はじめに 「苦労して開発した新製品のデザイン。発売直後に他社に模倣されたらどうしますか?」...
【弁理士解説】「インスタ映え」商品は意匠登録で守れ!SNS時代の模倣品対策とブランド戦略
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InstagramやTikTokなどのSNSで、自社の商品やパッケージ、あるいは店舗の内装が話題になり、「バズる」ことは、現代のビジネスにおいて最大のチャンスです。
しかし、その「映えるデザイン」が、ある日突然、他社に真似されてしまったらどうしますか?
「一生懸命考えたデザインなのに、安っぽいコピー商品が出回ってしまった」
「うちのカフェの内装とそっくりな店が近くにできた」
こうしたトラブルは、SNSで拡散されるスピードが速い現代だからこそ、頻繁に起きています。
ここで重要になるのが、「意匠登録(いしょうとうろく)」という法的手段です。
今回は、SNS時代のビジネスを守るために欠かせない「意匠権」について、なぜ「インスタ映え」と「意匠」が密接に関係するのか、弁理士の視点で徹底解説します。
目次
1. なぜ「インスタ映え」に法的保護が必要なのか?
かつて、商品の価値は「機能」や「性能」が中心でした。しかし、現在は「視覚的な魅力(デザイン)」が消費者の購買行動を決定づける大きな要因となっています。
SNS拡散の光と影
「インスタ映え」する商品は、ユーザーが自発的に写真を撮り、拡散してくれるため、広告費をかけずに爆発的な認知を獲得できる可能性があります。しかし、これは諸刃の剣でもあります。
世界中の人がそのデザインを目にするということは、「悪意ある模倣業者」の目にも留まるということです。特に、デザインだけで売れているような商品は、複雑な技術開発を必要としないため、模倣(コピー)が極めて容易です。中国などの海外工場で即座に製造され、日本のAmazonや楽天で「格安の類似品」として販売されるスピードは、年々加速しています。
「人気が出てから登録」では遅い
多くの経営者が陥りやすいのが、「売れてから考えよう」という思考です。しかし、知的財産の世界には「先願主義(早い者勝ち)」という大原則があります。さらに、意匠登録には「新規性(世の中に知られていないこと)」が求められます。
つまり、SNSでバズって有名になった後では、原則として意匠登録を受けることができません。
(※例外規定については後述しますが、リスクが高いことに変わりはありません)
自社の「映える」資産を守るためには、商品リリースの段階から、あるいは開発段階から知財戦略を練っておく必要があるのです。
2. そもそも意匠登録とは?著作権との違い
「デザインなら著作権で守られるのでは?」
そう考える方は非常に多いですが、ビジネスにおける商品デザインの保護において、著作権に頼るのは危険です。
意匠権=「見た目」の独占権
意匠権とは、物品の形状、模様、色彩などの「デザイン(美的外観)」を保護する権利です。特許庁へ出願し、審査を経て登録されれば、そのデザインを独占的に使用でき、模倣品を排除する強力な権限を持ちます。
- 特許権:技術的な「発明」を保護(機能や構造など)
- 商標権:商品名やロゴマークなどの「ブランドの目印」を保護
- 意匠権:物品の「デザイン(見た目)」を保護
なぜ著作権では守れないのか
著作権は、絵画、音楽、小説などの「文化的所産」を守る法律です。一方で、Tシャツ、家具、文房具、自動車などの「量産される工業製品」のデザインは、原則として著作権の保護対象になりにくい(応用美術の壁)という法的解釈が一般的です。
「他社にデザインを真似された」と著作権侵害で訴えても、「それは実用品であり、著作物ではない」として請求が棄却されるケースは少なくありません。
つまり、量産品の「インスタ映えデザイン」を守るための最強の盾は、著作権ではなく「意匠権」なのです。
貴社のデザインを守る準備はできていますか?
模倣品リスク診断や、意匠登録の可否について、まずは無料でご相談ください。
3. 「空間デザイン」も保護対象に!2020年の法改正
「インスタ映え」を語る上で避けて通れないのが、2020年(令和2年)4月1日の意匠法改正です。この改正により、保護の対象が劇的に広がり、SNS時代のビジネス環境に即した制度へと進化しました。
店舗の内装・建築物のデザイン
これまでは、不動産である「建築物」や「内装」は意匠登録の対象外でした。しかし、改正により「建築物」や「内装」のデザインも意匠登録が可能になりました。
- カフェやレストランの特徴的な内装
- フォトジェニックな壁面デザイン
- ブランドの世界観を体現したフラッグシップストアの外観
これらが「意匠権」として保護されるようになったのです。
例えば、あるカフェチェーンが「独自の照明配置とカウンター形状による、写真映えする空間」を作り出したとします。これを意匠登録しておけば、競合他社がそっくりの内装で店舗展開することを阻止できます。
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SNSでは、商品単体だけでなく「その空間にいる私」を撮影する需要が高いため、空間デザインの権利化は、集客力を維持するために極めて重要な戦略となります。
画像のデザイン(UI/UX)
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スマートフォンのアプリ画面や、ウェブサイトの操作画面などの「画像」自体も、物品(ハードウェア)と切り離して登録できるようになりました。
使いやすく、見た目も美しいアプリのUI(ユーザーインターフェース)は、サービスの顔です。これも大切な知的財産として保護されます。
4. 意匠登録をする3つのビジネスメリット
コストをかけて意匠登録をすることには、単なる「防衛」以上の経営的メリットがあります。
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メリット①:強力な模倣品排除(差止・損害賠償)
意匠権の最大の効力は、模倣品業者に対して「販売の差止め(やめさせること)」や「損害賠償請求」ができる点です。
意匠権侵害の判断は「見た目が似ているかどうか」で行われるため、高度な技術論争になる特許訴訟に比べて、侵害の立証が比較的容易であるケースが多いです。
また、Amazonや楽天市場などのECサイトで模倣品が販売された場合、プラットフォーム側に意匠登録証を提示して侵害申告を行うことで、迅速に出品停止措置をとってもらえる可能性が高まります。これはネット販売を行う事業者にとって非常に大きな武器です。
メリット②:ブランド価値の向上と信頼獲得
「意匠登録済み」と表示することは、「自社製品のデザインに誇りと責任を持っている」というメッセージになります。
消費者に対して「本物」であるという安心感を与えると同時に、取引先や投資家に対しても、知的財産を重視するコンプライアンスのしっかりした企業であるという信頼を築くことができます。
メリット③:参入障壁の構築(先制攻撃)
意匠権を持っていれば、競合他社は「似たようなデザインの商品」を作ることができなくなります。
つまり、自社のデザイン周辺に「立ち入り禁止区域」を作るようなものです。ライバル社が、あえてデザインを変更せざるを得ない状況を作り出すことで、市場における優位性を保ち続けることができます。
5. SNS時代の知財戦略テクニック
ここでは、弁理士としておすすめする、現代のスピード感に合わせた高度な意匠戦略を3つ紹介します。
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テクニック1:「秘密意匠」で発売日までデザインを隠す
意匠登録は、原則として登録されると内容が「意匠公報」に掲載され、誰でも見られるようになります。しかし、新商品の発売前にデザインが公開されてしまうと、模倣されるリスクがある上に、SNSでの「サプライズ発表」の効果が薄れてしまいます。
そこで使えるのが「秘密意匠制度」です。
登録から最大3年間、デザインの内容を秘密にすることができます。これにより、「権利は確保しつつ、世の中への発表は発売日のドカンと一発に合わせる」という戦略が可能になります。トレンドの変化が激しいアパレルや雑貨業界では必須のテクニックです。
テクニック2:「関連意匠」でデザインのバリエーションを守る
一つのヒット商品が生まれると、色違いや少し形を変えたシリーズ展開をすることがあります。
「関連意匠制度」を使えば、ベースとなるデザイン(本意匠)に類似するバリエーションのデザインも、本意匠と紐付けて権利化できます。
改正法により、本意匠の出願から10年間は関連意匠を追加登録できるようになりました。これにより、長く続くブランドのデザインコンセプト全体を「面」で広く保護することができ、模倣業者の「ちょっとだけ変えてパクリだと言われないようにする」という抜け道を塞ぐことができます。
テクニック3:「部分意匠」でデザインの“キモ”を守る
商品全体ではなく、「特徴的な一部分」だけを権利化する方法です。
例えば、特徴的な「持ち手」のデザインがあるマグカップの場合、カップ全体の形状で権利を取ってしまうと、持ち手は同じでもカップの形が違う商品は「非類似(似ていない)」と判断される恐れがあります。
そこで、「持ち手」部分のみを「部分意匠」として登録すれば、カップの形状が変わっても、持ち手が真似されていれば権利を行使できます。
6. 「うっかり公開」してしまった場合の救済措置
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先ほど、「SNSで公開した後は登録できない」と述べましたが、実は救済措置があります。それが「新規性喪失の例外」です。
自らがSNSや展示会、プレスリリースなどで公開してから1年以内であれば、所定の手続きを行うことで、まだ公開していないものとして意匠登録出願ができる場合があります。
ただし、これはあくまで「例外」です。
- 第三者に先に同じようなデザインを出願されてしまった場合は負ける
- 海外(特に欧州や中国など)での権利取得が難しくなる場合がある
といった大きなリスクが残ります。「公開してしまったから諦める」よりはマシですが、「公開する前に出願」が鉄則であることは覚えておいてください。
7. なぜ意匠登録を弁理士に依頼すべきなのか?
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最近では、AIを使った簡易的な出願サービスなども存在しますが、ビジネスの根幹に関わる重要なデザインほど、専門家である弁理士に依頼することを強く推奨します。その理由は大きく3つあります。
①「図面」の作成が命取りになる
意匠登録において、願書に添付する「図面(または写真)」は、権利範囲を決定する最も重要な要素です。
線の太さ、描き方、省略の仕方ひとつで、権利範囲が広くなったり、逆に狭すぎて使い物にならなくなったりします。
特に「部分意匠」や「内装の意匠」では、どの部分を実線で描き、どの部分を破線にするかといった高度な判断が求められます。「インスタ映え」するデザインの「どこがキモなのか」を法的観点から分析し、最適な図面を作成するには、専門的なノウハウが必要です。
②先行意匠調査の精度
出願しても、すでに似たようなデザインが登録されていれば、審査に通りません。また、他人の権利を侵害してしまうリスクもあります。
弁理士は、専用のデータベースと長年の経験を用いて、精度の高い「先行意匠調査」を行います。これにより、無駄な出願費用を抑え、登録の可能性を高めることができます。
③ビジネス全体を見据えた戦略提案
単に「登録する」ことだけがゴールではありません。「どの国で売るのか」「シリーズ展開はあるのか」「どの程度の期間独占したいのか」など、事業戦略に合わせて、意匠だけでなく、商標や特許を組み合わせた「知財ミックス」の提案ができるのが、弁理士の強みです。
例えば、商品の形状は「意匠」で守り、商品名は「商標」で守り、内部の特殊な構造は「特許」で守る。このように多角的に守ることで、競合他社にとって攻略不可能な強力な城壁を築くことができます。
まとめ:デザインは「守ってこそ」資産になる
「インスタ映え」するデザインは、貴社の情熱と努力の結晶です。それが一瞬にして模倣され、利益を奪われてしまうことは、ビジネスにおいて耐え難い損失です。
SNSで拡散される時代だからこそ、「見せる前に守る」という意識が不可欠です。
- これから新商品をリリースする予定がある
- 店舗の内装にこだわっている
- SNSで自社商品が話題になり始めている
もし一つでも当てはまるなら、トラブルが起きる前に、一度弁理士へご相談ください。
意匠権という「最強の盾」を手に入れて、安心してビジネスを拡大していきましょう。
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