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ガチャの特許を弁理士が解説|10連のダブり防止・「天井」の仕組みは権利になっている

作成者: 弁理士 杉浦健文|2026/08/03

10連ガチャを引いたとき、同じキャラばかりがダブらないようになっていると感じたことはありませんか。あるいは、一定回数引くと「確定」で欲しいものが手に入る——いわゆる「天井」。

これらは偶然そうなっているのではありません。ゲーム会社が特許を取得している「仕組み」です。本記事では、コナミ・MIXI・セガ・ドリコムが実際に登録したガチャ関連の特許4件を、特許庁の公報(J-PlatPat)で請求項の原文まで確認して弁理士が解説します。

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目次

  1. 結論|ガチャの「体験」そのものが権利になっている
  2. ①10連でダブらない仕組み(コナミ・特許6284105)
  3. ②「天井」の仕組み(MIXI・特許7667467)
  4. ③ダブったアイテムを人にあげる(ドリコム・特許6284678)
  5. ④みんなで見るガチャ(セガゲームス・特許6011894)
  6. 4件を並べて見える3つの型
  7. なぜガチャ特許は「速く、静かに」取られるのか
  8. 重要|特許が取れることと、法規制上問題ないことは別
  9. ゲーム開発者への実務示唆
  10. よくある質問(FAQ)

結論|ガチャの「体験」そのものが権利になっている

● 守られているのは「抽選」ではない:ランダムに選ぶこと自体は古くからある技術です。特許になっているのは「ダブらせない」「一定回数で確定させる」「余ったものを人に渡せる」といった、ユーザー体験の課題を解く工夫です。
● 権利化が速い:4件のうち3件が公開公報の発行前に登録(B1)されており、いずれも早期審査を使っています。最速はドリコムの出願から約3か月半
● 分割出願も使われている:MIXIの「天井」特許は、先行する出願からの分割出願で取得されています。
特許 権利者 守っている仕組み 登録
特許6284105(B1)コナミデジタルエンタテインメント連続抽選でダブったら再抽選する2018-02-09
特許7667467(B2)MIXI一定数に達したらモードを切り替える(天井)2025-04-15
特許6284678(B1)ドリコム当たったアイテムを他ユーザーに贈呈する2018-02-28
特許6011894(B1)セガゲームスグループで1人が引き、全員で見る2016-09-30

①10連でダブらない仕組み(コナミ・特許6284105)

特許番号特許第6284105号(公報種別 B1
発明の名称ゲーム装置、及びプログラム
特許権者株式会社コナミデジタルエンタテインメント
出願/審査請求/登録2016年9月2日 / 2017年4月28日 / 2018年2月9日
早期審査/請求項数あり / 4項

特許第6284105号 特許請求の範囲 請求項1(原文引用)

複数種類のゲーム媒体のうちからいずれかのゲーム媒体を抽選する抽選処理を複数回行う際に、2回目以降の抽選処理で選択されたゲーム媒体が既に選択済みのゲーム媒体と同種類のゲーム媒体である場合、前記2回目以降の抽選処理で選択されたゲーム媒体の再抽選を行うとともに、所定の回数以上の再抽選を行っても再抽選で選択されたゲーム媒体が既に選択済みのゲーム媒体と同種類のゲーム媒体である場合、前記2回目以降の抽選処理で最初に選択されたゲーム媒体を抽選結果として選択する抽選処理部、を備えるゲーム装置。

読みどころ|「無限ループを防ぐ」ところが権利の核

前半は素直です。連続で抽選するとき、2回目以降にすでに出たものと同じ種類が出たら引き直す——これが「10連でダブらない」体験の正体です。

面白いのは後半です。「引き直しても、また同じものが出たらどうするのか」。理屈のうえでは永久に引き直し続ける可能性がありますが、この請求項は「所定の回数以上引き直してもダメなら、最初に出たものを結果とする」と定めています。

弁理士の視点:「ダブったら引き直す」だけなら、誰でも思いつきます。しかしこの請求項が具体的なのは、実装したときに必ずぶつかる「終わらないかもしれない問題」への答えまで書いている点です。開発現場で必ず検討するはずの分岐——ここが発明として評価される部分です。従属項では「同じレアリティの中から引き直す」(請求項2)、「同レアリティに他の種類がなければ引き直さない」(請求項3)と、さらに現実的な条件が足されています。

②「天井」の仕組み(MIXI・特許7667467)

特許番号特許第7667467号(公報種別 B2)
発明の名称情報処理装置、プログラム、及び情報処理方法
特許権者株式会社MIXI
出願2023年2月28日(特願2021-138333の分割出願・原出願日2021年8月26日)
審査請求/登録2024年6月25日 / 2025年4月15日
請求項数6項

特許第7667467号 特許請求の範囲 請求項1(原文引用)

プロセッサを備え、前記プロセッサは、ユーザへのゲームオブジェクトの付与に基づいて所定条件が満たされた場合に、複数のモードのなかからモードを選ぶモード選択を行い、前記モード選択で選んだモードにおいて前記ユーザへ付与するゲームオブジェクトを選ぶ付与オブジェクト選択を行い、前記複数のモードは、少なくとも第1モードと第2モードとを含み、前記第1モードと前記第2モードは、互いに、ゲームオブジェクトの選び方と、ゲームオブジェクトを選ぶ母集団と、ゲームオブジェクト抽選時の当選確率と、のうち少なくとも1つが相違する、情報処理装置。

読みどころ|「天井」を一般化して書いている

請求項1だけを読むと抽象的ですが、従属項を読むと「天井」だと分かります。

  • 請求項2:所定期間内にユーザへ付与した数が所定数に達した場合に、条件が満たされたと判定する ← ここが「◯回引いたら」
  • 請求項3:第1モードでは抽選で選び、第2モードではユーザーが候補から選んで付与する ← ここが「確定・自分で選べる」

つまり、一定回数引いたら、当選確率が違うモードに変わるか、あるいは自分で選べるモードに切り替わる——という仕組みです。請求項1では「選び方・母集団・当選確率のうち少なくとも1つが違う」と広く書き、従属項で具体化する構成になっています。

実務Tips(分割出願の使いどころ):この特許は先の出願(2021年8月)から分割して2023年に出願されたものです。分割出願は、もとの出願に書いてあった内容の中から別の切り口で権利を取り直す手法です。競合の実装が見えてきた段階で、それを捉える形の請求項を立てられるという利点があります。ゲーム業界での使われ方はゲーム会社に学ぶ分割出願戦略で詳しく扱っています。

③ダブったアイテムを人にあげる(ドリコム・特許6284678)

特許番号特許第6284678号(公報種別 B1
発明の名称ゲームシステム、アイテム贈呈方法、ならびに、プログラム
特許権者株式会社ドリコム
出願/登録2017年11月14日 / 2018年2月28日(約3か月半)

特許第6284678号 特許請求の範囲 請求項1(原文引用)

アイテム群から当選アイテムを抽選する抽選部と、前記抽選部により抽選された前記当選アイテムが所定の贈呈要件を満たす場合に、前記当選アイテムを贈呈することについての提案が含まれる抽選結果をユーザに提示する提示部と、前記抽選結果が提示されたユーザから、前記当選アイテムを贈呈することについての承諾若しくは不承諾を受け付ける受付部と、前記受付部により前記当選アイテムを贈呈することについての承諾を受け付けると、前記当選アイテムを他のユーザに付与する付与部と、を備えることを特徴とするゲームシステム。

読みどころ|「余り」の行き場をつくる

ガチャを引くと、すでに持っているものが当たることがあります。この特許は、そういうアイテムが出たときに「誰かにあげませんか」と提案し、ユーザーが承諾したら他のユーザーに渡すという仕組みです。

明細書では、この仕組みの狙いとしてリアルマネートレード(RMT)の防止にも触れられています。渡す相手をシステム側が決める構成にすることで、アイテムの現金取引に使われることを避けるという設計です。

弁理士の視点:注目したいのは権利化のスピードです。2017年11月14日に出願し、翌年2月28日に登録——約3か月半です。ガチャの仕様はアップデートのたびに変わり、競合の追随も速い領域です。「実装した機能を、リリースに間に合う速度で権利にする」という運用がうかがえます。

④みんなで見るガチャ(セガゲームス・特許6011894)

特許番号特許第6011894号(公報種別 B1
特許権者株式会社セガゲームス
出願/審査請求/登録2015年9月14日 / 2016年2月12日 / 2016年9月30日
早期審査/請求項数あり / 7項

請求項1の骨子は次のとおりです。複数ユーザーのグループで行うゲーム内イベントにおいて、グループ内の1人が抽選を要求すると、その人だけが抽選を実行でき(他の人は制限される)、抽選画面はグループ全員の端末に配信される。そして当たったアイテムを、グループ内の誰に付与するかを設定できる——という仕組みです。

従属項はさらに踏み込んでいます。抽選に必要な課金を誰が負担するかも設定でき(請求項2)、抽選が終わった後に付与先を別の人に変更でき(請求項3)、その変更条件をユーザー間の関係に基づいて決める(請求項4)としています。

実務Tips(体験の設計が発明になる):技術的には「1人が引いて、画面を全員に配信する」だけです。しかし「誰が引くか」「誰が払うか」「誰がもらうか」を分離したところに新しさがあります。ゲームデザインの議論で出てくる仕様が、そのまま請求項の構成要件になっている好例です。

4件を並べて見える3つの型

型① 守っているのは「抽選」ではなく「抽選のまわり」

4件のいずれも、ランダムに選ぶ処理そのものを権利にしていません。それは古くからある技術だからです。権利になっているのは、抽選の前後——ダブりをどう扱うか、一定数に達したら何を変えるか、余ったものをどうするか、誰が引いて誰がもらうか——という部分です。

型② 「実装したら必ず悩む分岐」が請求項になる

コナミの「引き直しても同じだったらどうするか」、MIXIの「モードをどう切り替えるか」、セガの「課金者と受取人が違ってよいか」。仕様を詰める会議で必ず議題になる論点が、そのまま構成要件になっています。逆に言えば、開発中の議事録に発明の芽があるということです。

型③ 広く書いて、従属項で具体化する

MIXIの請求項1は「選び方・母集団・当選確率のうち少なくとも1つが違う」と抽象的に広く書かれ、請求項2・3で「所定数に達したら」「ユーザーが選べる」と具体化されています。広い請求項で範囲を確保し、審査で先行技術を指摘されたら具体的な従属項を取り込む——定石どおりの設計です。

なぜガチャ特許は「速く、静かに」取られるのか

4件の経過を並べると、はっきりした傾向があります。

特許 公報種別 早期審査 出願→登録
ドリコム 6284678B1約3か月半
セガゲームス 6011894B1あり約12か月半
コナミ 6284105B1あり約17か月
MIXI 7667467B2分割出願で取得

4件中3件が「B1」です。B1とは、公開公報が発行される前に登録されたことを示します。日本の特許出願は原則として出願から1年6か月後に公開されますが、審査がそれより速く進むと、公開を経ずに登録公報だけが現れます

競合ウォッチの盲点:公開公報の監視だけで他社の動向を追っていると、この型の権利は登録されるまで一切見えません。ある日突然、権利になった状態で現れます。ガチャのようにアップデートで仕様が変わり続ける領域では、登録公報まで含めてウォッチする設計が必要です。同じ現象はマーケティング分野やSaaS分野でも確認しています(→マーケティング分野の登録特許15件の検証)。

重要|特許が取れることと、法規制上問題ないことは別

ここは誤解が生じやすいので、はっきり書いておきます。

特許庁の審査は「その発明が新しく、進歩性があるか」を判断するものです。その仕組みを実際に提供することが、景品表示法などの規制に照らして適法かどうかを審査するものではありません。特許を取得していることは、適法性の証明にはなりません。

ガチャをめぐっては、いわゆる「コンプガチャ」について、2012年に消費者庁が景品表示法の禁止する「絵合わせ(カード合わせ)」に該当し得るとの考え方を示し、業界各社が提供を取りやめた経緯があります。また現在は、業界団体のガイドラインに基づく提供割合(排出確率)の表示が広く行われています。

つまりガチャの設計には、①特許(他社の権利に触れないか/自社の工夫を守れるか)②景品表示法などの規制という、まったく別の2つの検討が必要です。前者は弁理士、後者は消費者法に詳しい弁護士の領域になります。どちらか一方をクリアしても、もう一方は解決しません。

ゲーム開発者への実務示唆

① 仕様会議の「揉めた論点」を記録しておく

今回の4件はいずれも、仕様を詰める過程で必ず議論になる分岐を権利にしています。「引き直しの上限をどうするか」「課金者と受取人を分けるか」——こうした検討の記録は、そのまま発明の説明資料になります。

② アップデート公開の前に出願する

新仕様をアップデートで実装し、告知した時点でその内容は世に出たことになります。原則として、その後に特許を受けることはできません。リリースノートを出す前が期限だと考えてください。

③ 速度は設計できる

ドリコムの約3か月半が示すとおり、権利化のスピードは選べます。出願と同時に審査請求し、早期審査を申請するという運び方です。詳しくはスーパー早期審査の活用事例をご覧ください。

④ 他社のガチャ特許は「登録公報」で追う

前述のとおり公開前登録が多い領域です。競合企業名を権利者として登録公報を定期的に検索する運用を加えてください。似た機能を実装する前の確認にもなります。

よくある質問(FAQ)

Q. ガチャの「抽選」そのものに特許はありますか?

A. ランダムに選ぶという処理自体は古くからある技術のため、それだけで特許になることは考えにくいです。本記事の4件も、抽選そのものではなく「ダブりの扱い」「一定数での切り替え」「余ったアイテムの行き先」「誰が引き誰がもらうか」といった抽選のまわりの仕組みを権利にしています。

Q. 自社のゲームにも天井やダブり防止がありますが、他社特許に触れますか?

A. 同じような機能があるだけでは侵害にはなりません。特許権の効力は、請求項に書かれた構成要件をすべて満たす実施にのみ及びます。たとえばコナミの特許では「所定回数以上の再抽選でも同じなら最初に選択されたものを結果とする」という要件があり、これを満たさない実装は原則として非充足です。実装との対比は弁理士にご相談ください。

Q. 特許を取っていれば、ガチャの提供方法に問題はないと言えますか?

A. いいえ。特許庁の審査は発明の新規性・進歩性を判断するもので、景品表示法などの規制への適合性を審査するものではありません。特許の取得と、提供方法の適法性は別の問題です。規制面については消費者法に詳しい弁護士にご確認ください。

Q. 「B1」の特許とは何ですか?

A. 公開公報が発行される前に登録された特許を指します。日本の出願は原則1年6か月後に公開されますが、審査がそれより速く進むとこの形になります。登録後の権利としての効力は通常の特許と同じです。ただし第三者からは事前に察知しにくいため、競合調査では登録公報まで追う必要があります。

Q. インディー・個人開発でも特許は関係ありますか?

A. 関係します。特許権の効力は事業規模を問いません。ただし、機能が似ているだけで侵害になるわけではないため、過度に恐れる必要もありません。気になる特許があれば請求項を読み、自社実装と1つずつ対比するのが実務的な進め方です。

まとめ

ガチャの特許で守られているのは、「ランダムに選ぶこと」ではなく「ランダムのまわりをどう設計したか」でした。10連でダブらせない、一定回数で切り替える、余ったものを人に渡せる、みんなで見られるようにする——どれもユーザー体験の課題を解いた工夫です。

そして権利化は速く、静かです。4件中3件が公開前に登録されており、公開公報の監視だけでは捉えられません。ゲームを開発している方は、攻め(自社の仕様の権利化)と守り(登録公報のウォッチ)の両方を、アップデートのサイクルに組み込むことをおすすめします。

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エボリクス(evorix.jp)では、ゲーム・アプリ分野の特許出願と、他社特許のクリアランス調査を承っております。「この新仕様は権利化できるか」「アップデート前に確認したい」といったご相談に、リリーススケジュールを踏まえて対応いたします。まずはお問い合わせフォームより、ご相談の流れとあわせてお気軽にどうぞ。

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本記事の注意事項:本記事は2026年8月時点の公開特許情報(特許庁J-PlatPat)に基づく一般的な解説です。引用した請求項は公報の記載に基づきますが、権利範囲は最終的に公報の正本と出願経過により定まり、権利の存続状況は特許料の納付状況等により変動します。公報には製品名の記載がないため、特定のゲームタイトルに当該技術が使われているかを断定するものではありません。本記事の説明は理解を助けるための要約であり、権利範囲を画定するものではありません。景品表示法その他の規制への適合性について本記事は何ら判断を示すものではなく、実施にあたっては別途専門家の検討が必要です。侵害の成否について本記事は何ら断定するものではなく、個別事案の結論を保証するものでもありません。

出典

AUTHOR / 執筆者

杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)

知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士

特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。