クウェート国は、面積17,818平方キロメートル(四国とほぼ同じ)、人口約509万人(うちクウェート人156万人)の湾岸産油国で、原油確認埋蔵量1,015億バレル、1人当たりGDPは約3.2万米ドル(2024年)に達します。消費財のほぼすべてを輸入に頼り、2024年の輸入相手国は中国、UAE、米国に次いで日本が第4位です。日本にとってクウェートは第3位の原油供給国で、2025年の貿易額は日本への輸出8,862億円、日本からの輸入3,382億円(自動車、一般機械、鉄鋼)、2025年5月にはサバーハ・ハーリド皇太子の訪日で両国関係が「包括的・戦略的パートナーシップ」に格上げされました。商標を所管するのは商工省(MOCI:Ministry of Commerce and Industry)の商標・特許局(Trademarks and Patents Department)で、湾岸協力会議(GCC)6か国の中で唯一マドリッド議定書に加盟していないため、日本企業は現地代理人を通じた直接出願でしか商標を取得できません。
制度の根拠は、GCC6か国で共通のGCC統一商標法です。クウェートは2015年法律第13号でこれを承認し、2015年12月27日に官報「アル・クウェート・アル・ヤウム」に掲載された大臣決定第500号(施行規則)により翌28日からGCC諸国で最初に統一法を適用しました。それまでの1980年商法第61〜95条の商標規定に代わり、審査は識別力などの絶対的理由と先行商標・著名商標との抵触という相対的理由の両方について90日以内に行われ、受理された出願は商工省のウェブサイトで公開されて公開日から60日の異議申立てに付されます。存続期間は出願日から10年、更新は最終年と満了後6か月の猶予期間、不使用取消は5年です。公的手数料は2016年の施行時に大幅に引き上げられ、出願45ディナール、公告25ディナール、登録240ディナールの合計310クウェート・ディナール(約16万円)で、区分ごとに別出願が必要です。委任状はクウェートがハーグ条約(アポスティーユ)に未加盟のため駐日クウェート大使館の領事認証が必要で、2026年9月からはクウェート外務省での再認証も求められ、2025年11月の法令第147号で公証の有効期間が最長5年に制限されました。他方、商工省の商業監督部門による行政摘発は活発で、2025年には商標・特許局が6万件を超える手続を処理し、2026年7月には約11,000点の模倣品を押収して8店舗を閉鎖しています。本記事では、WIPO Lexと日本特許庁の日本語訳によるGCC統一商標法と施行規則、商工省の2025年年次報告書と統計、外務省・米国国務省・ジェトロの資料、現地事務所の解説と報道を照合し、日本企業がクウェートで商標を取得・維持・行使するために必要な事項を弁理士が解説します。
この記事のポイント
目次
クウェートの商標保護は、長く1980年商法(法律第68号)第61〜95条の商標規定と、1995年大臣決定第8号の施行規則(2008年大臣決定第412号でニース分類第42〜45類を追加)によって運用されてきました。当時は受理された出願が官報「アル・クウェート・アル・ヤウム」に3回連続で掲載され、最終掲載から30日が異議期間、更新の猶予期間は3か月でした。GCCが域内の商標制度を統一するために策定したGCC統一商標法(2012年12月のGCC最高評議会で採択)について、クウェートは2015年法律第13号(2015年3月11日公布、3月22日官報第1228号掲載)で承認し、統一法に反する既存法の規定を廃止しました。統一法の施行規則はGCC商業協力委員会が2015年5月に採択し、クウェートでは2015年大臣決定第500号が2015年12月27日の官報第1268号に掲載されて12月28日から施行され、新しい手数料は2016年1月1日から適用されました。これによりクウェートは、バーレーン(2016年5月)、サウジアラビア(2016年9月)に先立ってGCC統一商標法を実際に適用した最初の国になりました。
統一法は全52条で、第1章定義(第1〜2条)、第2章手続(登録手続第3〜19条、保護期間第20〜21条、取消第22〜26条、移転・抵当・差押第27〜28条)、第3章ライセンス契約(第29〜33条)、第4章団体標章・証明標章等(第34〜37条)、第5章権利行使(第38〜41条)、第6章罰則(第42〜44条)、第7章最終規定(第45〜52条)で構成され、本記事の条文番号はWIPO Lexと日本特許庁が公開する英訳・日本語訳によります。クウェートの大臣決定第500号は統一法の施行規則(全40条と手数料表)を国内に導入したもので、現地事務所の解説によれば、単色・色彩の組合せ・音・匂いの商標の明文化、出願書類(標章の画像4部、公証・認証付きの委任状とアラビア語訳、営業の証明、外国語商標の翻訳と発音)、1区分1出願、パリ条約に基づく優先権(2014年のパリ条約加盟後に初めて導入)、90日以内の審査、不服申立委員会、受理後30日以内の公告料納付、60日の異議、博覧会での仮保護(6か月)、抵当権とライセンスの記録、団体標章・品質標章、手数料の大幅引上げを定めています。決定第500号の原文は商工省のウェブサイトに掲載されておらず、本記事の手数料は商工省の2025年年次報告書が公表する手続ごとの件数と収入から算出しています。
所管官庁は商工省(MOCI)の商標・特許局で、商標登録、公開、更新、記録、不服・異議の審理を担います。市場での模倣品の取締りは商工省の商業監督局(Commercial Control Department)と消費者保護部門が内務省と協力して行い、国境では関税総局(Kuwait General Administration of Customs)の知的財産権ユニットが対応します。商標局は2017年12月に電子出願への移行を発表し、2018年4月から完全オンラインの出願(書類はPDFで添付し原本は3か月以内に提出)、2018年10月からオンライン更新、2023年1月から有料の公式調査を開始しました。現在は商工省の統合デジタルポータル「ONE MOCI」で商標を含む電子サービスが提供され、模倣品の苦情は専用サイト(trademark.moci.gov.kw)で受け付けています。英国知的財産庁の案内(2023年)は、商工省の効率化により登録までの期間が最長2年から約2か月に短縮されたと評価しています。公認の代理人は商標局の代理人登録簿に登録され(登録料140ディナール、年次更新140ディナール)、2025年には新規登録3件・更新18件でした。
条約については、WTO(1995年1月1日、TRIPS協定)、WIPO設立条約(1998年7月14日)、パリ条約(2014年12月2日、2014年法律第36号)、ベルヌ条約(2014年12月2日)、PCT(2016年9月9日)に加盟していますが、マドリッド協定・議定書、ニース協定、商標法条約、シンガポール条約、ハーグ協定(意匠)、ウィーン協定には未加盟です。2026年10月8日にサウジアラビアでマドリッド議定書が発効したため、GCC6か国のうちマドリッド制度に参加していないのはクウェートだけになりました。ハーグ条約(外国公文書の認証不要条約)にも加盟していないため、委任状などの外国公文書はアポスティーユでは足りず、駐日クウェート大使館の領事認証が必要です。知的財産関連ではGCC統一特許法(2013年法律第71号)、2019年著作権・著作隣接権法(法律第75号)、2014年消費者保護法(法律第39号)、2003年関税法(法律第10号)とGCC共通関税法が適用され、商号は2022年大臣決定第4号によりアラビア語とラテン文字の併記で登録できます。米国との通商投資枠組協定(TIFA)に知的財産作業部会があり、米国通商代表部は2021年にクウェートを優先監視リストから監視リストに引き下げ、2022年の報告書で監視リストからも除外しました。
外務省の基礎データ(2026年2月)によると、クウェートのGDPは約1,602億米ドル、1人当たりGDPは約32,214米ドル、実質成長率は−2.6%、消費者物価上昇率は2.9%、失業率は2.1%(いずれも2024年)です。石油部門を中心とするモノカルチャー経済で、国民の約8割が公務員または国営企業に勤め、2024年の輸出は751億米ドル(石油、石油製品、ガス)、輸入は381億米ドル(車両・部品、通信機器、建設資材、医薬品、宝石類)です。付加価値税は導入されておらず、通貨クウェート・ディナールは通貨バスケットに連動し、2025年平均で1ディナール=約3.26米ドルでした。2024年5月以降は国民議会が停止され、憲法の一部条項の最大4年間の停止の下で法令(Decree-Law)による立法が行われています。日本との関係では、2025年の日本への輸出が8,862億円(原油、石油製品、LPG)、日本からの輸入が3,382億円(自動車、一般機械、鉄鋼)で、在留邦人は142人(2025年10月)です。ジェトロはクウェートの国別ページを設けていません。
商標の出願件数は、商工省の2025年年次報告書によると2025年に13,351件(手数料収入600,795ディナール)、公告11,644件、登録・登録証の発行10,518件(2,524,320ディナール)、最終年の更新6,468件、猶予期間の更新634件、更新の公告7,103件、所有権移転の記録1,406件、ライセンスの記録303件、住所変更1,460件、予備審査(調査)649件で、商標関係の手続は合計63,116件、手数料収入は6,082,007ディナール(約31億円)に達しました。同じ年の異議申立ては272件、拒絶に対する不服申立ては87件、聴聞の請求は65件です。商工省の発表では、特許・意匠を含む商標・特許局全体の2025年の手続は68,632件、手数料収入は約669万ディナールで、2025年上半期だけで約35,000件・360万ディナールでした。WIPOの統計プロファイル(2024年)では、区分数ベースの出願は13,128件(前年比1.1%減)で、居住者5,447件(41.5%)、非居住者7,681件(58.5%)と、非居住者が96%を占めるバーレーンとは対照的に国内出願人の比率が高く、審査官1人当たりの出願区分数は1,094件です。クウェートの出願人による出願は7,024件(うち海外1,577件、前年比26.8%増)で、海外出願先はサウジアラビア、カタール、UAE、EUIPO、英国の順、国内出願の上位区分は広告・事業経営(第35類)14.0%、化粧品(第3類)10.7%、飲食物の提供(第43類)10.0%です。非居住者出願の出所国別の統計と日本企業の出願件数は公表されていません。
登録までの期間は、統一法が審査決定を出願から90日以内と定め、公開後60日の異議期間と登録料の納付を経るため、商標年鑑のCountry Indexは「最初の審査通知は2〜3週間、登録まで約4か月」、現地事務所の資料は「5〜7か月」、英国知的財産庁は「約2か月」としています。2025年の出願13,351件に対して公告が11,644件、登録が10,518件であることから、出願の大半が登録に至っていると推定されます。
統一法第2条は、商標を「名称、語、署名、文字、記号、数字、題号、印章、図形、画像、刻印、包装、図形要素、形状、色彩、色彩の組合せまたはこれらの結合、その他の標識または標識の組合せであって、識別力のある形態をとり、ある企業の商品・役務を他の企業のものと識別するため、役務の提供を示すため、または商品・役務の管理・検査を示すために使用され、または使用が意図されるもの」と定義し、音の標識と匂いの標識も商標となりうると明記しています。クウェートの大臣決定第500号はこれを受けて、単色、色彩の組合せ、音の商標(楽譜または説明文で出願)、匂いの商標(説明文で出願)を明文化したと現地事務所は解説していますが、現地の大手事務所のFAQには「非伝統的商標の登録は認められていない」との記載も残っており、実際の受理状況は出願前に商標局に確認する必要があります。1出願に含められる標章は1つで、区分も1つです(多区分出願は商標局の承認を条件に施行規則上可能とされますが、運用されていません)。
クウェート特有の制限として、酒類(第32類のビール、第33類)と豚肉(第29類)は公序を理由に登録できません。統一法自体に禁止規定はありませんが、現地の運用では第33類は分類から除かれ、第34類(たばこ)は維持されています。GCCの商標局はイスラム法に反する商品についてニース分類から離れた扱いをすると現地事務所は説明しています。団体標章(法人格を持つ団体の構成員が使用する標章)、管理・検査標章(証明標章・品質標章)、公益団体や専門機関の非営利の標章は統一法第34〜37条により登録でき、2025年には団体標章の出願が3件ありました。商号は商業登記で保護され、2022年大臣決定第4号によりアラビア語とラテン文字(アラビア語名の翻字または同義語)の併記が認められています。
第3条の不登録事由は15項目で、(1)識別力を欠く標章、商品・役務の慣用名称、ありふれた図形や商品の通常の画像、(2)公序良俗に反する表現・図形、(3)GCC諸国・他国・アラブまたは国際機関の公的標語、旗、軍事・名誉記章、勲章、硬貨・紙幣などとその模倣、(4)赤新月・赤十字の標章とその模倣、(5)純粋に宗教的な象徴と同一・類似の標章、(6)商品・役務の出所について混同を生じさせるおそれのある地理的名称、(7)本人または相続人の事前の同意のない他人の氏名、姓、写真、ロゴ、(8)出願人が資格を証明できない名誉・学術称号、(9)公衆を誤認させるおそれのある標章、原産地等の虚偽表示、架空・模倣・偽造の商号を含む標章、(10)当局の決定により取引が禁止されている自然人・法人が所有する標章、(11)同一または関連する商品・役務について他人が先に出願または登録した標章と同一・類似の標章で、使用により先行権利者の商品・役務との関連を生じさせ、またはその利益を害するもの、(12)登録により先行商標の商品・役務の価値を低下させるおそれのある標章、(13)他人の著名商標またはその一部の複製・模倣・翻訳で同一・類似の商品・役務に使用するもの、(14)著名商標の複製・模倣・翻訳で非類似の商品・役務に使用するものであって、著名商標との関連を示唆し、その所有者の利益を害するおそれのあるもの、(15)「フランチャイズ」「登録意匠」「著作権」などの語句を含む標章、です。現地事務所の資料によれば、出願人の国籍と異なる国名・都市名を含む標章は審査で拒絶されることがあり、スローガンは登録できます。
著名商標については第4条が、著名商標はその登録国以外のGCC諸国においても、所有者の請求または明示の同意がなければ同一・類似の商品・役務について他人が登録できないと定め、著名性の判断要素として宣伝による公衆の認知度、登録または使用の期間、登録または周知の国の数、商標の価値と販売促進への影響を挙げています。英国知的財産庁の案内もクウェートが著名商標を承認すると記しています。出願人の資格は第5条が定め、GCC諸国の国民、GCC諸国に居住し営業を許可された外国人、GCC諸国が加盟する多国間条約の加盟国の国民またはその居住者、公益団体が出願でき、日本企業はパリ条約・WTO加盟国の国民として出願資格を持ちます。先願主義で、同日に同一・類似の商標が出願された場合は取下書の提出または確定判決まで全出願が保留されます(第10条)。第7条は、善意で登録し5年間争いなく使用した商標はもはや争えないこと、先使用を主張する者は登録日から5年以内に裁判所に取消を請求できることを定め、Country Indexは「商標法は所有権の判断に先使用を考慮する」と記しています。
先行商標との抵触は職権で審査されますが、審査官1人当たり年間1,000件超の負担があり、第三者の情報提供制度はありません
商標局は出願から90日以内に識別力と先行商標の検索を含む審査を行い、第3条第11号の抵触を拒絶理由として通知します。しかしWIPOの統計では審査官1人当たりの出願区分数は1,094件で、現地事務所の資料によれば使用による識別力の獲得が認められ、先行権利者の同意書で拒絶を解消できる運用です。第三者による情報提供の制度はなく、自社の商標を守る手段は、商工省ウェブサイトの公開の監視と公開日から60日以内の異議申立て(95ディナール)、登録後の裁判所での取消請求に集中します。2022年には、登録商標が第三者に利用されたにもかかわらず商工省が適切に対応しなかったとして、破毀院が商工省に対し100万ディナールの仮の損害賠償を命じた事例が報じられており、登録簿の管理をめぐる紛争も裁判所に持ち込まれています。
出願は商工省の電子システムを通じて行います。商標局は2017年12月に電子出願への移行を発表し、2018年4月からすべての出願がオンラインで提出されるようになりました。現在は商工省の統合ポータル「ONE MOCI」が窓口で、手数料はクウェートの電子決済(KNET)で納付します。クウェートの企業は商業ライセンスを持つ本人が出願できますが、クウェートに居住しない出願人は、商標局の代理人登録簿に登録された代理人または現地の法律事務所を通じて出願しなければなりません。手続言語と公開はアラビア語で、外国語の商標には公認翻訳者によるアラビア語訳と発音の説明を添えます。GCC統一法第8条と施行規則が定める願書の記載事項は、標章の表示、出願人の名称・住所・国籍・法的性質、標章の説明、ニース分類の区分と商品・役務の一覧、優先権の表示、署名です。クウェートの電子出願では指定商品・役務をニース分類(2018年の現地資料では第11版)に基づくあらかじめ定められたリストから選択し、区分見出しの記載は認められず、任意の表現で商品を列挙することもできません。このため、区分全体を押さえたい場合は「当該区分のすべての商品・役務(All goods/services in the class)」という定型表現を選択するのが実務で、2026年4月の現地解説によれば、この表現は区分内のすべての商品・役務を指定したものとして扱われます。
| 段階 | 内容(根拠・期間) |
|---|---|
| 1. 出願前の調査 | 商標局の公式調査(予備審査)は2023年1月から45ディナールで請求でき、2025年には649件が利用された。クウェートの登録商標はWIPOのGlobal Brand Databaseに収録されていないため、現地代理人による商標局データベースの検索が実務上の手段。現地事務所の調査は数営業日が目安 |
| 2. 願書と添付書類 | 標章の画像(施行規則は4部)、出願人の名称・住所・国籍、ニース分類の区分と所定リストからの商品・役務の選択、優先権の表示(統一法第8条、大臣決定第500号)。1出願1区分・1標章で、区分ごとに別の出願と手数料が必要(多区分出願は商標局の承認を条件とする規定があるが運用されていない)。添付書類は委任状、営業の証明、外国語商標の翻訳と発音、優先権証明書。電子出願では書類をPDFで添付し、原本は一定期間内に提出する |
| 3. 営業の証明 | クウェートの企業は商業ライセンスの写し。外国企業は本国の設立証明書または商業登記簿の抄本を提出する。現地事務所の資料では単純な写しで足りるとするものと認証付きの写しを求めるものがあり、日本企業は登記事項証明書に公証と領事認証、アラビア語訳を付して提出するのが安全 |
| 4. 委任状 | 公証人の認証→日本の外務省の公印確認→駐日クウェート大使館の領事認証(クウェートはハーグ条約未加盟のためアポスティーユは使えない)の順で認証し、アラビア語訳を付す。2026年9月からは、領事認証後にクウェート外務省での再認証(スーパー・リーガリゼーション)も求められ、認証済みの委任状は出願から90日以内に提出する(期限は厳格ではないが登録証の発行前には必要)。委任状は複数の出願・更新・記録に使い回せるが、2025年11月2日施行の法令第147号により公証の有効期間は最長5年で、期間の記載のない既存の委任状は2027年11月1日まで有効 |
| 5. 優先権 | パリ条約(2014年12月2日発効)に基づき、先の出願日から6か月以内に優先権を主張し、優先権証明書とアラビア語訳を提出する(統一法第9条、施行規則)。現地事務所の資料では優先権証明書は出願から3か月以内に補完できる |
| 6. 審査 | 商標局は出願から90日以内に審査を行い、受理、条件付き受理または拒絶を決定する(統一法第11〜12条、施行規則)。審査は方式、第3条の絶対的理由、先行出願・登録商標との抵触(相対的理由)を含む。不備は通知から90日以内に補正し、拒絶理由への応答期間は60日。現地事務所の資料では最初の審査通知は出願から2〜3週間 |
| 7. 不服申立て | 拒絶または条件付き受理に対しては通知から60日以内に商工省の不服申立委員会に申し立て(45ディナール、2025年は87件)、委員会の決定は30日以内に通知される。委員会の決定には60日以内に裁判所に不服を申し立てる(統一法第13条) |
| 8. 公告料と公開 | 受理の通知から30日以内に公告料25ディナールを納付し、商標局が出願を商工省のウェブサイト(オンライン公報)で公開する(統一法第14条、施行規則)。2025年の公告は11,644件。旧法下の官報3回連続掲載は廃止された |
| 9. 異議申立て | 利害関係人は公開日から60日以内に書面で異議を申し立てる(95ディナール、延長不可、2025年は272件)。商標局は異議を出願人に送付し、出願人は60日以内に答弁する。答弁がなければ出願は取り下げられたものとみなされる。商標局は当事者の聴聞(45ディナール)を経て決定し、登録を命じる場合は条件を付けることができる。決定には30日以内に裁判所に不服を申し立てる(統一法第15条) |
| 10. 登録料と登録証 | 異議がなく、または異議が退けられた場合、最終受理の通知から30日以内に登録料と登録証料240ディナールを納付し、商標局が登録簿に記録して電子登録証を発行する(統一法第16〜17条)。登録の効果は出願日に遡る。2025年の登録は10,518件。更新や記録の後は従来の登録証とは別の証明書が発行される(2017年11月から) |
書類認証の要件は、現地事務所の資料によれば書面の通達ではなく運用の変更として代理人に伝えられることが多く、2026年9月のクウェート外務省での再認証の要件も口頭で周知されました。認証に要する期間と費用(公証人、外務省、大使館、現地の外務省の各手数料と翻訳料)は出願の公的手数料とは別にかかるため、出願スケジュールには委任状の準備に2〜4週間を見込む必要があります。法令第147号は商業代理店契約の委任状を5年の制限から除外していますが、知的財産手続の委任状は除外されないと現地事務所は解説しており、長期間使い回してきた無期限の委任状は2027年11月までに期限付きのものに差し替えなければなりません。
「区分内の全商品」の定型表現は便利ですが、指定商品の明確性と不使用取消の両面で注意が必要です
クウェートの電子出願は所定リストからの選択方式で、リストにない商品はそのままでは指定できません。区分全体を指定する定型表現は商標局で広く使われ、2026年4月の現地解説は、この表現が区分内のすべての商品・役務を指定したものとして扱われると説明しています。他方で、統一法第24条の不使用取消は裁判所が判断し、現地事務所の資料は「区分内の1品目の使用で区分全体の使用と認められる」と記していますが、裁判所の判断例は公開されていません。日本の登録や他のGCC諸国の出願と指定商品を揃えたい場合は、リストに近い語を選び、主力商品が確実に含まれるかを代理人に確認してください。
公的手数料は2015年大臣決定第500号の手数料表で定められ、2016年1月1日から適用されています。旧法下の出願料は7ディナール(約24米ドル)、公告料は約34米ドル、登録料は約24米ドルで、新法で出願から登録までの合計は24ディナールから310ディナールへ約13倍に引き上げられました。手数料表の原文は公開されていませんが、商工省の2025年年次報告書が手続ごとの件数と手数料収入を掲載しており、本記事ではその除算値(出願600,795ディナール÷13,351件=45ディナールなど)と商標年鑑の記載を照合して単価を示しています。消費税・付加価値税はありません。
| 手続(1商標1区分) | 公的手数料(クウェート・ディナール) | 円換算(1ディナール≒516円) | 2025年の件数 |
|---|---|---|---|
| 出願 | 45 | 約23,200円 | 13,351 |
| 公告(受理後30日以内) | 25 | 約12,900円 | 11,644 |
| 登録・登録証(最終受理後30日以内) | 240 | 約124,000円 | 10,518 |
| 出願から登録までの合計 | 310 | 約160,000円 | — |
| 団体標章・証明標章の出願/公告 | 95/45 | 約49,000円/約23,200円 | 3 |
| 更新(満了前1年以内)+更新の公告 | 265+45=310 | 約160,000円 | 6,468 |
| 猶予期間の更新(満了後6か月以内)+公告 | 310+45=355 | 約183,000円 | 634 |
| 拒絶・条件付き受理に対する不服申立て | 45 | 約23,200円 | 87 |
| 異議申立て/聴聞の請求 | 95/45 | 約49,000円/約23,200円 | 272/65 |
| 所有権移転の記録+公告 | 45+25 | 約36,100円 | 1,406 |
| ライセンスの記録+公告 | 95+45 | 約72,200円 | 303 |
| 名称変更/住所変更の記録(+公告25) | 45/45 | 約23,200円 | 245/1,460 |
| 標章の軽微な変更の記録(+公告25) | 45 | 約23,200円 | 46 |
| 所有者による抹消(全部/一部) | 10 | 約5,200円 | 24/32 |
| 登録証の写し/予備審査(調査) | 45/45 | 約23,200円 | 280/649 |
| 代理人の登録/年次更新 | 140/140 | 約72,200円 | 3/18 |
このほかに、現地代理人の手数料(出願・公告・登録の各段階で請求され、調査、拒絶理由への応答、異議、更新は別料金)、公認翻訳者によるアラビア語訳の費用、日本での公証と外務省の公印確認、駐日クウェート大使館の領事認証、クウェート外務省での再認証の費用がかかります。GCC他国と比べると、出願から登録までの公的手数料はバーレーン(650ディナール=約27万円)より低く、GCC諸国の中では低い部類です。本記事の円換算は、クウェート中央銀行の2025年の平均相場(1ディナール=3.26米ドル)と欧州中央銀行の2026年11月5日の参考相場(1ユーロ=1.1224米ドル、177.85円)から1ディナール≒516円として計算しており、実際の為替相場により変動します。
公告料と登録料はそれぞれ30日以内に納付しないと出願が失効します
統一法第14条と第16条は、公告料を受理の通知から30日以内、登録料を最終受理の通知から30日以内に納付しない出願を取り下げられたものとみなすと定めています。クウェートでは手続が電子化され、通知は代理人のアカウントに届くため、代理人との連絡体制と支払いの承認フローを出願前に決めておく必要があります。更新の猶予期間(6か月)に納付する割増は45ディナールで、猶予期間を過ぎた商標は失効します。
商標局は出願から90日以内に審査し、統一法第11条に基づいて出願を受理し、条件や変更を付けて受理し、または拒絶します。クウェートでは電子出願の導入後、最初の審査通知が出願から2〜3週間で届くことが多く、方式上の不備(委任状や翻訳の不足)は通知から90日以内に補正し、識別力や先行商標との抵触を理由とする拒絶には60日以内に応答します。先行権利者の同意書(レター・オブ・コンセント)による拒絶の解消、使用による識別力の獲得の主張が実務で認められています。出願人が期限内に応答しない場合、出願は放棄されたものとみなされます。
| 手続 | 期限・内容(根拠条文) |
|---|---|
| 方式の不備の補正 | 通知から90日以内に補正しなければ出願は取り下げられたものとみなされる(施行規則、統一法第11条)。委任状の原本は出願から90日以内が目安 |
| 拒絶理由・条件付き受理への応答 | 通知から60日以内に意見書・補正書を提出する。条件付き受理の条件(指定商品の限定、権利不要求、色彩の限定など)を受け入れるか、不服を申し立てる(統一法第12条) |
| 不服申立委員会への申立て | 拒絶・条件付き受理の通知から60日以内に商工省の不服申立委員会に申し立てる(45ディナール)。委員会は決定を30日以内に通知する(統一法第13条、施行規則)。2025年の申立ては87件 |
| 裁判所への不服 | 委員会の決定の通知から60日以内に管轄裁判所(商事部)に不服を申し立てる(統一法第13条)。期限を過ぎた決定は確定する |
| 異議申立て | 商工省ウェブサイトでの公開日から60日以内に書面で理由を付して申し立てる(95ディナール、延長不可)。商標局は異議書の写しを出願人に送付する(統一法第15条、施行規則)。2025年は272件 |
| 出願人の答弁 | 異議の送達から60日以内に理由を付した答弁書を提出する。提出しなければ出願は取り下げられたものとみなされる(統一法第15条) |
| 聴聞と決定 | 商標局は当事者の意見を聴いたうえで異議を決定する(聴聞の請求は45ディナール、2025年は65件)。登録を認める場合は、必要な条件を付けることができる(統一法第15条) |
| 異議の決定への不服 | 決定の通知から30日以内に管轄裁判所に不服を申し立てる(統一法第15条)。裁判所の判決には上訴できる |
異議の根拠として実務で用いられるのは、先行出願・登録商標との同一・類似(第3条第11号)、著名商標の複製・模倣・翻訳(第13・14号)、誤認(第9号)、出願人の悪意、先使用(第7条)です。クウェートの登録商標はWIPOのGlobal Brand Databaseに収録されておらず、公開は商工省のウェブサイトで行われるため、異議期間を逃さないためには現地代理人による公開の監視が不可欠です。異議の決定に対する裁判所への不服申立期間は30日で、拒絶に対する不服申立て(委員会60日→裁判所60日)より短い点に注意が必要です。統一法第15条は異議の決定を商標局が行うと定めていますが、クウェートでは異議の審理を不服申立委員会が担当すると説明する現地資料もあり、手続の実際は代理人に確認してください。
統一法第20条により、商標の保護期間は出願日から10年で、同一の期間について何度でも更新できます。更新の申請は保護期間の最終年に行い、クウェートの公的手数料は更新265ディナールと更新の公告45ディナールです。期限までに更新しなかった場合でも満了後6か月の猶予期間に割増手数料(更新310ディナール+公告45ディナール)を納付して更新でき、2025年には猶予期間の更新が634件ありました。旧法下の猶予期間は3か月でしたが、統一法で6か月に延長されています。更新の際に商標局は実体審査を行わず、使用の証明も求められません。更新は2018年10月からオンラインで申請でき、従来必要だった登録証の原本の提出は不要になりました。更新・移転・名称変更などの記録の後は、2017年11月から当初の登録証とは別の証明書が発行され、登録証そのものの書換えは行われません。
猶予期間内に更新されなかった商標は登録簿から抹消され、保護を失います。統一法第25条は、抹消された商標を同一・類似の商品・役務について第三者が登録できるのは抹消から3年を経過した後と定め、元の所有者は抹消後も一定の優先的な地位を持ちます。ただし現地の大手事務所のFAQは「失効した商標は第三者がいつでも出願できる」と記しており、クウェート商標局の運用が統一法の3年制限をどう扱っているかは確認できていません。更新を怠った場合は、できるだけ早く新規出願を行うとともに、抹消後の第三者出願に対して第25条と先使用(第7条)を根拠に異議を申し立てる準備が必要です。登録簿は商工省が管理し、記録事項は商工省のウェブサイトで公開されます。
GCC統一法の国でも、存続期間の起算日と更新時期は国ごとに確認が必要です
統一法を適用するGCC6か国の保護期間はいずれも出願日から10年ですが、クウェートでは2015年12月28日より前に出願された商標について、旧商法に基づく登録日や更新の扱いが残っている場合があります。日本企業が1990年代〜2000年代に取得したクウェートの登録を維持している場合は、登録証の日付をそのまま信じず、商工省の登録簿で現在の満了日と所有者の名称・住所を確認し、名称・住所の変更があれば記録(45ディナール+公告25ディナール)を済ませておくことが更新の前提になります。
登録商標の無効・取消は、統一法第22〜26条により裁判所の手続です。第22条は、商標局または利害関係人が、登録が不当に行われた商標(第3条の不登録事由に該当する商標など)の取消を管轄裁判所に請求できると定め、裁判所は商標局に対して取消を命じます。クウェートでは商標局による行政的な無効手続はなく、現地事務所の資料も「取消訴訟は裁判所に提起する」と記しています。第7条により、善意で登録され5年間争いなく使用された商標は取消を請求できなくなり、先使用を主張する者の取消請求は登録日から5年以内に限られます。悪意による登録にはこの制限が適用されません。
不使用取消は第24条に基づき、登録商標が連続5年間、実際に使用されていない場合に、利害関係人が裁判所に取消を請求できます。登録人が、不使用が自己の管理を超える事由(輸入制限や政府の規制など)によることを証明した場合、裁判所は取消を命じません。現地事務所の資料によれば、使用はクウェート市場での実際の使用でなければならず、インターネット上の表示だけでは足りないとされ、区分内の1品目の使用で区分全体の使用と認められる運用です。クウェートに使用の記録制度や宣誓供述書の提出制度はなく、使用の証拠は訴訟の段階で提出します。商標局が不使用を職権で調査することはありません。
所有者は、登録簿への記録により商標の全部または指定商品の一部を放棄でき、公的手数料は10ディナール(一部抹消は公告10ディナール)で、2025年には全部抹消24件・一部抹消32件がありました。裁判所による取消が確定すると商標局が登録簿から抹消し、商工省のウェブサイトで公開されます。更新の懈怠による抹消と同じく、取り消された商標は第25条の3年制限の対象になります。無効・取消の訴訟はクウェートの第一審裁判所(商事)に提起し、控訴院、破毀院の三審制で、ジェトロの資料は知的財産訴訟の判決まで12〜18か月を目安としています。
無効・不使用取消が裁判所の手続であることは、防御側にも攻撃側にも影響します
クウェートでは、他人の登録を排除するための無効や不使用取消を商標局に請求することができず、裁判所に提訴して12〜18か月を要します。代理店や第三者が日本企業の商標を先に登録していた場合、公開から60日以内の異議を逃すと、登録後の救済は訴訟に限られ、第7条により登録から5年を過ぎると先使用を理由とする取消請求もできなくなります。自社の登録を守る側としては、5年ごとの使用証拠(クウェート向けの請求書、船積書類、現地代理店の販売記録、店頭写真)を保全し、商標の表示をアラビア語版を含めて登録どおりに使うことが、不使用取消への備えになります。
クウェートはマドリッド協定・議定書に加盟しておらず、日本の基礎出願・登録に基づく国際登録でクウェートを指定することはできません。GCCでは、オマーン(2007年)、バーレーン(2005年)、UAE(2021年12月)、カタール(2024年8月)、サウジアラビア(2026年10月8日)が順次マドリッド議定書に加盟し、クウェートはGCCで唯一の非加盟国になりました。したがってクウェートで商標を取得するには、登録代理人を通じた直接出願しかありません。現地事務所の資料には、商工省が将来のマドリッド加盟を検討しているとの記述が繰り返し現れますが、本記事の執筆時点で加盟の手続や時期に関する公式発表は確認できていません。
| 項目 | クウェート(直接出願のみ) | マドプロ加盟のGCC諸国(参考) |
|---|---|---|
| 出願経路 | 登録代理人を通じた商工省への直接出願(ONE MOCI) | 日本の基礎出願・登録に基づく国際登録での指定、または直接出願 |
| 公的手数料(1区分) | 出願45+公告25+登録240=310ディナール(約16万円) | 各国が定める個別手数料(例:バーレーン1,321スイスフラン) |
| 区分 | 1出願1区分、区分ごとに手数料と出願が必要 | 国際登録は多区分、各国の個別手数料は区分ごと |
| 必要書類 | 公証・外務省・駐日クウェート大使館・クウェート外務省の認証付き委任状とアラビア語訳、営業の証明、外国語商標の翻訳と発音、優先権証明書 | 国際登録の指定では委任状不要(暫定拒絶への応答時に現地代理人と委任状が必要) |
| 指定商品・役務 | 所定リストからの選択(区分見出し不可、「区分内の全商品」の定型表現あり) | 国際登録の指定商品を各国が審査(バーレーンは2026年10月から承認リスト方式) |
| 審査・公開・異議 | 審査90日、商工省ウェブサイトで公開、異議60日、登録まで2〜7か月 | 暫定拒絶の通知期限12か月または18か月、各国で公開と異議 |
| 存続期間・更新 | 出願日から10年、更新310ディナール(猶予355ディナール) | 国際登録日から10年、WIPOで一括更新 |
| 記録・管理 | 名称・住所変更、移転、ライセンスを国ごとに記録(各45〜95ディナール+公告) | WIPOで一括記録 |
直接出願の手間を減らすには、パリ条約の優先権(日本出願から6か月以内)を使って日本出願と同じ内容で出願する、1通の委任状でGCC諸国の直接出願をまとめて手配する(クウェートの委任状はクウェートの手続にしか使えないため、国ごとに認証が必要)、2025年11月の法令第147号に合わせて5年の有効期間を明記した委任状を用意して複数の出願・更新・記録に使い回す、といった方法があります。日本企業がサウジアラビア・UAE・カタール・バーレーン・オマーンをマドプロで指定し、クウェートだけ直接出願する組合せは、GCC全体をカバーする最も一般的な設計です。マドプロの国際登録はセントラルアタック(基礎出願・登録の失効による国際登録の取消)のリスクを伴いますが、クウェートの直接出願はこの影響を受けません。
統一法第27条により、登録商標の所有権は営業の移転とは独立して譲渡でき、抵当権の設定や差押えの対象にもなります。移転、抵当、差押えは商標局の登録簿に記録され公開されるまで第三者に対抗できません(第28条)。クウェートの移転の記録手数料は45ディナール、公告25ディナールで、2025年には1,406件の移転が記録されました。記録の申請には、譲渡証書(公証と領事認証付き、アラビア語訳)、譲受人の委任状(認証付き)、営業の証明が必要です。現地事務所の資料によれば、商標局は出願中の商標についての移転の記録を受け付けず、登録後に記録します。営業の譲渡は、別段の合意がなければ営業と密接に関連する商標を含むものとみなされます(第27条)。
ライセンスは統一法第29〜33条により書面で締結し、保護期間を超えない範囲で付与します。ライセンス契約は登録簿に記録でき、クウェートの手数料は記録95ディナール、公告45ディナールで、2025年には303件が記録されました。現地の大手事務所のFAQには「ライセンスの記録は認められていない」との記載がありますが、商工省の統計は記録の実績を示しており、記録制度は運用されています。統一法第31条は、ライセンスが記録されるまで第三者に対抗できないとし、第30条は、ライセンシーの商標使用の品質管理を確保するためにライセンサーが必要な制限を課すこと、ライセンシーが自ら使用する権利を維持することを認めています。ライセンシーによる使用はライセンサーの使用とみなされ、不使用取消の防御になります。商工省はフランチャイズ契約と商業代理店契約の登録も所管しており、クウェートでは代理店が自己名義で外国のブランドを登録する紛争が繰り返し報じられているため、ライセンス契約・代理店契約に商標の帰属と登録の禁止を明記することが重要です。
商号は商業登記で保護され、2022年大臣決定第4号によりアラビア語名とそのラテン文字表記または外国語の同義語を併記して登録できます。商号の登録は商標の登録とは別の制度で、商標局は商号との抵触を職権では審査しません。並行輸入について、統一法と施行規則は消尽を明文で定めておらず、現地の商業代理店法(2016年法律第13号)が代理店の独占権を保護しているため、真正品の並行輸入が商標権侵害に当たるかは争いがあり、公開された判例は見当たりません。統一法第39条は税関差止めの対象から旅客の手荷物や少量の非商業的物品を除外しています。
クウェートの権利行使は、商工省の商業監督局(CCD)と消費者保護部門への行政苦情が最も使われる手段です。商工省は2021年から商標侵害の専用苦情窓口(trademark.moci.gov.kw)を設け、侵害者の名称と店舗の住所、模倣品のサンプルまたは写真、購入の領収書、商標の登録証(アラビア語訳付き)、委任状を添えて苦情を申し立てると、商業監督局が内務省の協力を得て立入検査を行い、模倣品を押収して店舗を閉鎖します。押収品は内務省の犯罪証拠部門(Criminal Evidence Department)で真正品と比較鑑定され、違反が確認されると商事検察に送致されて刑事訴追に至ります。2024年6月にはファルワニヤの倉庫で国際ブランドの模倣品62万3,000点(市場価値1,000万ディナール)が摘発され、2026年6月にはサルミヤの検査で6,000点超、2026年7月には商工省と内務省の合同検査で約11,000点の模倣品が押収されて8店舗が閉鎖されました。米国国務省の投資環境報告書によれば、商工省は2023年に模倣品の販売で54店舗、商標侵害で10店舗を閉鎖し、2024年には9店舗を閉鎖しています。
| 救済 | 内容(根拠条文) |
|---|---|
| 行政苦情と立入検査 | 商工省の商業監督局・消費者保護部門に苦情(オンライン窓口)。立入検査、押収、店舗閉鎖、罰金。2014年消費者保護法(法律第39号)と2015年施行規則が根拠。費用が低く、数週間で結果が出る |
| 保全措置 | 権利者は提訴前または訴訟中に、裁判所に対し侵害の記録、侵害品・製造機器の差押え、担保の提供を命じるよう申し立てられる(統一法第40条)。提訴前の措置は8日以内に本案を提起しなければ失効する |
| 損害賠償・廃棄 | 裁判所は損害賠償(侵害者の利益を含む)、侵害品と製造機器の没収・廃棄、判決の公告を命じられる(統一法第41条)。破毀院は2022年、登録商標の第三者による利用を防がなかった商工省に対し100万ディナールの仮の損害賠償を命じた |
| 刑事罰 | 登録商標の偽造・模倣、偽造商標の悪意の使用、偽造商標の商品の販売・流通・輸入・所持は1か月以上3年以下の拘禁刑または5,000〜100万サウジ・リヤル相当の罰金(統一法第42条)。登録商標を自己の商品に権利なく使用した場合は1か月以上1年以下の拘禁刑または1,000〜10万リヤル相当の罰金。再犯は加重し、営業停止と判決の公告が命じられる(第43条)。刑罰額はクウェート・ディナールに換算して適用される |
| 裁判所 | 第一審裁判所(商事部・刑事部)→控訴院→破毀院。知的財産の専門裁判所はない。ジェトロの資料では判決まで12〜18か月。訴訟はアラビア語で行い、外国の書類は認証付き翻訳が必要 |
刑事手続は、権利者の告訴または商工省の送致により商事検察が起訴し、刑事裁判所が判決を下します。統一法第42条の罰金額はサウジ・リヤルで定められており、クウェートでは国内通貨に換算して適用されるため、具体的な適用額は判例で確認する必要があります。民事訴訟は損害賠償の立証が難しく、現地事務所の多くは、まず行政苦情で模倣品を市場から排除し、悪質な場合に刑事告訴と民事訴訟を組み合わせることを勧めています。米国通商代表部は、商工省の執行体制の改善を評価して2021年にクウェートを優先監視リストから監視リストに引き下げ、2022年の報告書で監視リストからも除外し、米国国務省の2025年の報告書はソフトウェアの違法コピーを残る課題としつつ、商標に関する執行は機能していると評価しています。
行政苦情には登録商標が必要です。未登録の商標は著名性の立証が前提になります
商業監督局の苦情窓口は、クウェートで登録された商標の登録証の提出を求めます。クウェートで未登録の商標は、統一法第4条の著名商標として保護を求めることになりますが、行政機関は著名性の判断に慎重で、実務上は裁判所での立証が必要になります。日本企業が現地代理店を通じて製品を販売している場合も、代理店任せにせず自社名義で登録を取得しておくことが、苦情・税関・訴訟のいずれの手段を使う場合にも前提になります。
統一法第38条は、権利者が侵害の疑いのある商品の通関を停止するよう税関に申請できること、税関が十分な証拠に基づいて職権で通関を停止できることを定め、申請者は登録証と商品を特定できる情報を提出し、税関は通関停止を申請者と輸入者に通知します。権利者が一定期間内に本案の訴訟を提起しなければ通関停止は解除され、裁判所は侵害品の廃棄を命じることができます。クウェートの関税総局(Kuwait General Administration of Customs)には知的財産権ユニットがあり、2003年関税法(法律第10号)とGCC共通関税法に基づいて模倣品の輸入を取り締まります。2021年10月にはシュワイフ港の航空貨物で模倣ブランドのペン5,600本と衣類600点が押収され、2024年11月の報道では、税関は疑わしい貨物についてブランドの権利者と商工省を通じて真正性を確認し、模倣品は輸入者の費用で没収・廃棄されると説明されています。2025年9月には関税総局がキャラクター商品の模倣品の廃棄を公開しました。
| 項目 | 内容(根拠・出典) |
|---|---|
| 差止申請 | 権利者または代理人が関税総局に書面で申請し、登録証、商品の識別情報、委任状を提出する(統一法第38条)。クウェートの税関は申請を受けて貨物を検査し、輸入者と権利者に通知する |
| 職権差止め | 税関は十分な証拠があれば職権で通関を停止できる(第38条)。実務では商工省の商標局を通じて権利者に照会し、権利者が一定期間(ジェトロの資料では5営業日)内に模倣品であることを確認する |
| 録記(権利者情報の事前登録) | ジェトロの2025年の資料は任意の税関録記(1区分約150米ドル、有効期間1年、更新可)を紹介しているが、米国商務省の国別商業ガイドと現地事務所の資料は「正式な税関録記の制度はなく、権利者が個別に税関に情報提供する」と記している。公式の案内は確認できておらず、申請の要否と費用は関税総局または代理人に確認が必要 |
| 本案の提起と廃棄 | 通関停止後、権利者は裁判所に訴訟を提起し、裁判所が侵害品の廃棄を命じる(第38条、第41条)。実務では輸入者が放棄に同意した模倣品は輸入者の費用で廃棄される。関税法上の罰金はジェトロの資料で1,000〜10,000ディナール |
| 除外 | 旅客の手荷物に含まれる少量の非商業的物品、少量の小包は差止めの対象外(統一法第39条) |
クウェートの輸入貨物の多くはUAEのジュベル・アリ港を経由する海上輸送とクウェート国際空港の航空貨物で入り、税関は商工省の商標局のデータベースを参照して登録商標との照合を行います。したがって、クウェートでの商標登録は税関による発見の前提であり、登録後に関税総局の知的財産権ユニットに真正品の識別方法、正規の輸入業者、連絡先を提供しておくことが、職権差止めの実効性を高めます。税関の録記制度の有無と費用については資料が分かれており、本記事では確定した情報として扱っていません。
クウェートは人口500万人の市場ですが、1人当たりGDPが高く、自動車・機械・電機・化粧品・食品など日本製品の輸入が多い一方、模倣品の流通と代理店による先取り登録のリスクがある国です。GCC統一商標法の下で制度の骨格はサウジアラビア・UAE・カタール・バーレーン・オマーンと共通ですが、マドプロが使えない、1区分1出願、委任状の領事認証と外務省の再認証、所定リストからの商品選択というクウェート固有の手間があります。日本企業が押さえておきたい実務ポイントは次のとおりです。
クウェートの制度は「GCC統一法の実務で最も整った国の一つ」ですが、固有の手間を見込んだスケジュールが必要です
クウェートはGCC統一商標法を最初に適用し、2018年に完全電子出願に移行し、2023年から公式調査を提供し、2025年には6万件を超える手続を処理しました。登録までの期間は2〜7か月と湾岸諸国の中では短く、商工省の執行も活発です。他方で、マドプロが使えないこと、委任状の認証が2段階になったこと、公証の有効期間が5年に制限されたこと、無効・取消が裁判所の手続であることは、他のGCC諸国とは異なる負担です。GCC全体の出願計画の中で、クウェートだけは認証書類の準備期間と直接出願の費用(1区分約16万円+代理人費用+認証費用)を別枠で見込んでください。
できません。クウェートはマドリッド協定・議定書に加盟しておらず(2026年10月のサウジアラビアの加盟後、GCCで唯一の非加盟国)、商工省の代理人登録簿に登録された代理人または現地の法律事務所を通じた直接出願が唯一の方法です。公的手数料は1商標1区分で出願45ディナール、公告25ディナール、登録・登録証240ディナールの合計310ディナール(約16万円)で、区分ごとに別の出願が必要です。これに現地代理人の手数料、アラビア語訳、委任状と営業証明の公証・領事認証・外務省の再認証の費用が加わります。更新は満了前1年に310ディナール(更新265+公告45)、満了後6か月の猶予期間は355ディナールです。
判断されます。商標局は出願から90日以内に、識別力や公序良俗などの絶対的理由と、先に出願・登録された商標との同一・類似、著名商標の複製・模倣・翻訳(統一法第3条第11〜14号)という相対的理由の両方を審査します。拒絶理由には60日以内に応答し、拒絶・条件付き受理には60日以内に不服申立委員会(45ディナール)、その決定には60日以内に裁判所に不服を申し立てます。受理された出願は商工省のウェブサイトで公開され、異議は公開日から60日以内(延長不可、95ディナール)に申し立て、出願人は60日以内に答弁します。異議の決定への不服は30日以内に裁判所に申し立てます。クウェートの商標はWIPOのGlobal Brand Databaseに収録されていないため、公開の監視は現地代理人のウォッチングが必要です。
ローマ字、日本語(漢字・かな)、図形のいずれもそのまま出願できますが、外国語の商標には公認翻訳者によるアラビア語訳(意味)と発音の説明を添えなければなりません。登録はその表記にしか及ばないため、現地の小売店や広告で使われるアラビア語の音訳表記は別の商標として出願するのが安全で、主力ブランドはローマ字とアラビア語の2件で保護するのが一般的です。出願人の国籍と異なる国名・都市名を含む商標は審査で拒絶されることがあり、酒類(第32類のビールと第33類)と豚肉を含む指定は認められません。
必要です。クウェートに居住しない出願人は登録された代理人または法律事務所を通じて出願し、委任状は公証人の認証、日本の外務省の公印確認、駐日クウェート大使館の領事認証(クウェートはハーグ条約未加盟のためアポスティーユは使えません)を経て、2026年9月からはクウェート外務省での再認証も求められ、アラビア語訳を付して出願から90日以内に提出します。営業の証明として登記事項証明書(認証付き写しとアラビア語訳)も必要です。2025年11月2日施行の法令第147号により、委任状の公証は最長5年の有効期間を明記しなければならず、期間の定めのない既存の委任状は2027年11月1日まで有効です。委任状は複数の出願・更新・記録に使い回せます。
存続期間は出願日から10年で、同一の期間で何度でも更新できます。更新は満了前1年以内に申請し(更新265ディナール+公告45ディナール)、満了後6か月の猶予期間は割増(310+45ディナール)で更新できます。更新時に使用の証明は不要で、2018年10月からオンラインで申請できます。不使用取消は、登録商標が連続5年間クウェート市場で実際に使用されていない場合に利害関係人が裁判所に請求し、輸入制限など所有者の管理を超える事由による不使用は取消の理由になりません。現地事務所の資料では区分内の1品目の使用で区分全体の使用と認められる運用で、ライセンシーの使用も所有者の使用とみなされます。善意で登録し5年間争いなく使用した商標は争えなくなり、先使用者の取消請求は登録日から5年以内です。
まず商工省の商業監督局(オンライン苦情窓口 trademark.moci.gov.kw)に、登録証、模倣品のサンプルまたは写真、購入の領収書、販売者の所在を添えて苦情を申し立てます。商業監督局は内務省と立入検査を行って模倣品を押収し、店舗を閉鎖し、押収品は犯罪証拠部門で鑑定されて検察に送致されます。2024年6月には倉庫から62万3,000点、2026年7月には約11,000点が押収されています。裁判所には仮処分(差押え、侵害の記録)、損害賠償、没収・廃棄、判決の公告を請求でき、偽造・模倣には1か月以上3年以下の拘禁刑または5,000〜100万サウジ・リヤル相当の罰金が科されます。税関では統一法第38条に基づいて通関停止を申請でき、関税総局の知的財産権ユニットが職権で疑わしい貨物を差し止めて商工省を通じて権利者に照会する運用がありますが、正式な録記制度の有無と費用は資料が分かれており、登録後に代理人を通じて税関に真正品の識別情報と連絡先を提供しておくことをお勧めします。
出願中であれば公開日から60日以内に、先使用(統一法第7条)、著名商標(第3条第13・14号、第4条)、誤認(第9号)、悪意を根拠に異議を申し立てます。登録済みの場合は裁判所に取消を請求します。統一法第22条は不当に行われた登録の取消を裁判所に請求できると定め、第7条は先使用者の取消請求を登録日から5年以内に限っていますが、悪意の登録にはこの制限は適用されません。日本で著名な商標であれば第4条の著名商標として保護を主張でき、著名性は宣伝による認知度、登録・使用の期間、登録・周知の国の数、商標の価値で判断されます。クウェートでは商業代理店法が代理店を保護するため、訴訟と並行して代理店契約の終了・商標の譲渡を交渉し、譲渡が合意できれば移転の記録(45ディナール+公告25ディナール)で名義を回復するのが実務的です。無効・取消の訴訟は12〜18か月を要するため、代理店契約の段階で商標の帰属を明記し、自社名義で先に登録しておくことが最も確実な予防策です。
クウェートの商標制度は、GCC統一商標法(2015年法律第13号で承認)と2015年大臣決定第500号の施行規則(2015年12月28日施行)を根拠に、商工省商標・特許局が絶対的理由と相対的理由を審査する登録主義・先願主義の制度で、GCCで最初に統一法を適用し、2018年の完全電子出願、2023年の公式調査、ONE MOCIポータル、苦情窓口と運用の基盤が整っています。出願から90日以内の審査、商工省ウェブサイトでの公開から60日の異議、出願日から10年の存続期間と6か月の猶予、5年の不使用取消、裁判所による取消、TRIPS協定に沿った保全措置・損害賠償・刑事罰・税関差止めが備わり、2025年には出願13,351件、登録10,518件、6万件を超える手続が処理され、商工省の摘発と裁判例も報じられています。
他方、GCCで唯一マドプロが使えないこと、1区分310ディナール(約16万円)で多区分出願ができないこと、領事認証とクウェート外務省の再認証を要する委任状と5年の有効期間、アラビア語の手続言語と翻訳・発音の要件、所定リストからの商品選択、30日・60日・90日の延長できない期限、無効・不使用取消が裁判所の手続に限られること、税関録記の公式情報の不足、施行規則の原文が公開されていないことが、この国で実務を行う際の注意点です。日本企業としては、GCC6か国を一体で設計してクウェートだけ直接出願を組み込み、認証書類を出願前に整え、アラビア語表記を別途押さえ、公報監視と60日の異議、5年単位の使用証拠の保全、代理店契約での商標の帰属の明記、商工省の苦情窓口と税関を組み合わせた執行までを一連の運用として整えることが重要です。
GCC諸国の制度はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、バーレーンの各記事を、各国の商標制度は世界の商標制度ガイドをご覧ください。
GCC6か国の出願設計とクウェートの直接出願、アラビア語表記の設計、所定リストに沿った指定商品の作成、領事認証・外務省再認証付き委任状と営業証明の手配、登録代理人の選定、先行商標調査、公開の監視と異議申立て、著名性の立証、譲渡・ライセンスの記録、更新・不使用対策、商工省の苦情窓口・税関・裁判所での権利行使まで、クウェートでのブランド保護を一貫してサポートします。サウジアラビア・UAE・カタール・バーレーン・オマーンとの組合せもご提案します。
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年11月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。統一商標法の条文番号はジェトロが公開する英訳と日本特許庁が公開する日本語訳に、クウェートの施行規則(2015年大臣決定第500号)の内容は原文が公開されていないため現地事務所の解説に、手数料は商工省の2025年年次報告書の件数と収入からの算出値によります。
※本記事は2026年11月時点の法令・料金・統計に基づく一般的な解説であり、個別の案件に関する法的助言ではありません。統一商標法と施行規則の正文はアラビア語で、本記事は英訳と日本語訳によっています。クウェートの施行規則(2015年大臣決定第500号)の原文と手数料表は公開されておらず、本記事の手数料は商工省の2025年年次報告書の件数と収入から算出した値です。ニース分類の版、音・匂い商標の受付、ライセンスの記録、失効商標の再登録制限、税関の録記制度の有無と費用、委任状の認証要件の運用、異議の審理機関については公開資料の記載が食い違っており、本文で指摘しています。実際の出願・権利行使にあたっては、最新の法令と商工省の運用を現地代理人に確認してください。