コンテンツまでスキップ

特許の拒絶理由通知とは?応答期限(60日・在外者は3か月)・延長・意見書と補正書・最後の拒絶理由通知の補正制限まで弁理士が解説

特許の拒絶理由通知とは?応答期限(60日・在外者は3か月)・延長・意見書と補正書・最後の拒絶理由通知の補正制限まで弁理士が解説

特許庁から「拒絶理由通知書」が届くと、初めての方は「特許が取れなかった」と受け取りがちです。しかし拒絶理由通知は、「このままでは拒絶するので、意見を述べる機会を与えます」という手続(特許法50条)であり、審査の通常の一工程です。この記事では、拒絶理由通知書の読み方、応答期限と延長のルール、意見書・補正書の役割、主な拒絶理由ごとの対応の型、「最後の拒絶理由通知」の補正制限、そして応答しなかった場合の帰結までを、条文と特許庁の運用を確認しながら解説します。

1. 拒絶理由通知とは:「不合格」ではなく反論の機会

審査官は、拒絶すべき旨の査定をしようとするときは、出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければなりません(特許法50条)。つまり拒絶理由通知は、拒絶査定のに常に置かれる手続であり、審査請求した特許出願の多くが一度は受け取るものです。ここで意見書と補正書を出して拒絶理由を解消すれば、特許査定に進みます。

2. 通知書の読み方:発送日・適用条文・引用文献・「最後」の表示

見るべき項目意味
発送日応答期間の起算日。受領日ではありません
適用条文29条1項(新規性)・29条第2項(進歩性)・29条の2(拡大先願)・36条(記載要件)・37条(単一性)・17条の2第3項(新規事項)など。条文ごとに対応の型が違います(第5章)
引用文献等一覧どの文献がどの請求項に当てられているかを理由の本文で確認します
「最後」の表示最後の拒絶理由通知であれば、特許請求の範囲の補機は4類型に限られます(第6章)。起案を始める前にまず確認します

3. 応答期限と延長(60日/在外者3か月/期間経過後も可)

意見書の提出期間は、方式審査便覧04.10により、国内居住者は60日、在外者は3か月です(いずれも発送日から)。延長は、特許庁の2016年4月1日以降の運用により次のとおりです。

請求の時期国内居住者在外者手数料
期間内2か月(1通・理由不要)2か月(1通目)+1か月(2通目)・理由不要・同時提出可各 2,100円
期間経過後(末日の翌日から2か月以内の請求)⬚2か月(当初の末日から起算)・理由不要。ただし期間内に延長した場合・意見書等を提出済みの場合は不可同左51,000円

期限を過ぎてしまったとき

気づいた日が当初の末日から2か月以内であれば、期間経過後の延長請求(51,000円)で応答の窓を開け直せます。延長は「請求日から2か月」ではなく「当初の末日から2か月」なので、残り日数は早く確認してください。

4. 意見書と補正書:役割と組み合わせ

意見書は、審査官の判断に対して「引用発明にはこの構成がない」「組み合わせる動機付けがない」「阻害要因がある」「有利な効果がある」と反論する書面です。補正書は、特許請求の範囲や明細書を直す書面で、出願当初の明細書等に記載した事項の範囲内で行う必要があります(17条の2第3項:新規事項の禁止)。実務で最も多いのは、補正で引用発明との違いを明確にし、意見書でその違いに進歩性があると論証する組み合わせです。最初の拒絶理由通知への応答は、請求項を自由に組み直せる最後の機会ですから、後の限定的減縮に使える従属項をこの段階で整えておくことが重要です。

5. 主な拒絶理由と対応の型(29条・29条の2・36条・37条)

条文拒絶理由対応の型
29条第2項進歩性なし(引用発明から容易)主引用発明との相違点を確認→動機付け(技術分野・課題・作用・示唆)の有無を争う→阻害要因・有利な効果を主張→必要なら従属項の構成を繰り上げ
29条第1項新規性なし引用文献の記載との差を示す。差がなければ補正で限定
29条の2拡大先願(先に出願され後に公開された他人の出願と同一)同一性の否定。発明者・出願人が同一なら適用除外
36条第4項第1号実施可能要件違反技術常識で補えることを論証・実験成績証明書(開示の補強に限る)・請求項の限定
36条第6項第1号・第2号サポート要件・明確性要件違反明細書の記載を用いた補正で範囲を合わせる・用語を定義
36条第6項第4号マルチマルチクレーム(2022年4月以降の出願)従属関係の整理。→ マルチマルチクレームとは
37条発明の単一性違反審査対象外とされた請求項を削除し、必要なら分割出願へ
17条の2第3項新規事項の追加当初明細書の記載に戻す補正

ソフトウェア関連の拒絶理由(発明該当性・進歩性・記載要件)の具体例は、ソフトウェア特許の拒絶理由あるある5選で解説しています。

6. 最後の拒絶理由通知:補正は4類型に限られる

最初の拒絶理由通知への補正によって新たに拒絶理由が生じた場合、審査官は「最後」の拒絶理由通知を行います。この後の特許請求の範囲の補正は、特許法17条の2第5項により次の4つを目的とするものに限られます。

許される補正(17条の2第5項)注意点
① 請求項の削除常に可
② 特許請求の範囲の減縮(限定的減縮発明特定事項を限定するもので、産業上の利用分野と課題が同一の場合に限る。補正後の請求項は独立して特許可能であること(17条の2第6項)。→ 限定的減縮とは
③ 誤記の訂正
④ 明らかでない記載の釈明拒絶理由通知で指摘された事項に限る

違反すると補正が却下される

4類型に当てはまらない補正は、審査官が決定をもって却下します(53条)。却下の決定には単独では不服を申し立てられず、拒絶査定不服審判の中で争うことになります。却下されると補正前の請求項で判断されるので、最後の拒絶理由通知への補正は「どの類型に当たるか」を明示できる形で起案します。

7. 応答しないとどうなる:拒絶査定→審判・前置審査・分割

応答しないと出願が取り下げられるのではなく、拒絶査定がされます。拒絶査定の謄本送達から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求でき(121条。在外者には特許法4条により職権で60日延長)、審判請求と同時に補正をすると前置審査(162条)として審査官が再度審査し、そこで特許査定になることも多くあります。また、最初の拒絶査定の謄本送達から3か月以内なら分割出願も可能です(44条第1項第3号)。→ 分割出願のメリット・期限・費用

なお、拒絶理由通知は審査請求をして初めて届きます。審査請求の期限・料金・減免は 出願審査請求とは をご覧ください。

まとめ

  • 拒絶理由通知は反論の機会(50条)。未応答なら拒絶査定に進む
  • 期限は発送日から国分60日・在外者3か月。期間内+2か月(2,100円)、経過後2か月以内なら+2か月(51,000円)
  • 最初の通知への応答が、請求項を自由に組み直せる最後の機会
  • 最後の拒絶理由通知後の補正は4類型のみ。違反は却下
  • 拒絶査定後は3か月以内に審判(補正付きなら前置審査)か分割出願

拒絶理由通知への対応をご検討の方へ

通知書の写しをお送りいただければ、応答の方針と見積もりをご案内します。国内移行済みの海外案件・他事務所からの引継ぎも承っています。

お問い合わせフォームへ

よくある質問

拒絶理由通知が来たらもう特許は取れないのですか?
いいえ。拒絶理由通知は「このままだと拒絶するので意見を述べてください」という手続(特許法50条)で、審査の通常の一工程です。意見書で反論するか、補正書で請求項を直すか、あるいは両方を行うことで、多くの案件が登録に至ります。
応答期限はいつまでですか?延長はできますか?
通知書の発送日から、国内居住者は60日、在外者は3か月です(方式審査便覧04.10)。期間内の請求で国内は2か月、在外者は2か月+1か月(各手数料2,100円・理由不要)延長でき、期間経過後でも2か月以内の請求で⬚2か月(手数料51,000円)延長できます(2016年4月以降の運用)。ただし期間内に延長済み、または意見書・補正書を提出済みの場合は経過後延長はできません。
応答しないとどうなりますか?
出願が取り下げられるのではなく、拒絶査定がされます(49条)。拒絶査定の謄本送達から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求でき(121条)、同じく3か月以内に分割出願もできます(44条)。
「最後の拒絶理由通知」とは何が違うのですか?
最初の通知への補正によって新たに生じた拒絶理由を通知するときに「最後」とされ、その後の特許請求の範囲の補正は、請求項の削除・限定的減縮・誤記の訂正・明らかでない記載の釈明の4つに限られます(17条の2第5項)。違反すると補正が却下されます(53条)。
意見書と補正書はどう使い分けますか?
意見書は「審査官の判断は誤りである」と反論する書面、補正書は請求項や明細書を直す書面です。実務では「補正で引用発明との違いを明確にし、意見書でその違いに進歩性があると論証する」組み合わせが最も多く、両方を同時に提出します。

免責・注意事項

本記事は2026年9月時点の法令・特許庁の運用に基づく一般的な情報提供であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。期間・手数料・運用は変更されることがあり、具体的な期限は実際に発送された書面によります。

出典

杉浦健文 弁理士

AUTHOR / 執筆者

杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)

知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士

特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。