| 京都市 | (公財)京都高度技術研究所 | 京都市下京区中堂寺南町134番地 | 075-366-5270 |
| 京都府 | 京都産業21 | 京都市下京区中堂寺南町134 京都府産業支援センター内 | 075-315-9425 |
| 大阪府 | (公財)大阪産業局 | 東大阪市荒本北1-4-17 クリエイション・コア東大阪北館1階 | 06-6748-1052 |
| 兵庫県 | (公財)新産業創造研究機構 | 神戸市中央区港島中町6丁目1 神戸商工会議所会館4階 | 078-306-6808 |
| 奈良県 | (公財)奈良県地域産業振興センター | 奈良市柏木町129-1 奈良県産業振興総合センター3階 | 0742-36-8312 |
| 和歌山県 | (公財)わかやま産業振興財団 | 和歌山市本町二丁目1番地 フォルテワジマ6階 | 073-432-5122 |
出願先は、出願人が希望する国であればどこでも対象となります。日本企業に人気のある主な出願先は以下のとおりです。
| 地域 | 主な出願先 |
|---|---|
| アジア | 中国、韓国、台湾、タイ、ベトナム、インドネシア、インド |
| アメリカ | 米国、カナダ、メキシコ、ブラジル |
| ヨーロッパ | 欧州(EPO)、ドイツ、フランス、イギリス |
| 大洋州 | オーストラリア、ニュージーランド |
| アフリカ・中東 | 南アフリカ、UAE、サウジアラビアなど |
知的財産事務所エボリクスでは、これまで以下のような業種のクライアント様の助成金申請をお手伝いさせていただきました。
また、特許庁が発行している外国出願補助金事例集によると、株式会社エアウィーヴ(愛知県)、濵田酒造株式会社(鹿児島県)、本坊酒造株式会社(鹿児島県)、及源鋳造株式会社(岩手県)、メロディ・インターナショナル株式会社(香川県)、株式会社アサヒメッキ(鳥取県)、株式会社石野製作所(石川県)、理研興業株式会社(北海道)、株式会社グリーンベル(大阪府)など、多数の企業がこの制度を活用しています。
詳しくは特許庁の事例集をご参照ください:
特許庁 外国出願補助金事例集(PDF)
助成金の申請をお手伝いしてきた経験から、よくあるつまずきポイントと対処法をお伝えします。
見積書は費用の内訳を詳細に記載する必要があります。「外国出願費用一式」のような大雑把な記載では審査を通過できません。具体的には、以下の項目ごとに金額を明示してください。
先行技術調査報告書は、出願しようとする知的財産が外国でも登録される見込みがあることを示す重要な書類です。自社だけで作成するのは難しいため、専門家(弁理士)に依頼されることをお勧めします。
当事務所では、担当弁理士が出願を希望する国ごとに先行技術調査を実施し、報告書をまとめさせていただきます。調査結果に基づいて、出願戦略の見直しやクレームの調整もご提案いたします。
PCT出願は優先日から30ヶ月以内に各国への国内移行が必要です。この国内移行のタイミングを助成金の募集時期に合わせることで、最も費用対効果の高い形で助成金を活用できます。各国移行時にかかる翻訳料や現地代理人費用は高額になりがちですので、計画的にスケジュールを組みましょう。
はい、中小企業基本法に定める中小企業者の要件を満たしていれば、個人事業主の方も申請可能です。
原則として、助成金の交付決定前に支払った費用は対象になりません。ただし、PCT出願の各国移行時の費用など、今後発生する費用については申請可能な場合があります。詳細は窓口にご確認ください。
はい、不採択であっても次回の募集で再度申請することが可能です。不採択の理由を踏まえて書類を改善し、再チャレンジされることをお勧めします。
いいえ、1つの申請書の中で複数の出願先をまとめて申請できます。ただし、出願先ごとに見積書や計画書を用意する必要があります。
助成金は後払い(精算払い)です。実際に外国出願を行い、費用を支払った後に、実績報告書を提出して精算されます。出願費用はまず自社で立て替える必要がある点にご注意ください。
はい、国内弁理士の手数料および現地代理人の費用も助成対象となります。翻訳費用も含まれます。
助成金の内容・金額は同じです。お住まいの地域に窓口がある場合は、地域の窓口の方が対面での相談がしやすく、きめ細かなサポートを受けられる場合が多いです。ただし、募集時期が異なる場合があるため、両方の情報を確認されることをお勧めします。
当事務所では外国出願助成金の申請代理を承っており、豊富な経験と実績がございます。先行技術調査報告書の作成から申請書類の準備、提出まで、一貫してサポートいたします。
外国出願の助成金についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。初回のご相談は無料です。
ジェトロの助成金詳細ページ:
https://www.jetro.go.jp/services/ip_service_overseas_appli.html