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【弁理士解説】ゲームの特許事例まとめ|任天堂・コナミ・カプコンの有名訴訟から学ぶ

ゲームの特許事例(任天堂・コナミ・カプコン)を弁理士が解説 EVORIX

「ゲームに特許なんてあるの?」と思うかもしれません。しかし実際には、任天堂・コナミ・カプコンといった有名企業が、ゲームの技術をめぐって数十億円規模の特許訴訟を戦ってきました。私たちが何気なく遊んでいる操作やシステムの裏には、激しい知財の攻防が隠れています。

本記事では、ゲーム・IT分野に精通した弁理士が、日本の有名ゲーム企業の特許事例を、実際の特許番号・訴訟の結末とともに解説します。「なぜゲームが特許になるのか」「どんな技術が争われたのか」「開発者は何に注意すべきか」が分かります。

本記事の事実関係は、各社の公式発表・主要メディア報道・特許公報(J-PlatPat/IP Force等)に基づき、複数の情報源で照合しています。和解条件など非公表の事項や、報道ベースの情報は、その旨を明記しています。

ゲームと特許|遊びの裏にある知財の攻防

ゲームは、操作方法・ユーザーインターフェース(UI)・通信・マッチング・課金(ガチャ)など、数多くの技術の集合体です。これらの技術には特許が成立し得るため、ヒット作をめぐって企業間で特許紛争が起きます。

特に日本は、任天堂・ソニー・コナミ・バンダイナムコ・カプコン・スクウェア・エニックス・セガなど、世界的なゲーム企業が集まる「ゲーム特許大国」です。これらの企業は継続的に多数の特許を出願し、時に巨額の訴訟も辞さずに権利を行使してきました。

なぜ「ゲーム」が特許になるのか?

まず大前提として、ゲームの「ルール」や「遊び方」「世界観」といった抽象的なアイデアは、原則として特許になりません。特許の対象は「自然法則を利用した技術的思想(発明)」であり、単なる取り決めやアイデアは含まれないからです。

特許になるのは、そのアイデアをコンピュータ等の技術で実現する「具体的な手段」です。

特許になりにくいもの特許になり得るもの(技術的実現手段)
「キャラを育てて対戦する」というルールタッチで照準方向にボールを投げる操作処理
「ガチャで強いキャラを引く」という遊び抽選確率を制御するシステム
「協力プレイで盛り上がる」という体験登録ユーザー間に限定した通信の仕組み
「臨場感のある演出」というコンセプト画面外の状況を振動でプレイヤーに伝える仕組み

💡 要点:ゲーム特許の本質は「面白さのアイデア」ではなく「それをどう技術的に実現したか」。この点を押さえると、以下の事例がぐっと分かりやすくなります。

事例①|任天堂 vs コロプラ「白猫プロジェクト」(和解金33億円)

日本のゲーム特許訴訟で最も有名な事件です。

特許侵害訴訟|和解

任天堂 vs コロプラ(スマホゲーム「白猫プロジェクト」)

任天堂は2017年12月22日、コロプラのスマホゲーム「白猫プロジェクト」が自社の特許を侵害するとして、東京地裁に提訴しました。対象となったのは6件の特許で、当初の損害賠償請求は約44億円、その後最終的に約97億円まで増額されました。

2021年8月4日、コロプラが任天堂に和解金33億円(ライセンス料を含む)を支払う形で和解が成立し、任天堂が訴えを取り下げました(その他の和解条件は非公表)。日本のゲーム特許訴訟としては突出して大きな金額です。

争われた6件の特許

任天堂・コロプラ両社の公式発表で確認された対象特許は次の6件です。

特許番号報道・解説で指摘された対応機能(参考)
特許第3734820号タッチ操作によるキャラ移動(いわゆる「ぷにコン」=バーチャルパッド)― 争点の中心とされる
特許第4262217号長押しによるチャージ攻撃
特許第4010533号スリープ(省電力)モードからの復帰時の確認画面
特許第5595991号登録済みユーザー間に限定した通信(フォロー/協力プレイ)
特許第3637031号障害物の陰にいるキャラのシルエット表示
特許第6271692号タッチ操作系(具体的機能の公的な明示なし)

注記:各特許と「白猫」機能との対応づけは、主にメディア・専門家の解説に基づくものです(対象6件の番号は任天堂・コロプラの発表等で確認。なお当初は5件で提訴され、訴訟中に第6271692号が追加されて最終的に6件となったと報じられています)。正確な権利範囲は各特許公報の請求項をご確認ください。

💡 要点:知財専門家の分析では、これらの特許は「後から見れば基本的だが、出願当時は新規性があり、極めて広い権利範囲を持っていた」点が決定打になったとされます。早く出願して広い権利を押さえることの重要性を示す事例です。

事例②|任天堂・ポケモン vs ポケットペア「パルワールド」(係争中)

特許侵害訴訟|係争中

任天堂+ポケモン vs ポケットペア(「パルワールド/Palworld」)

任天堂株式会社ポケモンは2024年9月、大ヒットゲーム「パルワールド」が自社特許を侵害するとして、開発元の株式会社ポケットペアを東京地裁に提訴しました。請求は、パルワールドの差止めと、各社へ各500万円(計1,000万円)+遅延損害金です。

本記事の作成時点では係争中(未決着)です。

対象となった3件の特許

特許番号技術内容(書誌・報道に基づく)
特許第7545191号捕獲アイテム(ボール)または戦闘キャラを選択し、照準方向に放つ操作に関する技術
特許第7493117号フィールド上のキャラに照準を合わせた際の、捕獲成否のインジケーター表示
特許第7528390号捕獲・搭乗等の操作系(分割出願)
これらはいずれも分割出願・早期審査を活用して比較的短期間で権利化された特許とされます。話題のゲームに対し、関連特許を機動的に取得して権利行使する――大手の知財戦略がうかがえる事例です。

事例③|コナミ vs Cygames「ウマ娘」

特許侵害訴訟|和解

コナミ vs Cygames(育成ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」)

コナミデジタルエンタテインメントは2023年3月31日、Cygamesの「ウマ娘 プリティーダービー」が自社特許を侵害するとして東京地裁に提訴しました(当初請求は約40億円)。対象は育成シミュレーションのゲームシステムに関する18件の特許とされ、報道では事前設定したキャラの組合せで特定イベントを発生させる仕組み(特許第5814300号)などが挙げられました。

2025年11月7日に和解が成立(条件は非公表)。Cygamesは「特許権侵害の事実はないと確信している」としつつ、ユーザー保護と早期解決の観点から和解に応じたと説明しています。親会社サイバーエージェントは特別損失7億2,700万円を計上しました。

注記:対象18件の全リストは公表されておらず、特許第5814300号は報道ベースの情報です(確信度:中)。

事例④|カプコン vs コーエーテクモ(「無双」「零」)

特許侵害訴訟|判決確定

カプコン vs コーエーテクモゲームス(「無双」シリーズ・「零」シリーズ)

カプコンは2014年、コーエーテクモゲームスの「真・三國無双」「戦国無双」シリーズや、ホラーゲーム「零(FATAL FRAME)」シリーズが自社特許を侵害するとして大阪地裁に提訴しました。

2020年12月15日、最高裁が上告を棄却し、コーエーテクモに約1億4,384万円(143,843,710円)の支払いを命じた判決が確定しました。和解ではなく、判決まで争われて確定した珍しい事例です。

争われた2件の特許

特許番号技術内容対象作品
特許第3350773号前作のディスクや拡張パック等から、追加データ(キャラ・場面・音響)を得る技術「無双」シリーズ
特許第3295771号画面では判断できない状況を、コントローラの振動でプレイヤーに伝える技術「零」シリーズ

コラム|伝説の「ローディング中ミニゲーム」特許

ゲーム特許の世界で語り草になっているのが、「ローディング(読み込み)中に、別の小さなゲームを遊べる」という技術の特許です。

よくある誤解に注意:この特許は任天堂のものと誤解されがちですが、実際は「ナムコ」(現・バンダイナムコ)の米国特許(US 5,718,632)です。1995年頃に出願され、長年にわたり他社がローディング中ミニゲームを採用しにくい状況を生みました。この特許は2015年11月27日に満了し、以後は各社が自由に採用できるようになりました。

💡 要点:1つの特許が、業界全体の「ある表現・機能の採用」を約20年にわたり左右し得る――ゲーム特許の影響力の大きさを象徴する事例です。

事例から学ぶ|ゲーム特許の傾向

これらの事例から、ゲーム特許の傾向が見えてきます。

権利化されやすい要素具体例(本記事の事例)
操作方法・入力UIタッチによるキャラ操作・照準操作(白猫・パルワールド)
端末・システム制御スリープ復帰時の確認画面(白猫)
通信・協力プレイ登録ユーザー間限定の通信(白猫)
追加コンテンツ・連動前作データからの追加取得(カプコン無双)
演出・フィードバック振動による情報伝達(カプコン零)
育成・課金・抽選キャラ組合せによるイベント発生・ガチャ系(ウマ娘)

ポイントは、いずれも「面白さのアイデア」ではなく「それを実現する具体的な技術」が特許になっている点です。また、ヒット作が出ると関連特許での権利行使が起きやすく、人気タイトルほど他社特許との抵触リスクが高まる傾向もうかがえます。

ゲーム開発者・スタートアップへの教訓

① 独自の操作系・システムは特許で守る。バーチャルパッド、独自のマッチング、課金・抽選の仕組みなど、差別化要素は権利化を検討しましょう。

② 公開・リリース前に出願する。サービスを公開してしまうと新規性を失い、特許が取れなくなります。開発スケジュールに「出願」を組み込むことが重要です。

③ 他社特許との抵触(FTO)を確認する。白猫・ウマ娘・パルワールドのように、ヒットすると他社から権利行使される可能性があります。リリース前のFTO調査でリスクを把握しましょう。

④ スタートアップこそ早めに。大手は多数の特許を保有しています。後発・小規模だからこそ、独自技術を早く権利化し、防御の備えを持つことが競争力になります。

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よくある質問(FAQ)

Q. ゲームのアイデアやルールは特許になりますか?

A. ゲームの「遊び方・ルール・世界観」といった抽象的なアイデアそのものは、原則として特許になりません(自然法則を利用した技術的思想にあたらないため)。特許になるのは、それを実現する「技術的な手段」です。例えば「タッチ操作で照準方向にボールを投げる処理」「省電力モードからの復帰時に確認画面を出す仕組み」「振動でプレイヤーに情報を伝える仕組み」など、具体的な情報処理やUIの実装が対象になります。

Q. ゲームの特許侵害で大きな賠償になった例はありますか?

A. あります。代表例が任天堂 vs コロプラの「白猫プロジェクト」事件で、2021年にコロプラが任天堂へ和解金33億円を支払う形で和解しました(任天堂公式発表)。また、カプコン vs コーエーテクモの事件では、2020年に最高裁で約1億4,384万円の支払いが確定しています。

Q. 操作方法(タッチ操作など)も特許になりますか?

A. なります。スマホゲームのバーチャルパッドやタッチによるキャラ操作、照準操作などは、具体的な情報処理として記載すれば特許の対象になります。実際、白猫事件やパルワールド事件では、こうした「操作系」の特許が争点になりました。

Q. 自社のゲームが他社の特許に抵触しないか心配です。

A. ゲームは操作・UI・通信・課金など多くの技術要素を含むため、知らないうちに他社の特許に抵触するリスクがあります。リリース前に、関連する他社特許との抵触可能性(FTO=Freedom to Operate)を弁理士とともに確認することをおすすめします。

Q. ゲームのスタートアップでも特許を取るべきですか?

A. はい。独自の操作系・マッチング・課金システム等があれば、特許で守る価値があります。重要なのは、サービスを公開・リリースする前に出願を完了すること(公開後は新規性を失い特許が取れません)。大手だけでなく、スタートアップこそ早めの権利化が競争力になります。

本記事の注意事項:本記事は、各社公式発表・報道・特許公報に基づく一般的な解説です。和解条件など非公表の事項、報道ベースの情報、係争中の事件の見通しについては、その性質上、内容が確定的でない場合があります。特許の権利範囲は各請求項・経過情報により定まります。具体的な侵害判断・FTO等は、最新の情報と専門家の個別検討をご利用ください。

出典

本記事の主な事実は、以下の公式発表・報道・特許情報に基づきます。