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【弁理士が解説】発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続とは?公開後でも特許を取る方法と注意点

自社の画期的な新製品や新しい技術を開発した際、「早く世の中に知ってもらいたい!」「投資家からの資金調達のためにアピールしたい」という思いから、特許を出願する前にプレスリリースを配信したり、ウェブサイトで公開したり、学会や展示会で発表してしまうケースは決して珍しくありません。
しかし、特許制度において「発明を事前に公開してしまった」という事実は、特許を取得する上で致命的な問題を引き起こす可能性があります。なぜなら、特許の最も重要な要件である「新規性(世の中にまだ知られていない新しいこと)」が失われてしまうからです。
「せっかく素晴らしい発明をしたのに、うっかり公開してしまったから特許はもう取れないのか……」
諦めかけている経営者様、開発担当者様、研究者の方、少し待ってください。日本の特許法には、このような発明者や企業を救済するための「発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)」という制度が用意されています。
この記事では、特許の専門家である弁理士が、「発明の新規性喪失の例外規定」の基本的な仕組みから、適用を受けるための具体的な手続ステップ、証明書の書き方、そして実務上の重大なリスク(海外出願時の落とし穴など)まで、わかりやすく徹底解説します。
📑 この記事の目次
1. 発明の新規性喪失の例外規定(特許法第30条)とは?
1-1. 特許の絶対条件「新規性」とは
特許法第29条第1項では、特許を受けることができる発明の要件として「特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明(公知発明)でないこと」を定めています。これを「新規性」と呼びます。
具体的には、以下のような行為を行うと、発明は新規性を喪失したとみなされます。
| 公開の態様 | 具体例 |
|---|---|
| ウェブサイトへの掲載 | 自社ホームページ、SNS(X、Instagramなど)、動画共有サイト |
| プレスリリースの配信 | PRメディアを通じたニュース配信 |
| 学会・セミナーでの発表 | 論文発表、スライドプレゼンテーション、ポスターセッション |
| 展示会への出展 | 見本市での新製品お披露目、デモンストレーション |
| 販売や配布 | テスト販売、サンプル配布、クラウドファンディング(Makuake、CAMPFIREなど) |
| マスメディアでの報道 | テレビ・新聞・雑誌での取材記事掲載 |
⚠️ 原則:これらの行為を一度でも行ってしまうと、その後に特許出願をしても「すでに世の中に知られている技術」として、特許庁の審査で拒絶されてしまいます。
1-2. 新規性喪失の例外(グレースピリオド)という救済措置
上記のような厳格な原則を貫くと、事業活動のスピードや学術研究の発表を不当に阻害してしまう恐れがあります。そこで設けられているのが、特許法第30条による「発明の新規性喪失の例外規定」です。国際的には「グレースピリオド(恩恵期間)」とも呼ばれます。
特許法第30条の効果
「その公開行為によって新規性を喪失しなかったものとして扱う(擬制する)」
= 一定の条件と厳格な手続を行えば、公開していなかったのと同じ扱いにできる
1-3. 適用を受けられる絶対的な要件
新規性喪失の例外規定の適用を受けるためには、公開の日から「1年以内」に特許出願を行う必要があります。平成30年(2018年)の法改正により、猶予期間が従来の6ヶ月から1年に延長されました。
対象となる公開のパターンは主に以下の2つです。
① 権利者自身の行為に起因する公開
(第30条第2項)
発明者自身や出願人が、自らの意思で発明を公開した場合。学会発表、展示会、ウェブ掲載、販売など、事実上ほぼすべての公開行為が救済対象。
② 意に反する公開
(第30条第1項)
NDAを結んでいたパートナーが勝手に論文を発表した場合や、産業スパイにより情報が流出させられた場合など、出願権者の意図に反した公開。
2. 適用を受けるための手続ステップ【実務フロー】
「公開から1年以内に出願すれば勝手に救済される」というわけではありません。特許庁に対して厳格に定められた手続を行う必要があります。手続に少しでも不備があると救済されず、特許権を永久に失うことになります。
特許出願と同時に「意思表示」をする
特許出願を行うその瞬間に、提出する願書(出願書類)において「新規性喪失の例外規定の適用を受けたい」旨を明記する必要があります。
【願書の記載例】
【特記事項】特許法第30条第2項の規定の適用を受けようとする特許出願
⚠️ 注意:この一文を書き忘れて出願すると、原則として後から追加できず、例外規定の適用を受ける権利を失ってしまいます。
出願から30日以内に「証明書」を提出する
特許出願の日から「30日以内」に、公開の事実を客観的に証明する書面(証明書)を特許庁長官に提出しなければなりません。
📋 証明書に記載すべき必須事項
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開の事実 | いつ・どこで・どのような方法で公開されたか 例:令和〇年〇月〇日、〇〇学会において |
| 公開した者 | 誰が公開したか。「特許を受ける権利を有する者」であることの証明 |
| 公開された発明の内容 | 出願する発明(特許請求の範囲)との同一性が認められることの説明 |
📎 公開態様ごとの証拠資料
| 公開の態様 | 必要な証拠資料 |
|---|---|
| ウェブ公開・プレスリリース | ウェブページのスクリーンショット(URL・公開日時印字)、配信管理画面等 |
| 学会・セミナー発表 | 予稿集の表紙・目次・該当論文ページ、発表証明書等 |
| 展示会出展 | 公式パンフレット、出展者リスト、ブース配布カタログ、展示品写真(日時入り) |
| 販売・クラウドファンディング | 販売開始日記載の納品書・領収書、CFサイトのプロジェクト画面キャプチャ |
💡 複数回公開した場合の証明について(最新の運用)
実際のビジネスでは「プレスリリース → 展示会 → テスト販売」のように一つの発明を連続して複数回公開するケースが多くあります。公開された発明が「同一」である場合、最先の公開について証明書を提出すれば後続の公開行為の証明を省略できる「包括的な証明」の運用が広く認められています。ただし、「同一」の判断は非常に専門的であるため、弁理士による慎重な判断と書類作成が不可欠です。
3. 要注意!例外規定の「落とし穴」と重大なリスク
「公開しても1年以内なら特許が取れるから安心だ」と安易に考えるのは非常に危険です。例外規定はあくまで「最終手段のセーフティネット」であり、利用する場合には以下の重大なリスクが伴います。
⚠️ リスク1:第三者の「独自開発」や「抜け駆け出願」には対抗できない
日本の特許制度は「早い者勝ち」の先願主義を採用しています。新規性喪失の例外規定は、「あなた自身の公開行為を、あなたの特許審査においてのみノーカウントにする」という個人的な救済に過ぎません。
具体的にどういうことか?
あなたが発明を公開してから出願するまでの間に、無関係の第三者が同じ発明を独自に開発し、あなたより先に出願してしまった場合 → あなたの特許は「他人の出願より遅かった」という理由で拒絶されます。また、第三者がプレスリリース等を見て改良発明を出願し、特許を取得してしまう「模倣のリスク」も存在します。
⚠️ リスク2:外国(海外)での特許取得が絶望的になる可能性
これが、グローバル展開を見据える企業にとって最も致命的なリスクです。「グレースピリオド」の制度は世界共通ではありません。
| 国・地域 | グレースピリオドの扱い | 救済度 |
|---|---|---|
| 日本 | 公開から1年間。ほぼ全ての公開行為が対象 | ◎ 広い |
| アメリカ | 公開から1年間。比較的柔軟に救済 | ◎ 広い |
| ヨーロッパ(EPO) | 原則「絶対的新規性」。BIE認定博覧会や背信行為のみ。期間6ヶ月 | ✕ 極めて狭い |
| 中国 | 政府主催の国際展覧会・所定の学術会議のみ。期間6ヶ月 | △ 限定的 |
日本の学会発表、自社ウェブサイト・展示会での公開は、ヨーロッパでは一切救済されません。ヨーロッパでの特許取得は事実上不可能になります。
海外市場への参入を少しでも考えているなら
「いかなる公開行為よりも前に、まずは日本での特許出願(基礎出願)を完了させる」
これが鉄則中の鉄則です
⚠️ リスク3:手続の不備による適用否認リスク
「出願と同時の意思表示」「1年以内の出願」「30日以内の証明書提出」というスケジュールは絶対です。証明書の記載内容に論理的な飛躍があったり、公開された発明と出願する発明の同一性が証明できなかったりした場合、例外規定の適用を否認され、特許が拒絶されてしまいます。短期間で法的に非の打ち所がない手続を完了させるのは、知財の専門知識がない方にとっては極めて困難です。
4. 弁理士に手続を依頼するメリット
発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続は、一般的な特許出願以上に複雑で、高度な法的判断と正確性、そして何よりスピードが要求されます。
✅ メリット①:的確な証明書の作成と致命的な手続ミスの防止
弁理士は、特許庁の最新の審査基準やガイドラインを熟知しています。「いつ・どこで・誰が公開したか」を法律要件に照らし合わせ、どのような証拠を揃えれば審査官に認められるのかを的確に判断。論理的で説得力のある証明書を期限内に迅速に作成・提出し、手続の不備による致命的な失敗を未然に防ぎます。
✅ メリット②:第三者の出願リスクを最小限に抑えるスピード対応
公開日から時間が経過するほど、第三者に権利を奪われるリスクが高まります。弁理士に依頼することで、特許の権利範囲を定める高度な技術文書(特許明細書)の作成から出願手続までをプロのスピードで行い、1日でも早く特許庁への出願を完了させることができます。
✅ メリット③:事業戦略に合わせたグローバルな知財戦略の提案
「すでに公開してしまった技術について、海外展開をどうカバーするか」は経営上の大きな課題です。
弁理士に相談することで、例えば「すでに公開された基本技術とは別に、まだ公開していない改良技術(周辺ノウハウ)を新たに抽出して、それで海外特許網を構築する」など、ダメージを最小限に抑えつつ競合を排除できる、総合的な知財戦略のアドバイスを受けることができます。
5. まとめ:発明を公開してしまったら、すぐに弁理士へ
特許制度の大原則は「出願前の公開は厳禁」です。しかし、やむを得ず、あるいは意図せず発明を公開してしまった場合でも、「発明の新規性喪失の例外規定」を正しく理解し、迅速に行動すれば、特許を取得して自社のビジネスを守り抜くことは十分に可能です。
📌 手続の要点サマリー
1年以内
公開日からの出願期限
出願と同時
願書への意思表示
30日以内
証明書の提出期限
こんなお悩みはありませんか?
- 「数ヶ月前に新製品のプレスリリースを出してしまったが、今から特許を取れるだろうか」
- 「来週、展示会で発表する予定だが、特許出願の準備が間に合っていない」
- 「ウェブサイトに掲載した技術を海外にも展開したいが、どう戦略を立てるべきか」
「もう特許は無理だ」と自己判断して諦める前に、一刻も早く弁理士へご相談ください。
まずは無料相談から
知財戦略のプロフェッショナルである弁理士が、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、例外規定を用いた適切な手続の代行はもちろん、将来の事業展開を見据えた最適な権利化のルートをご提案いたします。
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