中国進出を成功させる「会社名の商標登録」完全ガイド:中国語ネーミングの決め方から費用・期間まで徹底解説

「中国でのビジネス展開が決まったが、商標登録はどう進めればいいのか?」
「日本の会社名(英語・カタカナ)のままで、中国でも権利は守れるのか?」
「社内で手続きを進めようとしたが、中国独特のルールが複雑すぎて行き詰まってしまった……」
中国への進出や輸出を検討されている企業の担当者様から、このようなご相談をいただくことが急増しています。
日本企業が中国市場に進出する際、最初にして最大のハードルとなるのが**「商標(ブランド名)」の問題**です。特に、漢字文化圏である中国においては、アルファベットやカタカナの社名をそのまま使うだけでは、ビジネスを守りきれないケースが多々あります。
しかし、社内のリソースだけで中国の商標制度を理解し、現地の代理人と交渉し、適切な中国語名称(ネーミング)を考案するのは至難の業です。
この記事では、数多くの中国商標案件をサポートしてきた知的財産事務所エボリクスの視点から、「失敗しない中国語名称の決め方」、「登録に必要な費用とスケジュールの全体像」、そして「社内対応に潜むリスク」について、約3,000文字で徹底解説します。
1. なぜ、英語・カタカナのままでは「危険」なのか?
「ロゴマークは英語表記だし、世界共通でそのまま中国でも使えばいいのでは?」
多くの日本企業が最初にこのように考えます。しかし、中国市場には他の国とは異なる特殊な事情があります。結論から申し上げますと、「公式な中国語(漢字)の名称」を商標登録しておかなければ、ブランドを守ることはできません。
理由は主に2つあります。
① 中国消費者の「漢字変換」習慣
中国の消費者は、アルファベットやカタカナのブランド名を見ても、それをそのまま呼ぶことは稀です。彼らは必ず、自分たちに馴染みのある「漢字」に変換して商品を認識し、呼称します。
例えば、スターバックスは「星巴克(シン・バー・クー)」、コカ・コーラは「可口可楽(クー・コウ・クー・ラー)」として定着しています。もし、企業側が公式な漢字名を用意していなければ、消費者は音や見た目で勝手に「あだ名」をつけて呼び始めます。
② 冒認出願(勝手な商標登録)のリスク
ここで恐ろしいのが、「消費者が勝手につけたあだ名」や「御社の社名を中国語に翻訳した名前」を、第三者が先に商標登録してしまうリスクです。
中国は日本と同様に「先願主義(早い者勝ち)」を採用しています。もし、御社のビジネスが軌道に乗り始めた頃に、無関係の第三者がその「通称」を商標登録していたらどうなるでしょうか?
御社は、中国国内でその名前を使ってビジネスができなくなります。最悪の場合、商標権侵害で訴えられたり、高額な金銭で商標を買い取らざるを得ない状況に追い込まれたりします。
これを防ぐ唯一の方法は、進出前に自社で「公式な中国語名称」を決め、いち早く権利を確保しておくことなのです。
2. 中国語ネーミングの難しさ:ただの翻訳では失敗する
では、どのような中国語名称をつければよいのでしょうか? ここが、社内担当者様が最も頭を悩ませるポイントであり、プロの支援が必要不可欠な部分です。
中国語のネーミングには、大きく分けて3つのパターンがあります。
パターンA:音訳(オンヤク)
日本語の発音に似た漢字を当てる方法です。
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例:Sony → 索尼(スオ・二)
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メリット: 元のブランド名の響きを維持できるため、グローバルな統一感を出しやすい。
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注意点: 意味のない漢字の羅列になりがちで、中国語として意味が通じない、あるいは奇妙な意味になってしまうリスクがあります。
パターンB:意訳(イヤク)
元の言葉の意味を中国語に翻訳する方法です。
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例:Microsoft → 微軟(ウェイ・ルアン) ※Micro(微)+Soft(軟)
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メリット: 企業理念やサービスの内容が伝わりやすい。
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注意点: 元のブランド名と発音が全く異なるため、音としての連想が難しくなります。
パターンC:音義兼訳(オンギケンヤク)
発音が似ており、かつブランドイメージに合う良い意味の漢字を選ぶ方法です。最も難易度が高いですが、成功すれば強力なブランド資産になります。
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例:Coca-Cola → 可口可楽(口にすべく、楽しむべし)
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例:Uniqlo → 優衣庫(優れた服の倉庫)
ネイティブチェックの重要性
社内で辞書を引いて「良い意味の漢字」を並べても、ネイティブから見ると「古臭い」「スラング(俗語)に近い」「発音が言いにくい」といった問題が含まれていることがよくあります。
また、中国には簡体字(大陸で使用)と繁体字(香港・台湾で使用)の違いもあります。エボリクスでは、中国商標の専門家が、**「音の響き」「漢字の意味」「商標としての強さ」**のバランスを考慮し、御社に最適なネーミングをご提案します。
3. 「社内だけでは無理」と感じる技術的障壁:サブクラス制度
ネーミングが決まったとしても、次の壁として立ちはだかるのが**「指定商品の区分」**選びです。ここに、日本の常識が通用しない落とし穴があります。
中国独自の「サブクラス(類似群)」
商標登録では、その商標を使用する商品やサービスのカテゴリ(区分)を指定します。日本と中国は同じ国際分類(ニース分類)を採用していますが、中国にはその下に**「類似群(サブクラス)」**という独自の細分化されたコードが存在します。
例えば、同じ「第25類(被服)」の中にあっても、サブクラスが異なれば「非類似(似ていない商品)」と判断されます。
極端な例ですが、もし「Tシャツ」のサブクラスだけを指定して登録し、「コート」や「帽子」のサブクラスを指定し忘れていた場合、他社が同じ名前で「コート」や「帽子」を登録することが可能になってしまうのです。
この「権利の穴(抜け漏れ)」を防ぐためには、中国の最新の運用基準(類似商品・役務区分表)を熟知している必要があります。これは一般的な翻訳会社や、知財部を持たない企業の担当者様が独力で行うにはあまりにもリスクが高い作業です。
4. 商標登録までの流れとスケジュール
ご相談いただいてから、実際に登録証がお手元に届くまでには、一般的に10ヶ月〜1年程度の期間を要します。中国ビジネスの開始時期から逆算して、早めに動き出すことが重要です。
STEP 1:調査・ネーミング検討(約2週間)
まずは、ご希望の名称がすでに他社に登録されていないか、先行商標調査を行います。
ここが最も重要なフェーズです。もし類似の商標が見つかった場合、ネーミングの微調整や、別案の策定を行う必要があります。
STEP 2:出願(申請手続き)
中国国家知識産権局(CNIPA)へ出願書類を提出します。エボリクスが提携する信頼できる現地代理人を通じて手続きを行います。
STEP 3:方式審査・実体審査(約6〜9ヶ月)
審査官による審査が行われます。
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スムーズな場合: そのまま「初歩査定公告」へ進みます。
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拒絶理由通知が来た場合: 「既存の商標に似ている」「識別力がない」などの理由でNGが出た場合、反論書(意見書)を提出して争うかどうかの判断が必要になります。
STEP 4:公告期間(3ヶ月)
審査を通過すると、商標公報に掲載されます。ここから3ヶ月間は、第三者からの異議申し立てを受け付ける期間です。
STEP 5:登録証の発行
異議申し立てがなければ、晴れて登録となります。登録証(電子データが主流です)が発行され、10年間の独占排他権が発生します。
5. 気になる費用感について
「海外の商標登録は高い」というイメージがあるかもしれません。しかし、後からトラブルになって社名変更を余儀なくされたり、商標権侵害で訴えられたりするコストに比べれば、事前の登録費用は決して高いものではありません。
費用は主に以下の要素で構成されます。
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現地庁費用: 中国政府に支払う印紙代。
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現地代理人費用: 中国の弁理士・弁護士の手数料。
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国内事務所手数料: 弊社でのハンドリング、戦略立案、翻訳、通信費など。
目安としては、「1商標・1区分」の出願で、調査費用込みで総額 [〇〇万円] 程度からとなるケースが一般的です。(※為替レートや区分数、ネーミング考案オプションの有無によって変動します)
多くの企業様が、「ネーミング考案」や「複数区分の調査」を含めたパッケージでお見積りを依頼されます。弊社では、出願前にトータルコストを明確にご提示しますので、追加請求に怯えることなく安心して進めていただけます。
6. まとめ:中国商標は「安心」を買う投資です
中国市場は魅力的ですが、知的財産に関しては「性悪説」で備える必要があります。「うちはまだ有名じゃないから大丈夫」という油断は禁物です。中国では、日本の地方の中小企業の名前でさえ、現地のブローカーによって勝手に商標登録されている事例が後を絶ちません。
もし現在、以下のような状況であれば、今すぐエボリクスにご相談ください。
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「中国進出の話が出ているが、商標のことは誰もわかっていない」
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「現地の代理人を探すのが面倒、または言葉の壁でコミュニケーションが不安」
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「中国語の社名が決まっていない、または良い案が浮かばない」
知的財産事務所エボリクスは、単なる「手続きの代行屋」ではありません。御社の中国ビジネスを成功させるための「知財戦略のパートナー」として、ネーミングの段階から親身にサポートいたします。
「まずは何から始めればいいか」というご相談だけでも構いません。
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