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マカオ商標制度の実務ガイド|7年更新・1出願1区分・マドプロ不可・中国本土とは別制度を弁理士が徹底解説

マカオ商標制度の実務ガイド|7年更新・1出願1区分・マドプロ不可・中国本土とは別制度を弁理士が徹底解説

「中国で商標を登録しているから、マカオでも守られているはず」——マカオ進出のご相談で、最初に確認いただきたい思い込みがこれです。マカオは中国の特別行政区ですが、商標制度は中国本土とも香港とも完全に独立しています。中国本土の登録もマドリッド協定議定書(マドプロ)の中国指定も、マカオには一切効力が及びません。

本記事では、マカオの商標制度を定める工業所有権法律制度(第97/99/M号法令、以下「マカオ工業所有権法」)の条文と、所管官庁である経済及科技発展局(DSEDT)の公式案内に基づき、出願要件・審査の流れ・存続期間7年という独特のルール・庁費用・権利行使・日本制度との違いまでを弁理士が整理します。カジノIR(統合型リゾート)や高級小売、飲食・化粧品ブランドの展開でマカオを検討している企業の知財ご担当者に向けた内容です。

この記事のポイント

  • マカオの商標は中国本土・香港とは別制度。中国登録もマドプロ中国指定も効力なし。マドプロはマカオに適用されないため直接出願が唯一の手段
  • 根拠法は1999年制定のマカオ工業所有権法(第97/99/M号法令)。所管は経済及科技発展局(DSEDT)。先願主義で、使用証拠は不要
  • 1出願1区分(多区分出願不可)。出願言語は中国語またはポルトガル語。非居住者は現地代理人と認証付き委任状が必須
  • 公告後2か月の異議期間を経てから実体審査に入る「公告先行型」。順調なら出願から6〜10か月で登録
  • 存続期間は登録付与日から7年(日本は10年)。更新は満了前6か月以内、満了後6か月は割増で救済可
  • 登録後3年連続の不使用で取消請求の対象。周知商標を理由に異議を出すには、自らもマカオで出願していることが条件
  • 庁費用は出願MOP1,000/区分、更新MOP2,000と世界的にも低水準。税関差止め・刑事罰(3年以下の拘禁刑)はいずれもマカオ登録が前提

1. マカオ商標制度の全体像——根拠法・所管官庁・条約

マカオの商標制度は、ポルトガル統治末期の1999年12月13日に公布された工業所有権法律制度(Regime Jurídico da Propriedade Industrial/第97/99/M号法令)に定められています。特許・実用新案・意匠・商標・地理的表示などを一つの法典にまとめた「コード方式」で、ポルトガル法の影響を強く受けています。2000年6月の施行後、2001年に税関組織の設置に伴う一部改正(第11/2001号法律)がありましたが、商標に関する基本的な枠組みは制定当時から大きく変わっていません。

出願・審査・登録を所管するのは経済及科技発展局(DSEDT:Direcção dos Serviços de Economia e Desenvolvimento Tecnológico)の知識産権庁です。旧称の経済局(DSE)から2021年に改組されたため、少し前の資料では「経済局」と書かれていることがあります。出願の公告や登録の決定は、マカオ特別行政区公報(Boletim Oficial)第二組に掲載されます。

適用される国際条約

条約・制度 マカオでの適用 実務への影響
パリ条約適用あり日本出願から6か月以内なら優先権主張が可能(マカオ工業所有権法16条)
TRIPS協定(WTO)適用あり(マカオは独立したWTO加盟地域)周知商標保護・税関措置など国際標準の保護水準
ニース分類採用区分の考え方は日本と共通。ただし1出願1区分
マドリッド協定議定書(マドプロ)適用なし国際登録で「中国」を指定してもマカオには及ばない。直接出願のみ

注意:マカオ工業所有権法の条文上は「国際登録商標」に関する規定が置かれていますが、中国のマドプロ加盟の効力はマカオに拡張されておらず、2026年9月現在、マドプロ経由でマカオを指定する手段はありません。海外展開の全体設計については「国際商標出願(マドプロ)とは?費用・メリット・手続きの流れ」もあわせてご覧ください。

2. 中国本土・香港とは別制度——「中国登録済み」は通用しない

マカオは1999年の中国返還後も「一国二制度」の下で独自の法体系を維持しており、知的財産権も属地的に完全に分かれています。中国国家知識産権局(CNIPA)に登録した商標は本土でのみ有効で、マカオでは無権利です。逆にマカオ登録も本土や香港では効力を持ちません。DSEDTは「内地と澳門の商標特設ページ」を設けて両制度の違いを案内していますが、これは相互承認ではなく、CEPA(本土・マカオ経済連携緊密化取決め)に基づく情報交換・人材交流の枠組みにとどまります。

したがって、中華圏で商標を守るには中国本土・香港・マカオ(さらに台湾)の4か所に個別出願するのが基本形です。マカオは面積約33平方キロメートル、人口約68万人の小さな市場ですが、年間3,000万人規模の来訪者を抱える観光・IR都市であり、免税小売・飲食・化粧品・ホテル関連ブランドにとっては「中国本土の富裕層に直接届く」重要な接点です。マカオでの模倣品や冒認出願は、そのまま本土市場でのブランド価値毀損につながりかねません。

香港との違いも押さえておく

香港は英国法系の商標条例(Cap. 559)で多区分出願・存続期間10年、マカオはポルトガル法系の法典で1出願1区分・存続期間7年と、同じ「中国の特別行政区」でも制度設計がまったく異なります。香港については「香港の商標制度を完全網羅|中国商標では守られない?マドプロは使える?」、中国本土は「中国の商標制度解説(日本企業向けガイド)」で解説しています。

3. 出願要件——代理人・委任状・言語・1出願1区分

非居住者は現地代理人が必須

マカオに住所・本店・営業所を持たない出願人は、マカオで手続をする資格のある代理人(マカオ登録の弁護士、認可された工業所有権代理人、またはマカオ居住者・マカオ法人)を選任しなければなりません。代理人なしで出願した場合、DSEDTから1か月以内に選任するよう通知され、応じなければ出願は拒絶されます(マカオ工業所有権法20条・21条)。日本企業の場合、日本の弁理士が窓口となり、マカオの現地代理人と連携して出願するのが通常の流れです。

委任状は「認証付き」が必要

マカオ政府ポータルは、代理人を通じて出願する場合の委任状について「正当に認証されたもの(委任者の身元と代理権行使が確認できるもの)」を求めています。実務上は、日本の公証役場で署名者の資格と署名を公証した委任状を用意します。公証後にアポスティーユまで求められるかは現地代理人の運用により幅があるため、事前に確認しておくと手戻りを防げます。日本の特許庁が委任状の公証を一切求めないのと比べると、この点はマカオ出願の「重い」部分です。委任状は出願と同時でなくても、DSEDTの通知から一定期間内に追完できる扱いが一般的です。

言語は中国語またはポルトガル語

出願書類はマカオの公用語である中国語(繁体字)またはポルトガル語で作成します。英語は受け付けられず、英語や日本語の書類(優先権証明書など)を提出する場合は、認証付きの翻訳文が必要です。出願人の名称・住所も中国語またはポルトガル語表記に統一しておく必要があり、後の更新や譲渡記録で表記ゆれがあると余計な手続が生じます。

一方、商標そのものに含まれる文字については、マカオ工業所有権法198条がポルトガル語・中国語・英語を原則としつつ、マカオに住所や営業所を持たない出願人の商標にはこの制限を適用しないと定めています。日本語(漢字・ひらがな・カタカナ)を含む商標も、外国出願人であればそのまま出願できます。

1出願1区分——多区分出願はできない

マカオでは1件の出願で指定できる区分は1つだけです(DSEDTのFAQで明示)。たとえば化粧品(第3類)と小売サービス(第35類)を守りたければ、2件の出願が必要になります。庁費用が区分ごとに発生するのは日本の多区分出願と実質的に同じですが、出願番号・登録番号・更新期限がすべて区分ごとに分かれるため、権利の管理台帳が煩雑になる点に注意が必要です。シリーズ商標(色違い・書体違いをまとめて出願する制度)もなく、バリエーションごとに別出願です。

登録できる商標の種類

マカオ工業所有権法197条は、文字(人名を含む)・図形・文字記号・数字・・商品や包装の立体形状など、図形的に表現でき、かつ自他商品・役務を識別できる標識を商標として保護すると定めています。商品商標・役務商標のほか、団体商標・証明商標も登録可能です。色彩のみの商標は、図形・文字などと組み合わせて特定の識別力ある態様となっている場合を除き、保護対象外です(同法199条1項d)。

4. 審査の流れとタイムライン——公告→異議2か月→実体審査

マカオの審査手続で最も特徴的なのは、日本と順序が逆である点です。日本は実体審査を通った後に登録公報が発行され、その後2か月が異議申立期間ですが、マカオは方式審査が終わると先に出願を公告し、異議期間(2か月)が終わってから実体審査に入ります。第三者の意見を審査に取り込む「公告先行型」の設計です。

段階 内容 期間の目安
①出願DSEDTにオンライン(Macao One Account+電子署名)または窓口で提出。出願番号が付与され、先願の地位が確定
②方式審査書類の形式・代理人・委任状・区分表記を確認。不備があれば補正指令1〜3か月
③出願公告政府公報第二組に掲載(毎月第1・第3水曜日)
④異議申立期間公告日から2か月。出願人の答弁は通知から1か月(同法211条)2か月(+答弁1か月)
⑤実体審査絶対的理由・先行登録商標との類否を審査。ポルトガル語・中国語・英語などの文字と称呼を個別・組合せで比較(同法212条)公告から最長6か月で決定(同法213条)
⑥登録決定・公告登録または拒絶の決定を公報に掲載。登録証(電子証明書も選択可)を発行決定から約1か月

DSEDTは、要件がすべて整い異議もなければ出願から約6か月で手続が完了すると案内しています。現地代理人の実感値では6〜10か月程度が多く、異議が出た場合や補正指令が重なると1年を超えることもあります。日本の商標審査(近年は6〜8か月程度)と大きな差はなく、香港と同程度の速さといえます。

DSEDTの決定に不服がある場合は、決定の公報掲載日から1か月以内にマカオ初級法院(Tribunal Judicial de Base)に司法上訴を提起します(同法275条・277条)。日本の拒絶査定不服審判のような行政審判段階はなく、いきなり裁判所で争う構造です。期限が短いため、拒絶が見込まれる案件では代理人と事前に方針を決めておく必要があります。

最近の動き:DSEDTは2022年9月から電子商標登録証の発行を開始し、Macao One Account経由のオンライン出願と組み合わせて、紙の証明書の受領なしで手続を完結できるようになりました。電子証明書は紙と同一の法的効力を持ち、QRコードで真正性を確認できます。ただし、オンライン出願にはマカオの電子署名証明書が必要なため、日本企業は実務上、現地代理人経由でオンライン提出するのが一般的です。

5. 拒絶理由——絶対的理由・相対的理由・周知/高名商標

絶対的拒絶理由(識別力・公序良俗など)

マカオ工業所有権法199条は、①商品自体の性質から生じる形状・技術的効果を得るために必要な形状・商品に実質的価値を与える形状、②商品の種類・品質・数量・用途・価値・産地・生産時期などを表示する記述的標識、③取引上慣用となった標識、④単独の色彩を保護対象から除外しています。もっとも②③については、使用によって識別力を獲得した場合には拒絶理由とならないことが214条3項に明記されています。

また、同法9条の「一般的拒絶理由」として、公序良俗違反、出願人が不正競争を意図している(または意図にかかわらず不正競争が生じ得る)と認められる場合、権利の帰属ルール違反、書類不備・手数料未納などが挙げられます。この「不正競争」条項が、いわゆる冒認出願(他人のブランドの横取り出願)に対する拒絶の根拠として機能します。日本では登録できている商標でも、マカオの審査官が中国語・ポルトガル語の観点で記述的と判断することがあり得るため、外国語商標の識別力は現地代理人の見立てを事前に得ておくことをお勧めします。

相対的拒絶理由(先行商標との抵触)

先に登録された他人の商標と同一・類似の商品役務について、混同や連想のおそれがある商標は拒絶されます(同法214条2項b・215条)。類否は「外観・称呼・観念(図形的・名称的・図案的・音声的な類似)」を総合し、注意深く比較しなければ区別できない程度であれば類似とされる、という日本と近い枠組みです。ただし、マカオではポルトガル語・中国語・英語の称呼が並列的に比較されるため、日本語のローマ字表記がポルトガル語読みで先行商標と近くなるといった、日本では想定しにくい抵触が起こり得ます。

先行商標との抵触が指摘された場合、日本のコンセント制度に相当する明文規定はありませんが、実務上は先行権利者の同意書(Letter of Consent)を提出して登録を得られる場合があります。取扱いは案件ごとに異なるため、現地代理人と協議が必要です。

周知商標・高名商標の保護には「自らの出願」が条件

マカオで周知(well-known)な商標の複製・模倣・翻訳にあたる商標は、同一・類似の商品役務について拒絶されます(同法214条1項b)。さらに、マカオで高い名声(prestige)を有する商標については、非類似の商品役務であっても、その識別力や名声に不当に便乗し、または害するおそれがある場合に拒絶されます(同項c)。日本の商標法4条1項10号・15号・19号に相当する保護です。

重要:周知商標・高名商標を理由に他人の出願へ異議を申し立てるには、自らがすでにマカオでその商標を出願しているか、異議と同時に出願することが条件です(同法214条4項・5項)。日本のように「未登録でも周知なら4条1項10号で争える」という発想は通用しません。冒認出願に気づいてから慌てて出願するより、進出前に主要区分を押さえておくほうが、費用も時間も圧倒的に少なくて済みます。

6. 存続期間7年・更新・不使用取消

存続期間は「登録付与日から7年」

世界の大半の国が存続期間10年を採用する中、マカオは登録付与日から7年という独自の期間を定めています(マカオ工業所有権法218条1項)。起算日は出願日ではなく登録の付与日である点も、出願日起算の香港や中国本土(登録公告日起算)と異なります。更新は7年ごとに何度でも可能で、権利を維持し続ける限り期限はありません。

更新申請は満了前6か月以内に行います(同条2項)。満了を過ぎても6か月以内であれば割増料金を支払って更新でき、それも徒過すると権利は失効します(同法41条1項)。手数料未納で失効した登録は、満了から1年以内に限り、本来の手数料の3倍を支払って回復(revalidation)を請求できますが、その間に生じた第三者の権利には対抗できません(同条2項・3項)。日本の更新(満了前6か月〜満了後6か月の割増更新)とほぼ同じ構造ですが、周期が7年である点を管理台帳に正しく設定しておくことが不可欠です。10年周期のつもりで管理していると、確実に失効します。

3年の不使用で取消請求の対象に

正当な理由なく連続3年間「真摯な使用」がなければ、利害関係人はDSEDTまたは裁判所に登録の失効(forfeiture)を請求できます(同法231条1項b)。日本の不使用取消審判と同じく、使用の立証責任は権利者側にあり、証明できなければ不使用とみなされます(同法232条5項)。また、取消請求が予定されていることを知ってから慌てて使用を開始・再開しても、請求前3か月以内の使用は考慮されません(同条4項)。

「真摯な使用」には、権利者または登録されたライセンシーによる登録態様どおりの使用(識別力を変えない細部の違いは許容)、輸出専用商品への使用、権利者の管理下にある第三者による使用が含まれます(同法232条1項)。ライセンシーの使用を権利者の使用として主張するには、ライセンスがDSEDTに記録されていることが前提となるため、マカオの販売代理店やホテル運営会社に商標を使わせる場合はライセンス契約の記録を忘れないでください。

実務ポイント:マカオは市場が小さく、進出前に「とりあえず出願」した後に実際の使用が始まらないケースが少なくありません。登録から3年を目安に使用実態を棚卸しし、使用証拠(現地での販売記録・広告・ウェブサイトのマカオ向け表示など)を保管する運用を組み込んでおくと、取消請求にも冒認者との交渉にも強くなります。

7. 費用の目安——庁費用と現地代理人費用

マカオの庁費用は世界的に見てもかなり低廉です。マカオ政府ポータルに掲載されている主な庁費用(マカオ・パタカ:MOP)は次のとおりです。1MOPは概ね18〜19円前後(2026年9月時点の目安・為替は変動します)で換算しています。

手続 庁費用(MOP) 円換算の目安
出願(1区分・登録証発行まで含む)1,000約1.8〜1.9万円
更新(1区分・7年)2,000約3.6〜3.8万円
満了後6か月以内の更新(割増込み)2,500約4.5〜4.8万円
異議申立800約1.4〜1.5万円
記録事項の訂正100約2,000円

日本の商標出願(1区分:出願料3,400円+8,600円、登録料10年分32,900円)と比べても、庁費用だけなら同程度かそれ以下です。実際のコストを左右するのは現地代理人費用・委任状の公証費用・翻訳費用で、1区分あたり総額15〜25万円程度を見込むのが一般的です。区分を増やすと出願件数が比例して増えるため、「守るべき商品役務はどの区分か」を最初に絞り込むことがコスト管理の要になります。優先権を主張する場合は優先権証明書の認証翻訳が別途必要です。

8. 権利行使——民事・刑事・税関

登録商標の権利者は、同一・類似の商品役務について混同や連想のおそれのある標識を第三者が業として使用することを差し止められます(マカオ工業所有権法219条)。権利行使のルートは民事・刑事・税関の3本で、いずれもマカオでの登録(少なくとも出願)が前提です。

刑事罰は「3年以下の拘禁刑」

登録商標の偽造・模倣、周知商標(マカオで出願済みのもの)の使用、高名商標への便乗使用などは、権利者の同意なく業として不正な利益を得る目的で行えば、3年以下の拘禁刑または90〜180日の日数罰金に処されます(同法291条)。模倣品と知りながら販売・流通・隠匿した者にも6か月以下の拘禁刑または30〜90日の日数罰金が科されます(同法292条)。マカオでは刑事告訴を通じた摘発が実効的な手段として機能しており、カジノリゾート内の免税店や土産物店での模倣品対策に活用されています。

税関による水際措置

マカオ税関(Serviços de Alfândega)は知的財産侵害品の輸出入を差し止める権限を持ち、2024年には年間で2,000点超の模倣品(葉巻・アクセサリー・衣料など)を押収しています。ここでも「税関はマカオで登録された権利についてのみ措置できる」のが原則で、中国本土や香港の登録では動いてもらえません。ライセンシーが手続に関与するには、ライセンスがDSEDTに記録されている必要があります。

9. 日本の商標制度との比較

項目 マカオ 日本
根拠法工業所有権法律制度(第97/99/M号法令)商標法(昭和34年法律第127号)
所管官庁経済及科技発展局(DSEDT)特許庁(JPO)
マドプロ利用不可(直接出願のみ)利用可
区分1出願1区分多区分出願可
出願言語中国語(繁体字)またはポルトガル語日本語
委任状認証(公証)付きが必要公証不要・押印不要
審査の順序公告→異議(2か月)→実体審査→登録実体審査→登録→公報→異議(2か月)
審査期間の目安6〜10か月6〜8か月程度(早期審査で約2か月)
存続期間登録付与日から7年設定登録日から10年
更新の猶予満了後6か月(割増)+失効後1年以内の回復(3倍)満了後6か月(倍額)
不使用取消連続3年継続3年
周知商標による異議自らの出願が条件未登録でも可(4条1項10号等)
拒絶への不服公報掲載から1か月以内に初級法院へ司法上訴3か月以内に拒絶査定不服審判
出願庁費用(1区分)MOP1,000(約1.8〜1.9万円)12,000円+登録料32,900円(10年)

10. 実務上の注意点チェックリスト

  • 中国本土・香港の登録で安心しない。マカオは別出願が必要で、マドプロも使えない。中華圏4地域(本土・香港・マカオ・台湾)をセットで検討する
  • 進出前に出願する。先願主義かつ周知商標の保護に「自らの出願」が条件のため、冒認出願への事後対応は高くつく
  • 区分を絞る。1出願1区分のため、区分数がそのまま出願件数・管理台帳の行数になる
  • 委任状の公証(+必要ならアポスティーユ)を早めに手配する。署名権限者の証明書類も含め、日本側で2〜3週間かかることがある
  • 中国語(繁体字)表記の商標も検討する。マカオの消費者や本土からの来訪者は中国語表記でブランドを認識するため、日本語・英語表記だけでは中国語の模倣表記を防げない
  • 更新周期を「7年」で台帳登録する。他国と同じ10年で管理すると失効する
  • 使用証拠を残す。登録から3年で不使用取消の対象。現地代理店やホテルに使わせる場合はライセンスをDSEDTに記録する
  • 拒絶時の上訴期限は1か月。行政審判がなく裁判所に直行するため、方針は事前に決めておく
  • 模倣品対策はマカオ登録が前提。税関・刑事告訴ともに、マカオで登録(または出願)していないと動かない

11. よくある質問(FAQ)

Q1. 中国で商標登録していれば、マカオでも保護されますか?

保護されません。マカオは中国本土・香港と独立した商標制度を持ち、中国国家知識産権局(CNIPA)の登録はマカオで効力を持ちません。マカオで保護を得るには、経済及科技発展局(DSEDT)に直接出願する必要があります。

Q2. マドプロ(国際登録)でマカオを指定できますか?

できません。中国のマドリッド協定議定書への加盟はマカオに拡張されておらず、国際登録で「中国」を指定しても効力は本土に限られます。マカオへの出願は現地代理人を通じた直接出願のみです。

Q3. マカオ商標の存続期間は何年ですか?

登録付与日から7年で、7年ごとに何度でも更新できます。更新は満了前6か月以内に申請し、満了後6か月以内であれば割増料金で更新できます。日本の10年とは周期が異なるため、期限管理に注意が必要です。

Q4. 1件の出願で複数の区分を指定できますか?

できません。マカオは1出願1区分の制度で、複数の区分で保護したい場合は区分ごとに別々の出願が必要です。庁費用は1区分あたりMOP1,000(約1.8〜1.9万円)です。

Q5. 出願から登録までどのくらいかかりますか?

DSEDTは、要件が整い異議がなければ出願から約6か月と案内しています。方式審査後に出願公告があり、2か月の異議期間を経てから実体審査に入るため、実務上は6〜10か月程度が目安です。

Q6. 日本の弁理士に依頼すればマカオ出願もできますか?

できます。マカオに住所のない出願人は現地代理人の選任が必須ですが、日本の弁理士が窓口となって現地代理人と連携し、区分の設計・委任状の公証手配・中国語表記の検討・期限管理までを一括して対応するのが一般的な進め方です。

12. まとめ

マカオの商標制度は、①中国本土・香港とは別制度でマドプロも使えない、②1出願1区分で中国語・ポルトガル語出願、③公告先行型で異議2か月、④存続期間は登録付与日から7年、⑤3年不使用で取消対象、⑥周知商標の保護は自らの出願が条件——という、小さな市場の割に「知らないと失敗する」ポイントが多い制度です。一方で庁費用は低廉で、審査も比較的速く、税関・刑事ルートも整っています。中華圏のブランド戦略を組む際は、本土・香港・台湾とあわせてマカオを「4地域目」として最初から設計に組み込むことをお勧めします。

知財事務所エボリクスへのご相談

知的財産事務所エボリクス(evorix.jp)では、マカオを含む中華圏(中国本土・香港・マカオ・台湾)への商標出願を、区分設計から現地代理人との連携、委任状の公証手配、更新・不使用対策までワンストップで承っております。まずはお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

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出典・参考資料

※本記事はマカオ工業所有権法律制度(第97/99/M号法令)の条文、経済及科技発展局(DSEDT)およびマカオ特別行政区政府ポータルの公式案内、現地法律事務所の公開資料を基に、2026年9月時点の情報で一般的な情報提供を目的として作成しています。庁費用・為替・審査期間は変動します。個別案件の具体的判断には、専門家へのご相談を推奨します。

杉浦健文 弁理士

AUTHOR / 執筆者

杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)

知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士

特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。