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【弁理士解説】商標は登録後も油断禁物|各国の使用証明・更新・維持義務 世界比較(約50か国)

各国の商標 登録後の維持義務(使用証明・更新)を弁理士が解説 EVORIX

商標は「登録できたら一安心」ではありません。登録後にも、国ごとに異なる"維持義務"があり、これを怠ると、せっかく取得した権利が取り消されたり失効したりします。特に海外に商標を多数保有する企業にとって、各国の「登録後制度」を把握することは、ブランド防衛の生命線です。

本記事では、弁理士が世界約50法域を横断調査し、①使用証明・使用宣言(米国のように自分から提出が必要な国)、②更新、③不使用取消、④その他の登録後義務を、一覧表+解説でまとめました。出典をすべて明記し、現地確認が必要な点・曖昧な点は注釈(※)で示しています。

本記事の前提:2026年6月時点の一般的な制度概要です。料金・期限・制度は改正され得るため、実際の出願・期限管理の前には、必ず現地代理人による最新確認を行ってください。各事項の確からしさ(確信度)と要確認点は、本文の注釈および末尾の「注釈・要確認事項」に記載しています。

商標は「登録して終わり」ではない

商標権を維持するために、登録後に求められる代表的な手続は次の3つです。

① 更新(renewal):原則10年ごと。最も基本的な維持手続。
② 使用証明/使用宣言の提出:一部の国で、決まった時期に"自分から"提出が必要。
③ 使用の継続(不使用取消への備え):一定期間使わないと第三者に取り消され得る。

このうち②と③が、国によって大きく異なり、見落とすと致命傷になります。順に見ていきましょう。

結論:登録後の維持は「3類型」に分かれる

類型内容代表国
① 米国型(使用証明を能動提出)決まった時期に使用宣言を自分から提出。怠ると取消米・墨・比・亜・柬
② 欧州型(提出不要・争訟時に立証)定期提出は不要。一定期間で不使用取消の対象になり、争われた時に使用を立証欧州全般・日中韓・中東アフリカの大半・豪NZ(=多数派)
③ 更新付随型更新時に簡易な使用宣言書(証拠不要)インドネシア

💡 要点:「米国のように使用証明を能動的に出す国」は世界では少数派。しかしその少数を見落とすと自動取消になるため、国別の期限管理が決定的に重要です。

【初心者向け】用語解説 ― 「定期宣言」「不使用」ってなに?

一覧表に入る前に、本記事で出てくる用語をやさしく整理します。まずここを読めば、表がぐっと読みやすくなります。

① まず押さえる基本用語

更新(renewal)

商標権の有効期限を延ばす手続きです。多くの国で10年ごとに行います。期限を過ぎて放置すると権利が消えてしまいます。
たとえ/例 運転免許の更新と同じイメージ。期限が来たら手続きしないと失効する。

存続期間

商標権が有効な期間のこと。多くの国で登録(または出願)から10年です。更新すれば何度でも・半永久的に延長できます(特許のように20年で必ず切れる、ということはありません)。

猶予期間(グレースピリオド)

更新の期限をうっかり過ぎても、一定期間(多くは6ヶ月)なら追加料金を払えば更新できる救済期間です。ただし国によって長さが違い、短い国もあります(例:UAEは3ヶ月、ケニアは約30日)。

定期宣言(=使用宣言/使用証明)

「この商標をちゃんと使っています」と、決まった時期に自分から特許庁へ申告・証明する手続きです。米国・メキシコ・フィリピン等で必要。出さないと、たとえ使っていても登録が取り消されます
たとえ/例 「使用していることの定期報告」。提出を忘れると権利が消えるので、最も注意すべき手続き。

不使用(non-use)/不使用取消

登録したのに一定期間(3年または5年)使っていない商標は、第三者の請求によって取り消され得ます。これを「不使用取消」といいます。「使う気がないなら他人に道を譲って」という考え方です。
たとえ/例 英語の標語「Use it or lose it(使わなければ失う)」。倉庫に眠らせた商標は守られにくい。

真正使用(genuine use)

形だけ・名目だけでなく、実際に商業として本当に使っていること。不使用取消や侵害訴訟で争われたときに、「ちゃんと使っている証拠」として求められます。
たとえ/例 数個だけ販売した形跡では不十分とされることがある。継続的な販売・広告などの実態が必要。

② 表の「特記」欄に出てくる用語

recordal(譲渡・ライセンスの登録)

商標を売買(譲渡)したり、他社に使わせる契約(ライセンス)をしたとき、それを特許庁の登録簿に記録する手続きです。
たとえ/例 不動産を売ったら「登記」するのと同じ。記録しておかないと後でトラブルになる。

効力要件 と 対抗要件(違いに注意)

効力要件=登録しないと、譲渡やライセンスそのものが法的に効力を持たない(例:ロシア・ベトナム・ミャンマー)。対抗要件=当事者の間では有効だが、登録しないと第三者に「自分のものだ」と主張できない

registered user(登録使用権者)

ライセンス(使わせてもらう側)を登録簿に記録する制度です。これを登録しておかないと、ライセンシーの使用を「自分の商標を使っている証拠」として不使用取消の防御に使えない国があります(ケニア・南アフリカ・ナイジェリア等)。

送達宛先(address for service)

その国・地域の中に、特許庁からの通知を受け取る住所や代理人を置くこと。これがないと手続きを進められない国があります(香港・オーストラリア・NZ・エジプト等)。

マドプロ(マドリッド協定議定書)/ §71

1つの国際出願で、まとめて複数国に商標出願できる便利な制度です。ただし米国を指定した場合は、別途「§71」という使用宣言の提出が必要で、これを忘れると取り消されます(マドプロでも油断は禁物)。

§8宣誓書(米国)/ §45(カナダ)

米国の§8=定期的に出す使用宣言(5-6年目・9-10年目・以後10年毎)。カナダの§45=第三者の請求などで「使用の証拠を出しなさい」と求められる略式の不使用手続き(こちらは定期提出ではない)。

GCC統一商標法

湾岸協力会議(UAE・サウジアラビア・カタール・クウェート等)が2016年から採用した共通の商標ルールです。加盟国が同じ枠組み(存続10年・不使用5年・定期宣言なし)で運用されています。

アンデス共同体/Decision 486

コロンビア・ペルー・エクアドル・ボリビアの4か国が共有する超国家的な知財ルール(共通規範)。4か国共通で不使用取消は連続3年1か国で使えば、他の加盟国の権利も守れるのが特徴です。

OAPI/ARIPO(アフリカの広域登録)

OAPI=仏語圏アフリカ17か国に、1件の登録が一体として及ぶ(国別に分けられない)。1か国での使用で全域を守れます。ARIPO=出願時に保護したい国を「指定」する方式で、取消・不使用の扱いは各指定国の国内法に従う

comparable UK marks(英国)

英国のEU離脱(Brexit)に伴い、従来のEU商標(EUTM)から自動的に複製された英国版の商標権のこと。EU分とは別に、英国での使用維持を意識する必要があります。

TPTO行政取消(トルコ/2024年〜)

トルコでは2024年1月から、不使用などを理由とする取消が裁判所ではなく特許商標庁(TPTO)の行政手続きでできるようになりました。手続きが身近・迅速になった重要な制度変更です。

チリ「2022年新法で不使用取消を初導入」

チリは2022年5月施行の新産業財産法(Law 21.355)まで、そもそも不使用取消の制度自体がありませんでした。新法で初めて「5年の不使用取消」が導入された、という意味です。

💡 ここだけ覚えればOK:商標は ①更新(期限を延ばす)②使用宣言(一部の国で"使っています"と報告)③使い続ける(使わないと不使用取消)— この3つで維持します。次の一覧表で、国ごとの違いを見ていきましょう。

使用証明・使用宣言が"必要"な国(世界で少数派)

登録後に使用証明・使用宣言の提出が必要な代表国は次のとおりです。提出時期は国ごとに全く異なります。

制度提出時期未提出の効果
🇺🇸 米国§8宣誓書(§9更新/マドプロは§71)登録5-6年9-10年/以後10年毎取消
🇲🇽 メキシコ使用宣言登録3周年から3ヶ月以内+更新時自動取消
🇵🇭 フィリピンDAU(実際使用宣言)出願3年/登録5周年更新後1年取消
🇦🇷 アルゼンチン中間使用宣言登録5-6年目不使用推定+更新ブロック
🇰🇭 カンボジア使用/不使用宣誓書登録5周年後1年以内+更新後も自動取消(2023〜厳格運用)
🇮🇩 インドネシア使用宣言書(更新付随)更新時のみ(証拠不要)更新不受理
(参考・本記事対象外)モザンビーク=使用意思宣言/リベリア 等

マドプロ経由でも油断禁物:マドリッド協定議定書(マドプロ)で海外商標を取得した場合でも、米国(§71)・メキシコ・カンボジアなどは使用宣言の提出義務を免れません。「マドプロだから一括管理で安心」という思い込みが、取消の典型的な原因になります。

一覧表|南北アメリカ

凡例:「定期宣言」=米国型の使用証明の能動提出/「不使用」=不使用取消の脆弱期間

定期宣言存続期間/更新猶予不使用特記
🇺🇸 米国あり10年/6ヶ月3年§8/§9/§71、外国出願人は米国弁護士の選任必須
🇨🇦 カナダなし10年(旧15年)/6ヶ月3年使用宣言は2019年改正で廃止。§45で不使用立証要求あり
🇲🇽 メキシコあり10年/6ヶ月3年3周年宣言+更新時宣言
🇧🇷 ブラジルなし10年/6ヶ月5年現地代理人必須
🇦🇷 アルゼンチンあり10年/6ヶ月5年中間使用宣言
🇨🇱 チリなし10年/6ヶ月5年2022年新法で不使用取消を初導入(旧法は取消制度なし)
🇨🇴 コロンビアなし10年/6ヶ月3年アンデス共同体(Decision 486)・1加盟国の使用で全域防御
🇵🇪 ペルーなし10年/6ヶ月3年アンデス共同体(同上)
🇪🇨 エクアドルなし10年/6ヶ月3年アンデス共同体(同上)
🇧🇴 ボリビアなし10年/6ヶ月3年アンデス共同体(同上)
🇺🇾 ウルグアイなし10年/6ヶ月5年2019年に不使用取消を導入
🇵🇾 パラグアイなし10年/—5年 ※1年数は要一次確認
🇻🇪 ベネズエラなし15年 ※2/6ヶ月2年世界最短の脆弱期間。適用法令に曖昧性

一覧表|欧州

欧州型の本質:欧州主要国は定期的な使用証明の提出は不要。ただし登録から原則5年経過すると不使用取消の対象になり、異議・無効・侵害の場面で「真正使用(genuine use)」の立証を求められます。「普段は出さないが、争われたら立証できる証拠を保管する」のが実務です。
国/地域定期宣言存続期間/更新猶予不使用特記
🇪🇺 EUTMなし10年/6ヶ月5年EEA域外の権利者は代理人選任が必須
🇬🇧 英国なし10年/6ヶ月5年送達宛先要件・comparable UK marks(EUTM複製権利)の使用維持
🇩🇪🇫🇷🇮🇹🇪🇸 独仏伊西なし10年/6ヶ月5年EU商標指令で調和
🇧🇪🇳🇱🇱🇺 ベネルクスなし10年/6ヶ月5年BOIPで一括管理
🇨🇭 スイスなし10年/6ヶ月5年非EUだが欧州型
🇷🇺 ロシアなし10年/6ヶ月3年譲渡・ライセンス登録が強制(民法1232条)/現地登録弁理士が必須
🇹🇷 トルコなし10年/6ヶ月5年2024年〜取消権限が裁判所からTPTO(行政庁)へ移管

一覧表|アジア太平洋

国/地域定期宣言存続期間/更新猶予不使用特記
🇯🇵 日本 ※6なし10年/6ヶ月3年
🇨🇳 中国 ※6なし10年/12ヶ月3年不使用取消が活発・使用証拠の保全が重要
🇰🇷 韓国 ※6なし10年/6ヶ月3年
🇹🇼 台湾なし10年/6ヶ月3年
🇭🇰 香港なし10年/6ヶ月3年香港内の送達宛先が必須
🇮🇳 インドなし10年/6ヶ月(+回復1年)5年譲渡は記録が必須(立証要件)
🇮🇩 インドネシア更新時のみ10年/6ヶ月5年(2024変更)更新時に使用宣言書(証拠不要)
🇹🇭 タイなし10年/6ヶ月3年ライセンス登録が必須
🇻🇳 ベトナムなし10年/6ヶ月5年譲渡は登録が効力要件
🇲🇾 マレーシアなし10年/6ヶ月3年
🇸🇬 シンガポールなし10年/6ヶ月5年
🇲🇲 ミャンマーなし10年/6ヶ月3年2023年新制度・譲渡/ライセンスは記録が効力要件
🇦🇺 オーストラリアなし10年/6ヶ月3年不使用取消の申立可能時期に注意(出願時期で3年/5年)
🇳🇿 ニュージーランドなし10年/回復制度3年NZ/豪の送達宛先が必須

一覧表|中東・アフリカ・広域

国/地域定期宣言存続期間/更新猶予不使用特記
🇦🇪 UAEなし10年/3ヶ月5年GCC統一商標法
🇸🇦 サウジアラビアなし10年/6ヶ月5年GCC統一商標法
🇶🇦 カタール/🇰🇼 クウェートなし10年/6ヶ月5年GCC統一商標法
🇮🇱 イスラエルなし10年/猶予あり3年中東で例外的に不使用期間が短い
🇪🇬 エジプトなし10年/6ヶ月5年国内の送達宛先が必須
🇿🇦 南アフリカなし10年/6ヶ月5年registered user(登録使用権者)制度
🇳🇬 ナイジェリアなし初回7年→更新14年毎 ※3/1ヶ月5年存続期間が10年でない例外
🇰🇪 ケニアなし10年/約30日5年ライセンス登録が不使用防御に重要
🇲🇦 モロッコなし ※410年/6ヶ月5年譲渡は執行から3ヶ月以内に登録
🌍 OAPI(仏語圏17ヶ国)なし10年/6ヶ月5年単一登録が17ヶ国に一体で及ぶ・1国使用で全域防御
🌍 ARIPO(バンジュール議定書)なし10年/6ヶ月各国法依存 ※5指定国方式・効力は各指定国の国内法に従属

不使用取消|「3年型」と「5年型」

ほぼ全ての国に「一定期間使わないと取り消される」不使用取消制度があります。年数の違いは、海外ブランド管理の最重要ポイントです。

区分主な国
3年型(短い・要注意)日本・中国・韓国・台湾・香港・タイ・マレーシア・ミャンマー・豪・NZ・カナダ・米国・メキシコ・コロンビア/ペルー/エクアドル/ボリビア(アンデス)・ロシア・イスラエル
5年型欧州全般・インド・ベトナム・インドネシア・シンガポール・ブラジル・チリ・アルゼンチン・ウルグアイ・中東/アフリカの大半
2年(最短)ベネズエラ

💡 要点:特にロシア・イスラエル(3年)は欧州・中東で例外的に短く、休眠ブランドの取消リスクが高い国です。3年型の国では「登録後3年以内に使用を開始する」ことを逆算した管理が必要です。

存続期間の例外(ナイジェリア・ベネズエラ)

存続期間はほとんどの国で「10年・10年ごと更新」ですが、例外があります。

存続期間注意点
🇳🇬 ナイジェリア初回7年・更新後14年ごと ※3更新管理を「10年固定」に設定しているとミスにつながる
🇻🇪 ベネズエラ15年 ※22006年アンデス脱退後、1956年法の15年が適用とされるが、適用法令に曖昧性

その他の登録後義務(譲渡登録・代理人・送達宛先)

使用・更新以外にも、見落としやすい登録後の義務があります。

義務内容特に注意すべき国
譲渡・ライセンスの登録(recordal)権利移転やライセンスを庁に登録。多くの国で第三者対抗要件、一部で効力要件効力要件:ロシア・ベトナム・ミャンマー
registered user(ライセンス登録)ライセンス未登録だとライセンシーの使用を不使用取消の防御に使えないケニア・南アフリカ・ナイジェリア(英米法系)
現地の送達宛先(address for service)域内の送達先・代理人が必須香港・豪・NZ・エジプト 等
名義・住所変更の登録社名変更・移転時に全保有国で変更登録が必要全世界(M&A時に漏れやすい)
® 表示登録後のみ使用可。未登録での®使用が違法となる国あり各国

実務チェックリスト

① 使用証明国の期限を最優先で管理:米・墨・比・亜・柬。起算点(登録日/登録周年/出願日)が国ごとに異なる。

② マドプロ指定でも油断しない:米国(§71)・メキシコ・カンボジア等は要使用宣言。

③ 3年型の国は登録後3年以内に使用開始:日中韓台・露・イスラエル等。

④ 存続期間の例外を個別設定:ナイジェリア(7→14年)・ベネズエラ(15年)。

⑤ recordal漏れ防止:露・越・緬は効力要件、英米法系アフリカはregistered userで不使用防御。

⑥ 欧州・アジアは"使用証拠の保全":日付入りの実使用資料を継続的に保管。

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EVORIXは170カ国以上の現地代理人ネットワークで、世界各国の商標の出願・更新・使用証明・期限管理をワンストップで支援します。初回無料相談を承ります。

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よくある質問(FAQ)

Q. 商標は登録したら、その後は何もしなくてよいのですか?

A. いいえ。多くの国で①更新(原則10年ごと)が必要です。さらに、米国・メキシコ・フィリピン・アルゼンチン・カンボジア等では、登録後の決まった時期に「使用証明/使用宣言」を能動的に提出しないと取消されます。また、ほぼ全ての国で一定期間(3年または5年)使用しないと第三者から不使用取消を請求されるリスクがあります。

Q. 使用証明(使用宣言)の提出が必要な国はどこですか?

A. 本記事の調査では、登録後に定期的な使用証明・使用宣言の能動提出を課す代表国は、米国(§8宣誓書)、メキシコ、フィリピン(DAU)、アルゼンチン(中間宣言)、カンボジアです。インドネシアは更新時のみ簡易な使用宣言書(証拠は不要)を要します。欧州・日本・中国・韓国などの多数派の国では、定期提出は不要です。

Q. 更新の期間は何年ですか?

A. ほとんどの国で「登録(または出願)から10年、以後10年ごと」です。例外として、ナイジェリアは初回7年・更新後14年ごと、ベネズエラは15年とされています(適用法令に曖昧性あり・要確認)。猶予期間(多くは満了後6ヶ月)も国により異なります。

Q. 不使用取消とは何ですか?何年で対象になりますか?

A. 登録商標を一定期間使用していないと、第三者の請求により登録が取り消される制度です。年数は国により異なり、日本・中国・韓国・台湾やアンデス共同体(コロンビア・ペルー等)は3年、欧州・米国・ブラジル等は5年が一般的です。ベネズエラは2年と最短です。

Q. 海外の商標を多数保有しています。管理で特に注意すべき点は?

A. ①使用証明国(米・墨・比・亜・柬)の提出期限を最優先で管理、②マドプロ経由でも米国(§71)・メキシコ・カンボジアは使用宣言が必要、③不使用取消の年数(3年型/5年型)を踏まえ使用証拠を保全、④存続期間の例外(ナイジェリア・ベネズエラ)の更新管理、⑤譲渡・ライセンスの現地登録(recordal)漏れ防止です。

注釈・要確認事項

本記事の利用にあたって:以下は調査時点(2026年6月)で確認した一般情報です。特に下記の※印の項目は、現地確認が必要・または情報源間で差異がある事項です。実際の手続・期限管理の前に、必ず現地代理人で最新の取扱いをご確認ください。

  • ※1 パラグアイの不使用取消年数:5年が通説ですが、一次法令(Law 1294/98)での最終確認を推奨します(確信度MEDIUM)。
  • ※2 ベネズエラの適用法令・存続期間:2006年のアンデス共同体脱退後、1956年産業財産法(存続15年)の適用が宣言されましたが、最高裁がDecision 486(10年)の適用を完全には排除しておらず、適用法令に法的曖昧性が残ります。案件ごとに現地確認が必須です(確信度MEDIUM)。
  • ※3 ナイジェリアの存続期間:初回7年・更新後14年ごとという英国旧法系の制度です。更新猶予が短い(満了後1ヶ月)点にも注意してください(確信度HIGH)。
  • ※4 モロッコの「使用宣言なし」:複数の大手事務所情報で「使用は登録維持の要件でない」と一致しますが、一部の二次情報に「登録3年後に使用宣言が必要」との記載も見られたため、念のため現地(OMPIC実務)での最終確認を推奨します(否定の確信度MEDIUM-HIGH)。
  • ※5 ARIPO(バンジュール議定書)の不使用要件:取消・不使用の扱いは各指定国の国内法に従属します。指定国を確定したうえで、国ごとの確認が必要です(指定国にモザンビーク等が含まれると、国内の使用意思宣言義務が及ぶ場合があります)。
  • ※6 日本・中国・韓国:本横断調査の主対象外で、基礎制度の一般知識に基づき記載しています。詳細な手続・最新改正は別途ご確認ください。
  • その他:各国の更新猶予期間の正確な月数・割増額は年度により改定され得るため、提出直前に各庁の最新公示をご確認ください。中南米のチリ/コロンビア/ペルー等のうち一部は調査過程で再検証を要した項目があり、上表は現時点の整理です。

出典一覧

本記事は、各国の知的財産庁および WIPO Lex(世界知的所有権機関の法令データベース)等の一次情報と、各国の現地大手IP事務所・INTA/World Trademark Review(WTR)/IAM/ICLG 等の二次情報を相互に照合して作成しています。以下では、地域ごとに主たる根拠を文章で説明したうえで、参照した出典のフルURLを一覧で示します。なお、本文の注釈(※1〜※6)で示した「要確認」事項は、複数の情報源で見解が分かれる、または改正により変動し得るため、実務適用時には現地代理人による最新確認を推奨します。

南北アメリカ

米国の使用宣言サイクル(Section 8 宣誓書・Section 9 更新・Section 15 不可争性・マドプロ指定のSection 71)は、米国特許商標庁(USPTO)の公式ページ「Maintaining your registration」に基づきます。メキシコの「登録3周年から3ヶ月以内+更新時の使用宣言」は、現地事務所 De Alva & AsociadosGodfrey & Kahn、法律情報サイト Mondaq、およびマドプロ指定の取扱いについて HYA IP の解説で確認しました。アルゼンチンの中間使用宣言(登録5〜6年目)は、Olarte MoureDreyfusSBM の解説および INPI 決議123/2019(Lexology 解説)に拠ります。カナダの不使用立証(商標法第45条)と2019年改正による使用宣言廃止は カナダ知的財産庁(CIPO) 公式ガイドと Fasken のFAQで、ブラジルの10年更新・登録から5年の不使用取消は ブラジル産業財産庁(INPI) 公式ガイドと MontauryHarris Sliwoski で確認しています。チリが2022年の新産業財産法(Law 21.355)で不使用取消を初導入した経緯は CareyAlessandriChambers および INAPI 公式FAQで、コロンビア・ペルー・エクアドル・ボリビアの「連続3年」不使用取消は、これら4か国に共通適用される超国家規範 アンデス共同体 Decision 486(第165条) の条文と Garrigues のアンデス地域解説に基づきます。ウルグアイ(2019年に不使用取消導入)・パラグアイ・ベネズエラ(適用法令の曖昧性)は、各現地事務所および WTR の解説で確認しました。

欧州

欧州連合商標(EUTM)の「定期的な使用宣言は不要・更新は10年・登録から5年で不使用取消の対象」という構造は、欧州連合知的財産庁(EUIPO) の公式FAQ(更新/無効・取消/代理人)および審査ガイドライン4.1(不使用取消)に基づきます。「使用宣言は米国の要件でありEUには存在しない」という対比は Garrigues のブログで明示されています。英国は ICLG(United Kingdom 2026)Harper James、ドイツの法定代理人要件は ドイツ特許商標庁(DPMA) 公式、フランスの代理人要件は WTR Yearbook、スイス(非EUだが欧州型)は スイス知的財産庁(IPI) 公式で確認しました。ロシアの「不使用3年・ライセンス/譲渡登録の強制(民法1232条)・現地弁理士必須」は GorodisskyDe Berti JacchiaSojuzpatent、トルコの「2024年から取消権限が裁判所からトルコ特許商標庁(TPTO)へ移管」は TURKPATENT 公式・Optimum PatentAksoy IPTurkLegal、ベネルクスは ベネルクス知的財産庁(BOIP) 公式と Clairfort に拠ります。

アジア太平洋

フィリピンの実際使用宣言(DAU:出願3年・登録5周年・更新後1年)は フィリピン知的財産庁(IPOPHL) 公式と Aumento IPBCCS Law、カンボジアの「登録5周年後1年以内の使用/不使用宣誓書(2023年8月から厳格運用)」は Tilleke & GibbinsDS&BAbacus IP に基づきます。台湾は Law.asia・Lexology、香港は 香港知的財産署(IPD) 公式、インドの不使用取消(5年)と譲渡記録要件は India Code 第45条SS Rana・Vakilsearch、インドネシアの「不使用取消が2024年に3年→5年へ変更(憲法裁判所決定 No.144/PUU-XXI/2023)・更新時の使用宣言書」は Tilleke & GibbinsHarakenzo で確認しました。タイは WIPO Lex(商標法 B.E.2534)、ベトナムの「譲渡は効力要件」は TillekeKENFOX、マレーシアは SkrineMyIPO(Act 815)、シンガポールは シンガポール知的財産庁(IPOS) 公式、ミャンマー(2019年商標法が2023年4月施行・記録が効力要件)は LawPlusKENFOXWIPO Lex(規則1/2023)、オーストラリアは IP Australia 公式マニュアルと商標法1995第92条(AustLII)、ニュージーランドは IPONZ 公式と商標法2002に拠ります。

中東・アフリカ・広域

UAE・サウジアラビア・カタール・クウェートのGCC4か国は、2016年発効の GCC統一商標法(AGIP 英訳PDF)に基づき「10年・5年不使用・定期宣言なし」で横並びです。各国の更新手続は UAE 経済省(MoET) 公式・サウジ知的財産庁(SAIP) 公式等で確認しました。イスラエル(不使用が例外的に3年)は Lexology、エジプト(送達宛先必須)は NJQELDIB、南アフリカ(registered user 制度)は Smit & Van Wyk・Lexology に拠ります。ナイジェリアの「存続期間が初回7年・更新後14年」という例外は ICLG(Nigeria 2026) と ip-coster、ケニアの不使用取消(商標法 Cap 506 第36条)は Kenya Law(公式法令)・KIPICM Advocates、モロッコ(使用宣言は不要・複数源で一致/※4で現地確認推奨)は WIPO Lex(Law 17-97)NJQAGIP で確認しました。広域登録については、OAPI(仏語圏17か国に単一登録が一体で及ぶ)を Adams & Adams・WTR、ARIPO(バンジュール議定書・指定国の国内法に従属)を ARIPO 公式・LADAS・Adams & Adams で整理しています。なお、本記事で「参考・対象外」とした使用意思宣言(DIU)を要するモザンビークの例は Inventa の解説に基づきます。

商標の各国制度の概要は、「世界の商標制度ガイド(170カ国以上)」もあわせてご覧ください。マドプロを使った国際出願は「マドプロ国際商標出願」で解説しています。