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商標とブランド~商標登録の必要性~

作成者: 弁理士 杉浦健文|2022/04/30

目次

  1. 商標登録は本当に必要なのか?
  2. ブランドとは何か ― ウイスキー樽のたとえ話
  3. 商標権を取得する2つの大きなメリット
  4. 商号(会社名)も商標である
  5. まとめ ― 商標登録でブランドを守る
  6. お問い合わせ

1. 商標登録は本当に必要なのか?

「商標権って必ず取らないといけないんですか? 権利を取るお金がもったいないし、もし権利者から何か言われたら、その時に販売をストップすればいいのでは...」

このような趣旨の質問をよくいただきます。確かに、警告書が届いてから事業をストップすれば、損害を少なく抑えることは可能かもしれません。

しかし、それでは遅いのです。警告を受けるまでに事業へ投下した資本(広告費、パッケージ制作費、販促費など)はすべて無駄になります。さらに、ブランド保護の観点から見てもまったく建設的ではありません。ブランドを守るために、商標権の取得は必須といえるでしょう。

具体例:ある飲食チェーンが店名を商標登録せずに5年間営業していたところ、同名の別企業が先に商標を取得していたことが判明。結果として、看板の付け替え、メニューの再印刷、ウェブサイトの変更、さらに顧客への周知に多額のコストが発生しました。事前に商標を取得していれば防げた事態です。

2. ブランドとは何か ― ウイスキー樽のたとえ話

そもそもブランドとは何でしょうか? わかりやすい例で考えてみましょう。

Aさん、Bさん、Cさんの三人が、それぞれ10個ずつウイスキーの樽を所有しています。この30個の樽を何の目印もつけずに同じ場所に保管すると、どれが誰のものか判別がつきません。

そこで樽に「A」「B」「C」と目印をつけると、一目瞭然で識別できるようになります。はじめは単なる識別のための目印でしたが、やがてそれは「Aのウイスキーはまろやかでコクがある」「Bはスモーキー」「Cは風味が強い」といった個性を示すものへと変わっていきます。

この「個性」こそがブランドです。ブランドとは、モノやサービスに対する生産者の「こだわり」、商品に一貫した姿勢を示す「個性」、そしてお客さんへの「約束」(信用)を示すものです。

もしブランド名がコロコロ変わるとどうなるでしょうか。「A」がいきなり「α」に変わってしまうと、まろやかなウイスキーを求めていたお客さんは、同じものかどうかわからず困ってしまいます。ブランド名の変更は、事業者だけでなく、お客さん(需要者)や市場(取引者)にとっても好ましくありません。

個性や信用は目に見えません。これらが可視化されたものが「商標」です。商売上、自分が築き上げてきたブランドであることを示す「目印(標識)」=「商標」を保護することで、個性と信用=ブランドの保護を図ることができます。

※「ブランド」の語源:自分の家畜と他人の家畜を区別するために焼き印を押していたことに由来します。焼き印を押す意味の「brandr(ブランドル)」が転じて「brand(ブランド)」と呼ばれるようになりました。

3. 商標権を取得する2つの大きなメリット

ブランド保護のために商標権を取得するメリットは、大きく分けて2つあります。

メリット1:自由な使用の確保 メリット2:他人の無断使用の阻止
自らが自由にその商標を使い続けるために権利を確保する 他人が勝手に同じ商標を使うことを法的に阻止できる
先に他人に取得されると自分が使えなくなるリスクを防ぐ 粗悪な模倣品によるブランド毀損を防ぐ

メリット1:自らが自由にその商標を使用するため

商標権は「早い者勝ち」です。日本の商標法では、特許庁に先に出願した者に権利が与えられます(先願主義)。使用の実績があっても、先に他人に商標登録されてしまうと、自由に使用できなくなります。

他人に先に権利を取られてしまった場合、同じ商標を使い続ければ侵害となり、損害賠償を請求される事態にもなりかねません。名称の変更を余儀なくされ、それまでに築いた認知度やブランド価値を失ってしまいます。

具体例:ECサイトで人気の商品名を商標登録していなかったところ、競合他社が先に同じ名称を商標登録。その結果、商品名の変更を迫られ、検索順位やリピーターを失ってしまったケースがあります。

メリット2:他人の勝手な商標の使用を阻止するため

もし、同じ商標を付した他人の商品の品質が劣悪だった場合、本物の商品である自社の商品まで品質が良くないとお客さんに誤解されてしまいます。長年かけて築いた信用が損なわれ、ブランドが崩壊しかねません。

ブランドは信用の積み重ね。同じ商標を使い続けることで信用が蓄積されます。商標権を取得しておくことで、模倣品や類似品に対して法的な措置を取ることができ、長年築き上げたブランド価値を守ることができます。

4. 商号(会社名)も商標である

商標は「目印」であると説明しました。SONYやPanasonicといった会社名も、名称を聞いただけで商品の特徴や個性が頭に浮かぶように、商号(会社名)もまた商標といえます。

会社名こそ商標登録を。個々の商品名よりも表に出る頻度が高い会社名は、商標権取得の必要性が特に高いといえます。会社の「顔」となる商号は、ブランド保護の最優先対象です。

※商標権とは:自社の商品・サービスであることを示す「目印(シンボルマーク)」に化体した「信用」を保護する権利です。

5. まとめ ― 商標登録でブランドを守る

商標権を取得する意味は、以下の2点に集約されます。

  • 自らが自由にその商標を使用できるようにする(先願主義への対応)
  • 他人の勝手な商標使用を阻止してブランド価値を守る(信用の保護)

ブランドは企業の大切な資産です。事業を始める段階で、あるいは新しい商品やサービスを展開するタイミングで、ぜひ商標登録を検討してみてはいかがでしょうか。早期の出願が、将来のリスクを大きく減らします。

6. お問い合わせ

商標登録・ブランド保護についてのご相談

商標登録やブランド保護に関するお問い合わせは、当事務所の弁理士までお気軽にご連絡ください。