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【弁理士解説】NotionのAI画面が米国意匠5件に|動くGUIの保護と日本の画像意匠制度との違い

作成者: 弁理士 杉浦健文|2026/07/28

2026年6月、NotionのAI機能の画面デザインが、米国で5件の意匠特許として登録されました。しかも、そのうち3件は静止画ではなく「アニメーションするGUI」です。AIが考えている間のあの動き、回答が現れるあの見せ方——それ自体が権利になっている、ということです。

本記事では、この5件を一次資料で確認したうえで、日本の「画像意匠」制度なら同じものが守れるのかを比較します。UIに投資しているSaaS企業、アプリ開発企業にとって、実務に直結する論点を整理しました。

💡 要点:本記事はNotion特許シリーズの一編です。特許側のポートフォリオ分析はNotionの特許戦略(総論)をご覧ください。

目次

  1. 登録された5件の一覧
  2. 米国意匠特許の基本|クレームは1行
  3. 動くGUIをどう保護しているか
  4. 5件を同日に出した意味|特許と意匠の二段構え
  5. 日本の画像意匠制度|守れる画像・守れない画像
  6. 日米比較|同じものを日本で出願したらどうなるか
  7. 日本で動くUIを守る実務|3つのポイント
  8. 日本企業への示唆
  9. よくある質問(FAQ)

登録された5件の一覧

Notion Labs, Inc. 名義の米国意匠特許は、確認できた範囲で次の5件です。全件が2024年8月15日という同じ日に出願されています。

番号 名称(原文) 図面 登録日
USD1,129,459 Computing device screen with animated artificial intelligence graphical user interface 図1〜3の遷移(動画) 2026-06-09
USD1,129,496 Computing device screen with animated artificial intelligence graphical user interface 図1〜3の遷移(動画) 2026-06-09
USD1,129,505 Computing device screen with artificial intelligence graphical user interface 単一図(静止) 2026-06-09
USD1,129,506 Computing device screen with artificial intelligence graphical user interface 図1〜3(静止) 2026-06-09
USD1,130,481 Computing device screen with animated artificial intelligence graphical user interface 図1〜4の遷移(動画) 2026-06-16

内訳はアニメーション3件、静止画2件。同一日に5件をまとめて出願するというやり方から、AI機能の画面まわりを面で押さえにいった意図が読み取れます。

米国意匠特許の基本|クレームは1行

特許(実用特許)の請求項は長文になりますが、米国の意匠特許のクレームは1件につき1つ、しかもほぼ定型の1行です。実際の文言を見てみましょう。

USD1,129,459 クレーム(原文引用)

The ornamental design for a computing device screen with animated artificial intelligence graphical user interface as shown and described.

「図示され記載されたとおりの、装飾的なデザイン」——つまり権利範囲を決めているのは文章ではなく図面です。ここが特許と決定的に違う点で、意匠の実務では図面の描き方がそのまま権利の広さになります。

項目 米国意匠特許
存続期間 登録日から15年(35 U.S.C. 173/2015年5月13日以降の出願)
維持年金 不要
出願公開 なし(登録されるまで内容は公開されない)
クレーム数 1件につき1つ

出願が公開されないため、Notionのこの5件も2026年6月に登録されるまで、外部からは存在すら分かりませんでした。2024年8月の出願から登録まで約1年10か月、その間は完全に見えない状態だったことになります。米国の制度全般についてはアメリカの意匠制度概要で解説しています。

動くGUIをどう保護しているか

では、アニメーションはどうやって図面で表現するのでしょうか。答えは「コマ送りの複数図+遷移する旨の説明」です。USD1,129,459の図面説明には、次のように記載されています。

USD1,129,459 図面の説明(原文引用)

The appearance of a transitional image sequentially transitions between the images shown in FIGS. 1-3.

「遷移画像の外観は、図1〜3に示された画像の間を順次遷移する」——この一文があることで、3枚の静止画が「一連の動き」として一つの意匠になります。USD1,130,481では図が4枚に増えており、より長い動きを表現していると考えられます。

実務Tips(動くUIの図面設計):動きを何コマで表すかは、権利の広さに直結する判断です。コマ数が多いほど動きは特定されますが、そのぶん「その動きどおり」でないと権利が及びにくくなります。逆にコマ数を絞れば広くなりますが、先行意匠との差が出しにくくなります。動きの「どこが独自なのか」を見極めてコマを選ぶことが実務の勘所です。

5件を同日に出した意味|特許と意匠の二段構え

Notionは同じAI機能について、特許と意匠の両方を取得しています。この組み合わせには明確な役割分担があります。

権利 守るもの 効く場面
特許 処理の中身(自然言語をクエリに変換し、出典付きで回答する仕組み) 見た目は違うが、同じ仕組みを実装された場合
意匠 画面の見た目と動き 中身は違うが、見た目をそっくり真似された場合

ソフトウェアの模倣は、この2パターンのどちらかで起きます。片方だけでは穴が開くため、両方を押さえるのが手厚い設計です。この考え方はUI/UXの知財ミックス保護事例でも扱っています。

弁理士の視点:意匠は特許に比べて権利化までの期間が短く、費用も抑えやすいという利点があります。「特許は時間と費用がかかるから」と権利化そのものを見送るくらいなら、まず意匠で見た目を押さえておくという進め方も現実的です。特に画面デザインに独自性があるプロダクトでは検討する価値があります。

日本の画像意匠制度|守れる画像・守れない画像

日本では、令和元年改正意匠法(2020年4月1日施行)により、画像デザインの保護が大きく広がりました。改正前は「物品に記録・表示された画像」しか守れませんでしたが、改正後は画像それ自体が意匠登録の対象になっています。

ただし、無条件ではありません。意匠法2条1項は、保護対象となる画像を次のように限定しています。

意匠法第2条第1項(該当部分の引用)

画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの

つまり、日本で保護される画像は次の2類型に絞られます。

類型 内容
操作画像 機器の操作の用に供される画像 アイコン、操作ボタン、入力用インターフェース
表示画像 機器がその機能を発揮した結果として表示される画像 計測結果の表示、機能実行後の結果画面

保護対象外となる画像:装飾のみを目的とした画像(壁紙・デスクトップの背景など)や、映画・ゲームのコンテンツそのものといった画像は、この2類型に当たらず意匠登録の対象になりません。「画面に映るものは何でも意匠で守れる」わけではない点に注意が必要です。

日米比較|同じものを日本で出願したらどうなるか

NotionのAI GUIを、そのまま日本に出願したと仮定して考えてみます。

項目 米国(意匠特許) 日本(意匠登録)
保護対象の限定 画面に表示されるGUIとして広く認められる 操作画像/表示画像に限定(意匠法2条1項)
動くUIの保護 複数図+遷移の説明で可能 可能。変化の前後の図面と願書への説明が必要(意匠法6条4項)
存続期間 登録日から15年 出願日から25年(令和元年改正)
出願公開 なし(登録まで非公開) 登録後に公報発行。秘密意匠制度により最長3年の秘密保持が可能(意匠法14条)
バリエーション保護 別出願として個別に取得 関連意匠制度(本意匠の出願日から10年以内に類似意匠を出願可能)

実務的な焦点は、AIチャット画面が日本の2類型に当てはまるかです。プロンプトを入力する欄やボタンは操作画像として、AIが生成した回答の表示部分は表示画像として、それぞれ整理し得ると考えられます。ただし、単なる装飾的なアニメーションと評価される部分は対象外となる可能性があり、どの部分をどう切り出して出願するかの設計が結果を左右します

注意:上記は制度上の一般的な整理です。実際の登録可否は、出願の内容、先行意匠との対比、審査官の判断により個別に決まります。本記事は特定の出願について登録可能性を保証するものではありません。

日本で動くUIを守る実務|3つのポイント

① 変化の説明を願書に書く(意匠法6条4項)

形状等が機能に基づいて変化する意匠について、変化の前後にわたる意匠登録を受けようとする場合は、その旨と機能の説明を願書に記載し、変化の状態を示す図面を提出します。動くUIを出願する際の基本手続です。

② 部分意匠を活用する

画面全体ではなく、独自性のある部分だけを実線で描き、他を破線にする部分意匠の使い方が有効な場面があります。画面全体で権利を取ると、周辺のレイアウトを変えられただけで権利が及びにくくなるためです。

③ 関連意匠でバリエーションを束ねる

令和元年改正で、関連意匠は本意匠の出願日から10年以内まで出願できるようになりました。UIは改良を重ねるものなので、初代のデザインを本意匠に据え、改良版を関連意匠として積み上げる運用が噛み合います。日本の実際の登録例は日本におけるUI画面デザインの意匠登録事例で紹介しています。

実務Tips(公開前に出願する):意匠も特許と同様、公表してしまうと原則として新規性を失います。アプリのUIはリリースと同時に世界中から見えるため、公開前の出願が原則です。やむを得ず公開が先行した場合は新規性喪失の例外規定(意匠法4条)がありますが、期間や手続の要件があり、外国出願では使えない国もあります。早めのご相談をおすすめします。

日本企業への示唆

Notionの5件から読み取れる、実務的な示唆を整理します。

  • UIは「後から守れない資産」:リリースすれば即座に公開されます。デザインが固まった段階での出願判断が必要です。
  • 動きも権利になる:静止画だけでなく、遷移そのものを保護対象にできます。AI機能の「考えている間の演出」のように、ブランド体験を形づくる動きは検討に値します。
  • 特許と組み合わせる:処理の中身は特許、見た目は意匠。どちらか一方では、模倣の一方の型を止められません。
  • 意匠は相対的に取り組みやすい:特許より短期間・低コストで権利化を目指せる場面が多く、知財投資の第一歩として現実的です。
  • 日本は保護対象に限定がある:操作画像・表示画像の2類型に該当するよう、出願時の切り出し方を設計する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. Notionは日本でも画面デザインの意匠登録をしていますか?

A. 2026年7月時点の調査では、日本の意匠公報からNotion Labs, Inc. 名義の登録は確認できませんでした。ただし、公報に現れるまでには時間差があり、秘密意匠制度が使われている可能性もあるため、「登録がない」と断定はできません。

Q. Webサービスの画面も意匠登録できますか?

A. できる場合があります。令和元年改正により、機器に記録・表示されていない画像自体も対象になりました。ただし「操作画像」または「表示画像」に該当することが必要です。単なる装飾やコンテンツそのものは対象外となります。

Q. ローディングアニメーションのような短い動きも守れますか?

A. 変化する画像として出願すること自体は可能です。ただし、その動きが「機器の操作の用に供される」か「機能を発揮した結果として表示される」かの評価と、先行意匠との差異が問われます。純粋な装飾と評価されると登録は難しくなります。

Q. 意匠と特許はどちらを先に出願すべきですか?

A. 守りたい対象によります。処理の仕組みに独自性があるなら特許、画面の見た目に独自性があるなら意匠が向きます。予算に制約がある場合、権利化までの期間が比較的短い意匠から着手し、特許は順次という進め方も選択肢の一つです。

Q. 米国と日本の両方で権利を取るには?

A. パリ条約の優先権(意匠は6か月)を使う方法と、ハーグ協定ジュネーブ改正協定による国際出願を使う方法があります。日米はいずれもハーグ協定に加盟しています。図面の要件が国により異なるため、最初の出願段階から各国要件を意識した図面設計をしておくと手戻りが減ります。

まとめ

NotionのAI GUI意匠5件は、「処理は特許、見た目と動きは意匠」という二段構えを、実際にやって見せた事例です。しかも動くUIを3件含み、同日にまとめて出願するという、画面まわりを面で押さえる進め方をしています。

日本でも令和元年改正により、画像意匠の保護は大きく広がりました。操作画像・表示画像という限定はあるものの、動くUIを守る道は開かれています。UIに投資しているのであれば、それは守れる資産です。ただし、公開してしまう前に動く必要があります。

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エボリクス(evorix.jp)では、アプリ・Webサービスの画像意匠出願、動くUIの図面設計、部分意匠・関連意匠を組み合わせた保護設計、および米国・ハーグ経由の外国出願を承っております。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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本記事の注意事項:本記事は2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。引用したクレーム・図面の説明は公開データベースの記載に基づきますが、権利範囲は最終的にUSPTOの正本により定まります。制度の説明は概要であり、個別の出願における登録可能性や権利範囲を保証するものではありません。出願の可否や設計にあたっては、最新の法令・審査基準と専門家の個別検討をご利用ください。

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