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ビジネスモデル特許の取得方法 - 弁理士が徹底解説

こんにちは。弁理士の杉浦健文です。

近年、インターネットやAI技術の発展に伴い、新しいビジネスモデルやサービスが次々と生まれています。「これまでにない新しいビジネスだから、特許を取って独占したい!」そうお考えの方も多いのではないでしょうか?

しかし、「ビジネスモデル特許」という言葉はよく聞くものの、その実態や特許を取得するための要件、方法については、分かりにくいと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

実は、特許制度において「ビジネスモデル」という名の独立した特許があるわけではありません。ビジネスに関する発明も、他の技術分野の発明と同様に、特許法に基づき審査が行われます。そして、特許の対象となるためには、「自然法則を利用した技術的思想の創作(=発明)」であることが必要です。単なるビジネスアイデアや、人間が行う取り決めやルールだけでは「発明」とは認められません。

では、どのようなビジネスに関するものが特許になるのでしょうか?そして、特許を取得するためには、具体的にどのような点に注意して進めれば良いのでしょうか?

この記事では、特許庁の審査基準等も参考に、ビジネスモデル特許(として成立しうるソフトウェア関連発明)の特許要件や取得方法について、専門家である弁理士の視点から詳しく解説します。

あなたの素晴らしいビジネスアイデアを、強力な権利として保護するための一助となれば幸いです。

1. 「ビジネスモデル特許」とは?発明に該当するための重要なポイント

先ほど述べたように、「ビジネスモデル」という分類の特許が存在するわけではありません。一般的に「ビジネスモデル特許」と呼ばれているものは、コンピュータソフトウエアを用いて実現されるビジネス方法に関する発明であることが多いです。

ソースによれば、コンピュータソフトウエア関連発明は、「方法の発明」又は「物の発明」として出願できます。そして、ソフトウエア関連発明が「発明」に該当するかどうかの判断は、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否かという観点から行われます。つまり、単にビジネスのアイデアや手順をコンピュータで処理するだけでなく、その情報処理がコンピュータ(ハードウエア資源)とソフトウエアが協働することによって、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工として具体的に実現されている必要があるのです。

これを分かりやすく言うと、ビジネスの仕組みそのものではなく、そのビジネスをコンピュータシステム上でどのように実現するか、そのシステムやプログラム、データ構造に技術的な特徴があるかが重要になります。

ソースには、「発明」に該当するソフトウェア関連発明の具体的な事例が多数記載されています。いくつかご紹介しましょう。

【「発明」に該当する事例】

  • 商品の売上げ予測プログラム

    • 請求項の概要: 種々の商品の売上げを予測するためにコンピュータを使用。予測日入力、過去の売上げ実績データ、変動条件データ、補正ルールを記録した記憶手段を備え、過去データ平均から第1予測値を計算し、変動条件データと補正ルールに基づいて第1予測値を補正して第2予測値を決定する手段を含む。
    • 発明の詳細な説明の概要: 小売店での商品発注に必要な売上げ予測値を得るシステム。曜日、天気、競合店の状況、イベント等による需要変動が大きい商品の売上げを、経験に頼らず、一定の予測結果を短時間で得ることを目的とする。売上げデータ、変動条件データ、補正ルールに基づいて、第1予測値を算出し、変動条件に応じた補正ルールで第1予測値を補正して最終予測値を決定する。
    • 結論: 「発明」に該当する。
    • 説明: 種々の変動条件と補正ルールに基づいて売上げ実績を予測するという、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が、複数の記憶手段と、データ読み出し・選択等を制御する手段という、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって実現されていると判断できるため。
    • 解説: この事例は、単に「売上げを予測する」というビジネス方法ではなく、過去のデータや変動条件、補正ルールといった具体的な情報を基に、コンピュータが特定の計算処理を行うシステムとして構成されている点が「発明」に該当すると判断された理由です。
  • ポイントサービス方法

    • 請求項の概要: インターネット上の店で商品を購入した金額に応じてポイントを与えるサービス方法。贈与するポイント量と贈与先の名前がサーバに入力され、サーバが贈与先名に基づいて電子メールアドレスを取得し、贈与先のポイントに加算し、贈与先の電子メールアドレスを用いて通知するステップからなる方法。
    • 発明の詳細な説明の概要: 通信販売で用いるポイントサービス方法。インターネット上の店が有するサーバに顧客リスト(顧客名、累積ポイント、電子メールアドレス)を記憶したデータベースを設けてポイントを管理。顧客が商品購入に応じてポイント加算。他顧客へのポイント贈与は、贈与先名と贈与ポイントをサーバに通知することで、サーバが顧客リストを検索・加算し、電子メールで通知する。
    • 結論: 「発明」に該当する。
    • 説明: 顧客からインターネットを介して贈与ポイントと贈与先の通知を受け、顧客リストに登録されている贈与先のポイントを加算し、登録されている電子メールアドレスを用いて通知するという、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が、顧客リスト記憶手段を備えたサーバによる一連の情報処理という、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手順によって実現されていると判断できるため。
    • 解説: ポイントサービス自体はビジネスアイデアですが、それをサーバとコンピュータが協働して行う具体的な一連の情報処理(顧客リスト管理、ポイント加算、通知)として特定した点が「発明」と認められたポイントです。
  • 無人走行車の配車システム及び配車方法

    • 請求項の概要: 配車サーバ、携帯端末、無人走行車からなるシステム。携帯端末がユーザIDと配車位置を送信。配車サーバがユーザIDに対応する顔画像を取得、配車可能な無人走行車を特定し、配車位置と顔画像を送信。無人走行車が配車位置まで自動走行し、顔認識処理で配車希望者を判定し利用を許可する。
    • 発明の詳細な説明の概要: 遊園地やテーマパークなどの敷地内での無人走行車サービス。携帯端末からの配車依頼に基づき、配車サーバが配車可能な無人走行車を特定し指示。無人走行車は自動走行で到着後、顔認証で利用者を確認し乗車を促す。
    • 結論: 「発明」に該当する。
    • 説明: 配車サーバが顔画像を取得・送信し、無人走行車が顔認識処理を行う等、無人走行車の配車という使用目的に応じた特有の演算又は加工が、配車サーバ、無人走行車、携帯端末から構成されるシステムという、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段又は具体的手順によって実現されていると判断できるため。
    • 解説: 無人走行車による配車サービスというアイデアを、サーバと端末、車両間の通信、顔認証といった具体的なコンピュータシステム上の処理として詳細に規定している点が重要です。

これらの事例からわかるように、単なるビジネスの仕組みやルールだけを説明したものではなく、コンピュータやネットワーク、各種データ、センサーといったハードウエア資源とソフトウエアが連携し、特定の目的のために情報を処理する具体的な技術的手段として構成されているかどうかが、「発明」に該当するための重要な判断基準となります。

一方で、単なるゲームのルール や、特定の技術的相関関係が不明確な抽象的なプログラム は、「発明」に該当しない例として挙げられています。

  • ゲーム方法(例6)
    • 説明: チャットシステムという技術的手段を利用した部分があるが、全体としては、遠隔地にいる対局者との間で交互に手番を繰り返して将棋を行うという人為的な取決めののみを利用した方法にすぎないため、「発明」に該当しない。
  • 2次事故防止プログラム(上記(ii-2)に該当しない例)
    • 説明: 「複数の車両に関する情報に基づいて事故発生か否かを判断する」ことのみしか特定されておらず、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、技術的な相関関係が不明確なため、発明に該当しない。
  • コンピュータ(売上げ予測の例2)
    • 説明: 過去のデータに基づいて売上げを予測するという情報処理について、使用目的に応じた特有の演算又は加工を実現するための具体的手段又は具体的手順が記載されているとはいえない。ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されていないため、「発明」に該当しない。

これらの事例は、ビジネスに関連するものであっても、それを技術的な手段として具体的に落とし込めていない場合には、「発明」とは認められないことを示しています。

2. ビジネスモデル特許(ソフトウエア関連発明)が満たすべき特許要件

「発明」に該当すると判断されたとしても、特許として登録されるためには、さらにいくつかの要件を満たす必要があります。主な特許要件には、新規性、進歩性、そして明細書や特許請求の範囲の記載が適切であること(記載要件)があります。

2.1. 新規性・進歩性

あなたのビジネスモデルに関する発明が、出願する時点で、すでに世の中に知られていたり、公開された文献に記載されていたりしないこと(新規性)、そして、先行技術に基づいて、当業者が容易に考え出すことができないこと(進歩性)が必要です。ソフトウェア関連発明の新規性・進歩性の判断は、特許庁の審査基準に従って行われます。

特にビジネスモデル関連の発明で重要になる点をいくつかご紹介します。

  • システム化に伴う一般的な効果

    • コンピュータによってシステム化することにより得られる、「速く処理できる」、「大量のデータを処理できる」、「誤りを少なくできる」、「均一な結果が得られる」といった効果は、システム化に伴う当然の効果であることが多く、通常は出願時の技術水準から予測できない顕著な効果とはみなされません。これらの一般的な効果だけでは、通常、進歩性は認められにくい傾向にあります。
  • 人間が行っている業務やビジネス方法のシステム化

    • これまで人間が行っていた業務やビジネスを行う方法を、単にコンピュータシステムで実現することは、通常のシステム分析手法やシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度であれば、当業者の通常の創作能力の発揮にあたると判断されることが多いです。
    • 例えば、FAXや電話で注文を受けていたのをインターネット上のホームページで注文を受けるようにシステム化すること、雑誌に掲載していた売買申込情報をインターネット上のホームページに掲載するようにシステム化すること、家族が手動で行っていた帰宅時刻に基づく炊飯器のタイマーセットをサーバが自動で行うようにシステム化すること、公知の事象をコンピュータ仮想空間上で再現すること などは、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮に当たるとされています。これらの例は、システム化自体に特別な技術的困難がない限り、進歩性が否定される可能性が高いことを示唆しています。
  • 進歩性が肯定される方向の要素

    • ただし、上記のような一般的な効果やシステム化であっても、引用発明と比較して、出願時の技術水準から予測される範囲を超えた顕著な効果を奏する場合には、進歩性が肯定される方向に働く要素となります。例えば、ある特定分野に適用されるコンピュータ技術の手順や手段等を他の特定分野に適用しようとすることは当業者の通常の創作能力の発揮にあたりますが、その適用に際して所定の技術的条件を設定することで得られる有利な効果が予測を超えて顕著なものである場合には、進歩性が推認されることがあります。
    • また、先行技術には示されていないが、システム化を妨げるような阻害要因を乗り越えた場合も、進歩性が認められる可能性があります。
    • ビジネスを行う方法に関連するソフトウェア関連発明においては、そのビジネス方法そのものによる商業的成功又はこれに準じる事実は、進歩性の存在を肯定的に推認するのに役立つ事実として参酌されることがあります。ただし、これも他の発明と同様に、商業的成功のみで進歩性が判断されるわけではありません。

新規性・進歩性の判断は、先行技術との比較に基づいて行われるため、出願前にしっかりと先行技術調査を行うことが非常に重要です。

2.2. 記載要件(第36条)

特許を受けるためには、明細書(発明の詳細な説明)と特許請求の範囲の記載が、特許法第36条で定められた要件を満たす必要があります。特にビジネスモデル特許(ソフトウェア関連発明)に関連する重要な記載要件は以下の通りです。

  • 実施可能要件(第36条第4項第1号)

    • 発明の詳細な説明は、その発明が属する技術の分野における当業者が、その発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されている必要があります。ソフトウェア関連発明の場合、これは、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現される仕組みを、当業者が理解し、再現できるように説明する必要があることを意味します。
    • ソースの例では、為替変動を予測するゲーム理論を用いた数理的評価手法とそれを実現するソフトウエアが、出願時の技術常識に基づいても当業者が理解できない場合、請求項に係る発明を実施できない場合に該当するとされています。
    • また、生物関連発明の事例ではありますが、ポリヌクレオチドがコードするタンパク質の「特定の機能」(技術的に意味のある特定の用途が推認できる機能)が不明確である場合や、DNA断片から全長DNAを取得し、それが対応するタンパク質の機能や生理活性が予測できない場合、単独のSNPを法医学的鑑定に用いる記載だけでは使用できるとは認められない場合 など、発明の詳細な説明から「使用できること」が不明確であるとして実施可能要件違反となる事例が挙げられています。また、短いペプチドの変異体について、実験データがない場合にその機能維持を推認できないとして実施可能要件違反となる事例 や、in silicoスクリーニングやファーマコフォアといった抽象的な定義だけでは対象の化合物構造を理解・特定できず、当業者を超える試行錯誤が必要となるとして実施可能要件違反となる事例 もあります。
    • これらの事例は、ビジネスモデル特許においても、抽象的なアイデアや機能だけを記載するのではなく、それを実現するための具体的な技術的手段や仕組みを、図面なども用いて詳細かつ網羅的に説明することが、実施可能要件を満たす上で極めて重要であることを示唆しています。
  • サポート要件(第36条第6項第1号)

    • 特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された内容(実施形態等)によって裏付けられている必要があります。つまり、請求項の範囲が、明細書に開示された内容から、当業者がその記載を理解し、その記載から導き出せる範囲を超えていないということです。
    • ソースの事例では、発明の詳細な説明に記載された内容を、請求項に係る発明の範囲まで拡張ないし一般化できるかどうかが問われます。例えば、ごく一部の具体的な化合物についてしか用途を裏付ける記載がない場合など、明細書の記載が不足しているために、請求項の範囲まで開示された内容を拡張できないとして、サポート要件違反となる事例が挙げられています。
    • サポート要件違反の拒絶理由に対しては、意見書や実験成績証明書等により反論することが可能です。実験成績証明書を提出することで、明細書の記載が不足している点を補い、請求項に係る発明の範囲まで実施可能であることを示すこともできます。
    • ビジネスモデル特許においては、請求項で特定したシステムや方法の全ての構成要素やステップが、明細書中の具体的な実施形態の説明や図面によって裏付けられている必要があります。
  • 明確性要件(第36条第6項第2号)

    • 特許請求の範囲には、発明を明確に記載する必要があります。これにより、権利範囲が第三者にも明確に理解できるようになります。ソフトウェア関連発明における明確性要件の判断は、審査基準に従って行われます。
    • 発明が明確でない例としては、特定の構成要素(前提条件や個人の行動パターンなど)の評価方法が不明確である場合、技術的な相関関係(情報に基づいて判断する際に利用する相関関係)が不明確な場合 などが挙げられています。また、in silicoスクリーニングやファーマコフォアといった抽象的な定義だけで化合物が特定されている場合、その技術的な内容を理解することが困難であるとして明確性要件違反となる事例が挙げられています。
    • ビジネスモデル特許においては、請求項に記載する用語の意義が、明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識を考慮して、当業者が理解できる程度に具体的かつ明確である必要があります。

3. ビジネスモデル特許取得に向けた具体的なステップ

上記のような特許要件を踏まえ、ビジネスモデル特許を取得するための一般的なステップは以下のようになります。(ソースには直接的な手続きの流れの記載はありませんが、特許制度全般に基づいた一般的な流れを説明します。)

  1. 発明内容の特定と整理:

    • あなたのビジネスのアイデアのうち、どのような点が新しいのか?
    • その新しい点を実現するために、どのようなコンピュータシステムやプログラム、データ構造、情報処理手順を用いるのか?
    • ハードウエア(サーバー、端末、ネットワーク、センサーなど)とソフトウエア(プログラム、データ構造など)がどのように協働して、どのような「使用目的に応じた特有の情報処理」を行うのか?
    • 単なるビジネスルールや人間による判断だけでなく、具体的な技術的手段として特定できる要素は何があるか?
    • これらの点を明確にし、発明の核となる技術的内容を整理します。
  2. 先行技術調査:

    • 特定した発明内容と類似する技術が、すでに特許として成立していないか、あるいは公開された文献に記載されていないかを調査します。特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などで関連キーワードや分類を使って検索を行います。
    • この調査によって、発明の新規性・進歩性を判断するための土台ができます。先行技術が見つかった場合でも、見つかった技術とあなたの発明との違い(相違点)を明確にし、その相違点が当業者にとって容易に想到できるものではないこと、またはその相違点によって顕著な効果が得られることを主張できれば、特許を取得できる可能性があります。
  3. 明細書・特許請求の範囲等の書類作成:

    • 発明の内容を、特許庁に提出するための正式な書類(願書、明細書、特許請求の範囲、図面など)として作成します。
    • 明細書には、発明の技術的な内容、目的、効果、そして発明を実施するための最も良い形態(実施形態)を、当業者が理解し、再現できるように詳細かつ具体的に記載します。ソースにあるように、ソフトウェアがハードウェアと協働して特定の情報処理を行う具体的な仕組みを、図面と合わせて分かりやすく説明することが重要です。
    • 特許請求の範囲には、特許権として保護を求める発明の範囲を記載します。ここは特許権の効力が及ぶ範囲を定める最も重要な部分であり、ソースにあるように、発明を明確に、かつ明細書の記載にサポートされる形で記載する必要があります。抽象的すぎても、具体的すぎて権利範囲が狭まりすぎても問題です。
    • 図面は、システム構成、情報処理フロー、画面表示などを分かりやすく示すために非常に重要です。
  4. 特許庁への出願:

    • 作成した書類を特許庁に提出します。
  5. 審査請求:

    • 特許出願は、原則として出願から3年以内に審査請求をしないと、審査を受けることなく取り下げられたものとみなされてしまいます。特許権を取得するためには、この審査請求を行う必要があります。
  6. 特許庁による審査:

    • 審査官が、提出された書類に基づいて、あなたの発明が特許要件(発明該当性、新規性、進歩性、記載要件など)を満たしているかどうかを審査します。
  7. 拒絶理由通知への対応:

    • 審査の結果、特許要件を満たさないと判断された場合、審査官から拒絶理由が通知されます。拒絶理由としては、上述した発明該当性の欠如、新規性・進歩性の欠如、記載要件違反(実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反)などがあります。
    • 拒絶理由が通知された場合、意見書や補正書を提出して反論や訂正を行います。ソースにあるように、例えば、発明の詳細な説明の記載が不足しているとしてサポート要件違反を指摘された場合、意見書で技術常識を示すなどして反論したり、実験成績証明書を提出して記載不足を補ったりすることで、拒絶理由を解消できる可能性があります。進歩性を主張する際には、予測を超える顕著な効果を示す実験データなどが有効な場合があります。
  8. 特許査定:

    • 審査官が、最終的にあなたの発明が特許要件を満たしていると判断した場合、特許査定となり、設定登録料を納付することで特許権が発生します。
    • 拒絶理由通知に対して反論や補正を行ったにもかかわらず、拒絶理由が解消されないと判断された場合は、拒絶査定となります。拒絶査定に不服がある場合は、さらに不服審判を請求することも可能です。

4. ビジネスモデル特許取得のために弁理士に相談するメリット

上記で見てきたように、ビジネスモデルに関連する発明の特許取得は、単なるアイデアだけでは難しく、技術的な具体化や、特許法の複雑な要件を満たす必要があります。特に、ソフトウェア関連発明の審査基準は専門的であり、発明該当性、新規性・進歩性、そして記載要件の判断には、正確な理解と適切な対応が求められます。

このような状況で、弁理士のような知的財産の専門家に相談することは、特許取得の可能性を高める上で非常に有効です。

  • 発明の掘り起こしと特定のサポート: 弁理士は、あなたのビジネスアイデアに含まれる技術的な要素や、特許になりうるポイントを専門的な視点から見出し、発明として適切に特定するお手伝いができます。
  • 先行技術調査と戦略立案: 効果的な先行技術調査を実施し、あなたの発明が新規性・進歩性を有するかどうかを判断します。また、特許取得の可能性を高めるための出願戦略を共に検討します。
  • 高品質な明細書・請求項の作成: ソースにあるような記載要件(実施可能要件、サポート要件、明確性要件)を満たすよう、発明の内容を技術的かつ法的に正確に表現した明細書や特許請求の範囲を作成します。これにより、権利化の可能性を高めるとともに、将来的な権利行使の際に有効な、適切に広い権利範囲の取得を目指します。ソースの事例からわかるように、書類作成の不備は拒絶理由に直結するため、非常に重要なプロセスです。
  • 特許庁との適切なコミュニケーション: 審査官からの拒絶理由通知に対して、法的な観点から的確に意見書を作成し、必要に応じて補正を行うなど、専門的な知識と経験をもって対応します。ソースにも、拒絶理由への対応方法として意見書や実験成績証明書の提出が有効な場合があることが示されています。
  • 手続きの代行: 出願から権利化までの複雑な手続きを代行することで、あなたはビジネスに集中することができます。

ビジネスモデル特許は、適切に取得できれば、あなたのビジネスを競合他社から保護し、事業を優位に進めるための強力な武器となります。しかし、そのためには、特許制度の正しい理解と、丁寧かつ戦略的な手続きが必要です。

5. まとめ

「ビジネスモデル特許」と呼ばれるものは、その実態としてはコンピュータソフトウエアを用いたビジネス方法に関する発明であり、特許として保護されるためには、単なるビジネスアイデアではなく、ハードウエアとソフトウエアが協働して特定の情報処理を行う具体的な技術的手段として構成されている必要があります。

そして、特許を取得するためには、新規性、進歩性といった実体的な要件に加え、明細書や特許請求の範囲が実施可能要件、サポート要件、明確性要件を満たすよう、技術内容を具体的かつ網羅的に記載することが求められます。特に、単なる人間による業務のシステム化や一般的なシステム効果だけでは進歩性が認められにくい傾向があるため、先行技術にはない独自の技術的特徴や、予測できない顕著な効果を明確に示すことが重要になります。

これらの要件を満たし、特許取得という目標を達成するためには、専門的な知識と経験が不可欠です。弁理士にご相談いただくことで、あなたのビジネスアイデアを法的に保護するための最適な道筋を見つけ、強力な権利取得をサポートいたします。

ぜひ、お気軽にご相談ください。

参考文献:「特許・実用新案審査基準」の 特定技術分野への適用例