スウェーデンは人口約1,060万人、1人当たりGDPが約5万7,000米ドルの北欧最大の経済国で、ボルボ、エリクソン、IKEA、H&M、スポティファイなど世界的なブランドを生んできた「ブランド大国」です。日本からの輸出は2024年に約2,259億円、スウェーデンからの輸入は約4,586億円で、約167社の日本企業が拠点を置き、日本からの直接投資残高は約2.1兆円に達します。2024年のNATO加盟、防衛・エネルギー・バッテリー分野での投資拡大を背景に、スウェーデンでの商標保護の相談が増えています。
スウェーデンの商標制度は、2010年商標法(Varumärkeslag 2010:1877)に基づき特許登録庁(PRV)が登録する国内商標と、EU全域をカバーするEU商標(EUTM)、そしてマドリッド協定議定書(マドプロ)によるスウェーデン指定の3つのルートで構成されます。PRVは、EUIPOや多くの欧州の官庁と異なり、先行商標との抵触を職権で審査し、異議申立は登録後3か月、不使用取消は5年で、PRVの行政取消手続という安価な制度もあります。侵害事件は2016年に設立された特許・市場裁判所が一元的に扱い、2020年には最長6年の拘禁刑を科す「重大商標犯罪」が導入されました。本記事では、商標法の条文、PRVの公式手数料表と統計年鑑、特許・市場上級裁判所の判決、税関の統計、外務省のデータを一次資料として、出願から異議・取消・権利行使・EUTMとの使い分けまでを弁理士が実務目線で整理します。
この記事のポイント
目次
スウェーデンの商標の根拠法は2010年商標法(Varumärkeslag 2010:1877)です。2019年1月1日にEU商標指令2015/2436を実施する大改正(2018:1652)が施行され、図で表せない商標の登録、悪意の出願の拒絶、異議や取消での使用証明の要求、通過貨物に対する権利などが整備されました。2020年9月1日には刑事罰を強化する改正(2020:545)が施行され、「重大商標犯罪」が新設されています。
登録官庁は特許登録庁(Patent- och registreringsverket、PRV)で、ストックホルムに本部があります。商標権は登録(1章6条)のほか、使用による周知(inarbetning)によっても発生し(1章7条)、商号や人名にも商標としての保護が及びます(1章8条)。登録には出願日の順位が与えられ、パリ条約の優先権は6か月です。
スウェーデンはEU加盟国ですから、EU商標(EUTM)もスウェーデンで効力を持ちます。商標に関する訴訟は、2016年9月1日に設立された特許・市場裁判所(Patent- och marknadsdomstolen、ストックホルム地方裁判所内)が国内商標・EU商標とも一元的に扱い、控訴審は特許・市場上級裁判所(スヴェア高等裁判所内)です。PRVの決定への不服申立も同じ裁判所系統が審理します。日本企業にとって重要なのは、PRVが先行商標を職権で審査する登録主義の国であり、審査の運用が日本に近い一方、異議が「登録後」に行われる点や、安価な行政取消制度がある点が異なるということです。
PRVの統計年鑑によれば、2025年の国内商標出願は6,921件で前年比7.8%増でした。2021年の8,685件をピークに減少が続いていましたが、2025年に反転しています。マドプロ経由でスウェーデンを指定する国際出願は4.5%減、国内登録件数は2024年とほぼ同数でした。スウェーデン企業はEUTMとマドプロを積極的に使う傾向が強く、国内出願の件数自体は人口規模の割に多くありません。
WIPOの統計プロファイルによれば、2024年のスウェーデン出願人による商標出願は区分数ベースで43,128区分(世界31位)で、うち国外出願が21,719区分、国外出願の62.1%がマドプロ経由です。日本との関係では、日本からの輸出は道路車両・電気機器・一般機械、輸入は医薬品・電気機器・木材が中心で、2024年の訪日スウェーデン人は約5.2万人に回復しています。
| 指標 | 数値 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内商標出願(2025年) | 6,921件(+7.8%)。2021年8,685/2022年6,694/2023年6,455/2024年6,423 | PRV統計年鑑2025 |
| 2026年1〜8月の出願 | 5,017件(前年同期4,352件) | PRV商標統計(月次) |
| スウェーデン出願人の商標出願(2024年) | 43,128区分(世界31位)。国内21,409・国外21,719。マドプロ国際出願756件(世界18位) | WIPO統計プロファイル |
| 人口/GDP/1人当たりGDP | 約1,059万人/約6,037億米ドル/約57,020米ドル(2024年) | 外務省(IMF) |
| 対日貿易(2024年) | 日本→スウェーデン2,259億円/スウェーデン→日本4,586億円 | 外務省(財務省貿易統計) |
| 日系企業/在留邦人/直接投資残高 | 約167社(2023年10月)/4,776人(2024年10月)/2兆774億円(2024年末) | 外務省 |
| 為替 | 1クローナ≒15.71円(2025年9月平均) | 外務省(スウェーデン中央銀行) |
商標法1章4条は、文字、人名、図形、文字・数字、色彩、音、商品や包装の形状など、自他商品識別力があり、登録簿上で明確に表示できるあらゆる標識を商標として認めています。2019年の改正で図形的表示の要件が外れ、音や動きの商標はデジタルファイルで出願できます。個別商標のほか、団体商標(kollektivmärke)と保証・管理商標(garanti- eller kontrollmärke)があり、地理的表示を含む標識も団体商標等としてなら登録できます(2章6条)。
PRVは出願を受けると、方式要件に加えて2章4〜10条のすべての拒絶理由を職権で審査します(2章17条)。識別力の欠如や記述性(2章5条)、商品の性質や技術的効果に由来する形状(4条)、公序良俗違反・誤認・国章・地理的表示との抵触・悪意の出願(7条)といった絶対的理由のほか、先行する登録商標・国際登録・周知標章・EU商標との同一・類似(8条)、先行する商号や人名(9条)、他人の氏名・肖像・著作物(10条)も審査対象です。拒絶理由がある場合はまず応答の機会が与えられ、解消しなければ全部または一部が拒絶されます(2章18条)。
先行商標の職権審査は、北欧諸国に共通する特徴です。EUIPOやベネルクスのBOIPは先行商標を審査しませんが、スウェーデンのPRVは日本の特許庁と同じく先行する類似商標を理由に拒絶します。先行権利者の同意書(2章11条)があれば拒絶は解消されるため、コンセント制度が実務上重要です。日本企業にとっては、出願前の調査がより直接的に結果に反映される一方、EU商標の方が先行商標の審査を受けないため「スウェーデンでは拒絶されたがEUTMでは登録できた」という場面も起こりえます。
商標権の効力(1章10条)は、同一商品での同一商標の使用、類似範囲での混同のおそれがある使用、そして国内で取引者・需要者の相当部分に知られた商標について正当な理由なく識別力や名声を利用・毀損する使用に及びます。2019年改正で、商号としての使用や、スウェーデンを通過するだけの貨物に対する権利も明文化されました。
出願はPRVのオンラインサービスから行うのが標準で、出願人の名称・住所、商標の明確な表示、商品・役務のリストと区分を記載します(2章1条)。多区分出願が可能で、委任状は原則として不要です。言語はスウェーデン語が原則ですが、英語の商品・役務リストも受け付けられ、PRVの事前承認済みリストから選べばオンライン料金が適用されます。出願日は、出願の意思表示、出願人名、商標の表示、商品役務リストがそろった日に認定されます(2章1a条)。パリ条約の優先権は6か月以内に主張し、PRVから求められれば優先権証明書を提出します(2章14・15条)。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 審査 | 方式・絶対的理由・先行商標等を職権で審査。拒絶理由があれば応答指令(2章17条) | 約6週間で最初の回答(PRV公表の現在の処理期間)。サービス約束は8週間以内 |
| 応答 | 指定期間内に補正・反論。無応答なら出願は取下げ扱い、2か月以内に再開料(500クローナ)で復活可(2章20条) | 指定期間 |
| 登録・公告 | 拒絶理由がなければ登録し、登録証を発行、スウェーデン商標公報に公告(2章23条) | 審査完了後すぐ |
| 異議期間 | 公告日から3か月(2章24条)。異議がなければ登録が確定 | 3か月 |
拒絶理由がなければ出願から2〜3か月程度で登録され、その後3か月の異議期間を経て確定します。日本では登録まで半年以上かかるのが通常ですから、スウェーデンは欧州の中でも特に速い部類です。拒絶が確定した場合は特許・市場裁判所に不服を申し立てます。
PRVの手数料は2025年4月25日に改定され、オンライン出願の基本料金が2,700クローナになりました。以下はPRV公式手数料表の主な項目で、円換算は1クローナ≒15.7円の概算です。手数料は出願が拒絶されても返還されません。
| 項目 | 庁費用(クローナ) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 出願(オンライン、1区分を含む) | 2,700。追加1区分ごとに1,000 | 約4.2万円(3区分で約7.4万円) |
| 出願(紙・その他の方法、または事前承認外の商品役務を含む場合) | 3,900。追加1区分ごとに1,000 | 約6.1万円 |
| 更新(オンライン、1区分を含む) | 2,700。追加1区分ごとに1,000。満了後の遅延更新は1区分200加算 | 約4.2万円 |
| 移転の登録 | 1,000/件 | 約1.6万円 |
| 出願・登録の分割 | 1,800/件 | 約2.8万円 |
| 異議申立 | PRVの手数料なし | — |
| 行政取消(PRV) | 900。相手方が争い裁判所に移送する場合は追加2,350 | 約1.4万円(移送時は計約5.1万円) |
| 特許・市場裁判所への提訴(侵害・無効) | 2,800 | 約4.4万円 |
比較対象として、EUTMのオンライン出願料は1区分850ユーロ(約14.9万円)、2区分目50ユーロ、3区分目以降150ユーロ/区分です。マドプロでスウェーデンを指定する個別手数料は1区分CHF 194、追加1区分ごとにCHF 76(更新も同額)で、1CHF≒185円とすると1区分約3.6万円と直接出願よりやや安くなります。代理人費用は別途必要で、日本の特許事務所を通じた直接出願では、庁費用と合わせて1区分あたりおおむね20〜35万円が相場です。
中小企業にはINPITの外国出願補助金が利用でき、スウェーデン出願やマドプロ指定の費用の2分の1が補助対象になります。
スウェーデンの異議申立は登録後の制度です。PRVが登録を公告した日から3か月以内に書面でPRVに申し立てます(2章24条)。期間を過ぎた申立ては却下され、延長はありません。申立人の資格に制限はなく、誰でも申し立てられますが、先行商標など他人の権利(8〜10条)を理由とする異議を権利者以外が申し立てた場合、商標権者が求めれば退けられます(2章29条2項)。異議の理由は登録を妨げる2章4〜10条のすべての事由で、絶対的理由と相対的理由の両方を主張できます。
PRVは異議を商標権者に通知して意見を求め(2章26条)、両当事者の求めがあれば最低2か月の和解交渉期間を設定します(2章27条)。先行する登録商標を根拠とする場合、後行商標の出願日の時点でその登録確定から5年を超えていれば、商標権者は申立人に過去5年の真正な使用の証明を求めることができ、証明がなければ異議は退けられます(2章30条)。PRVは、書面のやり取りが終わってから約3か月で決定を出しています。異議が認められると登録は全部または一部が取り消され、決定への不服は特許・市場裁判所に申し立てます。
異議申立にPRVの手数料はかかりません。PRVの公式手数料表に異議申立の項目はなく、申立ての費用は代理人費用だけです。日本の登録異議申立と同じく登録後の制度で、期間も3か月と近いため、日本企業には馴染みやすい仕組みです。ただし、PRVが先行商標を職権で審査しているとはいえ、周知性や取引実情に基づく主張は異議で補う必要があり、スウェーデン商標公報の監視は欠かせません。
登録商標は、登録の確定から5年以内にスウェーデン国内で真正な使用を開始しないか、5年間継続して使用を中断すると、正当な理由がない限り取消の対象になります(3章2条)。登録と識別力を変えない範囲での変形使用や、輸出専用に国内で商標を付す行為も使用に当たり、権利者の同意を得た第三者の使用も権利者の使用とみなされます。取消請求の前に使用を再開すれば取消を免れますが、請求の3か月前以降の再開は考慮されません。無効理由は、登録時に拒絶理由があったこと、普通名称化、公序良俗違反、誤認を生じる使用などで(3章1条)、先行商標を根拠とする無効請求では、請求人の商標について使用証明が求められることがあります(3章1a条)。
取消・無効の手続は2つあります。1つは特許・市場裁判所への訴え、もう1つはPRVの行政取消(administrativ hävning)です(3章5条)。行政取消は900クローナの手数料で申請でき、PRVが商標権者に送達して意見を求めます。商標権者が期限内に争わなければ、PRVはそのまま登録を取り消します(3章15条)。商標権者が争った場合はPRVは判断せず、申請人は1か月以内に裁判所への移送を求めることができ(3章13条)、移送後は追加手数料2,350クローナを払って通常の訴訟として続行されます。日本の不使用取消審判のように特許庁が実体判断をするのではなく、「争われなければ安価に抹消、争われれば裁判所」という割り切った設計です。
実務では、先取り登録や放置された登録を整理するために行政取消が広く使われています。商標権者が反応しないケースは多く、数か月・1万円台の費用で障害を除去できる可能性があります。一方、権利者が本気で争う案件では最初から裁判所に提訴したほうが早い場合もあります。
登録の存続期間は出願日から10年で(2章34条)、10年ごとに何度でも更新できます。更新申請は満了の6か月前から満了後6か月までに行い(2章35条)、満了後の申請には1区分200クローナが加算されます。更新料の納付自体が更新申請とみなされ、一部の区分だけの更新も可能です。期限内に更新されなければ登録簿から抹消されます(2章37条)。PRVはオンライン更新を2週間程度で処理しています。
登録後に使用宣誓や使用証拠を提出する義務はなく、更新時にも使用の証明は不要です。使用が問題になるのは、第三者が取消を請求したとき、異議や無効の相手方が使用証明を求めたとき、そして侵害訴訟で被告が不使用を主張したときです。各国の登録後の維持義務は主要国の商標維持義務の比較記事で整理しています。
商標法に基づく訴訟とEU商標規則124条の事件は、特許・市場裁判所が専属管轄です(10章1条)。同裁判所は2016年9月1日にストックホルム地方裁判所の一部として設立され、知財・競争法・マーケティング法の事件をほぼすべて集中して扱います。控訴審はスヴェア高等裁判所内の特許・市場上級裁判所で、多くの事件で控訴許可が必要です。提訴手数料は2,800クローナで、敗訴者が勝訴者の訴訟費用(代理人費用を含む)を負担するのが原則です。
救済としては、違反時に制裁金(vite)を課す差止命令(8章3条)、使用の対価に相当する合理的な補償と逸失利益・侵害者利益・信用毀損・無形損害を考慮した損害賠償(8章4条)、侵害品の回収・改変・廃棄(8章7条)、判決の公表(8章8条)、流通経路の情報開示命令と証拠保全のための侵害調査(9章)が認められています。侵害の蓋然性と権利の価値が損なわれるおそれを示せば、担保を提供して本案判決前の仮差止を得ることができ(8章3条2項)、申立てから判断まではおおむね4〜8週間が目安です。
故意または重過失による商標権侵害は商標犯罪として罰金または2年以下の拘禁刑、故意で特別な計画性、組織的犯罪の一環、大規模、または特に危険な態様に当たる場合は重大商標犯罪として6か月以上6年以下の拘禁刑に処されます(8章1条、2020年9月1日施行)。未遂・予備も処罰され、侵害品は没収されます。検察官は公益上必要な場合にのみ起訴します。日本の商標法78条(10年以下の懲役)より上限は低いものの、2020年の改正で組織的な模倣品取引への抑止力が強化されました。
2026年1月20日の特許・市場上級裁判所判決(PMB 1105-25)では、ルイ・ヴィトン、アディダス、ナイキ、ヒューゴ・ボス、アップルなどの模倣品(衣類、帽子、スカーフ、靴、イヤホン、充電器)を数年にわたり輸入・販売した3名のうち主犯格に、重大商標犯罪2件を含む罪で拘禁刑1年4か月と3年間の事業禁止、ルイ・ヴィトンへの合計約73万クローナの賠償などが命じられました。裁判所は「事業として組織的・計画的に数年間繰り返された」ことを量刑で重視しています。他の2名は執行猶予付き判決と日数罰金でした。
スウェーデン税関(Tullverket)は、EU規則608/2013に基づく税関申立(AFA)がある場合はもちろん、職権でも疑わしい貨物を差し止め、権利者に鑑定を求めます。申立てはEUIPOの知財執行ポータル(IPEP)から電子的に行い、スウェーデンのみ、EU全域、特定の加盟国のいずれかを対象に選べます。並行輸入品と旅行者の個人荷物は対象外です。税関は2023年に72,347点の模倣品を差し止め(2022年は18,118点)、2024年には偽ブランド衣料だけで6,059点を押収しました。税関は「ネットで模倣品を注文する人が増えている」とし、差し止められるのは流入のごく一部だと説明しています。PRV、消費者庁、医薬品庁、警察、検察と税関が連携する「模倣品対策の官庁協働」の枠組みもあります。
ホテル事業者が保有する国際登録(図形商標)のスウェーデンにおける効力について、第一審は不使用による取消を認めましたが、特許・市場上級裁判所は、商標権者が登録された形またはそれと識別力を変えない形で対象役務について真正な使用をしていたと認定し、取消請求を棄却しました。登録とは多少異なる形での使用や、サービス業における使用証拠の評価が争点となった事例で、使用証拠の保存の重要性を示しています。最高裁への上告は許可されませんでした。
競馬・トロット競走の運営会社AB Trav och Galopp(ATG)が、衣料ブランド「All Terrain Gear」に対し、EU商標「ATG」などへの侵害を主張した事件です。第一審は侵害を認めましたが、上級裁判所は衣料分野でのEU商標ATGとの混同のおそれはないとし、著名性に基づく拡大保護の主張も証拠不十分として、請求を棄却しました。EUIPOに係属中の無効申立てを理由に手続を中止する必要もないと判断しています。
PRVは2025年4月25日に商標手数料を改定し、2025年の国内出願は7.8%増の6,921件、2026年も1〜8月で5,017件と前年同期を上回っています。処理期間は新規出願で約6週間、異議は書面審理終了後約3か月と公表されており、サービス約束として8週間以内の実体審査を掲げています。
スウェーデンで商標を守る手段は3つあります。スウェーデンはマドプロの加盟国で、国際登録で直接指定できます。
| 項目 | 国内商標(PRV直接出願) | マドプロでスウェーデン指定 | EU商標(EUTM) |
|---|---|---|---|
| 効力の範囲 | スウェーデン | スウェーデン | EU27か国 |
| 庁費用(1区分) | 2,700クローナ(約4.2万円) | CHF 194(約3.6万円)+基本手数料 | 850ユーロ(約14.9万円) |
| 登録までの期間 | 約2〜3か月+異議3か月 | 拒絶通報期限まで最長18か月 | 約4〜6か月 |
| 先行商標の影響 | PRVが職権審査。同意書で解消可 | 同左(PRVが審査) | 職権審査なし。ただし27か国のどこか1か国の先行商標で全体が拒絶されうる |
| 異議 | 登録後3か月、手数料なし | 同左 | 公告後3か月、320ユーロ |
| 向いている場面 | スウェーデンが主市場、速く確実に登録したい、EUTMが先行商標で難しい | 北欧数か国など他国とまとめて管理したい | 欧州全域で展開、税関対策を重視 |
欧州全域を対象にする場合はEUTMが基本です。スウェーデンが主市場なら、国内出願で2〜3か月で登録を得てから、EUTMやマドプロで北欧のノルウェー(EU非加盟)やフィンランド・デンマークに広げる設計が現実的です。北欧4か国はいずれもマドプロ加盟国で、ノルウェーはEUTMでカバーできないためマドプロ指定が必須になります。
| 項目 | スウェーデン | 日本 |
|---|---|---|
| 根拠法・官庁 | 2010年商標法・特許登録庁(PRV) | 商標法・特許庁 |
| 先行商標の審査 | 職権で審査(同意書で解消可) | 職権で審査(2024年からコンセント制度) |
| 登録までの期間 | 約2〜3か月 | 約6〜10か月(早期審査あり) |
| 異議申立 | 登録後、公告から3か月、何人も可、手数料なし | 登録後、公報から2か月、何人も可 |
| 存続期間 | 出願日から10年 | 登録日から10年 |
| 不使用取消 | 5年。PRVの行政取消(争われれば裁判所)または裁判所 | 3年。特許庁の審判 |
| 侵害訴訟 | 特許・市場裁判所の専属管轄。敗訴者が費用負担 | 東京・大阪地裁など。弁護士費用の回収は限定的 |
| 刑事罰 | 2年以下。重大商標犯罪は6か月〜6年 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(78条) |
| 使用による権利 | 周知により未登録でも商標権が発生(1章7条) | 登録主義。周知商標は不正競争防止法で保護 |
PRVは新規出願に約6週間で最初の回答を出しており、拒絶理由がなければ出願から2〜3か月程度で登録されます。登録後に3か月の異議期間があり、異議がなければ登録が確定します。マドプロでスウェーデンを指定した場合は、拒絶通報の期限が18か月なので、権利が確定するまでの期間は直接出願より長くなります。
調べます。PRVは識別力などの絶対的理由に加えて、先行する登録商標・国際登録・EU商標・周知標章・登録商号との抵触を職権で審査し、抵触があれば拒絶します。先行権利者の同意書を提出すれば拒絶は解消されます。EUIPOやベネルクスのBOIPが先行商標を審査しないのとは対照的で、日本の特許庁に近い運用です。
EUTMはスウェーデンを含むEU全域で効力を持つので、通常はEUTMだけで足ります。ただし、EUTMが他国の先行商標を理由に拒絶や無効のリスクを抱えている場合や、スウェーデンで速く確実な権利が必要な場合は、国内出願を併用する価値があります。北欧全体を対象にするなら、EUTMでカバーできないノルウェーをマドプロで指定する設計も必要です。
登録確定から5年を経過して使用されていなければ、PRVに行政取消を申請できます。手数料は900クローナで、商標権者が期限内に争わなければPRVがそのまま登録を取り消します。争われた場合は1か月以内に特許・市場裁判所への移送を求め、追加手数料2,350クローナを払って訴訟として続行します。相手が同意する見込みがあれば、同意書を取得して自社の出願を進める方法もあります。
EUIPOの知財執行ポータル(IPEP)からEU規則608/2013に基づく税関申立を提出し、輸入段階で差し止める体制を作るのが第一です。国内で流通している模倣品には、警告状の後、特許・市場裁判所に仮差止を申し立てます。仮差止は4〜8週間程度で判断され、勝訴すれば代理人費用も回収できます。組織的な取引には、2020年に導入された重大商標犯罪(6か月〜6年)による刑事告発も選択肢で、2026年には上級裁判所が模倣品販売者に拘禁刑1年4か月を言い渡しています。
スウェーデンでは、国内の取引者・需要者の相当部分に知られるまで使用された標識(inarbetning)には登録なしで商標権が発生します(商標法1章7条)。ただし、周知性の立証には多額の費用と証拠が必要で、保護範囲も周知の地域に限られます。日本企業が実務上頼れるのは登録ですから、使用開始前に出願するのが原則です。
スウェーデンの商標制度は、2010年商標法に基づきPRVが先行商標まで職権で審査する登録主義で、審査は約6週間、登録後3か月の異議、出願日起算の10年、5年の不使用取消が骨格です。異議は手数料なし、行政取消は900クローナと安価で、争われた場合は特許・市場裁判所に移る割り切った設計が特徴です。侵害訴訟は専門裁判所が扱い、仮差止は4〜8週間、費用は敗訴者負担、刑事では2020年導入の重大商標犯罪が組織的な模倣品取引に適用され始めています。日本企業には、国内出願の速さと確実さを活かしつつ、EUTMとマドプロ(特にEU非加盟のノルウェー)を組み合わせて北欧全体を設計することをおすすめします。
各国の商標制度は世界の商標制度ガイドをご覧ください。
国内出願・EUTM・マドプロの使い分け、先行商標調査と同意書の取得、異議・行政取消への対応、税関申立と模倣品対策、INPIT外国出願補助金の申請まで、知的財産事務所エボリクスが一貫してサポートします。初回相談は無料です。
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年10月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。
※本記事は上記の資料を基に、2026年10月時点の情報で一般的な情報提供を目的として作成しています。手数料(円換算額)・運用・判例は変更されることがあります。スウェーデン語の法令原文と英訳の間に差異がある場合は原文が優先されます。個別案件の具体的判断には、専門家へのご相談を推奨します。