ポルトガルは人口約1,070万人、GDP約3,090億米ドルの南欧の国で、観光業、機械・自動車部品、繊維・履物、コルクなどを主要産業とし、近年はリスボンやポルトを中心にスタートアップとIT産業が成長しています。日本との関係では、2024年の日本からの輸出は約802億円(機械類・自動車・鉄鋼)、輸入は約1,003億円(化学製品・医薬品・衣類)で、121の日本企業拠点があり、2025年9月には10年ぶりにポルトガル首相が訪日しました。人口100万人当たりの商標出願数が欧州で最も高い水準にある「ブランド意識の高い国」でもあり、日本食、化粧品、アニメ関連商品、産業機械などの分野でポルトガルでの商標保護の相談が増えています。
ポルトガルの商標制度は、2019年7月に施行された産業財産法典(Código da Propriedade Industrial、政令110/2018)に基づき、国立産業財産権庁(INPI)が国内商標を登録します。INPIは公告から2か月(延長1か月)の異議期間の後に審査を行い、識別力などの絶対的理由に加えて先行商標との抵触も職権で審査する点が、EUIPOや隣国スペインと異なる特徴です。登録までは平均4か月と速く、存続期間は出願日から10年、不使用取消は5年で、取消・無効はINPIの行政手続で請求できます。紛争は2012年に設立された知的財産裁判所(リスボン)が全国を管轄し、模倣品には最長3年の拘禁刑と、年間120万点を押収する税関・警察の合同枠組みが備わっています。本記事では、産業財産法典の条文(WIPO公表の英訳)、INPIの公式手数料表と統計年報、裁判所の判決、模倣品対策グループの公表数値、外務省のデータを一次資料として、出願から異議・取消・権利行使・EUTMとの使い分けまでを弁理士が実務目線で整理します。
この記事のポイント
目次
ポルトガルの商標の根拠法は産業財産法典(Código da Propriedade Industrial、CPI)です。特許・意匠・商標・商号などを一つの法典にまとめる伝統があり、現行法典はEU商標指令2015/2436と営業秘密指令を実施するため2018年12月10日の政令110/2018で全面改正され、2019年7月1日に施行されました。商標に関する規定は第208条以下に置かれ、図で表せない商標の登録、INPIでの無効・取消の行政手続、異議や無効手続での使用証明の要求、保証・証明商標の整備などが導入されています。
登録官庁は国立産業財産権庁(Instituto Nacional da Propriedade Industrial、INPI)で、法務省の下に置かれリスボンに本部があります。INPIは特許・意匠・商標を一元的に扱い、出願はオンラインが原則です。商標権は登録によって発生し(登録主義)、登録の効力は出願日に遡ります。INPIの決定に対する不服は、2012年に設立された知的財産裁判所(Tribunal da Propriedade Intelectual)に2か月以内に申し立て(第38条・第39条)、その判決はリスボン控訴裁判所の知財部へ上訴できます。
ポルトガルはEU加盟国ですから、EU商標(EUTM)もポルトガルで効力を持ち、EU商標の侵害事件も知的財産裁判所が扱います。日本企業にとって重要なのは、INPIが異議期間の経過後に先行商標まで職権で審査する登録主義の国であること、出願書類がポルトガル語であること、そして取消・無効をINPIの行政手続で安価に請求できることです。
INPIの2025年統計年報によれば、商標・ロゴタイプ等の出願は23,229件で前年(21,534件)比7.9%増、登録も5.5%増え、2021年(24,022件)以来の高水準でした。地域別では北部が37%、リスボン首都圏が26%、中部が22%を占めます。ポルトガルは人口100万人当たりの国内出願数が欧州で最も高い水準にあり、WIPOの統計でも世界10位です。一方、マドプロ経由で海外に出す国際出願はポルトガル居住者で年154件(2025年)にとどまり、ポルトガル企業の海外展開はEUTMが中心です。
WIPOの統計プロファイルによれば、2024年のポルトガル出願人による商標出願は区分数ベースで41,411区分(世界32位)で、うち国内出願が37,024区分、国外出願は4,387区分、国外出願の60.7%がマドプロ経由です。日本との貿易は日本の輸入超過で、2024年は輸出802億円に対し輸入1,003億円でした。
| 指標 | 数値 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内商標等の出願(2025年) | 23,229件(+7.9%)。2024年21,534件、2023年20,937件、2021年24,022件 | INPI統計年報2025 |
| 地域別(2025年) | 北部37%、リスボン首都圏26%、中部22% | INPI統計年報2025 |
| ポルトガル出願人の商標出願(2024年) | 41,411区分(世界32位)。国内37,024・国外4,387。人口100万人当たり3,460区分(世界10位)、マドプロ国際出願223件、国外出願のマドプロ利用率60.7% | WIPO統計プロファイル |
| 人口/GDP/1人当たりGDP | 約1,067万人/約3,086億米ドル/約28,918米ドル(2024年) | 外務省(IMF) |
| 対日貿易(2024年) | 日本→ポルトガル801.6億円(機械類・自動車・鉄鋼)/ポルトガル→日本1,003.4億円(化学製品・医薬品・衣類) | 外務省(財務省貿易統計) |
| 日本企業拠点/在留邦人 | 121拠点/963人(2024年) | 外務省 |
| 通貨 | ユーロ。1ユーロ≒175円の概算 | 外務省 |
産業財産法典第208条は、文字、人名、図形、文字・数字、音、色彩、商品や包装の形状など、自他商品識別力があり、保護の対象を明確かつ正確に特定できる形で表示できる標識を商標として認めています。個別商標のほか、団体商標と保証・証明商標があり、ポルトガル特有の制度として商号に近い「ロゴタイプ(logótipo)」も商標とは別にINPIに登録できます。
拒絶理由は、識別力の欠如や記述性、公序良俗違反、誤認などの絶対的理由(第231条)と、先行登録商標の複製・模倣(第232条)、ポルトガルで周知の商標(第234条)、著名商標、先行する商号・ロゴタイプ・意匠・著作物・氏名などとの抵触からなる相対的理由に分かれます。INPIは異議期間の経過後に出願を審査し、先行商標と比較する職権審査を行って、異議がなくても抵触があれば拒絶します(第229条)。模倣(imitação)の判断基準は第238条に定められ、先行商標の優先、商品役務の同一・類似、そして需要者が容易に区別できない、または連想のおそれがあるほどの図形的・音声的・観念的な類似が要件です。
先行商標の職権審査はポルトガルの特徴です。EUIPO、ギリシャ(2020年〜)、ベネルクスは先行商標を審査しませんが、ポルトガルのINPIは日本の特許庁と同じく先行する類似商標を理由に拒絶します。日本企業にとっては、出願前の調査がより直接的に結果に反映される一方、EU商標の方が先行商標の審査を受けないため「ポルトガルでは拒絶されたがEUTMでは登録できた」という場面も起こりえます。先行権利者の同意書(declaração de consentimento、12.31ユーロ)を提出すれば拒絶は解消されます。
商標権の効力(第249条)は、同一商品での同一商標の使用、類似範囲での混同のおそれがある使用、そしてポルトガルで名声を持つ商標について正当な理由なく識別力や名声を利用・毀損する使用に及びます。2019年法典では、ポルトガルを通過するだけの貨物に対する権利や、包装・ラベルへの標識の付与などの準備行為に対する権利も明文化されました。
出願はポルトガル語で作成し、INPIのオンラインサービスから提出します(第222条)。出願人の名称・住所・国籍、商品・役務のリスト(ニース分類)、商標の表示を記載し、多区分出願が可能です。法律上は代理人の選任義務はありませんが、手続がポルトガル語で進み、INPIからの通知や期限管理が必要なため、日本企業は実務上ポルトガルの産業財産権代理人(agente oficial da propriedade industrial)または弁護士を通じて出願します。パリ条約の優先権は6か月以内に主張し、優先権書類は優先期間の満了から1か月以内に提出できます。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 方式審査・公告 | 記載事項とニース分類を確認し、産業財産公報(Boletim da Propriedade Industrial)に出願を公告(第226条) | 2〜4週間 |
| 異議期間 | 公告から2か月。INPIは1回に限り1か月延長可(第17条)。第三者の意見書も同じ期間 | 2〜3か月 |
| 実体審査 | 異議期間満了の翌日から、絶対的理由と先行商標との比較を職権で審査。異議があれば答弁期間(2か月)の後に審査(第229条) | 数週間 |
| 暫定拒絶への応答 | 拒絶理由があれば暫定拒絶を通知。応答料36.90ユーロ(使用証明の請求を伴う場合61.51ユーロ) | 指定期間 |
| 登録決定・公告 | 登録決定を公報に公告し、登録料(12.31ユーロ)を納付。拒絶決定には公告から2か月以内に知的財産裁判所へ不服申立て | 異議がなければ出願から平均4か月。異議があれば6〜12か月 |
法務省の案内によれば、異議がなければ登録まで平均4か月です。公告が先、審査が後という順序のため、異議期間中に先行権利者から異議が来るかどうかで所要期間が大きく変わります。
INPIの手数料は2024年7月1日に改定され(決議447/2024)、オンライン手続は紙の半額です。以下はオンラインの主な項目で、円換算は1ユーロ≒175円の概算です。
| 項目 | 庁費用(ユーロ、オンライン) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 出願(1区分を含む) | 145.56。追加1区分ごとに36.90(紙は291.12/73.80) | 約2.5万円(3区分で約3.8万円) |
| 登録料(登録決定後) | 12.31 | 約2,200円 |
| 暫定拒絶への応答 | 36.90(使用証明の請求付き61.51)。同意書の提出12.31 | 約6,500円 |
| 異議・第三者意見・陳述 | 61.51 | 約1.1万円 |
| 更新(1区分を含む) | 145.56。追加1区分ごとに36.90 | 約2.5万円 |
| 取消(不使用等)の申請 | 61.51(答弁6.13) | 約1.1万円 |
| 無効・取消し(anulação/nulidade)の申請 | 228.56(答弁61.51、使用証明の提出12.31) | 約4.0万円 |
| 出願・登録の分割 | 36.90 | 約6,500円 |
比較対象として、EUTMのオンライン出願料は1区分850ユーロ(約14.9万円)、2区分目50ユーロ、3区分目以降150ユーロ/区分です。マドプロでポルトガルを指定する場合、ポルトガルは個別手数料を定めていないため、基本手数料(白黒CHF 653)に補足手数料CHF 100(約1.9万円)を加えるだけで済み、欧州でも最も安く指定できる国の一つです。代理人費用は別途必要で、日本の特許事務所を通じた直接出願では、庁費用と現地代理人費用を合わせて1区分あたりおおむね20〜35万円が相場です。
中小企業にはINPITの外国出願補助金が利用でき、ポルトガル出願やマドプロ指定の費用の2分の1が補助対象になります。
異議申立(reclamação/oposição)は、出願が産業財産公報に公告されてから2か月以内にINPIへ行います(第17条・第226条)。INPIは申立人の請求により1回に限り1か月の延長を認めます。異議の根拠は第232条以下の相対的理由で、先行登録商標の権利者やその他の先行権利者が申し立てます。絶対的理由については、誰でも同じ期間に第三者の意見書(第231条)を提出できます。出願人は通知から2か月以内に答弁でき、INPIが必要と認めれば追加の意見提出も認められます。
出願人は答弁の中で、根拠とされた先行商標が後行出願の出願日(または優先日)の時点で登録から5年を超えていれば、申立人に過去5年間の真正な使用の証明を求めることができ(第227条)、証明がなければ異議は退けられます。INPIは異議と答弁を踏まえて審査し、登録または拒絶を決定します。決定への不服は、公告から2か月以内に知的財産裁判所へ申し立てます。
異議がなくてもINPIは先行商標を審査します。ポルトガルの異議は、INPIの職権審査を補う位置づけです。周知性や取引実情、近い過去の係争など、INPIが登録簿だけでは把握できない事情を伝える手段として異議を使い、INPIが見落としうる抵触は申立てで確実に指摘する、という二重の備えが有効です。異議の庁費用は61.51ユーロと安価です。
登録商標は、5年間継続して真正な使用がされないと、正当な理由がない限り取消(caducidade)の対象になります(第268条)。普通名称化や誤認を生じる使用も取消理由です。登録された形と識別力を変えない範囲での変形使用や、輸出専用に国内で商標を付す行為も使用に当たります(第267条)。無効には、絶対的理由による無効(nulidade、第259条)と、先行権利との抵触による取消し(anulação)があり、後者では先行商標の権利者が後行商標の使用を知りながら5年間黙認すると請求できなくなります。
2019年法典から、取消・無効の申請はINPIの行政手続で行います(第262条以下)。申請はポルトガル語で理由を付して提出し、取消は61.51ユーロ、無効・取消しは228.56ユーロです。先行商標を根拠とする取消しでは、相手方が申請人の商標について過去5年の使用証明を求めることができます(第263条)。INPIの決定への不服は知的財産裁判所に申し立て、裁判所は無効の決定については直接審理します。侵害訴訟の中で反訴として無効・取消を主張することもでき、その場合はINPIへの申請を一定期間内に行う必要があります。
実務では、INPIの職権審査で先行商標が障害になった場合に、その先行商標が5年以上使われていなければ取消を申請して障害を除去する、あるいは暫定拒絶への応答で使用証明を請求する(61.51ユーロ)という組み合わせがよく使われます。
登録の存続期間は出願日から10年で(第247条)、10年ごとに全部または一部を何度でも更新できます。更新はオンラインで満了前の最後の6か月に申請し(145.56ユーロ+追加区分36.90ユーロ)、満了後も6か月以内は割増料金で更新できます。登録商標には「Marca Registada」「M.R.」または®の表示を使えます(第248条)。
登録後に使用宣誓や使用証拠を提出する義務はなく、更新時にも使用の証明は不要です。使用が問題になるのは、第三者が取消を申請したとき、異議や無効の相手方が使用証明を求めたとき、そして侵害訴訟で被告が不使用を主張したときです。各国の登録後の維持義務は主要国の商標維持義務の比較記事で整理しています。
商標の侵害・有効性に関する民事事件とINPIの決定に対する不服は、法律46/2011で創設され2012年3月に発足した知的財産裁判所(Tribunal da Propriedade Intelectual)がリスボンで全国を管轄します。EU商標の事件も同裁判所が扱い、判決への控訴はリスボン控訴裁判所(Tribunal da Relação de Lisboa)の知財・競争・監督部へ、さらに法律問題について最高裁判所へ上告できます。控訴審の判断までは1〜2年が目安です。
救済としては、差止、侵害品と製造設備の押収・廃棄、損害賠償(侵害者の利益、権利保護・調査・停止のための費用を考慮し、算定困難なら衡平による一括額)、判決の公表が認められ、権利の外観と緊急性を示せば仮処分で押収や行為の停止を命じられます。訴訟費用は敗訴者負担ですが、弁護士費用の回収は当事者が納めた裁判費用の50%が上限とされ、実費の全額回収はできません。知的財産裁判所の決定への不服申立ては、INPIの決定公告から2か月以内です。
産業財産法典第320条は、権利者の同意なく商標を複製・模倣した標章を製造・輸入・所持し、模倣商標を商品や包装に使用し、または模倣商標を付した商品を輸入・輸出・流通・販売・保管した者を3年以下の拘禁刑または360日分以下の罰金に処します。模倣品の販売や販売目的の隠匿は18か月以下の拘禁刑または120日分以下の罰金です(第321条)。商号やロゴタイプの侵害にも罰則があります(第322条・第323条)。日本の商標法78条(10年以下の懲役)より上限は低いものの、後述する模倣品対策グループの枠組みで警察・税関・経済監督庁が連携して摘発を行っています。
税関を所管する税務・関税庁(AT)は、EU規則608/2013に基づく税関申立(AFA)を受けて、または職権で疑わしい貨物を差し止め、権利者は10日以内に侵害を確認して手続を進めます。INPIが事務局を務める模倣品対策グループ(Grupo Anti Contrafação、GAC)には税関、治安警察、共和国国家警備隊、司法警察、経済・食品安全庁などが参加し、INPIの公表によれば2025年には123万2,522点・推定2,764万ユーロ相当の模倣品・海賊版を押収しました。衣料品・アクセサリーが57万5,559点(48.2%)、衣料・履物の部品やラベル・包装が33万1,709点(27.8%)を占め、点数は前年比62.3%減った一方、金額は620万ユーロから4倍以上に増えています。税関で差し止められた模倣品の99.26%は通販の郵便小包で、医薬品の模倣品27万6,326点(65%がインド発)も摘発されました。
「SUN CARS」の国内商標出願に対し、先行するEU商標「SUNNY CARS」(文字および図形)の権利者が争った事件で、リスボン控訴裁判所の知財部は、両商標が「SUN」という語幹を共有し、称呼が部分的に一致し、太陽という同じ観念を想起させることから、第238条の模倣に当たり混同(特に連想)のおそれがあると判断して、INPIの拒絶を維持しました。名詞と形容詞の文法上の違いがあっても、平均的なポルトガルの需要者が英語の語感の違いだけで両者を十分に区別できるとは推定できないとしています。英語の造語商標を使う日本企業にとって、先行商標との「語幹の共通」が重く見られることを示す事例です。
2025年の押収は点数こそ減りましたが、1点当たりの価値が高い衣料・アクセサリーの比重が増え、流入経路のほぼすべてが越境ECの郵便小包になっています。税関は医薬品庁(INFARMED)との協定で医薬品の模倣品を重点的に取り締まっており、化粧品・健康食品・ブランド品を扱う日本企業は、EU全域の税関で使える税関申立を早めに整えておく必要があります。
INPIは2024年7月に手数料を改定し、2025年の商標出願は7.9%増の23,229件、2026年も1〜8月で前年同期比9.6%増と増加が続いています。発明特許の出願も2025年に1,170件と過去10年で最多となり、知的財産への関心が高まっています。
ポルトガルで商標を守る手段は3つあります。ポルトガルはマドプロの加盟国で、国際登録で直接指定できます。
| 項目 | 国内商標(INPI直接出願) | マドプロでポルトガル指定 | EU商標(EUTM) |
|---|---|---|---|
| 効力の範囲 | ポルトガル(アソーレス・マデイラ含む) | ポルトガル | EU27か国 |
| 庁費用(1区分) | 145.56+12.31ユーロ(約2.8万円)+現地代理人費用 | 補足手数料CHF 100(約1.9万円)+基本手数料。代理人不要 | 850ユーロ(約14.9万円) |
| 登録までの期間 | 平均4か月(異議があれば6〜12か月) | 拒絶通報期限まで最長18か月 | 約4〜6か月 |
| 先行商標の影響 | INPIが職権審査。同意書で解消可 | 同左(INPIが審査) | 職権審査なし。ただし27か国のどこか1か国の先行商標で全体が拒絶されうる |
| 異議 | 公告後2か月(延長1か月)、61.51ユーロ | 同左 | 公告後3か月、320ユーロ |
| 向いている場面 | ポルトガルが主市場、速く確実に登録したい、EUTMが先行商標で難しい | 他国とまとめて管理したい、現地代理人を介さず安く出願したい | 欧州全域で展開、税関対策を重視 |
欧州全域を対象にする場合はEUTMが基本です。ポルトガル単独なら、個別手数料がないマドプロ指定が最も安く、拒絶通報が来た段階で現地代理人を立てる設計が合理的です。イベリア半島では、先行商標を審査しないスペインと審査するポルトガルで運用が異なるため、同じ商標でも結果が分かれることがあり、フランスを含む南欧の主要市場ではEUTMを軸に国内商標を補完する設計が一般的です。
| 項目 | ポルトガル | 日本 |
|---|---|---|
| 根拠法・官庁 | 産業財産法典(政令110/2018)・国立産業財産権庁(INPI) | 商標法・特許庁 |
| 先行商標の審査 | 職権で審査(異議期間の後。同意書で解消可) | 職権で審査(2024年からコンセント制度) |
| 手続の順序 | 公告→異議2か月→審査→登録 | 審査→登録→公報→異議2か月 |
| 登録までの期間 | 平均4か月 | 約6〜10か月(早期審査あり) |
| 異議申立 | 登録前、公告から2か月(延長1か月)、先行権利者、61.51ユーロ | 登録後、公報から2か月、何人も可 |
| 存続期間 | 出願日から10年 | 登録日から10年 |
| 不使用取消 | 5年。INPIの行政手続(61.51ユーロ)、不服は知的財産裁判所 | 3年。特許庁の審判 |
| 侵害訴訟 | 知的財産裁判所(リスボン)の専属管轄。弁護士費用の回収は裁判費用の50%まで | 東京・大阪地裁など |
| 刑事罰 | 偽造・模倣3年以下または罰金360日分、販売18か月以下 | 10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(78条) |
出願から2〜4週間で産業財産公報に公告され、2か月(延長されれば3か月)の異議期間の後にINPIが審査します。異議がなければ出願から平均4か月で登録され、異議があれば6〜12か月程度です。マドプロでポルトガルを指定した場合は、拒絶通報の期限が18か月なので、権利が確定するまでの期間は直接出願より長くなることがあります。
調べます。INPIは異議期間の経過後に出願を審査し、先行する国内登録商標、ポルトガルを指定する国際登録、EU商標、周知商標、商号・ロゴタイプなどとの抵触があれば、異議がなくても拒絶します。先行権利者の同意書を提出すれば拒絶は解消されます。EUIPOや隣国スペインが先行商標を審査しないのとは対照的で、日本の特許庁に近い運用です。
法律上の義務はありませんが、出願書類と手続がポルトガル語で、INPIからの通知と期限管理が必要なため、実務上はポルトガルの産業財産権代理人または弁護士を通じて出願します。マドプロでポルトガルを指定する場合は代理人なしで出願できますが、INPIが先行商標を理由に暫定拒絶を出した場合の応答には現地代理人が必要になります。
EUTMはポルトガルを含むEU全域で効力を持つので、通常はEUTMだけで足ります。ただし、EUTMが他国の先行商標を理由に拒絶や無効のリスクを抱えている場合は、約2.8万円の庁費用で平均4か月で取得できるポルトガル国内商標を併用する価値があります。EU商標でも国内商標でも、侵害事件はリスボンの知的財産裁判所が扱い、税関申立もどちらでも可能です。
5年間継続して使用されていなければ、INPIに取消(caducidade)を申請できます。申請料は61.51ユーロで、INPIが行政手続で判断し、決定には知的財産裁判所で争えます。自社の出願がその登録を理由に暫定拒絶された場合は、応答の中で相手に使用証明を求めることもできます。相手が同意する見込みがあれば、同意書を取得して出願を進める方法もあります。
EUIPOの知財執行ポータル(IPEP)からEU規則608/2013に基づく税関申立を提出し、郵便小包を含む輸入段階で差し止める体制を作るのが第一です。2025年に税関で差し止められた模倣品の99%は通販の郵便小包でした。国内で流通している模倣品には、警告状の後、知的財産裁判所に仮処分と本案訴訟を提起します。組織的な取引には、3年以下の拘禁刑を定める産業財産法典第320条に基づく告訴も選択肢で、INPI・税関・警察が参加する模倣品対策グループが摘発を担っています。
ポルトガルの商標制度は、2019年施行の産業財産法典に基づきINPIが公告・異議の後に先行商標まで職権で審査する登録主義で、異議がなければ平均4か月で登録、出願日起算の10年、5年の不使用取消が骨格です。電子出願145.56ユーロ、異議61.51ユーロ、取消61.51ユーロ、無効228.56ユーロと費用は手頃で、取消・無効をINPIの行政手続で請求できます。紛争はリスボンの知的財産裁判所に集中し、刑事では3年以下の拘禁刑、税関と警察の合同枠組みで年間120万点超の模倣品が押収されています。日本企業には、ポルトガル語の商品役務リストと先行商標調査を丁寧に準備したうえで、EUTMを軸に、個別手数料のないマドプロ指定や国内商標を安価に補完する設計をおすすめします。
各国の商標制度は世界の商標制度ガイドをご覧ください。
国内出願・EUTM・マドプロの使い分け、ポルトガル語の商品役務リストの作成、先行商標調査と同意書の取得、異議・取消への対応、税関申立と模倣品対策、INPIT外国出願補助金の申請まで、知的財産事務所エボリクスが一貫してサポートします。初回相談は無料です。
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年10月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。
※本記事は上記の資料を基に、2026年10月時点の情報で一般的な情報提供を目的として作成しています。手数料(円換算額)・運用・判例は変更されることがあります。ポルトガル語の法令原文と英訳の間に差異がある場合は原文が優先されます。個別案件の具体的判断には、専門家へのご相談を推奨します。