弁理士を付けずに自分で特許・商標・意匠を出願した方のもとに、特許庁から「拒絶理由通知書」が届くことがあります。封筒には通知書本体のほかに「注意書」が同封されており、そこに特許庁「お助けサイト〜通知を受け取った方へ〜」とINPIT「知財総合支援窓口」(全国共通ナビダイヤル 0570-082100)の案内が載っています。この記事では、その2つの公的支援で何ができて何ができないのか、どこまで自分で対応してよいのか、弁理士に途中から頼むとどうなるのかを、特許庁とINPITの一次資料を確認しながら弁理士が解説します。
この記事のポイント
- 拒絶理由通知書は「不合格」ではなく反論の機会です。応答期間内に意見書・手続補正書を出せば、本人出願でも登録に至る案件は多くあります。
- 特許庁「お助けサイト」は、通知書の読み方・拒絶理由の解説・意見書と手続補正書のサンプル雛形(PDF/Word様式)・費用計算・審査官への連絡方法をまとめた無料の自習教材です。
- INPIT「知財総合支援窓口」は全国47都道府県にある無料の相談窓口で、支援担当者と弁理士等の専門家が対応方針を助言します。ただし書面の作成代行や特許庁への代理手続は行いません。
- 意見書・手続補正書を「書く」「代理で提出する」のは弁理士の業務です。進歩性(特許法29条2項)や商標の類似(商標法4条1項11号)が争点の案件、最後の拒絶理由通知、期限が迫っている案件は、途中からでも弁理士に切り替える判断が合理的です。
- 途中からの依頼は可能で、出願のやり直しは不要です。通知書の写し・出願書類・引用文献・応答期限が分かれば見積ができます。
1. 拒絶理由通知書の「注意書」に書かれている2つの案内先
WHAT IS IN THE ENVELOPE
通知書と一緒に届く「注意書」は、特許庁が本人出願人向けに用意した案内です。QRコードの先にあるのが「お助けサイト」、電話番号の先にあるのが「知財総合支援窓口」です。
特許庁は2020年1月14日、経済産業省のプレスリリースで「ひとりでがんばる知財担当者のためのお助けサイト」を開設したと発表しました。想定読者は、中小企業で一人で知財を担当している方や、初めて出願手続をした方です。同じ発表の中で、同年4月以降に送付する拒絶理由通知書・登録査定に添付する「注意書」にQRコードを付し、お助けサイトへアクセスしやすくする方針が示されています。代理人を付けていない出願では、通知書はこの注意書とともに出願人本人に直接届きます。
注意書とお助けサイトの双方が電話の問い合わせ先として案内しているのが、独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT)が運営する知財総合支援窓口です。特許庁は審査をする側なので、個別の出願について「どう反論すべきか」を特許庁に電話で尋ねる窓口はありません。その役割を無料で担っているのが知財総合支援窓口です。
つまり、通知書を受け取った本人出願人の前には、次の三層の支援が用意されています。
| 層 |
担い手 |
提供するもの |
費用 |
| 1. 自分で読む | 特許庁「お助けサイト」 | 通知書の見方、拒絶理由の解説、意見書・手続補正書の雛形と様式、費用計算 | 無料 |
| 2. 人に相談する | INPIT「知財総合支援窓口」 | 支援担当者と弁理士等の専門家による対応方針の助言 | 無料 |
| 3. 任せる | 弁理士(特許事務所) | 意見書・手続補正書の作成、特許庁への代理提出、審査官面接、期限管理 | 有料 |
この記事の立場を先に書いておきます。1層目と2層目は無料で質が高いので、まず使ってください。そのうえで、3層目に切り替えるべき案件の見分け方を知っておくと、無料支援を使い切ったあとに時間と権利を失うことを避けられます。
2. 特許庁「お助けサイト」でできること(特許・意匠・商標)
お助けサイトのトップページは「受け取った通知を教えてください」として、特許・意匠・商標の3法域に分かれています。それぞれの法域に「拒絶理由通知書を受け取った方へ」と「登録査定(特許査定)を受け取った方へ」のページがあり、拒絶理由通知のページは次の2ステップで構成されています。
STEP1「通知内容を理解する」
- 通知書の見方:通知書の見本に赤枠が付いていて、クリックすると「適用条文」「引用文献」「応答期間」「審査官の連絡先」の意味が表示されます。
- 拒絶理由の解説:新規性・進歩性・記載要件など、条文ごとに「何を指摘されているか」を平易に説明しています。
- 審査官への連絡:審査官の意図が分からない、引用文献の番号が誤っていると思う、といった場合は通知書末尾に記載された審査官に直接連絡できると明記されています。特許については「面接ガイドライン【特許審査編】」と「DX時代における特許審査官とのコミュニケーション」が案内されています。
- 引用文献の入手:特許公報はJ-PlatPatで無料閲覧できます。非特許文献は応答期間内であればINPIT(特許庁庁舎2階)で入手を申し込めます。
STEP2「対応を検討・実行する」
- 意見書サンプル雛形(PDF)と手続補正書サンプル雛形(PDF)、さらにWord形式の様式が法域ごとに用意されています。書式の疑問は特許庁審査業務課方式審査室の担当(特許・意匠・商標で内線が異なる)に電話で聞けます。
- 補正の注意点:特許は「出願当初の明細書等に記載した範囲内」でのみ補正可能、商標は「商標そのものの補正は原則不可、指定商品・役務の追加や範囲外への変更も不可」、意匠は「誤記や不明瞭な記載の訂正・補充の範囲内」と、法域ごとの制約が示されています。
- 費用計算ツール:登録後に必要な特許料・登録料の概算を、年数と請求項数(商標は区分数)から計算できます。
- 郵送先:紙で提出する場合の宛先(特許庁長官宛)と、封筒への朱書き・書留等の指示があります。
- FAQ:特許のページでは「期間延長請求書を提出すれば応答期間を2か月延長でき、理由は不要、手数料は2,100円」と明記されています。
応答期間は必ず通知書の記載で確認:上の表は一般的な指定期間の目安です。実際の期限は通知書に記載された応答期間が基準で、起算日は「発送日」です(到着日ではありません)。特許の期限と延長の仕組みは、特許の拒絶理由通知とは?応答期限・延長・意見書と補正書で詳しく解説しています。
お助けサイトの文体は「諦めずに、応答期間内に対応しましょう」という励まし型で、特許庁自身が本人対応を後押ししている点は率直に評価できます。一方で、サンプル雛形は「書式」を示すものであり、どの引用文献との違いをどう主張すべきか、請求項をどこまで狭めるべきかという中身の判断は、当然ながら書かれていません。商標のページには「意見書サンプルはあくまで一例であり、その後の審査結果を保証するものではありません」との注記もあります。
3. INPIT「知財総合支援窓口」でできること
知財総合支援窓口は、INPITが全国47都道府県に設置している無料の相談窓口です。INPITの公式サイトでは「中小企業等が抱える様々な経営課題について、自社のアイデア、技術、ブランド、デザインなどの『知的財産』の側面から解決を図る支援窓口」と説明され、「ご相談は無料です」と明記されています。全国共通ナビダイヤル 0570-082100 に電話すると、発信地に近い窓口につながります(受付は平日9時から17時が基本で、窓口により異なります)。
誰が相談に応じるのか
- 支援担当者:企業の知財部門OBなど経験豊富な担当者が、まず話を聞いて「経営」と「知的財産」の課題を整理し、知財活動の方向性を提案します。
- 専門家:専門的な相談は、窓口が連携する弁理士・弁護士・ブランド専門家・中小企業診断士・デザイナーなどが対応します。INPITの説明では、弁理士は「出願手続きや知財戦略への対応などのアドバイス」、弁護士は「知財関係の契約の留意点や警告を受けた場合などのアドバイス」を担います。
相談の流れ
各都道府県窓口の案内では、おおむね次の3段階です。まず電話で予約し、支援担当者が相談に応じ、必要に応じて弁理士等の専門家が支援します。拒絶理由通知について相談する場合は、通知書の全文、出願書類(願書・明細書・特許請求の範囲・図面、商標なら願書と指定商品・役務の一覧)、引用文献を手元に用意して電話すると話が早く進みます。
窓口で聞くと効果的なこと
「この拒絶理由は何を指摘しているのか」「引用文献との違いとして主張できそうな点はどこか」「手続補正書で指定商品を削るなら、どの範囲まで削れば拒絶理由が解消するか」「この案件は自分で対応できる難度か、弁理士に頼むべきか」。最後の質問を窓口で率直に聞くのが、無料支援の最も賢い使い方です。
知財総合支援窓口は、拒絶理由通知の対応だけでなく、出願前の先行調査の考え方、営業秘密管理、海外展開、補助金(INPITの外国出願補助金など)まで幅広く相談できます。本人出願で特許や商標を進めている方にとって、最初に関係を作っておく価値のある窓口です。
4. 2つの窓口の限界:「助言」までで、書面作成と代理はできない
ここが、この記事で最も伝えたい点です。お助けサイトも知財総合支援窓口も、意見書や手続補正書を「あなたの代わりに書く」ことはしませんし、特許庁に対してあなたの代理人として手続することもしません。INPITの公式説明でも、窓口の弁理士の役割は「出願手続きや知財戦略への対応などのアドバイス」とされており、支援は助言が中心で、出願等の手続そのものを窓口が行う整理にはなっていません。特許庁の説明でも、弁理士は「特許、実用新案、意匠、商標等に関する手続代理等を行うことのできる国家資格者」と位置づけられています。
また、お助けサイトは「審査官に電話や面接で相談できる」と案内していますが、審査官は審査をする側であり、あなたの出願を登録に導く反論を考えてくれる立場ではありません。審査官との面接は、発明の特徴を直接説明したり、補正案に対する審査官の見方を聞いたりする場として機能します。詳しくは特許の審査官面接のメリットと進め方をご覧ください。
| できること |
お助けサイト |
知財総合支援窓口 |
審査官 |
弁理士 |
| 通知書の意味を理解する | ○ | ○ | ○(意図の確認) | ○ |
| 書式・様式を入手する | ○ | ○ | − | ○ |
| 対応方針を相談する | − | ○(助言) | △(補正案への見方) | ○ |
| 意見書・手続補正書を作成する | × | × | × | ○ |
| 代理人として特許庁に提出する | × | × | × | ○ |
| 期限管理・結果への責任 | × | × | × | ○ |
| 費用 | 無料 | 無料 | 無料 | 有料 |
無料支援に時間を使いすぎるリスク:窓口の予約が取れるまで数日、専門家の日程調整でさらに数日かかることがあります。応答期間が40日・60日しかない中で、相談を終えた時点で残り1〜2週間になっているケースは珍しくありません。相談と並行して、弁理士に頼む場合の見積も取っておくと、いざ切り替えるときに時間を失いません。
5. 自分で対応してよいケース/弁理士に切り替えるべきケース
弁理士が「全部任せてください」と言うのは簡単ですが、実際には本人で十分に対応できる拒絶理由もあります。一般的な傾向として、次のように整理できます。
自分で対応してもよいことが多いケース
- 商標で、指定商品・指定役務の表示が不明確だと指摘された(商標法6条):審査官が通知書内で「このように補正すれば解消する」と例示していることが多く、手続補正書で表示を差し替えれば足ります。
- 商標で、特定の商品・役務だけが他人の登録商標と抵触している(4条1項11号):その商品・役務を削除する補正で解消でき、削っても事業に支障がないなら本人対応で問題ありません。
- 特許で、請求項の記載が不明確とされた(36条6項2号)が、誤記や用語の不統一にすぎない:手続補正書で用語を揃えるだけで解消することがあります。
- 引用文献が、自分の発明とは明らかに別物だと確信できる:ただし「別物に見える」と「進歩性の判断で区別される」は別です。次の項を必ず確認してください。
弁理士に切り替えることを強く勧めるケース
- 特許で、進歩性(29条2項)が複数の引用文献の組み合わせで否定されている:どの構成を請求項に加えれば差が生まれるか、加えた結果どこまで権利が狭くなるかという設計判断が必要です。ここで請求項を狭めすぎると、登録はできても使えない権利になります。ソフトウェア分野の典型例はソフトウェア特許の拒絶理由あるある5選で解説しています。
- 「最後の拒絶理由通知」と表示されている:補正できる範囲が4類型に限定され(17条の2第5項)、違反すると補正が却下されます。本人出願でここに至った案件は、次が拒絶査定です。→ 「限定的減縮」とは
- 商標で、主要な商品・役務について他人の登録商標と「類似」と判断された:削除で逃げると事業の中核を守れません。非類似の主張や、相手商標の不使用取消審判・譲渡交渉などの選択肢を比較する必要があります。
- 商標で、識別力なし(3条1項各号)と判断された:使用による識別力(3条2項)の立証は証拠の設計が結果を左右します。
- 応答期限まで2週間を切っている:延長の可否と手数料、延長しても間に合うかの判断を含め、専門家が期限管理を引き受けるべき局面です。
- その特許・商標が事業の中核で、失うと困る:この条件に当たるなら、拒絶理由の難度に関係なく弁理士に相談する価値があります。
折衷案:お助けサイトの雛形で自分で意見書・手続補正書の案を書き、提出前に弁理士に添削だけ依頼する方法もあります。全面的に任せるより費用を抑えつつ、権利範囲を狭めすぎる失敗を防げます。当事務所でもこの形の依頼を受けています。
6. 弁理士に途中から依頼する場合の流れと必要資料
本人出願の方からよく受ける質問が「今から弁理士に頼むと、出願からやり直しになるのか」です。答えはいいえです。出願はそのまま生きており、弁理士が代理人として選任される手続(委任状の提出)を行えば、拒絶理由通知への応答だけを引き受けることができます。これを一般に「中間対応(中間処理)の受任」と呼びます。
ご相談時に用意いただきたいもの
- 拒絶理由通知書の全ページ(注意書も含めて写真かPDFで)。応答期間の起算日となる発送日と、審査官名・連絡先を確認します。
- 出願書類:特許なら願書・明細書・特許請求の範囲・図面・要約書。商標なら願書(商標見本と指定商品・役務)。意匠なら願書と図面。
- 引用文献:通知書に番号が載っているので、J-PlatPatで取得できます。手元になければ弁理士側で取得します。
- 事業の状況:その発明・商標をどの商品やサービスでどう使っているか、使う予定か。権利範囲をどこまで守るべきかの判断材料になります。
- すでに窓口で受けた助言:知財総合支援窓口や審査官との電話で得た情報があれば、そのまま共有してください。方針決定が早くなります。
依頼後の流れ
通知書と出願書類を確認したうえで、応答方針(反論のみ/補正のみ/両方)と見積をご案内します。費用は拒絶理由の数と難度、引用文献の数、補正の規模で変わるため、通知書を見てから確定します。方針に合意いただいた後、委任状をいただき、意見書・手続補正書を作成して、期限内に電子出願で提出します。必要に応じて提出前に審査官と電話や面接で補正案をすり合わせます。なお、特許料等の減免制度は中間対応そのものには関係しませんが、拒絶査定不服審判の請求料や登録後の特許料には適用されるため、該当する方には併せてご案内します。→ 中小企業・個人事業主の減免制度
サービスの全体像は特許サービス・商標サービス、初回相談の進め方はご相談の流れをご覧ください。
7. 本人出願に特有の落とし穴:期限の起算日・紙提出の電子化手数料
代理人が付いていれば事務所の期限管理システムが処理する事項を、本人出願では自分で管理する必要があります。実務で見かける失敗を挙げます。
- 起算日を「届いた日」と誤解する:応答期間は通知書の「発送日」から数えます。郵送で届いた場合、手元に来た時点で数日が経過しています。
- 延長を「経過後でもできる」と安心しすぎる:特許では、期間内の請求で2か月(手数料2,100円・理由不要)延長できます。期間経過後の救済は手数料が大幅に高く、条件もあります。商標・意匠では延長の要件が特許と異なるため、通知書の記載と特許庁の案内で確認してください。
- 紙で提出すると電子化手数料がかかる:書面で手続をすると、手続1件につき2,400円に書面1枚につき800円を加えた電子化手数料が別途必要で、登録情報処理機関から払込用紙が郵送されます。納付しないと手続補正指令、さらに却下につながります。意見書と手続補正書を別々に紙で出せば2件分です。
- 電子出願の準備に時間がかかる:インターネット出願ソフトを使うには申請人利用登録と電子証明書が必要で、準備に日数がかかります。期限が迫っている場合、紙提出の電子化手数料を払うか、弁理士に電子提出を任せるかの判断が必要です。
- 何もしないと拒絶査定になる:お助けサイトも明記しているとおり、応答しなければ応答期間経過後に拒絶査定が送付されます。拒絶査定に不服があれば審判請求(特許は謄本送達から3か月以内)という次の段階がありますが、費用と難度は格段に上がります。実例は任天堂・ポケモンの特許出願はなぜ拒絶査定になったのかをご覧ください。
まとめ
- 拒絶理由通知書に同封される注意書の案内先は、特許庁「お助けサイト」(自習教材)とINPIT「知財総合支援窓口」(無料相談)の2つ。どちらも質が高く、まず使うべき支援です。
- 2つの窓口は「理解」と「助言」まで。意見書・手続補正書の作成と代理提出は弁理士の業務で、窓口も審査官も代わりには書きません。
- 商標の指定商品の削除や特許の軽微な明確性違反は本人対応が可能。進歩性が複数引例で否定された特許、類似・識別力が争点の商標、最後の拒絶理由通知、期限が2週間以内の案件は弁理士に切り替える判断が合理的です。
- 途中からの依頼に出願のやり直しは不要。通知書・出願書類・引用文献・事業状況があれば方針と見積を出せます。
- 期限は発送日起算、紙提出には電子化手数料。本人出願ではこの2点の管理が最大の落とし穴です。
拒絶理由通知書を自分で受け取った方へ
本人出願からの途中受任、意見書・手続補正書の作成、ご自身で書いた案の添削に対応しています。通知書の写し(注意書を含む全ページ)と出願書類をお送りいただければ、応答方針と見積を無料でご案内します。応答期限が近い場合はその旨をご記載ください。
お問い合わせフォームへ
よくある質問
特許庁「お助けサイト」とは何ですか?特許庁が2020年1月に開設した、拒絶理由通知書や登録査定などの通知を受け取った方向けの案内ページです。通知書の見方、拒絶理由の解説、意見書・手続補正書のサンプル雛形とWord様式、登録後の費用計算ツール、審査官への連絡方法を、特許・意匠・商標の法域ごとにまとめています。利用は無料です。
知財総合支援窓口では意見書を書いてもらえますか?原則として書いてもらえません。知財総合支援窓口の支援は、支援担当者や連携する弁理士等による「助言」が中心で、意見書・手続補正書の作成や特許庁への代理手続は業務の範囲外です。対応方針の相談や、自分で書く場合の考え方を聞く場として活用し、書面の作成や代理が必要なら弁理士に依頼することになります。
自分で出願した案件を、拒絶理由通知の段階から弁理士に頼めますか?頼めます。出願はそのまま有効で、弁理士を代理人として選任する手続(委任状の提出)をすれば、拒絶理由通知への応答から引き受けられます。出願のやり直しは不要です。通知書の全ページ、出願書類、引用文献、事業での使い方が分かれば、応答方針と見積を出せます。
応答期間はいつから数えますか?延長できますか?通知書に記載された応答期間を、通知書の「発送日」から数えます(到着日ではありません)。目安は国内居住者で特許60日、意匠・商標40日、在外者は3か月です。特許では、期間内に期間延長請求書を出せば2か月延長でき、理由は不要で手数料は2,100円です。期間経過後の救済や、商標・意匠の延長要件は特許と異なるため、通知書の記載と特許庁の案内で確認してください。
意見書や手続補正書を紙で提出すると費用はかかりますか?書面で手続をすると、手続1件につき2,400円に書面1枚につき800円を加えた電子化手数料が必要です。提出後に登録情報処理機関から払込用紙が郵送され、納付しないと手続補正指令、さらに却下につながります。インターネット出願ソフトで電子提出すれば電子化手数料はかかりませんが、申請人利用登録と電子証明書の準備に日数が必要です。
出典・参考文献
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年11月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。
法令・公的機関の資料
- 特許庁「お助けサイト〜通知を受け取った方へ〜」/サイトの構成(特許・意匠・商標)、問い合わせ先が知財総合支援窓口(0570-082100)であること、関連リンク(第1章・第2章)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/
- 特許庁「特許の拒絶理由通知書を受け取った方へ」/STEP1・STEP2の内容、審査官への連絡、補正の範囲、期間延長2か月・手数料2,100円・理由不要、非特許文献の入手先、郵送先(第2章・第7章・FAQ)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/tokkyo/kyozetsu/
- 特許庁「意見書サンプル雛形」「手続補正書サンプル雛形」(特許・PDF)/雛形の存在と内容(第2章)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/tokkyo/kyozetsu/sample_ikensho.pdf
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/tokkyo/kyozetsu/sample_hosei.pdf
- 特許庁「商標の拒絶理由通知書を受け取った方へ」/商標の補正の制約(商標自体の補正は原則不可、指定商品・役務の追加不可)、サンプルが審査結果を保証しない旨の注記(第2章)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/shohyo/kyozetsu/
- 特許庁「意匠の拒絶理由通知書を受け取った方へ」/意匠の補正の範囲(誤記・不明瞭な記載の訂正・補充)、引用文献の閲覧(第2章)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/isho/kyozetsu/
- 特許庁「通知書の見方」/通知書に記載される事項(適用条文・応答期間・審査官連絡先)(第2章)。
https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/tokkyo/kyozetsu/setsumei.html
- 経済産業省 ニュースリリース「ひとりでがんばる知財担当者のためのお助けサイトを開設しました」(2020年1月14日)/開設日、想定読者、2020年4月から注意書にQRコードを付す方針(第1章)。原ページは経済産業省サイトから削除されているため、Internet Archive の保存版(2020年3月1日取得)を参照。
https://web.archive.org/web/20200301083926/https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200114002/202001014002.html
- INPIT 兵庫県知財総合支援窓口「『お助けサイト〜通知を受け取った方へ〜』ご案内」(2020年1月17日)/2020年1月14日の開設と対象者(第1章)。
https://chizai-portal.inpit.go.jp/madoguchi/hyogo/news/post_19.html
- INPIT「INPIT知財総合支援窓口とは」/窓口の目的、相談無料、支援担当者と専門家(弁理士・弁護士等)の役割分担(第3章)。
https://chizai-portal.inpit.go.jp/about/
- INPIT「全国の窓口」/47都道府県の窓口一覧と連絡先(第3章)。
https://chizai-portal.inpit.go.jp/area/
- 特許庁「電子化手数料について」/書面手続の電子化手数料(1件2,400円+1枚800円)、払込用紙の送付、未納時の手続補正指令(第7章・FAQ)。
https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/paper/denshika.html
- 特許庁「DX時代における特許審査官とのコミュニケーション」(PDF)/審査官との電話・面接による相談(第2章・第4章)。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota-info/document/panhu/tokkyo_communication.pdf
実務ガイド・専門家による解説
- 特許庁 知的財産権制度入門テキスト「弁理士制度」(2025年度)/弁理士が手続代理を行うことのできる国家資格者であること(第4章)。
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2025_nyumon/1_7.pdf
- 日本商工会議所「知財担当者向け"お助けサイト"開設(特許庁)」(2020年)/開設時の位置づけ(第1章)。
https://archive.jcci.or.jp/news/trend-box/2020/0121152356.html
※本記事は上記の資料を基に、2026年11月時点の情報で一般的な情報提供を目的として作成しています。手数料・運用・各窓口のサービス内容は変更されることがあります。応答期限は必ずお手元の通知書の記載で確認し、個別案件の具体的判断には専門家へのご相談を推奨します。
AUTHOR / 執筆者
杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)
知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士
特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。