PCT国際特許出願
PCT国際特許出願の概要
PCT出願(国際特許出願)とは?
PCT国際出願とは、特許協力条約(Patent Cooperation Treaty)に基づき、日本の特許庁を受理官庁として一つの国際出願を行うことにより、PCT加盟国すべてに同時に出願したのと同等の効果を得ることができる特許の国際出願制度です。
PCT出願では、まず「国際段階」で出願・国際調査・国際予備審査が行われ、その後「国内段階」で各国の特許庁に移行して審査を受けます。国際段階で得られる国際調査報告(ISR)や国際予備審査報告を活用し、各国への移行前に特許性を見極めることができるため、コストと時間の効率化が可能です。
直接出願(パリルート)とは?
直接出願(パリルート)とは、パリ条約に基づく優先権を主張して、各国の特許庁に個別に特許出願を行う方法です。日本出願から12ヶ月以内に各国に出願する必要があり、各国の言語・書式で出願書類を準備し、現地代理人を選任します。
出願先が1〜2カ国に限定されている場合や、早期に権利化を進めたい場合にはパリルートが有利なケースもあります。
PCTルートとパリルートの比較フロー
パリルート:日本出願 → 12ヶ月以内に各国へ直接出願 → 各国で審査
PCTルート:日本出願 → 12ヶ月以内にPCT出願 → 国際調査(ISR)→ 30/31ヶ月以内に各国移行 → 各国で審査
PCT加盟国一覧
特許協力条約(PCT)の加盟国は現在157カ国に達しています。世界のほとんどの主要市場をカバーしており、一つのPCT出願で広範な国際的保護の基盤を築くことができます。
なお、台湾はPCT加盟国ではないため、台湾で特許を取得するには直接出願が必要です。
主要な加盟国・地域
| アジア | 欧州 | 北米・中南米 | その他 |
|---|---|---|---|
| 日本 中国 韓国 インド シンガポール タイ ベトナム インドネシア マレーシア フィリピン |
ドイツ フランス イギリス イタリア スペイン オランダ スウェーデン スイス EP(欧州特許庁) |
アメリカ カナダ メキシコ ブラジル チリ コロンビア ペルー アルゼンチン |
オーストラリア ニュージーランド イスラエル サウジアラビア UAE 南アフリカ エジプト ナイジェリア |
※上記は主要国の一部です。全157カ国の詳細はWIPOの公式サイトをご参照ください。
パリルート(直接出願)とPCT出願の対比
| 比較項目 | パリルート(直接出願) | PCTルート(国際出願) |
|---|---|---|
| 出願期限 | 日本出願から12ヶ月以内 | 日本出願から12ヶ月以内にPCT出願、各国移行は30/31ヶ月以内 |
| 出願書類 | 各国の言語・書式で個別に作成 | 日本語で一つの出願書類を作成(翻訳は国内移行時) |
| 費用タイミング | 出願時に各国の費用が一括発生 | 初期はPCT出願費用のみ。各国移行費用は最大30ヶ月後 |
| 特許性の事前評価 | 各国の審査結果を待つ必要あり | 国際調査報告(ISR)で特許性を事前評価可能 |
| 出願先の変更 | 出願後の追加・変更は不可 | 国内移行時まで出願国の選定を留保できる |
| 現地代理人 | 出願時に各国の現地代理人が必要 | 国内移行時に各国の現地代理人を選任 |
| 向いているケース | 出願国が1〜2カ国、早期権利化を重視 | 出願国が3カ国以上、コスト分散・戦略的判断を重視 |
PCT出願のメリットまとめ
- 判断時間の確保:各国移行まで最大30ヶ月の猶予があるため、ビジネス状況を見て出願国を決定可能
- コスト効率:初期段階の費用を抑え、特許性を確認してから各国に投資できる
- 国際調査報告(ISR)の活用:特許性に関する客観的な評価を各国審査に活用可能
- 出願書類の統一:日本語で出願できるため、初期の翻訳コストが不要
- 柔軟な戦略:国際予備審査で補正を行い、権利範囲を最適化してから各国移行可能
PCT出願の手続きの流れ
STEP 1:日本出願(基礎出願)
まず日本の特許庁に特許出願を行います。この日本出願が「基礎出願」となり、優先権の基準日が確定します。
STEP 2:PCT国際出願(優先日から12ヶ月以内)
基礎出願の出願日(優先日)から12ヶ月以内に、日本の特許庁を受理官庁としてPCT国際出願を行います。出願書類は日本語で作成可能です。
STEP 3:国際調査(ISR)
受理官庁が出願を受理すると、国際調査機関(日本の場合は特許庁)が先行技術の調査を行い、国際調査報告(ISR)と見解書を作成します。これにより、特許取得の可能性を事前に評価できます。
STEP 4:国際公開(優先日から18ヶ月)
優先日から18ヶ月経過後、出願内容がWIPOにより国際公開されます。
STEP 5:国際予備審査(任意)
必要に応じて国際予備審査を請求できます。補正を行って権利範囲を最適化し、国際予備審査報告(IPER)を取得することで、各国での審査を有利に進められます。
STEP 6:各国移行(国内段階、優先日から30/31ヶ月以内)
出願を希望する国・地域の特許庁に、翻訳文とともに国内移行手続きを行います。各国の審査を経て特許が付与されます。
PCT出願の費用目安
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 国際出願手数料(WIPO) | 約17万円〜(請求項数により変動) |
| 調査手数料 | 約7万円〜 |
| 送付手数料 | 約1万円 |
| 弁理士手数料(国際段階) | 約20万円〜40万円(明細書のボリュームにより変動) |
| 各国移行費用(1カ国あたり) | 約30万円〜80万円(翻訳+現地代理人費用含む) |
※上記は目安です。発明の内容・移行先の国により異なります。詳しくはお問い合わせください。