弁理士の杉浦です。当事務所では、スタートアップ企業様(ベンチャー企業)向けのサービスとして、スーパー早期を積極的に活用しております。
【海外展開の強い味方!】INPIT外国出願補助金で知的財産権取得費用をサポート!
海外進出やグローバル市場での事業拡大を目指す中小企業、ベンチャー企業、大学などの皆様にとって、現地の知的財産権(特許、意匠、商標など)をしっかりと取得することは非常に重要です。しかし、外国での権利化には費用がかかりますよね。
そんな時に活用を検討したいのが、INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)が実施する「INPIT外国出願補助金」です!
この補助金は、事業者が外国で知的財産権を取得するためにかかる費用の一部を支援し、国際的な知的財産戦略の構築を後押しすることを目的としています。
では、具体的にどのような事業者に対し、どのような活動を支援してくれるのでしょうか?ブログ読者の皆様に分かりやすくお伝えします!
1. どんな事業者が補助対象となるの?
この補助金は、日本国内に本社を有する事業者が対象です。そして、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 中小企業者:
- 資本金または常勤従業員数が、業種ごとに定められた特定の数字以下である会社または個人。
- 個人事業主の場合は、日本国内に住所がある方に限られます。
- 特定の組合等(企業組合、協業組合、事業協同組合など)も含まれます。ただし、地域団体商標に関する出願は一部制限があります。
- 創業特定法人:
- 資本金が3億円以下で、応募申請日時点で設立から10年以内の法人です。
- ただし、資本金が3億円を超える大企業が株式の過半数以上を所有している場合などは対象外です。
- 試験研究機関等:
- 大学や高等専門学校の研究者、大学や高専を設置する者、大学共同利用機関法人。
- 大学等技術移転機関(TLO)としての承認事業者。
- 特定の独立行政法人や特殊法人、公設試験研究機関等を設置する者、試験研究地方独立行政法人なども含まれます。
- 実施権者等:
- 上記の中小企業者、創業特定法人、試験研究機関等のいずれかに該当する者で、これらの者が出願人である出願について、実施権等の設定を受け、外国での権利化にかかる費用の一部または全部を代わりに負担する方です。ただし、ご自身も上記ア~ウのいずれかに該当している必要があります。
【対象外となる事業者】
以下の事業者はこの補助金の対象となりません。
- みなし大企業(大企業に株式や出資を多く所有されている中小企業者など)。補助事業実施期間中にみなし大企業になった場合も対象外です。
- 経済産業省から補助金停止措置や指名停止措置を受けている者。
- 暴力団または暴力団員と関係がある事業者。
2. どんな活動が支援されるの?(補助対象となる出願と手続)
支援の対象となる活動は、主に以下の外国特許庁等への出願(「補助対象出願」)とその特定の手続(「補助対象手続」)です。
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補助対象出願:
- 日本での出願を基に、パリ条約に基づく優先権を主張して行う外国特許庁等への出願。
- 優先権を主張しないで行う外国特許庁等への出願で、以下の方法によるもの。
- PCT(特許協力条約)に基づく国際出願を、外国特許庁等に係属させる(各国・地域への国内移行手続による)方法。ただし、この方法の場合は日本国特許庁への国内移行手続を行う必要があります。
- ハーグ協定(意匠の国際登録に関する協定)に基づき、指定締約国に日本国を含めて行う外国特許庁への意匠登録出願。
- マドリッド協定議定書(標章の国際登録に関する協定)に基づき行う外国特許庁への商標登録出願。ただし、対象となる商標は、日本国特許庁に行っている出願または有する国内登録商標と対応するものに限られます。
- 【重要】 外国特許庁への出願と、その基礎となる日本国特許庁への出願の出願人の名義が同一でない場合は、補助対象となりません。
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補助対象手続:
- 補助対象出願に係る手続のうち、以下のものが対象です。
- 出願審査請求の手続。
- 拒絶理由通知に対する意見書及び補正書の提出手続。
- 【注意】 これらの手続は、過去にINPIT外国出願補助金や特許庁の関連事業で交付決定を受けた方の、当該特許出願に関する手続に限られます。
- 補助対象出願に係る手続のうち、以下のものが対象です。
3. どんな経費が補助対象になるの?
補助事業のために明確に区分でき、その必要性や金額の妥当性を証拠書類で確認できる経費が対象となります。また、交付決定日以降に契約(発注)を行い、補助事業実施期間内に検収及び支払いを完了したものが対象です。
主な補助対象経費は以下の通りです。
- 外国特許庁等への納付手数料:
- 出願手数料、国際出願の国内移行手続手数料、出願審査請求料など。
- 代理人費用等:
- 国内代理人(弁理士等)費用、現地代理人費用。原則として、国内1事務所、出願先国ごとの現地1事務所の費用が前提です。
- 公証人証明申請費用、委任状作成費用、銀行振込手数料など。
- 翻訳費用:
- 明細書等の翻訳にかかる費用です。単価×単語数やページ数などの内訳を明細書に明記する必要があります。
【補助対象外となる経費の例】
以下の費用は補助対象となりません。
- 補助金の申請書や実績報告書の作成費用。
- 消費税、海外の付加価値税(VAT)など。
- 両替手数料。
- 日本国特許庁に納付する手数料。
- 先行技術調査や先行商標調査にかかる費用。
- 国際出願の国際段階の手数料(国際出願手数料など)。
- 特許料、登録料。
- その他、補助対象外の活動や経費に対応する費用。
4. 補助金額と補助率は?
補助対象経費に対して、補助率は1/2です。
補助される金額の上限は以下の通りです。
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1事業者あたりの上限額(出願):
- 中小企業者、創業特定法人、試験研究機関等(一部除く)、実施権者等: 300万円以内。
- 試験研究機関等(一部): 上限なし。
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1出願あたりの上限額(共通):
- 特許出願: 150万円以内。
- 実用新案登録出願、意匠登録出願、商標登録出願: 60万円以内。
- 商標の抜け駆け対策の出願: 30万円以内。
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1手続あたりの上限額(共通):
- 50万円以内。手続全体の上限は設けられていません。
※ 共同出願の場合、1出願あたりの補助金額上限は、上記金額に持ち分割合などを乗じた額となります。 ※ 中小企業者等(試験研究機関等の一部除く)の場合、意匠登録出願および商標登録出願は、それぞれ5件までが対象となります。
5. 応募申請と採択後の主な流れ・義務
- 申請方法: 原則として、**JGrants(国の電子申請システム)**による電子申請のみ受け付けられています。申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。
- 重複申請の制限: 補助を受けようとする出願について、他の国費を財源とする支援制度と重複して応募申請することはできません。重複が発覚した場合、不採択や交付決定取消しの対象となります。
- 採択後の義務: 補助事業者に採択された後も、いくつかの義務があります。特に重要な点をいくつかご紹介します。
- 経済安全保障推進法に定める「特定技術分野」に属する発明を含む特許出願は、本補助金の対象とできません。
- 賃上げ実施の加点を受けた事業者は、賃上げ状況の報告が必要です。
- 補助事業の内容変更や中止、廃止、承継を行う場合は、事前にINPITの承認が必要です。
- 補助事業完了後、期限内に実績報告書を提出する必要があります。
- 権利化状況報告書を、補助対象となったすべての出願について審査結果や登録状況等が報告完了するまで、毎年提出する義務があります。提出しない場合や虚偽報告の場合、交付決定取消しや補助金返還請求、今後の応募不受理となる可能性があります。
- 正当な理由なく権利化を完了しなかった場合(放棄、取下げ等)は、今後の公募で採択されないことがあります。
- 補助対象経費に関する帳簿や証拠書類を、補助事業完了後5年間保存する必要があります。
- INPITや事務局からの報告要求、実地検査に応じる必要があります。
- 補助金の支払いは、補助事業完了後の精算払いとなります。補助金は課税対象です。
- 不正行為等があった場合、交付決定取消し、返還命令、公表等が行われることがあります。
まとめ
INPIT外国出願補助金は、海外での知的財産権取得を費用面から強力にサポートしてくれる制度です。対象となる事業者や支援内容を確認し、海外展開における知的財産戦略の一環として、ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。
詳しい申請方法や必要書類、公募期間などの最新情報は、弊所までお気軽にお問い合わせください。