広告文をAIに書かせる。施策の成果をツールで測る。見込み客をスコアリングして配信先を絞る——マーケターの日常業務そのものに見えるこれらの仕組みが、実は日本で特許として登録されています。本記事では、広告・効果測定・MA(マーケティングオートメーション)などの分野で実際に登録された特許15件を、弁理士が特許庁の公報で請求項の原文まで確認したうえで解説します。
「マーケティングの手法なんて特許にならないでしょう」——そう思われている方にこそ読んでいただきたい内容です。読み終わる頃には、自社のマーケティングツールのどこが権利化でき、競合の特許のどこに注意すべきかが見えてくるはずです。
💡 この記事の範囲:本記事は「マーケティングの手法・ツールそのものの特許」を扱います。特許情報を市場分析や競合調査に活用する方法(いわゆるIPランドスケープ・特許マーケティング)をお探しの場合は、テーマが異なりますのでご注意ください。
目次
まず、今回検証した15件の全体像をご覧ください。いずれも特許庁の公報(J-PlatPat)または特許データベースの実ページで、書誌と請求項を直接確認したものです。
| 分野 | 特許番号 | 権利者 | 守っている仕組み |
|---|---|---|---|
| 広告文のAI生成 | 特許7365267 | 東京工業大学+サイバーエージェント | 生成→効果推定→再生成のループ |
| 施策の実績管理 | 特許7627002 | イルグルム | 施策条件と成果をAPI連携で蓄積 |
| 紙DM×Webの効果測定 | 特許6632046 | グーフ | 相乗りDMのコードとLP計測 |
| 広告効果の予測 | 特許7668803 | NTTドコモ | 複数画像の並び順から効果を予測 |
| 配信対象の選定 | 特許7397252 | 電通 | テレビ視聴・オフライン接触も学習に使用 |
| 目標からの配信先決定 | 特許7620596 | 楽天グループ | ROI・CVR・予算の目標から逆算 |
| チラシ×デジタルの予算配分 | 特許7247311 | オリコミサービス | 来店人数から広告費配分を機械学習で予測 |
| インフルエンサーマッチング | 特許7458551 | レヴコーポレーション(韓国) | 予想効果と実効果の差で学習するAI推薦 |
| 口コミの信頼度 | 特許7821616 | LINEヤフー | 会話・通話で推奨した人の信頼度を算出 |
| MAシナリオ実行 | 特許6575233 | 沖電気工業 | 保有する顧客情報を最小化するMA |
| リードスコアリング | 特許6882793 | ビジネスインテリジェンス | 名刺から営業相性・受注確度を算出 |
| 名刺×SNSの評価 | 特許6975472 | ビジネスインテリジェンス | コンテンツの閲覧箇所に応じた評価指標 |
| データ提供の対価 | 特許7754965 | ロイヤリティマーケティング | 同意を条件にした健康データ×ポイント付与 |
| 購買からの状態推定 | 特許6916367 | 博報堂DYホールディングス | 購買履歴から健康状態を推定 |
| 匿名訪問者の企業特定 | JP7105356 | 6センス インサイツ(米国) | IPアドレスを企業アカウントに紐づけ |
広告代理店、通信キャリア、EC、印刷、共通ポイント、そして海外SaaS——プレイヤーの顔ぶれの広さにも注目してください。マーケティング領域の特許は、もはや一部のテック企業だけの話ではありません。
この誤解には、半分の真実が含まれています。日本の特許法上、ビジネスの方法やマーケティングのアイデアそれ自体は「発明」に該当せず、特許になりません(特許法2条1項の「自然法則を利用した技術的思想の創作」に当たらないため)。「シニア層には平日午前にDMを送ると反応が良い」という知見や、「サブスクの解約防止には解約画面で特典を出す」という施策アイデアは、どれだけ独創的でも特許の対象外です。
しかし、そのアイデアがICT(情報通信技術)を使った具体的な仕組みとして実現されている場合は話が変わります。どんなデータを取得し、どう処理し、何を出力するか——この「仕組み」のレベルまで具体化されていれば、マーケティング分野の発明も特許の対象になります。冒頭の15件は、すべてこの形で登録に至ったものです。
実務Tips(境界線の見極め):「アイデア」と「仕組み」の境界線は、ビジネスモデル特許に共通する最重要論点です。詳しくは「ビジネスモデルは特許にならない」は半分ホントで掘り下げています。フィンテック分野の登録例はフィンテックのビジネスモデル特許 登録事例5選をご覧ください。
それでは、分野ごとに実際の登録特許を見ていきます。まずはマーケターに最も身近な「広告文のAI生成」からです。
特許第7365267号「広告文自動作成システム」は、東京工業大学とサイバーエージェントの共同出願です(出願2020年3月2日、登録2023年10月19日)。請求項1を原文のまま引用します。
特許第7365267号 特許請求の範囲 請求項1(原文引用)
広告の文章を自動的に作成する広告文自動作成システムであって、広告の基本となる文章と当該広告に対応するキーワードとに基づいて、複数の広告の文章を生成する文章生成手段と、前記文章生成手段が生成した前記複数の広告の文章の広告効果を推定する広告効果推定手段と、前記広告効果推定手段が推定した前記広告効果に基づいて、前記複数の広告の文章から新規の広告の文章を再生成する再生成手段とを備え、前記再生成手段は、前記複数の広告に対する強化学習による損失と前記複数の広告の文章の最尤推定による損失とに基づいて、前記複数の広告の文章から新規の広告の文章を再生成することを特徴とする広告文自動作成システム。
注目すべきは、この請求項が「AIが広告文を作る」という抽象的なアイデアで終わっていないことです。守られているのは次の一連の流れです。
③の下線部が決定的です。学習方法の中身まで請求項に書き込むことで、「AIで広告文を作る」という誰でも思いつく構成から一歩踏み込み、具体的な技術として登録に至っています。産学共同研究の成果を、わずか2項というコンパクトな請求項で権利化した例としても参考になります。
弁理士の視点:生成AIを使ったマーケティングツールを開発している企業から「ChatGPTを使っているだけだから特許は無理では」というご相談をよく受けます。この特許が示すとおり、鍵はLLMそのものではなく、生成と評価をどうつないだかにあります。プロンプトの組み立て方、評価指標の設計、フィードバックループの構造——そこに独自性があれば、権利化の余地は十分にあります。
「マーケティング」という言葉が請求項に正面から書かれた特許があります。広告効果測定ツール「アドエビス」で知られる株式会社イルグルムの特許第7627002号です(出願2024年3月4日、登録2025年1月28日、請求項12項)。
特許第7627002号 特許請求の範囲 請求項1(原文引用)
過去に行ったマーケティング施策の実施条件を示す実施条件情報を取得する実施条件情報取得部と、前記マーケティング施策の実施により得た成果を計測する外部ツールとAPIを介して連携し、前記外部ツールが計測した前記成果を成果情報として取得する成果情報取得部と、前記成果情報を表す数値の評価指標を受け付ける評価指標受付部と、前記成果情報を、前記評価指標と対応つけるとともに、前記実施条件情報と対応付けて前記マーケティング施策の実績情報として記憶する記憶制御部と、を備えることを特徴とする情報処理装置。
この請求項の核心は、「施策の実施条件」と「外部ツールがAPI経由で計測した成果」を、評価指標で紐づけて実績として蓄積するという構造です。効果測定ツール単体ではなく、ツール間の連携のかたちを権利化している点が実務的に重要です。従属項では、複数ツールからの成果情報の統合(請求項3)、成果グラフへの出来事メモの表示(請求項5)、蓄積した実績からの機械学習・重回帰分析による未実施施策の成果予測(請求項6・8・9)まで押さえています。
さらに注目したいのが権利化のスピードです。この特許は出願からわずか10日で審査請求され、約11か月で登録。しかも公開公報が発行される前に登録に至っています(公報種別B1)。つまり競合他社から見ると、出願の存在を知る手段がないまま、ある日突然、登録済みの権利として現れたことになります。
守っている仕組み:紙の印刷メディア(DM)に、配送先ごとにパーソナライズしたコードを印刷。所定の「相乗り条件」を満たす複数の事業者のランディングページを同じ印刷物に載せ、各ページのタグで計測したアクセス結果を互いの事業者に提供し合うという構造です。
権利化の経過:出願2019年9月25日→翌日に審査請求→早期審査を経て同年12月20日に登録。出願から約3か月という、きわめて短期間での権利化です。こちらも公開前登録(B1)でした。(出典:特許第6632046号)
「紙は効果が測れない」という長年の課題に対する答えを、複数事業者の相乗りという事業モデルごと権利化した例です。オフラインとオンラインの接続は、後述するとおりこの領域の特許に繰り返し現れるパターンです。
「誰に広告を届けるか」を決める仕組みにも、各社各様の登録特許があります。3件を紹介します。
守っている仕組み:ユーザ特徴とマーケティング特徴を学習モデルに入力してユーザごとの効果スコアを推定し、ユーザグループを生成。そのうえで「マーケティング指標の目標値」——予算の目標値、ROI(投資対効果)の目標値、CVR(コンバージョン率)の目標値——に基づいて配信先グループを決定します。
注目点:ROI・CVR・予算というマーケターの実務用語がそのまま請求項に明記されています(請求項13項、登録2025年1月15日)。「目標から逆算して配信を決める」という運用の発想が、そのまま権利の形になった例です。(出典:特許第7620596号)
守っている仕組み:第1の利用者群の属性・趣味嗜好・広告への接触情報を説明変数、商品への行動を目的変数として機械学習し、第2の利用者群の「行動する可能性」を指標値として出力、それに基づいて配信します。ここまでは定石ですが、広告への接触情報に「オフライン広告への接触」や「テレビジョンでの広告の視聴」を含むと明記されている点がこの特許の個性です。
注目点:テレビと屋外広告の接触データをデジタル配信の学習に取り込む——総合広告会社ならではのデータ資産を反映した設計です(請求項9項、登録2023年12月5日)。(出典:特許第7397252号)
守っている仕組み:店舗への来店人数・デモグラフィックデータ・各媒体への広告費を教師データとして機械学習し、「電子的な広告媒体」と「非電子的な広告媒体」(=チラシなど)への広告費の配分を、目標来店人数から逆算して予測します。
注目点:折込チラシの会社が、チラシとデジタルの予算配分という自社の顧客が毎月悩む問いをそのまま発明にしています。早期審査を利用し、出願2021年12月→登録2023年3月(請求項19項)。(出典:特許第7247311号)
この3件と、複数画像広告の「画像の並び順」から効果を予測するNTTドコモの特許第7668803号(画像数が足りない場合にダミー画像を追加して入力数を揃える、という実装上の工夫まで請求項に記載。請求項2では畳み込みLSTMを特定)を合わせると、「配信の最適化」という一つの業務の中に、各社が異なる切り口で権利を取り合っている様子が見えてきます。
守っている仕組み:インフルエンサーの投稿をプラットフォーム別にクロールして活動情報を収集し、広告主に適合した推薦リストをAIで生成します。核心は、予想広告効果と実際の広告効果の差を損失関数として学習するニューラルネットワークを構成要件に据えた点。広告主とインフルエンサーをそれぞれグループ分類してマッチングし、効果が良かった組み合わせから学習を重ねます。
注目点:韓国出願を基礎にPCT経由で日本に入り、早期審査を使って登録(2024年3月21日、請求項3項)。外国企業が日本のインフルエンサーマーケティング市場を権利で押さえに来ている実例です。(出典:特許第7458551号)
守っている仕組み:商品を購入した人(第1利用者)に対して、購入前に「直接の通信、通話、または会話によって」商品を推奨した人(第2利用者)を特定し、その人の「信頼度」を機械学習モデルで算出します。信頼度の算出には、その人が商品を持っているか、商品への理解度なども使われます(従属項)。
注目点:「誰の口コミが実際に購買を動かしたのか」を数値化する仕組みで、オフラインの会話まで射程に入れている点が特徴的です(請求項10項、登録2026年2月18日)。(出典:特許第7821616号)
守っている仕組み:シナリオに基づいて顧客の育成状況を判断しアクションを実行する、いわゆるMAの基本構造です。特徴は、顧客リストをシナリオ開始時とアクション実行のたびに外部サーバから取得し、そのリストには外部サーバより少ない種類の顧客情報しか含めないこと。さらに従属項では、アクション実行のたびに使用した顧客情報を削除する構成まで特定しています。
注目点:MAツールが抱え込む個人情報を最小化する設計そのものを権利化しています。個人情報保護への配慮が「制約」ではなく「発明の中身」になった好例です(請求項6項、登録2019年8月30日)。(出典:特許第6575233号)
守っている仕組み:前者は、名刺情報から企業・担当者の関連情報を抽出し、人材価値・企業価値の判定を経て「営業相性、受注確度及び営業行動の優先度」という評価指標を算出する方法(請求項24項)。後者は、名刺情報と紐づいたSNSでコンテンツを共有し、閲覧箇所に応じて閲覧者の評価指標を算出するシステムです(請求項22項)。
注目点:BtoB営業のリードスコアリングを正面から権利化した2件で、いずれも出願と同日に審査請求し早期審査で登録。「受注確度」という営業の言葉が請求項に現れる点は、楽天のROI・CVRと同じ現象です。(出典:特許第6882793号・第6975472号)
マーケティングデータの取得と利用が厳格化するなかで、「同意」と「対価」の設計そのものを権利化する動きが出てきています。
守っている仕組み:ユーザに健康関連情報の提供元と、ポイント付与先を選択させ、健康関連情報の利用に同意するか否かの「制約情報」を登録させます。そして同意された健康関連情報の対価としてボーナスポイントを算出する——データ提供への同意を構成要件に組み込み、対価をポイントで支払うモデルです(請求項5項、登録2025年10月6日)。(出典:特許第7754965号)
守っている仕組み:健康データと購買データの両方を持つ対象者群から、購買履歴によって健康状態を推定するモデルを構築します。ポイントは購買区分ごとに別々の推定モデルを作るという設計。出願と同日に審査請求し、早期審査を経て約7.5か月で登録、こちらも公開前登録(B1)です(請求項22項、登録2021年7月19日)。(出典:特許第6916367号)
15件を並べて読むと、マーケティング分野で特許を取るための共通パターンがはっきり見えてきます。
15件のうち10件以上がAI・機械学習を含みますが、「AIで最適化する」という書き方で登録された例は一つもありません。サイバーエージェントは損失関数の構成を、レヴは予想効果と実効果の差を学習に使うことを、NTTドコモはダミー画像で入力数を揃える工夫を、博報堂DYは購買区分ごとにモデルを分けることを、それぞれ請求項に書き込んでいます。審査を通す鍵は、学習と計算の中身の具体性です。
15件中7件が早期審査を利用し、出願と同日〜翌日に審査請求した例が4件ありました。最短はグーフの約3か月です。マーケティングツールはプロダクトの陳腐化が速いため、権利化のスピード自体が戦略になっていると読めます。早期審査の要件や使い方はスーパー早期審査の活用事例で解説しています。
さらに、イルグルム・グーフ・博報堂DYの3件を含む4件が「公開前登録」(B1)でした。通常、特許出願は1年6か月後に公開されますが、審査がそれより速く進むと、公開公報が一度も出ないまま登録公報だけが現れます。競合の動きを公開公報の監視だけで追っている企業は、この型の権利をすべて見逃すことになります。実は米国でも同じ現象があり、Notionの特許戦略の分析で詳しく扱っています。
紙DMとLP(グーフ)、テレビ視聴とデジタル配信(電通)、チラシとデジタルの予算配分(オリコミサービス)、対面の会話と購買(LINEヤフー)——計測が難しいとされてきたオフラインとオンラインの接続点に、権利が集中的に張られています。ここは技術的な工夫の余地が大きく、先行技術も少ない領域だからです。自社がこの接続点で何か工夫をしているなら、権利化を検討する価値があります。
ここまでは「取る側」の話でしたが、逆の視点も欠かせません。自社が開発・提供しているマーケティングツールが、他社の登録特許の権利範囲に入っていないか——いわゆるFTO(Freedom to Operate)の問題です。
象徴的なのが、米国のABMベンダー6センス インサイツの日本特許JP7105356です。サイトを訪れた匿名ユーザのIPアドレスを、複数ソースのイベントを凝集し統計から信頼値を計算することで企業アカウントに紐づける方法——BtoBマーケティングで広く使われる「匿名訪問者の企業特定」の中核技術が、日本でも権利化されています。韓国レヴ社のインフルエンサーマッチング特許も同様で、海外プレイヤーが日本市場を権利で押さえに来ているのが現状です。
注意:特許権の侵害は「知らなかった」では免責されません。もっとも、機能が似ているだけでは侵害にはならず、請求項に書かれた構成要件をすべて満たす場合に限って問題になります。気になる特許を見つけたら、慌てて機能を落とす前に、請求項と自社実装の対比を専門家に依頼してください。1つでも要件を外れていれば、原則として侵害は成立しません。
実務Tips(競合ウォッチの設計):前述のとおり、この分野は公開前登録が珍しくありません。競合の出願動向を追うなら、公開公報だけでなく登録公報も定期的に確認する設計にしておくこと。また、自社ツールのどの機能が特許の対象になり得るかを機能単位で棚卸しする方法はSaaSプロダクトの機能マップが参考になります。
マーケティング分野の発明は、機械や化学の発明と違って「モノ」がありません。データの流れと処理の組み合わせをどう切り取るかで権利の質が決まるため、相談する弁理士選びには次の観点をおすすめします。
相談のタイミングは「リリース前」が原則です。機能を公開してしまうと、その内容は原則として新規性を失い、後から特許にすることはできなくなります。出願から権利化までの流れと所要期間はシステム・ソフトウェア特許 出願の流れ完全ガイドにまとめています。
Q. マーケティングの手法は特許になりますか?
A. 手法やアイデアそれ自体は特許になりませんが、ICT(情報通信技術)を使った具体的な仕組みとして実現されていれば特許の対象になります。実際に、広告文のAI生成、効果測定、MA、リードスコアリングなど、マーケティングの主要業務の広い範囲で日本の登録特許が存在します。本記事ではその15件を請求項まで確認して紹介しています。
Q. キャンペーンの企画やクリエイティブのアイデアも特許で守れますか?
A. 企画・アイデアの段階では特許の対象になりません。「どんなデータを取得し、どう処理し、何を出力するか」という仕組みのレベルまで具体化されていることが必要です。なお、クリエイティブの表現そのものは著作権、ネーミングやロゴは商標、画面デザインは意匠と、守る手段が異なります。
Q. 自社でマーケティングツールを開発しています。何から始めればよいですか?
A. まず、ツールの機能を洗い出して「独自の工夫がある処理」を特定することから始めてください。特にAIを使う機能は、学習方法や評価指標の設計に独自性があれば権利化の候補になります。重要なのはタイミングで、機能をリリース・公表する前に相談するのが原則です。公表後は原則として新規性を失い、特許にできなくなります。
Q. 競合のマーケティングツールが特許を取ったようです。自社ツールは大丈夫でしょうか?
A. 機能が似ているだけでは侵害にはなりません。特許権の効力は、請求項に書かれた構成要件をすべて満たす実施にのみ及びます。まず該当特許の請求項を取り寄せ、自社実装との対比(クリアランス調査)を行うのが実務的な対応です。なお、この分野は公開前に登録される特許が珍しくないため、競合ウォッチは登録公報まで含めて設計することをおすすめします。
Q. マーケティング分野に詳しい弁理士はどう探せばよいですか?
A. ソフトウェア・ビジネスモデル特許の出願実績、マーケティング業務の用語が通じるか、早期審査の活用経験、そして特許以外の選択肢(ノウハウ秘匿・商標・意匠)も含めて提案できるか、の4点を確認することをおすすめします。多くの事務所は初回相談を受け付けているので、自社の発明の説明にどれだけ的確な質問が返ってくるかで判断できます。
「マーケティングは特許にならない」は、もはや過去の常識です。広告文のAI生成から効果測定、配信最適化、MA、データの対価設計まで、マーケティングの主要業務のほぼ全域で登録特許が存在し、しかもその権利化は速く、公開前に登録される例も珍しくありません。国内勢だけでなく、米国・韓国のプレイヤーも日本で権利を取得済みです。
マーケティングツールを開発・提供する企業にとって、これは「攻め」と「守り」の両方の話です。自社の工夫はリリース前に権利化を検討する。競合の権利は登録公報まで含めてウォッチする。この2つを回すだけで、知財リスクの大半はコントロールできます。
知的財産事務所エボリクスへのご相談
エボリクス(evorix.jp)では、マーケティングツール・広告テック・MA/CRM分野の特許出願、競合特許のクリアランス調査、早期審査を活用したスピード権利化のご相談を承っております。「自社ツールのどこが特許になるか」の棚卸しから対応いたします。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
本記事の注意事項:本記事は2026年7月時点の公開特許情報(特許庁J-PlatPat・特許データベース)に基づく一般的な解説です。引用した請求項は公報の記載に基づきますが、権利範囲は最終的に公報の正本と出願経過により定まります。各特許の「守っている仕組み」の説明は理解を助けるための要約であり、権利範囲を画定するものではありません。特許とサービス・製品名との対応付けは、公報に製品名の記載がないため推測を含みます。侵害の成否について本記事は何ら断定するものではなく、個別事案の結論を保証するものでもありません。事業判断(FTO・出願戦略等)にあたっては専門家の個別検討をご利用ください。
AUTHOR / 執筆者
杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)
知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士
特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。