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Resumen del sistema de marcas registradas de Indonesia

目次

  1. 1. 商標の種類(保護対象となる標識の範囲)
  2. 2. 商標出願手続(必要書類、方法、費用、所管官庁)
  3. 3. 審査(方式審査・実体審査、審査期間)
  4. 4. 公告および異議申立(公告期間、異議申立手続・期限)
  5. 5. 登録と権利の発生(登録証の発行、効力発生時期)
  6. 6. 商標の有効期間と更新(存続期間、更新手続・期間)
  7. 7. 使用義務と不使用取消(使用要件、不使用による取消制度)
  8. 8. 商標権の侵害と救済手段(差止め、損害賠償、刑事罰など)
  9. 9. 商標のライセンスおよび譲渡制度
  10. 10. 日本の商標制度との比較(手続・実体面の相違点)
  11. 11. 日本企業がインドネシアで商標権を取得・維持する際の実務的注意点

1. 商標の種類(保護対象となる標識の範囲)

インドネシアの商標法では、伝統的な商標(文字商標・図形商標など)に加えて、非伝統的商標として立体商標音商標ホログラム商標なども保護対象に含まれます。具体的には、二次元または三次元の図形、ロゴ、名称、単語、文字、数字、色彩の組み合わせ、音声、ホログラム、またはそれらの要素の結合からなる標識が商標登録の対象となります。またインドネシアには団体商標(collective marks)制度もあり、団体(協会など)が自己の構成員の使用する商標を登録することが可能です。

もっとも、単一の色彩のみからなる商標や香り(匂い)商標、そして証明標章(certification mark)はインドネシアでは保護対象外と明確に規定されています。これは、日本で導入されている色彩のみからなる商標や地域団体商標・証明標章制度とは異なる点です(日本では単色のみの商標や証明標章も登録可能ですが、インドネシアでは認められていません)。なお防護標章制度(著名商標の異分野保護)はインドネシアには存在せず、日本特有の制度となっています。

2. 商標出願手続(必要書類、方法、費用、所管官庁)

所管官庁と制度概要: インドネシアの商標出願は、法務人権省傘下の知的財産総局(DGIP: Directorate General of Intellectual Property)が管轄しています。インドネシアは先願主義を採用しており、他者よりも先に出願した者が商標権を取得します。外国企業が出願する場合は、現地住所を持たない限りインドネシアの公認代理人(知的財産コンサルタント)を通じて手続きを行う必要があります。出願言語はインドネシア語で、2019年以降オンライン出願のみが公式に認められています(紙による出願は不可)。

必要書類: 出願に際して提出すべき主な書類・情報は以下の通りです:

  • 願書(申請書):商標の表示(見本)、出願人の氏名・住所・国籍、指定商品・役務のリスト等。

  • 商標所有権に関する宣誓書:当該商標の正当な所有者であることを宣誓する書面。

  • 委任状(Power of Attorney):代理人経由で出願する場合に必要。インドネシアでは委任状に公証人認証が求められます(スキャンコピーでの提出可とされる場合あり)。

  • 商標見本:商標の図形やロゴなどの画像。また立体商標の場合は複数の視点からの画像、音商標の場合は音源ファイルや楽譜など、非伝統的商標に応じた表現物が必要です。

  • 優先権書類:パリ条約に基づく優先権を主張する場合、先の出願の証明書(日本出願の公報等)およびその宣誓翻訳(インドネシア語訳)を提出します。インドネシアはパリ条約加盟国のため、日本での出願を基礎に6か月以内の優先権主張が可能です。

出願方法と費用: 知的財産総局のオンラインポータル(merek.dgip.go.id)を通じて電子出願します。出願時には所定の官費を納付する必要があります。公式の出願料は一般出願の場合1区分あたり約180万ルピア(約180万IDR)で、中小企業については約50万ルピアに大幅割引されます。なお、多区分出願制が採用されており、1件の出願で複数クラスの商品・サービスを指定可能です。国際分類(ニース分類)に準拠しており、商品・役務は明確かつ具体的に記載する必要があります。

出願後、知的財産総局による方式審査(書類不備や形式要件のチェック)が行われ、方式要件を満たしていれば出願日から15営業日以内に出願情報が官報に公開されます(後述の公告・異議申立手続へ進みます)。

3. 審査(方式審査・実体審査、審査期間)

出願後まず方式審査が行われ、書類不備・要件不備がないか確認されます。方式審査をクリアした出願は、15営業日以内に官報およびオンライン上で出願内容が公告されます。公告期間は2か月間で、この間に異議申立を受け付けます(詳細は後述)。

公告期間が終了すると、知的財産総局による実体審査(審査官による商標の登録要件審査)が行われます。実体審査では主に以下の点が審査されます:

  • 商標が自他商品・役務の識別力を有するか(識別力のない記述的な標章等は拒絶)。

  • 先願・先登録の商標と同一または類似でないか(同一または類似の商品・役務について紛らわしい類似商標は拒絶)。

  • 商標が虚偽的または欺瞞的なおそれがないか(商品の品質や産地等について誤認を生じる商標は拒絶)。

  • 公序良俗や法律に反しないか、他人の有名商標を不正目的で出願したものではないか、といった絶対的拒絶理由の有無。

審査の結果、登録要件を満たさない理由(拒絶理由)がある場合は、拒絶理由通知が出願人(代理人)に送付されます。通知を受け取った出願人は、通知発送日から起算して30日以内に意見書や補正書を提出して応答することができます。この応答期間は延長不可で非常に短いため、迅速に現地代理人と協議し反論・補正する必要があります。適切な応答により拒絶理由が解消されれば審査をクリアしますが、応答しない場合や反論が認められない場合には最終拒絶(拒絶査定)となります。その場合、出願人は不服申し立て(審判請求)を行うことも可能です(後述)。

インドネシア商標法では審査期間の目安が定められており、2016年改正法により「実体審査は公告期間満了後150営業日以内に完了」するものと規定されました。実際の審査期間は近年大幅に短縮されており、順調に進めば出願から登録まで約6~12か月程度で完了するのが一般的です(従来は登録まで2~3年要することもありましたが、近年は迅速化しています)。審査の各段階で異議申立や拒絶理由応答等が発生した場合はさらに時間を要することがあります。

インドネシア商標出願から登録までの一般的な手続フローを示した図です。出願後に方式審査を経て2か月間の公告期間に入り、異議申立てがなければ実体審査へ進みます。実体審査で拒絶理由がないか審査され、問題なければ登録査定・登録証発行となり商標公報に掲載されます。一方、拒絶理由があれば通知が発行され30日以内の応答が求められ、応答が認められないと拒絶査定となります(不服があれば商標審判委員会への審判請求が可能です)。最終的に登録に至れば、権利期間は出願日から起算して10年間となり、更新により10年ごとに延長可能です。

4. 公告および異議申立(公告期間、異議申立手続・期限)

公告と異議申立期間: 上記のように方式審査通過後、インドネシア商標出願は出願公告(Publication)されます。公告は知的財産総局の官報およびオンライン公報に掲載され、その期間は2か月間と定められています。公告期間中は、利害関係を有する第三者(既存の商標権者や同業者など)は誰でも当該商標出願に対して異議申立て(Opposition)を行うことができます。異議申立期限は公告開始から2か月以内で、期間延長は認められません。※日本の商標制度では登録後に異議申立てを行う「登録異議制度」(公告期間2か月)ですが、インドネシアでは登録前に異議申立てを行う点が相違します。

異議申立の手続: 異議申立人は、定められた期間内に異議申立書を知的財産総局に提出し、所定の異議申立料(約100万ルピア)を納付します。異議申立書はインドネシア語で作成し、現地代理人によって提出する必要があります。異議申立書には、異議申立人がその申立てを行う正当な利害関係人であること、および当該商標が登録不適格である理由(先願商標との抵触や不登録事由該当など)を具体的に示す必要があります。インドネシア法上、異議申立人適格について明文規定はありませんが、実務上は申立人がインドネシアで既に商標出願・登録を有していることが望ましいとされています。そうでない第三者からの異議は、先願主義の建前から審査官に却下される可能性もあるためです。

異議申立後の手続: 異議申立てがなされた場合でも、商標出願の実体審査自体は全ての出願に対して実施されます。審査官は提出された異議理由と証拠を考慮に入れた上で審査を行い、異議が認められる場合にはその内容に基づき拒絶理由を通知します。一方、異議申立てがあっても審査官が登録適格と判断すれば、そのまま登録査定となります(異議申立は棄却扱い)。異議申立がなされた場合、知財総局から出願人へ直接通知は行われないため、官報公示や現地代理人からの情報を注視する必要があります。出願人側は、異議申立てに対応する意見書や反証を提出することも可能ですが、インドネシアでは異議申立後に改めて出願人に反論機会を公式付与する制度はありません(※旧法では公告期間3か月・異議期間終了後1か月の反論期間が設けられていたが、新法では公告2か月に短縮され反論期間は廃止)。

公告期間が満了し異議申立が提出されなかった場合、または異議が棄却された場合は、その後ただちに実体審査の結果に基づいて登録査定が下されます。異議申立が認められ拒絶理由が確定した場合は拒絶査定となり、出願は登録されません。このようにインドネシアでは付与前異議申立制度が採用されており、公告期間経過後に異議を申し立てる手段は存在しません。出願が一度登録されてしまった後は、利害関係人(第三者)は商標登録の無効(取消)訴訟を提起する以外に登録を争う方法がなくなります。この点も、日本のように登録後にも異議申立ができる制度とは異なるため、出願段階での情報収集と早期対応が重要です。

5. 登録と権利の発生(登録証の発行、効力発生時期)

登録査定から登録完了まで: 実体審査に無事合格すると、審査官は商標の登録査定(登録許可の決定)を行います。その後、商標はインドネシア商標原簿に登録され、登録証(登録証明書)が発行されます。登録証は「Sertifikat Merek」と呼ばれ、電子発行される場合もあります。登録証発行をもって商標権が発生し、その内容が商標公報に掲載されます【36†source】(登録公開)。インドネシアでは商標権は登録によって発生し、日本のように設定登録料の追納手続はなく、登録査定後直ちに権利化します。権利の効力は商標登録日から生じますが、権利の存続期間の起算日は出願日となっている点に注意が必要です。つまり、存続期間の計算上は「出願日から10年間」が一期間となります。

権利内容: 登録商標の権利者(商標権者)は、登録商標を指定商品・役務について独占的に使用する権利を得ます。他人による同一または類似の商標の無断使用を排除でき、必要に応じて差止めや損害賠償を求めることができます(侵害と救済手段については後述)。商標権者は自ら商標を使用するほか、第三者に使用許諾(ライセンス)を与えることも可能です。商標権は国ごとの権利であり、インドネシア国内においてのみ効力を有します。またインドネシアはマドリッド協定議定書の加盟国(2018年発効)であるため、マドリッド経由でインドネシアを指定して国際登録することも可能です。

登録証の交付方法: 近年、登録証はオンラインで発行・ダウンロード可能な形で交付される場合があります。知的財産総局(DGIP)のデータベース(参照)で登録情報を検索し、登録証を取得することもできます。商標登録料は出願時に納付済みであり、別途登録料の追納手続はありません。ただし、登録後に住所変更や名義変更があった場合の登録簿記録の変更手続や、ライセンス契約の登録手続などには別途手数料がかかります。

6. 商標の有効期間と更新(存続期間、更新手続・期間)

存続期間: インドネシアの商標権の有効期間(存続期間)は出願日から10年間と定められています。これは日本の商標権(登録日から10年。ただし更新により遡って出願日から計算)の扱いと若干異なり、インドネシアでは計算上は出願日を起算点としています。もっとも実際の権利は登録時に発生し、登録日から数えて10年後の応当日の直前が満了日となるイメージです。例えば2025年7月1日出願・2026年1月1日登録の場合、存続期間は2025年7月1日~2035年6月30日までとなります。

更新制度: 商標権は存続期間満了前に更新申請を行い所定の更新料を納付することで、10年ごとに何度でも更新(延長)することが可能です。更新(延長)手続きについてインドネシア新法では以下のように定められています。

  • 更新申請期間: 存続期間満了前6か月以内から満了日当日まで受け付けられます。旧法では12か月前からとされていましたが、現行法では6か月前からに短縮されています。

  • グレースピリオド: 万一更新期限までに手続を忘れた場合でも、満了後6か月以内であれば追加料金を支払うことで更新申請が可能です。この猶予期間を過ぎると登録は失効します。

  • 更新時の要件: 更新申請時には、単に料金を支払うだけでなく「商標の使用宣誓書」(Declaration of Use)を提出することが求められます。これは更新時点で当該商標を正当に使用していることを宣誓する書面で、インドネシアでは2016年改正法により導入されました。日本のように使用実績を問わず更新できる制度とは異なり、実際に使用していない商標の更新は認めない運用姿勢が示されています。

更新料は区分数に応じた所定額を納付します(例えば1区分あたり約200万ルピア程度、時期により改定あり)。更新にあたっては現地代理人を通じて手続を行い、知的財産総局発行の更新証(延長登録証)を受け取ります。更新後も新たな10年間、商標権は存続します。なお更新を重ねても登録番号自体は変わらず、有効期限のみが延長されます。

7. 使用義務と不使用取消(使用要件、不使用による取消制度)

商標の使用義務: インドネシアでは商標を登録しただけで安心せず、実際にその商標を商品・役務の取引において継続的に使用することが求められます。これは商標法で直接「義務」と規定されているわけではありませんが、一定期間使用しない登録商標は第三者からの請求により取り消され得るためです。特に営利目的の商標で長期間使用がない場合、独占権だけを維持することは認めず市場から排除しようという趣旨です。この考え方は日本を含む多くの国の商標制度と共通していますが、その不使用期間の長さや手続は国により異なります。

不使用取消制度: インドネシア商標法には不使用に基づく登録取消の規定があります。改正前は「3年間連続して使用されていない場合」に取消請求が可能とされていましたが、2024年7月の憲法裁判所判決により不使用期間の要件が3年から5年に延長されました。つまり登録日または最終使用日から継続して5年間商標が使用されていなければ、不使用取消の対象となり得ます。不使用取消を請求できるのは利害関係を有する第三者であり、請求人が商標権者の不使用を立証する必要があります。もっとも正当な理由がある不使用(例えば政府による輸入禁止・営業許可の停止、戦争やパンデミック等の不可抗力による中断)は取消しが認められない場合があります。2024年の裁判所決定では不可抗力事由(例:COVID-19)の考慮が明文化されることも認められました。

不使用取消の手続としては、まず商標権者に対する取消の申立てを所定の手続で行い(商標法第74条に基づく)、知的財産総局内の審査又は商標審判委員会において判断が下されるものと解されています。場合によっては商標権当局が職権で取消審理を行うことも想定されています。インドネシアでは近年この不使用取消の申立てが増加傾向にあり、有名ブランドであっても未使用であれば権利を失うリスクがあると認識されています。実際、スウェーデン発の有名家具ブランド「IKEA」は、現地で商標登録後3年間店舗を開設せず未使用状態だったため、インドネシア企業から不使用取消訴訟を提起され商標権が取り消されるという判決が最高裁で確定した事例があります。このように登録後の使用フォローを怠ると深刻な事態を招きかねません。

取消訴訟(無効審判)制度: 商標登録から一定期間内であれば、登録に瑕疵のある商標について商事裁判所での登録無効訴訟を起こすことも可能です。インドネシアでは登録日から5年以内であれば、先行権利との抵触や出願人の悪意などを理由に第三者が商標登録の無効(取消)を求める訴訟を提起できます。ただし、公序良俗や宗教的価値観に反する商標についてはこの5年の制限なく無効訴訟を提起可能です。無効訴訟は知的財産高等裁判所に相当する**商業裁判所(Commercial Court)**が管轄し、判決に不服の場合は最高裁まで上告することになります。なお日本では登録後の無効理由については原則として無期限で特許庁への無効審判を請求できますが、インドネシアでは上記のように基本5年以内(悪意等除く)に裁判所で争わなければならない点で異なります。

8. 商標権の侵害と救済手段(差止め、損害賠償、刑事罰など)

民事上の救済: インドネシアで商標権を侵害された場合、商標権者は侵害者に対して民事訴訟を提起し、差止命令(使用禁止の仮処分・本案判決)や損害賠償請求などの救済を求めることができます。商標侵害訴訟はジャカルタ等に設置された知的財産専管の商業裁判所(Pengadilan Niaga)が第一審管轄となり、専門の裁判官が審理を行います。民事訴訟では権利侵害の事実、損害の発生と金額、差止めの必要性などを立証する必要があります。勝訴判決により侵害行為の差止めや損害額の賠償が認められれば、強制執行手続によって救済を実現します。

刑事罰による対応: インドネシア商標法には刑事罰の規定もあり、故意に他人の登録商標権を侵害した場合(例えば無断で商標を商品に付して販売するようなケース)、権利者の告訴(刑事告訴状の提出)に基づき刑事手続きを取ることも可能です。商標権侵害は親告罪に分類され、被害者である商標権者の告訴がなければ原則起訴されません。警察が捜査を行い、検察によって起訴され有罪となれば、侵害者には5年以下の懲役または最大で約10億ルピアの罰金が科される可能性があります。2016年の商標法改正では罰則の強化が行われ、同一商標の侵害で最大20億ルピア(約1600万円)以下の罰金類似商標の侵害で最大10億ルピア(約800万円)以下の罰金に引き上げられました。さらに侵害行為が国民の健康や生命、安全に危害を及ぼす場合(例:偽医薬品や有害食品の商標偽造)には、最長10年の懲役刑および(または)最大50億ルピア(約4000万円)の罰金まで科され得る重罰規定も設けられています。刑事訴追により侵害商品の差押え・廃棄なども期待でき、悪質な模倣品業者に対する強力な抑止手段となります。

税関での水際対策: インドネシアでは税関(関税当局)に商標を録登録(Customs Recordation)する制度があり、商標権者が自社商標を税関に登録しておくことで、輸出入される模倣品の摘発を依頼できます。税関は録登録された商標権情報に基づき、侵害の疑いがある物品の通関を一時差し止めし、権利者に通報することができます。権利者は一定期間内に民事差止めや刑事告訴等の対応を取ることで、そのまま侵害品の没収・処分を行わせることが可能です。このような行政的措置も、商標権の実効的な保護手段として日本企業に活用が推奨されています。

9. 商標のライセンスおよび譲渡制度

ライセンス(実施許諾): インドネシアでは登録された商標について第三者へライセンス供与(使用許諾)することが認められています。ライセンス契約は商標権者(ライセンサー)と使用許可を受ける側(ライセンシー)との間で締結され、その内容には通常、独占的か非独占的かといった許諾形態、サブライセンスの可否、契約期間、当事者の権利義務、許諾対象の商標および商品・役務の範囲などが定められます。インドネシア商標法上、商標ライセンス契約は知的財産総局への登録が義務付けられており、

登録をしないと第三者に対抗できない(法的拘束力を持たない)とされています。したがって日本企業が現地代理店や製造業者にブランド使用を許諾する場合、必ず商標ライセンス契約を書面で締結し、現地代理人を通じて速やかにDGIPへ契約登録申請を行う必要があります。登録の際には契約書(インドネシア語訳添付)や当事者情報、商標登録証の写し等の提出が求められ、登録料も発生します。ライセンス契約にはインドネシアの経済発展を阻害しないこと等の制限もあり、公序良俗に反する内容(技術移転の妨げになる過度な制限など)は含めてはならないと規定されています。なお、ライセンス供与を受けた使用(ライセンシーの使用)であっても、適切に契約登録されていれば商標権者自身の使用とみなされます(不使用取消を防ぐ上でも有効です)。

譲渡(移転): インドネシアでは商標権(登録商標)を他人に譲渡することができます。また2016年改正法により、出願中の商標(ペンディングの出願)についても譲渡が認められるようになりました。譲渡は通常、売買・企業買収・グループ内移転・相続などにより発生しますが、いずれの場合も譲渡契約書(または承継証明書)を作成し、知的財産総局への名義変更登録を行う必要があります。この名義人変更登録をしないと、新しい権利者に対して正式な権利移転の効力が生じないか、対抗できない恐れがあります。インドネシア商標法では、譲渡により商標が移転した場合、その事実を公告し、商標原簿に記録することが規定されています。譲渡記録の申請には、譲渡契約書の提出、公証人認証やインドネシア語訳の添付、既存の登録証の書換え手続などが求められ、手数料もかかります。特に一商標一出願制ではないため、譲渡時には必要なクラスのみ分割して譲渡することも可能です(出願をクラス毎に分割する手続を経てから譲渡)。これは日本の商標制度とほぼ同様の考え方です。

その他の制度: インドネシアには商標の質入れ(担保設定)やフランチャイズ契約に伴う商標使用許諾の届出制度なども存在します。商標権は動産権の一種として担保提供することができ、その場合も知財総局への質権設定登録が必要です。またフランチャイズ(事業加盟)を行う場合には商業省へのフランチャイズ登録と併せ、商標ライセンス契約の登録が義務付けられています。こうしたライセンス・譲渡・担保等の制度面からも、商標権を適切に管理することが企業には求められます。

10. 日本の商標制度との比較(手続・実体面の相違点)

インドネシアの商標制度と日本の制度を比較すると、いくつか重要な相違点・留意点が見えてきます。

  • 商標の種類: いずれの国も文字・図形・立体・音等の商標は保護しますが、インドネシアでは色彩のみの商標や香り商標が不可である一方、日本では2015年の改正以降色彩単独商標が認められています(香りは日本でも未だ登録例なし)。また証明標章制度は日本にはありますがインドネシアにはありません。団体商標制度は両国にあります(日本では地域団体商標を含む)。防護標章制度は日本特有でインドネシアにはありません。

  • 出願・登録手続: 先願主義は双方同じですが、インドネシアでは電子出願が必須である点が特徴です(日本はオンライン/書面どちらも可)。出願言語も日本は日本語、インドネシアはインドネシア語と異なります。インドネシアでは現地代理人の関与が必須なのに対し、日本では日本在住者本人なら代理人不要で手続可能です(外国企業は弁理士等代理人が必要)。インドネシア出願には宣誓書や公証済み委任状が必要になる点も、日本の簡易な手続と比べ事務負担が大きいです。またインドネシアは一出願多区分制で商品分類はニース分類に準拠しています(日本も同様にニース分類・多区分出願制)。

  • 審査・異議申立: 最大の相違点の一つは異議申立制度のタイミングです。日本では登録査定後(商標公報発行後)に2か月の異議申立期間がありますが、インドネシアでは出願公告段階で2か月間の異議申立期間があります。したがって、日本企業はインドネシアで第三者出願を発見した場合、登録前に迅速に異議を申し立てる必要があります。逆に、自社出願が公告された際は2か月無事経過すれば登録まで進めます(日本は登録後も一定期間異議の不安あり)。審査基準自体は両国とも絶対的理由・相対的理由を審査しますが、インドネシアでは審査結果通知後の応答期間が30日と非常に短く設定されている点に注意が必要です(日本では意見書・手続補正書の期間は通常40~60日程度)。またインドネシア審査は法定期間150営業日以内に完了する規定がありますが、日本には審査期間の明文規定はなく、状況により大きく変動します(平均6~8か月程度で一次結果)。なお日本では拒絶査定不服は特許庁に審判請求しますが、インドネシアでは商標審判委員会に審判請求する形となり、その決定に不服な場合は裁判所へ上訴します。

  • 権利期間と更新: 日本の商標権は登録日から10年で更新時に使用宣誓の提出義務はありません。一方、インドネシアは出願日基準の10年で、更新時に使用宣誓書提出が必要とされています。更新申請期間も日本は満了前6か月~満了日、猶予6か月と共通点はありますが、使用していない商標はインドネシアでは更新できない可能性があります。日本では形式上の使用証明は不要ですが、実質的には3年以上不使用だと後述の取消審判で権利維持が困難です。

  • 不使用取消制度: 日本では登録商標が3年間継続不使用の場合、誰でも特許庁に取消審判を請求できます(不使用に正当理由がなければ登録取消し)。インドネシアでも従来3年不使用で取消請求可能でしたが、2024年以降5年不使用に緩和されました。取消請求先は日本は特許庁の審判部、インドネシアは知財総局~商標審判委員会または裁判所へと制度上の違いがあります。いずれにせよ権利維持には使用実績が重要なのは共通です。

  • 侵害対策: 日イン双方とも民事的には差止め・損害賠償請求が可能で、刑事罰も規定されています。量刑面ではインドネシアの方が法定刑が高額・長期に設定されており(上記の通り最大懲役5~10年・罰金数億ルピア)、悪質な商標侵害に厳しく対処する姿勢が見られます。日本の商標法の罰則は現行で5年以下の懲役・500万円以下の罰金(法人は1.5億円以下)であり、インドネシアに比べると低めです。また税関差止制度も両国にありますが、インドネシアでは手続の迅速さや官民連携が課題とされています。

  • その他留意点: インドネシアでは悪意の出願の拒絶規定があり、他人の周知商標を不正に出願した場合は拒絶・無効となり得ます(立証は容易でないが規定あり)。日本でも不正目的の周知商標出願は不登録事由ですが、要件や適用場面に差があります。またインドネシアでは地理的表示原産地名称の保護制度が独立して存在します(地理的表示法制整備)。日本企業には直接関係ない場合も多いですが、自社商品名が地名由来の場合など注意が必要です。

総じて、インドネシアの商標実務では日本以上に早めの対策・現地でのウォッチング・使用実績の確保が重要となります。日本と類似点も多い一方で、手続や要件に細かな違いがあるため、現地法制度に則した対応を心がける必要があります。

11. 日本企業がインドネシアで商標権を取得・維持する際の実務的注意点

最後に、日本企業がインドネシアで商標権を取得・維持する上で留意すべき実務ポイントをまとめます。

  • 早期出願と先取り防止: インドネシアは先願主義のため、たとえ日本や他国で有名なブランドでも、現地で第三者に先に出願されると自社が使用できなくなるリスクがあります。実際に現地代理店や元従業員が無断で商標を出願するケースも散見されます。進出を計画する際はできるだけ早期に商標出願を行い、先取り出願(いわゆる冒認出願)を防ぎましょう。

  • 公告情報のモニタリング: 自社の商標出願後は、2か月間の公告期間に異議申立てが出されないか注意深く監視します。また他社による類似商標の公告情報も定期的にチェックし、必要に応じて異議申立てを検討します。インドネシア知財総局のオンラインデータベース(PDKI)では公開商標や登録商標を検索できます。日本企業は現地代理人と連携し、官報公示をウォッチする体制を整えることが重要です。

  • 現地代理人・言語対応: 出願手続や審査対応、異議申立て・訴訟など、全てインドネシア語で行う必要があります。日本企業は信頼できる現地の商標代理人(弁理士・法律事務所)を起用し、的確な翻訳と法的対応を図るべきです。委任状や宣誓書の準備にも時間がかかるため、余裕をもって依頼します。

  • 登録後の使用と管理: 商標は登録しただけでは不十分で、実際に使用して初めて価値を持つものです。インドネシアでは過去にIKEAの商標が未使用を理由に取消される判決もありました。したがって、登録後3~5年以内には現地で使用を開始し、継続して使用するようにしましょう。使用の証拠(販促資料、取引実績、広告など)は万一の取消請求に備えて保存しておくと安心です。

  • 更新手続と使用宣誓: 10年ごとの商標更新時には使用宣誓書(Declaration of Use)の提出が必要です。更新前に当該商標の使用状況を確認し、未使用の場合は更新が認められない可能性があります。場合によっては存続期間満了前に新たな商標出願を行う、あるいは使用開始を急ぐなどの対応も検討してください。

  • ライセンス・権利移転の登録: インドネシアで現地パートナーに商標を使わせる場合、必ず商標ライセンス契約を締結しDGIPへの登録を行うようにします。未登録のライセンスでは第三者への対抗力がなく、ライセンシーの使用も自社の使用実績と認められないおそれがあります。またグループ内で商標名義を変更したり、現地法人に譲渡したりする場合も速やかに名義変更登録を行いましょう。手続きを怠ると、権利行使時に所有者情報の不一致でトラブルになる可能性があります。

  • 模倣品対策: インドネシア市場は広大で、模倣品も流通しやすい環境です。自社ブランドを守るためには、現地の市場調査を怠らず、早期に商標権を取得しておくことが第一歩です。その上で、必要に応じて税関への商標登録(録登録)を行い、輸入段階での水際取締りを活用しましょう。模倣品を発見した場合は、躊躇せず差止め請求や刑事告訴など法的措置を検討します(親告罪のため、権利者が動かないと摘発は難しいです)。現地弁護士・警察と連携し、毅然とした態度で臨むことが肝要です。

  • 日本本国との制度差の認識: 上述のように、日本とは手続や要件に差異があります。例えば異議のタイミング、不使用期間の長さ、必要書類の違いなどを把握し、日本式の感覚で期限を逃さないよう注意します。特にインドネシアは締切が厳格で延長が効かない場面も多いため、代理人とのコミュニケーションを密にとりましょう。

以上のポイントに留意して対応すれば、日本企業にとってインドネシアでの商標取得・維持は決して難しいものではありません。むしろ近年は電子化や審査迅速化が進み、適切に手続きを行えば比較的円滑に権利化できる環境が整いつつあります。インドネシアで事業展開する際は早めに商標戦略を立て、現地商標の確保とブランド保護に努めてください。

参考リンク:

  • インドネシア法務人権省・知的財産総局(DJKI/DGIP)公式サイト〔英語・インドネシア語〕:

    • 商標一般情報ページ(手続案内や料金表など)

    • オンライン商標データベース(PDKI) – 出願・登録情報検索ツール

  • 世界知的所有権機関(WIPO)「Madrid Member Profiles – Indonesia」〔英語〕:インドネシアの商標制度概要

  • 特許庁 「模倣被害防止ガイド(インドネシア編)」〔日本語〕:インドネシア商標制度の概要と実務対応

杉浦健文 弁理士

AUTHOR / 執筆者

杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)

知的財産事務所EVORIX(EVORIX) 代表弁理士

特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。