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【弁理士が解説】意匠の新規性喪失の例外とは?適用手続と令和6年改正を網羅
「新商品のデザイン完成の嬉しさから、意匠出願前に自社Instagramで公開してしまった…」
「クラウドファンディングで資金調達を始めた後、意匠権を取りたくなった」
「展示会で新製品を発表したけれど、今からでも意匠登録は間に合うのだろうか?」
企業のご担当者様やクリエイターの方から、特許事務所にはこうしたご相談が頻繁に寄せられます。
意匠登録は「まだ世の中に知られていない新しいデザイン」でなければ受けられないのが原則です。しかし焦る必要はありません。日本の意匠法には、一定の要件を満たし正しい手続を踏むことで、公開後であっても例外的に意匠登録が認められる「新規性喪失の例外規定」という強力な救済措置が存在します。
📢 最新情報
令和6年(2024年)1月1日施行の法改正により
手続要件が大幅に緩和されました
本記事では、意匠登録を検討されている方に向けて、新規性喪失の例外規定の概要、最新の法改正による変更点、具体的な手続の流れ、そして絶対に知っておくべき「重大なリスク」について、専門家である弁理士が分かりやすく解説します。
📑 この記事の目次
1. 意匠登録の大原則「新規性」と公開によるリスク
意匠権を取得して自社の優れたデザインを模倣から守るためには、特許庁の厳格な審査をクリアする必要があります。その審査において最も重要な要件の一つが「新規性(意匠法第3条第1項)」です。
新規性とは、出願時点でそのデザインが「客観的に見て新しく、世の中に知られていない状態であること」を指します。すでに出願前に公開され、誰でも知ることができる状態(公知の状態)になってしまったデザインは、もはや新しいものではないとして原則として意匠登録が認められません。
意匠出願の完了前に以下のような行為を行った場合、その意匠は自らの行為で「新規性を喪失した」とみなされます。
| 公開の態様 | 具体例 |
|---|---|
| インターネット・SNS公開 | 自社サイト、ECサイト、Instagram、X(旧Twitter)等での画像・動画掲載 |
| クラウドファンディング | Makuake等でのプロジェクト公開 |
| リアルな場での発表 | 展示会、見本市での実物陳列 |
| メディア・印刷物 | プレスリリース配信、カタログ配布など |
⚠️ 原則:自社で開発した完全オリジナルデザインであっても、出願前に公開してしまえば、そのまま出願しても拒絶されるのが意匠法の大原則です。
2. 救済措置「意匠の新規性喪失の例外規定」とは?
しかし「一度でも公開したら一発アウト」という原則を厳格に適用しすぎると、テストマーケティングや展示会での顧客反応を見たいといった現代のビジネスに支障をきたします。
そこで意匠法では、「新規性喪失の例外規定(意匠法第4条第2項)」という救済措置を設けています。特定の条件を満たし所定の手続を行えば、出願前の公開事実を「なかったこと」として取り扱い、審査を進めてもらえる制度です。
適用を受けるための「絶対要件」
要件 ①
公開日から「1年以内」に出願
デザインが世の中に最初に公開された日から起算して「1年以内」に、特許庁へ意匠登録出願を完了させる必要があります。1日でも過ぎてしまえば適用は受けられません。
要件 ②
権利者自身の行為に起因する公開
公開行為が「意匠登録を受ける権利を有する者(デザイナーや出願人企業)」自身によるもの、または意に反する公開(社員の漏洩等)であること。
3.【重要】令和6年(2024年)施行!手続要件の大幅な緩和
これから意匠登録を目指す皆様にとって最大のメリットとなるのが、令和6年(2024年)1月1日に施行された法改正です。これにより手続要件が大幅に緩和されました。
❌ 改正前の課題:すべての公開事実の証明が必要
以前の制度(令和5年12月31日までの出願)では、出願前に複数回の公開行為を行っていた場合、「すべての公開行為」について一つひとつ証明書を提出しなければならないという厳しいルールがありました。
例:3回の公開を行った場合
① 1月1日:プレスリリース配信 → 証明書が必要
② 1月10日:自社HP掲載 → 証明書が必要
③ 2月1日:展示会出展 → 証明書が必要
⚠️ 1つでも証明が漏れると拒絶されるリスクあり
✅ 改正後のメリット:「最先の日」の証明で完結
令和6年1月1日以降の出願からは意匠法第4条第3項が新設され、「最先の日(一番最初)に行われた公開行為」のみ証明書を提出すれば、それ以後の同一・類似の意匠の公開については証明書の提出を丸ごと省略できるようになりました。
同じ例の場合
① 1月1日:プレスリリース配信 → 証明書を提出(これだけでOK)
② 1月10日:自社HP掲載 → 証明書 不要
③ 2月1日:展示会出展 → 証明書 不要
💡 効果:手続にかかる労力が劇的に削減され、些細な証明漏れによる意匠権喪失のリスクも大幅に低減されました。
4. 例外手続の具体的なフローと証明書の書き方
手続が緩和されたとはいえ、法律で定められた厳格な手続を期間内に行う必要があります。
出願時の特許庁への申し立て(願書への特記)
意匠登録出願を行う際、提出する「意匠登録願(願書)」の中に「例外規定の適用を受けたい」という意思表示を明記します。
【願書の記載例】
【特記事項】意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする意匠登録出願
⚠️ 注意:この申し立ては「出願と同時」に行う必要があり、後から追加することは原則認められません。
出願日から30日以内に「証明書」を提出
出願完了日から起算して「30日以内」に、公開事実を客観的に証明する書面(例外適用証明書)を特許庁長官に提出します。
📋 証明書に記載すべき項目
| 記載項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 公開した者 | 法人名や個人名 |
| 公開の日付 | 最先の公開日(令和6年改正を踏まえ特定) |
| 公開の場所・媒体 | 展示会名、WEBサイトのURL など |
| 公開された意匠の内容 | 客観的な証拠を添付(下表参照) |
📎 公開態様ごとの証拠資料
| 公開態様 | 推奨する証拠資料 |
|---|---|
| WEBサイト・SNS | 投稿日時・URL・画像が1枚に収まるスクリーンショット |
| クラウドファンディング | プロジェクト開始日・掲載内容がわかる画面キャプチャ |
| 展示会・見本市 | 公式パンフレット、出展者リスト、展示品写真(日時入り) |
| カタログ・プレスリリース | 発行日が印字されたページのコピー、配信管理画面 |
5.【要注意】例外規定に潜む3つの重大なリスク
手続が緩和されたとはいえ、例外規定はあくまで「例外的な救済措置」です。出願を後回しにしてデザインを公開することには重大なリスクが伴います。
⚠️ リスク1:第三者の「抜け駆け出願(先願)」には勝てない
日本の意匠制度は「先願主義(早い者勝ち)」です。あなたがデザインを公開した後、それを見た第三者が模倣し、あなたより先に特許庁へ意匠出願をしてしまった場合、あなたの出願は拒絶されます。
例外規定は「他人に先に出願されるのを防ぐバリア」にはなりません。
⚠️ リスク2:第三者が独自に開発・公開した場合は救済対象外
出願までの間に、第三者が偶然全く同じデザインを独自に創作し、先に公開してしまった場合、例外規定はあくまで「あなた自身の公開行為」に対する救済であるため、第三者による独自公開については救済されず、新規性喪失として拒絶されます。
⚠️ リスク3:海外での意匠登録(グローバル展開)が極めて困難になる
将来的に海外へ輸出や販売を考えている場合、日本の例外規定に安易に頼るのは危険です。ルールの適用要件は国によって全く異なります。
例:中国などの場合
要件が極めて厳格であり、「自社サイトやSNSでの公開」は一切救済されません。日本で公開してしまった時点で、巨大市場での権利取得は不可能になる可能性が高いです。
海外展開を視野に入れているなら
「いかなる国でも公開前にまず出願を済ませる」
これが知財戦略の鉄則です
6. まとめ:確実な意匠出願は弁理士へ
意匠登録は「誰にも公開する前に特許庁へ出願する」のが大原則ですが、ビジネスの都合でやむを得ず公開してしまった場合でも「新規性喪失の例外規定」を正しく利用すれば権利化への道は残されています。
📌 手続の要点サマリー
1年以内
公開日からの出願期限
出願と同時
願書への意思表示
30日以内
証明書の提出期限
最先の日のみ
証明書の対象
(令和6年改正)
しかし、「どの公開行為が法的に『最先の日』に当たるかの特定」「特許庁が納得する完璧な証拠資料の収集と論理的な証明書作成」「厳格な期限のスケジュール管理」など、高度な専門知識と実務経験が不可欠です。
こんなお悩みはありませんか?
- 「すでに新商品の画像をSNSで公開してしまったが、意匠登録で自社製品を守る方法は残されているか?」
- 「来週から展示会が始まるので、取り急ぎどのように知財を保護すべきかアドバイスが欲しい」
「すでに公開してしまったからもう遅い…」と諦める前に、まずは意匠の専門家である弁理士にご相談ください。
まずは無料相談から
当事務所では、令和6年施行の法改正に完全対応し、お客様のビジネス状況を丁寧にヒアリングした上で最も安全で確実な権利化の道筋をご提案いたします。複雑な証明書の作成から特許庁への手続代理、将来の海外展開を見据えた戦略的アドバイスまで、すべてプロフェッショナルにお任せいただけます。
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