【弁理士監修】国際商標出願(マドプロ)とは?費用・メリット・手続きの流れを徹底解説!海外展開を狙う企業必見
企業のグローバル化が進む現代において、海外市場への実店舗展開や越境ECの活用は、多くの日本企業にとって不可欠なビジネス戦略となっています。しかし、海外展開において見落とされがちでありながら、企業ブランドを守るために最も重要なのが「海外での商標登録」です。
「日本で商標登録を済ませているから、海外でも自社のブランドは守られている」とお考えではありませんか?
実は、商標権には「属地主義」という原則があり、日本で取得した商標権は日本国内でしか効力を持ちません。海外で自社のブランド名やロゴを独占的に使用するためには、「国際商標出願」を行う必要があります。
本記事では、特に多くの企業が利用している「マドリッド協定議定書(マドプロ)に基づく国際出願」を中心に、国際商標出願の仕組み、メリット・デメリット、費用の目安、手続きの流れについて、知財の専門家である弁理士がわかりやすく徹底解説します。海外進出を見据えている経営者様や知財担当者様は、ぜひ最後までお読みください。
📑 この記事の目次
1. なぜ海外進出時に「国際商標出願」が必要なのか?
海外ビジネスを成功させるために、なぜコストと時間をかけて国際商標出願を行う必要があるのでしょうか。その理由は主に以下の3点に集約されます。
🌍 ① 商標権は「属地主義」(国ごとに独立)
商標権をはじめとする知的財産権は、各国の法律に基づいて付与されるため、権利を取得した国の中でのみ効力を発揮します(属地主義)。アメリカで商品を販売したい場合はアメリカの特許庁(USPTO)へ、中国で販売したい場合は中国の国家知識産権局(CNIPA)へ、それぞれ個別に商標登録を行わなければ、その国でのブランド保護は不可能です。
⚠️ ② 冒認出願(商標の先取り)によるビジネス阻害リスク
近年、海外(特に中国や東南アジアなど)において、日本の有名なブランド名や企業名、商品名を、現地の第三者が勝手に先回りして商標登録してしまう「冒認出願(商標トロール)」の被害が急増しています。
自社の商標を第三者に先に登録されると、自社製品をその国へ輸出できなくなるだけでなく、税関で模倣品として差し止められたり、法外な金額で商標の買い取りを要求される恐れがあります。海外進出の計画段階で速やかに国際商標出願を行うことが不可欠です。
🛒 ③ 越境ECプラットフォームでの出品条件
Amazonをはじめとする各種グローバルECプラットフォームでは、模倣品の排除やブランド保護プログラム(Amazon Brand Registryなど)を利用するための必須条件として、販売先の国における商標登録を求めています。健全かつ安全な越境ECビジネスを展開するためにも、商標登録は強力な武器となります。
2. 国際商標出願の2つの主要なルート
海外で商標を取得するための出願方法には、大きく分けて「直接出願(パリルート)」と「マドプロ出願(マドリッド協定議定書ルート)」の2つのルートが存在します。
| 比較項目 | ① 直接出願(パリルート) | ② マドプロ出願 |
|---|---|---|
| 出願方法 | 各国の特許庁へ個別に直接出願 | WIPO(国際事務局)へ1通の願書で一括出願 |
| 言語 | 各国の公用語で願書作成が必要 | 英語1言語で完結 |
| 現地代理人 | 各国で必要(費用大) | 出願段階では原則不要(費用削減) |
| コスト | 国数が増えるほど高額に | 3〜4カ国以上なら大幅に安価 |
| 権利管理 | 国ごとにバラバラで管理煩雑 | WIPOで一元管理(更新も1回) |
| 柔軟性 | 国ごとにマーク・指定商品を変更可能 | 日本の基礎出願と同一内容に限定 |
| 対象国 | 台湾・香港など含め全世界 | 加盟国のみ(130以上の国・地域) |
3. マドプロ出願の仕組みと基本条件
マドプロ出願を利用するためには、満たさなければならない重要な基本条件があります。
マドプロ出願の絶対条件
日本の特許庁への「基礎出願」または「基礎登録」が必要
マドプロ出願を行う場合、いきなりWIPOへ出願することはできません。まず、日本の特許庁において対象となる商標の出願を行っているか、すでに登録されている必要があります。さらに、マドプロ出願で指定する「商標のマーク(文字やロゴ)」や「指定商品・指定役務(サービス)」は、日本の基礎出願・基礎登録と完全に一致、もしくはその範囲内に収まっている必要があります。
日本の特許庁(本国官庁)を経由してWIPOへ国際出願の願書を提出すると、WIPOで方式審査が行われ「国際登録簿」に登録されます。その後、各指定国へ出願内容が通知され、それぞれの国の法律に基づいて実体審査が行われるという仕組みです。
4. マドプロ出願の5つの絶大なメリット
複数の国に商標出願を検討している場合、マドプロ出願には直接出願にはない多くのメリットがあります。
✅ ① 手続きの一元化と大幅な簡素化
一つの言語(英語)で1通の願書を作成し、日本の特許庁に提出するだけ。各国の現地代理人を探して個別にやり取りする手間を大幅に削減できます。
✅ ② 出願費用の大幅な削減
出願段階で各国の現地代理人を通さないため、現地代理人費用が不要。出願する国が3〜4カ国以上になる場合、マドプロ出願の方が総コストを劇的に安く抑えられるケースがほとんどです。
✅ ③ 権利管理の一元化による業務負担軽減
更新手続きもWIPOに対して1回の申請と手数料の納付ですべての指定国の権利を一度に更新可能。社名変更や住所変更、権利譲渡なども1回の届け出で完結し、ランニングコストと知財担当者の管理負担を劇的に軽減できます。
✅ ④ 審査期間が明確(12ヶ月または18ヶ月以内)
各指定国は通知から原則「12ヶ月以内」または「18ヶ月以内」に審査結果を通知する義務があり、期間内に通知がなければ自動的に登録が認められます。ビジネス計画が立てやすくなります。
✅ ⑤ ビジネス拡大に合わせた「事後指定」が可能
出願後に新たにビジネスを展開する国が増えた場合、元の国際登録に対して指定国を追加する「事後指定」が可能。後からでも簡単に権利範囲を世界に広げていくことができます。
5. マドプロ出願の3つのデメリットと注意点
メリットが多い一方で、マドプロ出願特有のデメリットや注意点も存在します。
⚠️ ① セントラルアタック(中心攻撃)のリスク
マドプロ出願の最大の弱点です。マドプロ出願は日本の基礎出願に従属しているため、国際登録の日から5年以内に、日本の基礎出願が拒絶されたり基礎登録が無効になったりした場合、連動してすべての指定国での国際登録も取り消されてしまいます。
💡 救済措置:万が一の場合でも「トランスフォーメーション(国内出願への変更)」により、各指定国の直接出願へ切り替えて権利を救済する措置が用意されています。
⚠️ ② 日本の基礎出願・登録の内容に縛られる
日本の基礎出願と「全く同じ商標」「同じ範囲の指定商品・役務」でしか出願できません。国ごとに現地の言語に合わせたロゴに変更したり、その国特有のサービスを追加したい場合は、マドプロ出願ではなく個別の直接出願を検討する必要があります。
⚠️ ③ マドプロ非加盟国(台湾など)には利用できない
世界の主要国の多くが加盟していますが、台湾、香港、アルゼンチンなど、日本企業にとって重要な進出先でも未加盟の国・地域が存在します。これらの国では個別に直接出願を行う必要があります。
6. マドプロ出願にかかる費用の目安
マドプロ出願にかかる費用は、指定国の数や区分数によって変動しますが、主な費用の内訳は以下の通りです。
| 費用項目 | 概要 |
|---|---|
| ① 本国官庁への印紙代 | 1件あたり一律 9,000円 |
| ② WIPO基本手数料 | 白黒商標 653 CHF / カラー商標 903 CHF(スイスフラン建て) |
| ③ 指定国ごとの個別手数料 | 国や区分数によって異なる(アメリカ、中国など国ごとに定められた額) |
| ④ 弁理士費用(代理人報酬) | 事前調査、英語願書作成、手続き代行にかかる報酬 |
💰 費用の目安シミュレーション
日本を基礎とし、アメリカと中国の2カ国に1区分でマドプロ出願する場合
印紙代等の実費
約15万〜20万円
弁理士費用
約10万〜15万円
総額目安
約25万〜35万円
※為替レートの変動によって実費部分は変わります。正確なお見積もりはお問い合わせください。
💡 参考:直接出願で同じ2カ国に出願した場合、各国の現地代理人費用がそれぞれ加算されるため、総額が大きく跳ね上がります。
7. マドプロ出願の流れと登録完了までの期間
マドプロ出願の手続きは、以下のようなステップで進行します。
日本の特許庁への基礎出願
対象となる商標の出願を行う(既に登録済みの場合は不要)
日本の特許庁へ国際出願(MM2願書の提出)
日本の特許庁を窓口として、WIPO宛ての国際出願願書(英語)を提出し、手数料を納付
WIPOによる方式審査と国際登録
願書の記載内容や英語表記の形式審査 → 問題なければ「国際登録簿」に登録、国際登録証が発行
各指定国での実体審査
WIPOから各指定国へ通知 → 各国の国内法に基づいた実体審査(類似商標の有無、識別力の審査等)
保護の認容(審査完了)
審査パス → その国での商標の保護を認める通知が送達 → 商標権の効力が発生 🎉
出願から審査結果まで:最大12ヶ月〜18ヶ月
8. 国際商標出願で失敗しないための重要な注意点
🔍 ① 事前の「海外商標調査」の徹底
日本で登録できた商標でも、海外ではすでに現地の企業に類似商標が登録されているケースは多々あります。事前の商標調査を行わずに闇雲に出願すると、審査で拒絶され費用が無駄になってしまいます。各国のデータベースを用いた精度の高い先行商標調査が不可欠です。
📝 ② 指定商品・役務の正確な英語翻訳
単なる直訳ではWIPOの方式審査で「意味が不明確」として欠陥通知(イレギュラリティ)を受けてしまうことがあります。国際分類(ニース分類)に適合した適切な英語表現を選択する専門的なノウハウが必要です。
📬 ③ 拒絶理由通知(オフィスアクション)への対応体制
指定国での審査において拒絶理由が通知された場合、現地の法律に基づいた反論書(意見書)を提出しなければなりません。現地の代理人(現地弁理士)を通じた対応が必要なため、信頼できる海外の特許事務所と迅速に連携できる体制が求められます。
9. 弁理士に依頼すべき理由
国際商標出願は、国内の出願に比べて言語の壁や各国の法制度の違いがあり、極めて高度な専門知識が要求されます。弁理士に依頼することで、以下のような大きなメリットを得られます。
| サポート内容 | 具体的なメリット |
|---|---|
| 最適な出願戦略の提案 | 進出予定国・予算を分析し、マドプロと直接出願のどちらが最適か無駄のない戦略を立案 |
| 高度な事前調査 | 各国のデータベースを駆使して登録可能性を精緻に判断し、知財トラブルを未然に防止 |
| 海外ネットワークの活用 | 各国で拒絶理由を受けた際にも、現地のプロと連携して的確に反論し権利化へ |
| 期限管理のアウトソーシング | 複雑な更新・書類対応の期限管理を任せ、担当者はコアビジネスに専念 |
| 補助金・助成金サポート | 中小企業向け海外出願支援補助金(JETROなど)の申請サポートで費用負担を大幅軽減 |
10. まとめ:海外商標の取得は弁理士へ
海外市場でのビジネスを成功させ、自社の大切なブランドを守るためには、国際商標出願が不可欠です。特にマドプロ出願は、コスト削減や管理の一元化という点で非常に強力な制度ですが、事前の調査や英語での高度な手続きが求められます。
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