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祝!改正!人名の商標登録について

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以前のブログで人名(フルネーム)の商標登録は難しいというお話をしました。(参考リンク

しかし、此度の法改正により、人名の商標登録の要件が緩和、整理されて登録がスムースになりました。今までの状況と比べてどの点が変更されたのか詳しく見ていきましよう。

これまでの人名の取り扱い(おさらい)
 氏名からなる商標が一切登録できなかったという訳ではありません。過去にはいくつも登録が認められておりました。しかし、ここ数年は基準が厳格化して、同姓同名の人が何人も存在していると審査官が判断した場合はその全員の承諾が必要という状況となっていました。1人、2人ならまだ承諾を得られる場合もあるかと思いますが(それでもかなりの手間ですが)、何十人にもなると、全員の承諾を得るのは現実的に不可能であることが予想されます。その結果、人名は商標登録はできないという状況となっておりました。

改正内容について
 今回の改正のポイントは、他人の承諾を得ることなく氏名からなる商標を登録できるようになった点にあります。だたし、どんな場合にでも氏名の商標登録が認められるわけではありません。一定の要件は課せられます。具体的には、(1)登録しようとする商品やサービスの分野でよく知られた他人の氏名ではない場合、(2)政令で定める要件に反しない場合には、他人の承諾なく登録が得られます。
 
 今回の改正で、自分の氏名をブランドとして使用する人は商標権を取得しやすくなりました。審査基準が厳格であった時期に自分の氏名をブランドとして事業を立ち上げた人は積極的に出願して権利化しましょう。なお、4月1日以降にされた出願に適応されます。

以下、よくあるご質問について回答をまとめました。ご参考になれば幸いです。

Q&A

Q.1

法改正後の4条1項8号にある「需要者の間に広く認識されている氏名」とはどんな氏名ですか?

A .1

商標を使用する商品やサービス分野で、相当程度知られている他人の氏名はその他人の承諾がない限り登録を得ることはできません。相当程度とは、地理的範囲や事業的範囲を考慮した上で知られているかが判断されます。例えば全国的に知られている名前でなくても一地方において知られている場合やある商品やサービス分野内で、その業界の人であればよく知られている場合などが挙げられます。
このような場合には、その他人の承諾が必要になります。

Q.2

条文上の政令で定める要件とはどの要件でしょうか?

A. 2

具体的には以下の二点です。

「商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること」
 出願人と出願商標が同一(自分の名前)であること、創業者や代表者指名である、以前から継続して使用している場合など、相当の関連性があると判断されます。
(2) 「商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと」
 他人への嫌がらせをする目的があることや先取りして商標を買い取らせる目的が認識できる場合には不正の目的であると判断されます。(例:データベース上において他人の氏名に関する商標ばかり出願していること認識できる、不正の目的があると第三者から情報提供があった場合など)

Q.3

外国人の氏名はどうなるのでしょう?

A.3

8号の「他人の氏名」には外国人の氏名が含まれます。ただし、ミドルネームを含まない場合には 氏名(フルネーム)ではなく、「略称」として取り扱われます。「略称」の場合には相当程度知られているのみでは足りず、著名性が求められます。つまり誰もが知っているような略称である必要があります。

Q.4

故人(歴史上の人物)の氏名は?

A.4

8号の他人の氏名に故人の氏名は含ません。現存する人物の氏名である必要があります。ただし、歴史上の人物については7号(公序良俗等)の問題が生じる場合があります。注意ください。(参考リンク

 

参考:
改正後の4条1項8号条文
他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であつて、政令で定める要件に該当しないもの

「広く認識されている氏名」についての審査基準
「需要者の間に広く認識されている氏名」の判断にあたっては、人格権保護の見地から、その他人の氏名が認識されている地理的・事業的範囲を十分に考慮した上で、その商品又は役務に氏名が使用された場合に、当該他人を想起・連想し得るかどうかに留意する。