フィリピンで特許を出願・権利化・権利行使する実務担当者のために、1997年知的財産法(Republic Act No. 8293/IP Code of the Philippines)を中核に、IPOPHL(フィリピン知的財産庁)の運用、政府手数料、PCT国内移行、3種類の保護制度(特許・実用新案・意匠特許)、特別商業裁判所での権利行使まで、英語公用語のASEAN6位経済における特許実務の全体像を体系的に整理します。日本企業にとって言語負担の少ないASEAN市場として戦略的価値が高い国です。
この記事のポイント
PHILIPPINES PATENT
弁理士による、英語公用語ASEAN市場フィリピンの特許制度・実務完全ガイド。IPOPHL出願から3種類の保護制度、PPH戦略、特別商業裁判所での権利行使まで12セクションで体系的に解説します。
フィリピン特許実務は、RA 8293(1997年知的財産法)を中核に、IPOPHL規則・通達と審査ガイドラインが出願・審査・紛争を規律する成文法体系です。米国法に強く影響を受けたコモンロー型構造で、「特許・実用新案・意匠」の3種類を1つの法律で扱う独自構造です。
フィリピン特許実務の4つのポイント
フィリピン特許制度の「一次法」はRepublic Act No. 8293(IP Code of the Philippines, 1997年)であり、2008年改正を経て現行体制となりました。特許部分はSection 21以降に規定。発明の定義(§21)、特許要件(§§23-26)、特許対象除外(§22)、出願手続(§§40-44)、特許権の効力(§71)、強制実施権(§93-100)等が中核です。
特許審査・登録機能は、IPOPHL Bureau of Patents(BOP)が担当します。本部はマカティ・タギッグのBGC。電子出願システム(eDocFile)を整備し、英語による手続きが標準です。
| 機関 | 管轄・特徴 |
|---|---|
| IPOPHL BLA | 特許異議・取消・行政侵害事件 |
| IPOPHL Director General | BLA決定の控訴審 |
| 特別商業裁判所 | 特許侵害民事・刑事訴訟の専属管轄 |
| 控訴裁判所→最高裁 | 上訴審 |
| 項目 | 特許(Invention Patent) | 実用新案(Utility Model) | 意匠(Design Patent) |
|---|---|---|---|
| 保護対象 | 技術的発明 | 小発明 | 意匠(デザイン) |
| 進歩性要件 | 必要 | 不要(新規性のみ) | 独創性必要 |
| 実体審査 | あり | なし(方式のみ) | 方式のみ |
| 存続期間 | 出願日から20年 | 出願日から7年 | 5年×2回更新で最大15年 |
| 権利化期間 | 3〜5年 | 1〜2年 | 1〜2年 |
出願方式は「直接出願」「パリ条約優先(12か月)」「PCT国内移行(30か月)」の3択。明細書は英語でそのまま提出可能(翻訳不要)が日本企業にとって最大のメリット。
必須書類
審査請求期限の短さに注意:フィリピンは出願公開から6か月以内と他国(日本3年、タイ5年、シンガポール3年等)より大幅に短い期限。出願公開タイミングからの期限管理が必須です。
| 項目 | Small Entity | Big Entity |
|---|---|---|
| 出願料 | PHP 1,800 | PHP 3,600 |
| 審査請求料 | PHP 4,800 | PHP 9,600 |
| 登録料 | PHP 2,400 | PHP 4,800 |
| 年金(5年目) | PHP 1,200 | PHP 2,400 |
| 年金(15年目) | PHP 7,200 | PHP 14,400 |
| 年金(20年目) | PHP 12,000 | PHP 24,000 |
3つのフォーラム選択
特許侵害は民事・刑事の両方で対応可能。無効審判はBLAに直接申立。
フィリピンは2001年8月にPCTに加盟し、優先日から30か月以内に国内移行可能。PCT国際特許出願の活用が一般的です。
PPH活用メリット:JPO許可クレームをベースにIPOPHLで早期審査。通常3-5年→1-2年に短縮可能。申請費用無料。フィリピンは英語公用語のため、言語的調整不要でPPH効率が高い。
フィリピンもASPEC参加国。シンガポール・マレーシア・タイ等での許可結果を活用した審査効率化が可能です。
特許権の存続期間は出願日から20年。年金は5年目以降毎年納付(4年目までは登録料に含まれる)。期限超過は6か月のグレースピリオドあり。
| 項目 | 日本 | フィリピン |
|---|---|---|
| 出願言語 | 日本語 | 英語のみ |
| 実用新案制度 | 10年 | 7年(無審査) |
| 審査請求期限 | 3年(出願日から) | 6か月(公開日から) |
| PCT国内移行 | 30か月 | 30か月(同一) |
| 司法構造 | 特許庁→知財高裁 | BLA→特別商業裁判所 |
フィリピン特許制度は、RA 8293を中核とした3種類の保護制度と、英語公用語による手続き効率の高さが日本企業にとって戦略的価値の高い市場です。JPO-IPOPHL PPH活用とBLA・特別商業裁判所での効率的な権利行使を組み合わせることが成功の鍵となります。PCT国際特許出願と特許出願サービスもあわせてご覧ください。
知的財産事務所エボリクスは、フィリピンを含むASEAN主要国への特許出願・権利行使を幅広くサポートしています。3種類の保護制度の選択、PCT直接ルート・PPH活用、特別商業裁判所での侵害対応まで、現地代理人と連携した実務経験豊富な弁理士がご対応します。
※本記事は2026年4月時点の上記一次資料・公式情報を基に、一般的な情報提供を目的として作成されています。法令は随時改正されるため、最新の情報については一次資料および専門家への確認を推奨します。個別案件の具体的判断には、現地代理人を含む専門家へのご相談を推奨します。
AUTHOR / 執筆者
杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)
知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士
特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。