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🎨 ハーグ国際意匠出願
1つの手続で世界80カ国以上に意匠出願 ─ 現地代理人不要・コスト削減・最大100意匠を1出願で
目次
ハーグ国際意匠出願とは?
ハーグ国際意匠出願(ハーグ協定ジュネーブアクト)とは、WIPO(世界知的所有権機関)国際事務局を通じて、1つの手続で複数国に意匠出願ができる国際制度です。日本国特許庁を経由するか、WIPOに直接、E-filing(オンライン)で願書を提出することができます。
📌 ハーグ国際意匠出願の基本構造
- 1つの願書で世界80カ国以上を指定可能
- 1つの言語(英語・フランス語・スペイン語のいずれか)で出願完結
- 1つの手数料体系(基本料金 + 国別追加料金)
- 1出願で最大100意匠まで包含可能(同一クラス内)
- 現地代理人の選任が原則不要(オフィスアクション通知時を除く)
- 保護期間は最長25年(5年ごとの更新)
日本は2015年5月にハーグ協定ジュネーブアクトに加盟しました。日本企業がグローバルにデザイン保護を進める際に、最もコスト効率の良い意匠保護スキームです。
⚠️ 注意:台湾は対象外 台湾はハーグ協定ジュネーブアクトの締約国ではないため、ハーグ出願では指定できません。台湾には直接出願が必要です。
5つのメリットとデメリット
💰 1. コスト削減
現地代理人費用が原則不要のため、直接出願と比べ約50〜70%のコスト削減。多国出願ほど効果が高い。
⚡ 2. 手続簡素化
1つの言語・1つの願書・1つの手数料納付で完結。各国別の願書作成・翻訳・公証手続が不要。
📐 3. 1出願で最大100意匠
同じロカルノ分類内であれば、1出願に最大100意匠を含めることが可能。シリーズ製品・派生デザインの一括保護が実現。
🔄 4. 一括更新・管理
5年ごとの更新がWIPO一本で完結。事後指定(後追いで国を追加)・名義変更・住所変更も一括対応。
🚀 5. 早期公開の選択
公開時期を出願時に選択可能。即時公開・登録時公開・最大30ヶ月延期公開(秘匿)から選択でき、新製品リリース戦略と連動できる。
⚠️ デメリット・留意点
- 図面ルールの差異:各国で図面要件が異なるため、最も厳しい国(米国等)に合わせた図面が必要
- 実体審査の有無のばらつき:米国・韓国・日本等は実体審査あり、EU・OAPI等は方式のみで多様
- 新規性喪失の例外規定の差:日本は1年、欧州は12ヶ月、国によっては6ヶ月と短い
- 台湾・香港・マカオは対象外:直接出願が必要
- 拒絶通知時は現地代理人必須:通知を受けた国の代理人選任・応答費用が発生
直接出願との比較
| 項目 | ハーグ国際意匠出願 | 直接出願 |
|---|---|---|
| 願書作成 | 1言語(英語等)で1通 | 各国の言語で各国分作成 |
| 図面 | 統一された図面で出願(各国の最厳格基準を満たす設計が必要) | 国ごとに図面ルールに合わせて作成可能 |
| 現地代理人 | 原則不要(拒絶通知時のみ) | 国ごとに必須 |
| 手数料 | 基本料金 + 国別追加料金 | 国ごとに庁費用 + 代理人費用 |
| 1出願あたりの意匠数 | 最大100意匠(同一クラス) | 国ごとに制限あり(米国は1意匠/出願) |
| 所要期間 | 12〜18ヶ月で保護確定 | 国により6ヶ月〜3年 |
| 公開時期の選択 | 即時/登録時/最大30ヶ月延期から選択 | 国ごとの規定に従う |
| 更新手続 | WIPO一括(5年ごと、最長25年) | 国ごとに更新(保護期間も国別) |
| 対象国の制限 | 締約国のみ(台湾等は不可) | 全世界(締約国外も含む) |
| 推奨ケース | 3カ国以上 / シリーズ製品 / コスト重視 | 1〜2カ国 / 細かな図面調整必要 |
締約国リスト(80カ国以上)
2026年現在、世界80カ国以上がハーグ協定ジュネーブアクトに加盟しています。EUIPO(欧州連合知的財産庁)・OAPI(アフリカ知的所有権機関)等の地域官庁も対象に含まれます。
🌏 アジア
日本、韓国、シンガポール、ベトナム、ブルネイ、カンボジア(中国・台湾・香港・マカオは対象外)
🌍 欧州
欧州連合(EUIPO)27カ国一括、英国、スイス、ノルウェー、アイスランド、トルコ、ロシア、セルビア、ウクライナ等
🌎 北米・中南米
米国、カナダ、メキシコ、ベリーズ、スリナム、トリニダード・トバゴ等(ブラジル・チリは未加盟)
🌏 中東
イスラエル、シリア、オマーン、サウジアラビア、UAE等
🌍 アフリカ
エジプト、モロッコ、チュニジア、ガーナ、ナミビア、ボツワナ、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、OAPI(アフリカ知的所有権機関 17カ国一括)等
🌏 大洋州
サモア、(オーストラリア・ニュージーランドは未加盟 → 直接出願)
📌 最新の加盟動向:2024年以降、ベリーズ、チリ等が加盟検討中。最新の締約国リストはWIPO公式サイトでご確認ください。
ハーグ出願の手続フロー
事前調査・戦略立案
指定国の選定、新規性喪失の例外規定の確認、各国の図面要件の擦り合わせ。
図面の準備
最も厳しい指定国(米国・韓国等)の要件に合わせた高品質な図面を準備。実線/破線の使い分け、視覚的部分の特定。
WIPOへ国際出願
日本国特許庁経由(紙)またはE-filing(オンライン)で直接提出。約8割はE-filing利用。
WIPO による国際登録(約2〜4ヶ月)
方式審査後、国際登録簿に登録。各指定国官庁へ通報。
各指定国の審査(6〜12ヶ月)
実体審査国(米国・韓国・日本等)では実体審査が実施。拒絶理由通知時は現地代理人を選任して応答。
登録・保護効力確定
各指定国で保護効力が確定。5年ごとの更新で最長25年間維持可能。
出願費用の目安
ハーグ出願の費用はWIPO手数料(基本料金 + 国別追加料金)と当事務所の代理費用から構成されます。
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| WIPO 基本料金 | 397 CHF | 1意匠目(追加意匠は19 CHF/意匠) |
| 公開料 | 17 CHF/意匠 | 追加再現の場合 +150 CHF/意匠 |
| 国別追加料金(標準) | 42 CHF/国 | 標準個別料金を選択した国 |
| 国別追加料金(個別) | 100〜800 CHF/国 | 米国・韓国・日本等は高額 |
| 当事務所 代理費用 | 15万円〜(出願代理) | 指定国数・意匠数により変動。お見積無料 |
💡 INPIT外国出願補助金で最大1/2助成 中小企業・スタートアップ等は、INPIT外国出願補助金を活用することで、ハーグ出願費用の最大1/2(年間上限300万円)を補助金で賄うことが可能です。当事務所の申請代行手数料は一律50,000円(税抜)、前回採択率100%の実績があります。
実体審査の有無(国別比較)
ハーグ加盟国は、実体審査の有無で大きく2タイプに分かれます。実体審査がある国では新規性・創作非容易性が判断され、拒絶理由通知が出る可能性があるため、事前のクリアランス調査が重要です。
| 国・地域 | 実体審査 | 主な審査ポイント |
|---|---|---|
| 🇺🇸 米国(USPTO) | あり(厳格) | 新規性・非自明性、図面の明瞭性 |
| 🇰🇷 韓国(KIPO) | あり | 新規性・創作非容易性 |
| 🇯🇵 日本(JPO) | あり | 新規性・創作非容易性、6条1項類似性 |
| 🇪🇺 EU(EUIPO) | なし(方式のみ) | 無効審判で事後的に争う方式 |
| 🇬🇧 英国(UKIPO) | なし | 方式審査のみ |
| 🇨🇭 スイス | なし | 方式審査のみ |
| 🇸🇬 シンガポール(IPOS) | あり(限定的) | 公序良俗等のみ |
| 🇮🇱 イスラエル | なし | 方式審査のみ |
| 🌍 OAPI(アフリカ) | なし | 方式審査のみ |
⚠️ 実体審査国への戦略 米国・韓国・日本等の実体審査国を指定する場合、図面の精度・破線の使い方・指定国の慣行に基づいた事前調整が登録成功の鍵となります。
新規性喪失の例外規定(国別比較)
意匠を発表・販売・展示会出品した後でも、一定期間内であれば新規性喪失の例外規定を適用して出願が可能です。ただし、適用期間・対象行為・証明書の要否は国によって大きく異なります。
| 国・地域 | 猶予期間 | 証明書 | 対象行為 |
|---|---|---|---|
| 🇯🇵 日本 | 12ヶ月 | 必要 | 権利者の行為に起因する公開(販売・SNS・展示会等) |
| 🇺🇸 米国 | 12ヶ月 | 不要 | 権利者・発明者起因の公開全般 |
| 🇪🇺 EU(EUIPO) | 12ヶ月 | 不要 | 権利者・第三者の権利者由来の公開 |
| 🇰🇷 韓国 | 12ヶ月 | 必要 | 権利者の行為に起因する公開 |
| 🇨🇳 中国(直接出願) | 6ヶ月 | 必要 | 中国政府認定の展示会・学術会議のみ(限定的) |
| 🇬🇧 英国 | 12ヶ月 | 不要 | 権利者由来の公開全般 |
| 🇸🇬 シンガポール | 12ヶ月 | 不要 | 権利者由来の公開 |
| 🇨🇭 スイス | 12ヶ月 | 不要 | 権利者由来の公開 |
🚨 重要:例外規定に頼らない方が安全 展示会・SNS発表前に出願を完了させることが理想。新規性喪失の例外規定は救済措置であり、国によって条件が厳しく、適用が認められないリスクもあります。
図面ルール・出願実務
ハーグ出願では1組の図面で全指定国に出願するため、最も厳格な国の図面要件に合わせる必要があります。特に米国・韓国・日本の図面要件は厳格で、これに合わせると他の国でも問題ありません。
📐 視覚的な要件
- 正面・背面・上下・左右・斜視の6方向図を基本
- 白黒線画またはグレースケール写真
- 解像度:300dpi以上推奨
- サイズ:16cm × 16cm以内(推奨16cm × 12cm)
⚫ 実線・破線の使い分け
- 実線:保護を求めるデザイン要素(クレーム部分)
- 破線:環境・参考のために示す要素(米国・日本で重要)
- 米国は破線の解釈が厳格 → 慎重な使い分けが必要
🎨 部分意匠・GUI
- 部分意匠:保護したい部分のみ実線、それ以外は破線
- GUI(画面意匠):日本・米国・韓国・EUで保護可能
- 動的GUIは複数静止画でアニメーションを表現
📋 説明書(任意)
- 主要な特徴的部分の説明(任意)
- 米国指定では説明により権利範囲が明確化
- 韓国・日本では物品の説明が必要
📌 当事務所の図面作成サポート 提携の意匠図面専門デザイナーによる、米国・韓国の厳格な要件を満たす高品質な図面作成を承っております。3D-CADデータからの起こしも対応可能です。
主要指定国の留意点
🇺🇸 米国(USPTO)
- 実体審査国(新規性・非自明性・実用性を審査)
- 1出願=1意匠が原則(ただしハーグ経由の複数意匠も技術的には許容)
- 図面の破線・陰影線の使い方が独特・厳格
- Office Actionへの応答は米国弁護士の選任必要
- 登録意匠の保護期間は出願日から15年
🇪🇺 EU(EUIPO)
- 方式審査のみ(実体審査なし)→ 早期登録可能
- 1指定で27加盟国全域をカバー
- 登録共同体意匠(RCD)として保護、最長25年
- 無効審判で事後的に新規性等を争う方式
- Brexit後は英国を別途指定(個別単位)
🇰🇷 韓国(KIPO)
- 実体審査国・部分意匠制度あり
- 新規性喪失の例外規定12ヶ月(証明書必要)
- 2024年改正で関連意匠制度の柔軟化(基本意匠から3年→5年)
- 図面要件が日本に近く、日本企業に親和性高い
🇸🇬 シンガポール(IPOS)
- 方式審査が中心(公序良俗等のみ実体)
- 東南アジア事業展開の足掛かりとして重要
- 保護期間最長15年
2024-2026年の最新動向
📅 EU新意匠規則(2024年5月発効)
EUIPO新意匠規則(Regulation 2024/2822)が2024年5月に採択。デジタル製品(GUI、メタバース、NFT)の保護対象化、修理条項の明確化、出願フローのモダン化等が実施されました。
🌏 新興国の加盟拡大
2024-2026年に新規加盟・加盟検討中の国にはベリーズ、サウジアラビアなどがあり、特にアジア・中東市場への意匠保護がより容易に。
⚙️ WIPO Hague E-filing 拡張
WIPO Hague E-filingの機能拡張により、3Dモデル提出のオプション化、AI支援による図面チェック等が段階的に導入されています。
よくあるご質問(FAQ)
Q ハーグ国際意匠出願は何カ国に出願する場合に有利ですか?
Q 中国・台湾・香港・マカオに意匠出願したい場合は?
Q 1出願に何意匠まで含められますか?
Q 公開時期は選択できますか?
Q 保護期間はどれくらいですか?
Q 展示会で発表してしまった意匠もハーグ出願できますか?
Q 指定国で拒絶理由通知が来た場合、費用はいくらかかりますか?
Q ハーグ出願の費用にINPIT補助金を使えますか?
Q GUI・画面意匠もハーグ出願できますか?
Q 無料相談は可能ですか?
無料相談・お問い合わせ
ハーグ国際意匠出願の無料相談
当事務所では、ハーグ出願戦略の策定から国際登録、各指定国の応答、更新管理までワンストップでサポートいたします。中小企業・スタートアップにはINPIT外国出願補助金の申請代行も併せてご提供します。
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