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アメリカの商標制度概要

この記事のポイント:アメリカの商標制度は「使用主義」を採用しており、日本やEUの「先願主義」とは根本的に異なります。出願前・登録後を通じて「商標を実際に使用していること」の証明が繰り返し求められる点が最大の特徴です。

1. 商標登録の流れ(出願から登録まで)

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出願(申請)

商標の図案や名称、使用する商品・サービスなどを定めて、米国特許商標庁(USPTO)に出願します。出願時には、実際に商標を使用しているか、将来使用する意図があるかといった「出願の基礎」を明示する必要があります。

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審査

USPTOの審査官が形式面と実質面の審査を行います。商標の識別力(他人の商品・サービスと区別できる力)があるか、既に類似商標が登録されていないかなどがチェックされます。審査は出願から数ヶ月程度で結果が出るのが一般的です。

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公告と異議申立て

審査を通過すると、商標はUSPTO公報に公開されます。他人がその商標登録に反対する場合、公告日から30日以内に異議申立てを行うことができます。異議が出されず期間が経過すれば、登録手続きへ進みます。

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登録(成立)

公報で異議が出されなかった場合、商標が正式に登録されます。USPTOから商標登録証が発行され、登録マーク「®」を表示できるようになります。

Intent to Use(使用意思)出願の場合:出願時に商標を未使用の場合は、登録許可通知(Notice of Allowance)の発行後6ヶ月以内(最大5回延長可)に使用証明を提出して初めて正式登録となります。提出期限までに使用証明を行わないと登録は成立しません。

2. 使用主義・先使用権の特徴

重要:アメリカの商標制度の最大の特徴は「使用主義」です。日本の「先願主義(早い者勝ち)」とは異なり、「先に商標を使用した者に権利を認める(使った者勝ち)」という考え方です。

商標を登録していなくても、先にその商標をビジネスで使用していれば、使用している地域において一定の権利(先使用権・コモンロー上の商標権)が認められます。

ただし、未登録の権利は実際に使っている地域や商品分野に限定されます。全国的な独占権を主張するには連邦商標登録の取得が必要です。

連邦登録の4つのメリット

全米での権利主張
登録商標の使用権を米国全域で主張可能

模倣品の輸入差止め
税関登録を通じて模倣品の水際対策が可能

®マークの使用
登録商標としてブランド価値を明示

不可争性の取得
5年間継続使用で権利の有効性が確定

3. 登録要件(識別力、使用証明など)

識別力と拒絶理由:商標登録には、他人の商品・サービスと区別できること(識別力)が求められます。以下のような商標は登録できません。

拒絶理由 内容
普通名称 一般的な商品名そのもの
記述的標章 商品の性質を直接表すだけの語
公序良俗違反 公序良俗に反する標章
類似商標の存在 先に類似商標が登録されている場合

使用の証明が必須:米国商標は実際に商取引で使用していることが登録の重要な条件です。出願時に使用中の場合は使用証拠を提出し、未使用の場合は「使用意思」を宣誓して出願しますが、登録前に必ず使用開始が求められます。

4. 管轄機関(USPTOなど)

連邦レベル

米国特許商標庁(USPTO)が商標登録業務を所管。商務省管轄の政府機関で、特許と商標の権利付与を担当しています。

州レベル

各州の州務長官事務所で州商標の登録・管理を担当。州登録の効力は当該州内のみ有効です。

5. 登録後の更新・維持義務

タイミング 必要な手続 怠った場合
登録後5〜6年目 使用宣誓書 + 使用証拠をUSPTOに提出 登録失効(取消)
10年ごとの更新 更新申請 + 使用宣誓書 + 使用証拠 登録失効(抹消)
存続期間 登録日から10年間(更新により半永久的に延長可能)

注意:米国では「使っていない商標は権利として維持させない」運用が徹底されています。登録だけして放置されている商標は5〜6年目の使用宣誓書提出時に整理されます。

6. 不使用取消・無効審判制度

不使用による取消:連続して3年間商標を使用しないと、「商取引で使用する意思なく放棄された」ものと法律上推定されます。第三者はUSPTOの商標審判廷に不使用取消の申立てを行うことができ、正当な使用がなければ登録は取り消されます。

真剣な使用が必要:権利維持のためだけに形だけ行う使用(token use)は認められません。商標の「使用」には真剣な営業目的であることが必要です。

無効審判(登録の取消し):登録時に問題があった場合(識別力の欠如、類似商標との抵触など)は、利害関係人が登録無効の申立てを起こすことができます。審理はUSPTOの商標審判部(TTAB)または連邦裁判所で行われます。

不可争性について:登録から5年以上経過した商標は「不可争性」を得て、記述的であることなど一部の理由を除き、第三者が権利の有効性を争えなくなります。

7. 州登録と連邦登録の違い

項目 連邦登録 州登録
根拠法 ランハム法(連邦法) 各州の商標法
対象 州際取引・国際取引 州内のみの取引
権利範囲 アメリカ全土 当該州内のみ
管轄機関 USPTO 州務長官事務所
®マーク 使用可能 使用不可(™のみ)
侵害訴訟 連邦裁判所 州裁判所

8. 他国との制度比較(日本・EU)

比較項目 アメリカ 日本 EU
基本原則 使用主義 先願主義(登録主義) 先願主義
権利発生 使用により発生 登録により発生 登録により発生
出願時の使用 使用中 or 使用意思が必要 不要 不要
不使用取消 3年不使用 3年不使用 5年不使用
更新時の使用証明 必要(宣誓書+証拠) 不要 不要

上記は一般的な概要であり、実際の商標出願にあたっては最新制度や要件を専門家と確認することをお勧めします。

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