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セルビア商標制度の実務ガイド|2020年商標法・知的財産庁は先行商標も職権審査+公告後3か月の異議・出願21,390+登録42,740ディナール(3区分)・不使用取消は庁の行政手続・ベオグラード商事裁判所の専属管轄・EUTMは効力なしでマドプロとの使い分けを弁理士が徹底解説
セルビアは面積7万7,474平方キロメートル(北海道とほぼ同じ)、人口約659万人、GDP約901億米ドル、1人当たりGNI約1万3,700米ドル(2024年、世界銀行)の西バルカン最大の経済で、EU加盟候補国(2014年1月から加盟交渉中)ですがEU加盟国ではないため、EU商標(EUTM)の効力は及びません。2024年の外国直接投資は52億ユーロと過去最高を更新し、自動車部品と食品・飲料への投資が中心です。日本との関係では、日本たばこインターナショナル、矢崎総業、ハイレックス、関西ペイント、前川製作所、TOYO TIRE、ニデック(日本電産)の7件の直接投資があり(外務省)、2025年9月にはブチッチ大統領が大阪・関西万博のナショナルデーに参加、同年12月24日にベオグラードで日・セルビア投資協定が署名され2026年7月30日に発効しました。2025年の日本からの輸出は約77億円(半導体等電子部品、化学製品、一般機械、ゴム製品)、セルビアからの輸入は約442億円(たばこ、電子機器、化学製品、果実・野菜)、在留邦人は248人です。自動車部品、タイヤ、塗料、産業機械、食品、たばこの分野でセルビアでの商標保護の相談が増えています。
セルビアの商標制度は、2020年2月1日施行の商標法(Zakon o žigovima、官報6/2020号)に基づき、ベオグラードにある知的財産庁(Zavod za intelektualnu svojinu、ZIS)が登録します。2020年法は、それまでなかった異議申立制度を導入する一方で、庁が絶対的理由と相対的理由(先行商標)の両方を職権で審査する従来の方式を維持したため、「職権審査+公告後3か月の異議」という欧州では珍しい二重のチェックになっています。また2020年法で庁の決定に対する行政上の不服申立てが廃止され、行政裁判所(Upravni sud)への提訴(送達から30日以内)のみが残りました。手数料は出願21,390ディナール(3区分まで、電子出願は25%引き)+登録・最初の10年分42,740ディナールの二段階で、合計約8.9万円(電子出願の場合)です。存続期間は出願日から10年、不使用取消は登録から5年で庁の行政手続(42,740ディナール)、侵害訴訟はベオグラード高等裁判所(Viši sud u Beogradu)またはベオグラード商事裁判所(Privredni sud u Beogradu)が全国を専属管轄します。本記事では、商標法の現行条文(英訳は知的財産庁公式)、共和国行政手数料法の料金表(2026年7月1日改定後)、裁判所組織法と裁判所所在地法、刑法、関税法と国境措置令、知的財産庁の2025年年次報告、欧州委員会の2025年セルビア報告書、WIPOの加盟情報、外務省のデータを一次資料として、出願から異議・取消・権利行使・マドプロとの使い分けまでを弁理士が実務目線で整理します。
この記事のポイント
- 根拠法は商標法(官報6/2020号、2020年2月1日施行)、管轄は知的財産庁ZIS(ベオグラード)。庁は絶対的理由と相対的理由の両方を職権審査したうえで公告し、公告から3か月以内の異議(24,970ディナール)も受け付ける二重チェック。異議の答弁は60日、使用証明の要求、最長24か月の和解中断あり
- 庁費用は出願21,390ディナール(3区分まで、電子出願は25%引きの約16,040ディナール)+4区分目から1区分4,290ディナール、異議がなければ登録料42,740ディナール(3区分まで、最初の10年分)+追加区分6,410ディナールを納付。合計約8.9万円(電子出願、文字商標)。図形要素があると各段階で加算。更新は42,740ディナール、満了後6か月は50%加算
- 存続期間は出願日から10年。不使用取消は登録から5年で、取消・無効とも知的財産庁の行政手続(各42,740ディナール)。2025年に庁が処理した取消・無効は国内46件(国内商標27件+国際登録19件)。消尽は国際消尽(EU加盟まで)で並行輸入を止めにくい
- 庁の決定に行政上の不服申立てはなく、送達から30日以内に行政裁判所へ提訴(2025年は42件)。侵害訴訟はベオグラード高等裁判所(自然人・非営利団体)またはベオグラード商事裁判所(事業者間)の全国専属管轄で、仮処分、証拠保全、情報開示、ライセンス料相当額または侵害者利益の賠償を請求可。刑事は3年以下、商業規模は6か月〜5年、組織的または150万ディナール超の利得は1〜8年(刑法238条)
- 2025年のセルビア向け商標出願は7,130件(国内出願2,648件、マドプロ指定4,482件)、有効登録143,783件、日本の出願人の国内出願は24件。セルビアに住所・事業所のない出願人は登録代理人または現地弁護士の選任が必須(第12条)。マドプロでセルビアを指定する費用は個別手数料なしの補足手数料CHF 100。EUTMは効力が及ばないため、EU向けとは別に手当てが必要
目次
- セルビア商標制度の全体像:2020年商標法と知的財産庁
- 年間7,000件超の出願:市場環境と統計
- 保護対象と拒絶理由:絶対的理由と相対的理由を職権審査
- 出願手続の流れ:代理人義務・審査・公告・3か月の異議・登録料の納付
- 費用一覧(共和国行政手数料法・マドプロ・EUTMとの比較)
- 公告後3か月の異議:答弁60日・使用証明・24か月の和解中断
- 登録・存続期間・更新:出願日から10年、満了後6か月の猶予
- 不使用取消と無効:知的財産庁の行政手続(42,740ディナール)
- 庁の決定への不服:行政裁判所への30日以内の提訴
- 侵害訴訟:ベオグラードの高等裁判所・商事裁判所の専属管轄と救済
- 刑事罰・経済犯罪・軽犯罪:刑法238条と商標法の罰則
- 税関と模倣品対策:関税法250〜258条と2024年の差止め10万点
- マドプロ・EUTMとの使い分けと日本企業の実務ポイント
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 出典・参考文献
1. セルビア商標制度の全体像:2020年商標法と知的財産庁
セルビアの商標制度の根拠法は、商標法(Zakon o žigovima、セルビア共和国官報6/2020号、2020年2月1日施行)です。2009年法(官報104/09号、10/13号、44/18号)を全面的に置き換えたもので、EU商標指令2015/2436への整合を目的に、異議申立制度の新設(第34〜38条)、音・動き・ホログラムなど図で表せない標章の受入れ(第4条)、異議・無効・侵害訴訟での使用証明の要求(第36・77・91条)、先行商標権者の5年の黙認による無効請求の制限(第75条)、仲介者に対する差止め(第92・95条)、庁の決定に対する行政上の不服申立ての廃止(第9条)などを盛り込みました。2026年10月時点で改正はなく、官報6/2020号の条文がそのまま現行法です。ただし、経済省が2026年5月8日に商標法改正法案(Nacrt zakona o izmenama i dopunama Zakona o žigovima)を公表し、出願時の悪意(bad faith)を無効理由として明文化する第74条の改正、マドプロ国際登録が取り消された場合の国内出願への転換(transformation)を定める第46a条の新設、仮処分の種類の追加と相手方の事後的な意見陳述の機会、担保を金銭以外にも広げる改正などを提案しています。本稿執筆時点では成立していないため、本文では現行法で説明し、該当箇所で改正案に触れます。
管轄官庁はセルビア共和国知的財産庁(Zavod za intelektualnu svojinu Republike Srbije、ZIS。英語表記Intellectual Property Office of the Republic of Serbia)で、ベオグラード旧市街のクネギニェ・リュビツェ通り5番地(Kneginje Ljubice 5)に置かれ、特許・商標・意匠・地理的表示の登録と著作権の寄託、さらに知的財産権の執行機関を束ねる知的財産権保護調整機関(Koordinaciono telo)の事務局を担います。商標は庁の行政手続で付与され(第9条1項)、その決定は最終的(konačna)で、争う手段は行政訴訟のみです(同条2項)。庁は絶対的理由(第5条)と相対的理由(第6条)の両方を職権で審査し(第30条)、拒絶理由がなければ出願を公告して3か月の異議(第34条)を受け付けます。登録料を納付した時点で登録簿に記録され(第39条)、権利は出願日から10年です(第57・58条)。不使用取消(第82条)と無効(第74条)はいずれも庁の行政手続で、侵害訴訟はベオグラード高等裁判所(Viši sud u Beogradu)とベオグラード商事裁判所(Privredni sud u Beogradu)が全国の知的財産紛争を一元的に扱います(裁判所所在地法第4・5条)。セルビアはマドリッド協定(1992年4月27日発効、旧ユーゴスラビアから承継)とマドリッド議定書(1998年2月17日発効)の締約国で、2010年11月19日にはシンガポール条約も発効しています。一方、WTO非加盟で、EUTMの効力は及ばないため、保護ルートは「国内出願」と「マドプロ指定」の2つです。
| 項目 | セルビアの制度(根拠条文) |
|---|---|
| 根拠法 | 商標法(官報6/2020号、2020年2月1日施行)。改正なし。2026年5月に経済省が改正法案を公表(悪意の無効理由、国際登録の転換、仮処分の拡充)、未成立 |
| 管轄官庁 | 知的財産庁ZIS(ベオグラード、Kneginje Ljubice 5)。決定は最終的で、行政上の不服申立てはなく、送達から30日以内に行政裁判所へ提訴(商標法第9条、行政訴訟法第18条) |
| 審査の範囲 | 絶対的理由(第5条)と相対的理由(第6条)の両方を職権審査(第30条)。第三者は書面で意見を提出できるが当事者にはならない(第30条3・4項) |
| 異議期間 | 知的財産公報(Glasnik intelektualne svojine)での公告から3か月、延長不可(第34条)。出願人の答弁60日(第35条)、使用証明の要求(第36条)、合意で最長24か月の中断(第37条) |
| 存続期間 | 出願日から10年、10年ごとに更新(第58条)。更新は満了前6か月から、満了後6か月の猶予期間は50%の割増手数料(第58条4項、手数料法料率番号116) |
| 使用義務 | 登録日(または最後の使用)から継続5年の不使用で取消(第82条)。異議・無効・侵害訴訟で使用証明の要求が可能(第36・77・91条) |
| 取消・無効 | いずれも知的財産庁の行政手続(第74〜81条、第82〜89条)。無効は保護期間中いつでも請求可、先行権利者の5年の黙認で制限(第75条)。取消の効力は請求日から(第83条) |
| 裁判管轄 | 侵害訴訟:ベオグラード高等裁判所(自然人・非営利法人)またはベオグラード商事裁判所(事業者間)が全国を専属管轄(裁判所組織法第25・27条、裁判所所在地法第4・5条)→ベオグラード控訴裁判所/商事控訴裁判所→最高裁判所(上告が可能、商標法第108条)。行政訴訟:行政裁判所 |
| 代理人 | セルビアに住所または本拠のない外国人・外国法人は、庁の代理人登録簿に登録された代理人または国内弁護士による代理が必須(第12条)。無資格代理は10万〜100万ディナールの軽犯罪罰(第111条) |
| 消尽 | 世界のどこで流通に置かれても消尽する国際消尽(第53条)。EU加盟日からEU・EEA域内消尽に切り替わる(第112条4項) |
| 国際条約 | パリ条約・ニース協定(1992年4月27日承継)、マドリッド協定(1992年4月27日)、マドリッド議定書(1998年2月17日)、シンガポール条約(2010年11月19日)。WTO非加盟、EU加盟候補国(EUTMの効力なし) |
2. 年間7,000件超の出願:市場環境と統計
知的財産庁の2025年年次報告によると、2025年にセルビアでの保護を求めた商標出願は合計7,130件(前年比1.5%増)で、うち庁に直接提出された国内出願が2,648件(1.8%増)、マドリッド制度を通じたセルビア指定が4,482件(1.3%増)でした。国内出願の内訳はセルビアの出願人1,784件、外国の出願人864件で、外国の出願人の国別では米国192件、中国186件、スイス50件、英国35件、韓国29件、日本24件の順です。国内出願で多い区分は第35類(広告・小売)、第5類(医薬品)、第9類、第41類で、製薬大手(Hemofarm、Galenika)を抱える製薬分野の比重が高いのがセルビアの特徴です。登録は6,582件(5.5%増)で、国内手続による登録が2,246件(16.1%増)、マドプロ経由が4,336件でした。庁は2025年に7,656件の審査を終え、年末時点で異議申立のための公告中だった国内出願は478件です。異議申立は年間66件(国内出願に対し41件、国際登録に対し25件)、庁の最終決定に対する行政訴訟は42件(16.7%増)、処理した無効・不使用取消は国内商標27件と国際登録19件でした。2025年末の有効な商標は143,783件で、うち国内登録36,823件、マドプロによる国際登録106,960件と、有効登録の4分の3がマドプロ経由という外国依存度の高い登録簿です。セルビアの出願人が自国を本国官庁として行った国際出願は286件でした。
欧州委員会の2025年セルビア報告書(第7章・知的財産法)は、知的財産庁について「商標登録において人員が比較的充実し効率的」と評価し、2024年の国内出願2,600件・登録1,935件を記録しています。米国務省の2025年投資環境報告も、庁によれば特許・商標の滞貨はなく、商標は出願後1.5〜2か月で実体審査、公告後3か月の異議期間を経て問題がなければ出願から登録まで通常5か月程度と紹介しています(庁の説明の引用で、法定の期間ではありません)。一方、同報告書は執行面について、裁判所の専門性不足と事件数の増加で知的財産事件の処理能力が限られること、執行機関の情報共有プラットフォームが未稼働であることを課題に挙げています。日本企業にとってのセルビアは、ニデックのノビ・サド工場(車載モーター、インバーター)、矢崎総業・TOYO TIREなど自動車関連の生産拠点としての位置づけが強く、EU向け輸出拠点であると同時に、セルビア国内とCEFTA(中欧自由貿易協定)加盟国向けの販売網ではEUTMが使えないため、国内出願かマドプロ指定での手当てが前提になります。
| 指標(知的財産庁2025年年次報告) | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内出願(セルビアの出願人) | 1,472 | 1,539 | 1,726 | 1,772 | 1,784 |
| 国内出願(外国の出願人) | 802 | 854 | 784 | 828 | 864 |
| マドプロによるセルビア指定 | 4,345 | 4,598 | 4,427 | 4,425 | 4,482 |
| 出願合計 | 6,619 | 6,991 | 6,937 | 7,025 | 7,130 |
| 登録(国内手続) | 2,219 | 2,081 | 1,914 | 1,935 | 2,246 |
| 登録(マドプロ経由) | 4,200 | 4,496 | 4,359 | 4,305 | 4,336 |
| 登録合計 | 6,419 | 6,577 | 6,273 | 6,240 | 6,582 |
※国内手続による登録はセルビアの権利者と外国の権利者の合計。2025年の有効登録は143,783件(国内36,823件、国際登録106,960件)。異議66件、行政訴訟42件、無効・不使用取消の処理46件(知的財産庁2025年年次報告)。
3. 保護対象と拒絶理由:絶対的理由と相対的理由を職権審査
商標法第4条は、商標を構成できる標識として「文字(個人名を含む)、図形、文字・数字、色彩、立体的形状、商品または包装の形状、それらの組合せ、音」を例示し、①商品・役務を識別できること、②登録簿上で保護対象を明確かつ正確に特定できる形で表示できることの2要件を課しています。EU商標指令と同じく「図で表せること」の要件は2020年法で廃止されたため、音商標やマルチメディア商標の出願が可能です。商標の種類は個別商標、団体商標(Kolektivni žig)、証明商標(Žig garancije)の3つで(第2条)、団体・証明商標は使用規約(opšti akt)の提出が必要で、証明商標の権利者は証明対象の商品・役務を自ら供給する事業を行ってはなりません。
絶対的拒絶理由(第5条)は、第4条の要件を満たさない標識、公序良俗違反、識別力の欠如、商品の性質・技術的効果・実質的価値に由来する形状その他の特徴、記述的標識、慣用標識、品質や産地について誤認を生じさせる標識、公的な検査・保証の標識、パリ条約6条の3の国の紋章等、セルビアの国名・国章・国旗、民族的・宗教的象徴、セルビアで有効な地理的表示と同種の商品、先登録の植物品種名称の13項目です。識別力の欠如・記述的・慣用の3項目は、使用による識別力の獲得(第5条2項)で克服できます。相対的拒絶理由(第6条)は、先行商標と同一・同一商品、同一または類似の標識・商品で混同のおそれ、パリ条約6条の2の周知商標、商品の類否を問わず不正利用・毀損のおそれがある著名商標(famous trade mark)、他人の著作権・産業財産権の侵害、他人の肖像・氏名(本人または遺族の同意が必要)です。セルビアの大きな特徴は、庁がこの第6条の相対的理由も職権で審査することで(第30条1項)、先行する出願・登録と抵触すればそもそも公告されません。抵触する先行商標の権利者が明示の書面による同意(explicit written consent)を与えれば登録できると法文は定めています(第6条6項)。第7条は異議申立によってのみ主張できる特別な拒絶理由として、出願日前に登記された他社の商号(主要部分が同一・類似で、事業範囲の商品・役務が同一・類似の場合)と、商標権者の代理人・代表者が無断で自己名義で出願した場合(いわゆる代理人の冒認出願)を定めています。代理人の冒認出願については、登録後も権利者が使用の禁止と移転を請求できます(第52条)。
実務上の注意:職権審査と異議の二重チェック
多くのEU加盟国(スロベニア、ドイツ、フランスなど)が相対的理由を異議に委ねる「絶対的理由のみ審査」に移行したのに対し、セルビアは2020年法でも職権での先行商標審査を維持したうえで異議制度を上乗せしました。日本と同様に庁が先行商標を引用して拒絶するため、出願前の先行商標調査(庁の有料調査は3区分まで2,780ディナール、または庁の電子登録簿で無料検索)が重要です。引用された場合は第31条の通知から30日以内(延長可、有料)に意見書を提出します。先行権利者の同意書で克服できると法文にはありますが、同意書の受入れは庁の運用に左右されるため、現地代理人に最新の実務を確認したうえで、商品の限定や係争先行商標の不使用取消請求(第82条)を併用する設計が安全です。
4. 出願手続の流れ:代理人義務・審査・公告・3か月の異議・登録料の納付
出願は知的財産庁に様式Ž-1(2026年6月4日版)で行い、窓口持参、郵送、または庁の電子出願システム(eApplication)で提出します。セルビアに住所または本拠のない外国人・外国法人は、庁の代理人登録簿に登録された代理人(zastupnik)または国内弁護士による代理が必須です(第12条1項。原文は「mora zastupati」で義務)。代理人登録簿への登録資格は特許法が定め、代理業務は法学の学位を持つ者に限られます(同条2・3項)。日本企業は、出願前に委任状(公証・認証は不要)を現地代理人に渡すのが通常です。出願の必須要素は、登録を求める旨、出願人の氏名・名称と住所、標章、商品・役務のリストの4つで、これらが揃った日が出願日になります(第19条)。欠けていれば30日以内の補正が命じられ、補正日が出願日になります。商品・役務はニース分類に従って明確かつ正確に記載する必要があり、類見出しの一般名称は文字どおりの意味の範囲でのみ保護されます(第15条)。1出願で複数区分を指定できます(第14条3項)。パリ条約の優先権は6か月(第21条)、博覧会優先権は3か月(第23条)です。
審査は出願日順に行われますが(第26条)、裁判所・市場監督官・税関の要請がある場合や緊急の必要がある場合には優先審査(手数料10,660ディナール)を請求できます。方式審査(第27条)で不備があれば8日以上の期限で補正が命じられ、応じなければ却下されます(却下決定の受領から3か月以内に原状回復の申請が可能)。実体審査(第30条)では第4条、第5条(絶対的理由)、第6条(相対的理由)、第16条(団体・証明商標の規約)を審査し、拒絶理由があれば30日以内の意見書提出を求める通知が出ます(第31条。延長は有料)。識別力のない要素を含む場合はその要素についての権利不要求(disclaimer)の宣言を求められることがあります。拒絶理由がなければ、出願番号、出願日、出願人、標章、商品・役務のリストが知的財産公報(Glasnik intelektualne svojine)に公告され(第33条)、公告日から3か月の異議期間に入ります(第34条)。異議がなければ、または異議の却下・棄却決定が確定すれば、庁は出願人に最初の10年分の登録料と公告費用の納付を求め(第38条)、期限内に納付の証明がなければ出願は取り下げられたものとみなされます(決定受領から3か月以内の原状回復申請は可能)。納付が確認されると登録簿に記録され、登録証が発行されます(第39条)。登録証は行政決定とみなされ、登録は公報で公表されます(第40条)。米国務省の2025年投資環境報告は、庁の説明として「異議などの問題がなければ出願から登録まで通常約5か月」と紹介しており、意見書対応や異議が入れば数か月〜1年以上延びます。
| 段階 | 内容(根拠条文) | 期間・期限の目安 |
|---|---|---|
| 出願 | 様式Ž-1、電子出願は手数料25%引き。外国人は登録代理人または国内弁護士が必須(第12条)。出願手数料の納付証明が方式要件(第27条) | 出願日は4要素が揃った日(第19条)。優先権は6か月(第21条) |
| 方式審査 | 必須記載、分類、手数料を確認。不備は補正命令(第27条) | 補正期限は8日以上。不応答は却下、3か月以内に原状回復可 |
| 実体審査 | 絶対的理由(第5条)と相対的理由(第6条)を職権審査(第30条)。第三者の書面意見も考慮。拒絶理由通知に意見書(第31条) | 出願から1.5〜2か月で審査開始(庁の説明、米国務省報告)。意見書は通知から30日(延長可) |
| 公告・異議 | 知的財産公報に公告(第33条)。先行権利者は第6・7条を理由に異議(第34条)。答弁60日、使用証明、和解中断(第35〜37条) | 公告日から3か月、延長不可 |
| 登録料の納付 | 最初の10年分の登録料と公告費用の納付命令(第38条)。未納は取下げ擬制 | 庁が定める期限。未納決定から3か月以内に原状回復可 |
| 登録・公表 | 登録簿に記録し登録証を発行(第39条)。公報で公表(第40条)。権利は出願日から10年(第57・58条) | 順調な案件で出願から約5か月(庁の説明)、拒絶理由や異議があれば1年以上 |
5. 費用一覧(共和国行政手数料法・マドプロ・EUTMとの比較)
知的財産庁の手数料は、独自の手数料令ではなく共和国行政手数料法(Zakon o republičkim administrativnim taksama)の料率表(Tarifa)に定められ、毎年の物価調整で改定されます。本稿の金額は2026年7月1日施行の調整後の額(官報54/2026号)で、知的財産庁の手数料ページとParagraf法令データベースの統合版で確認しました。セルビアの料金体系は出願時と登録時の二段階で、出願手数料は3区分まで21,390ディナール(約182ユーロ、約3.2万円。電子出願は25%引きで約16,040ディナール、約2.4万円)、4区分目以降は1区分4,290ディナール、図形要素またはロゴ化した文字商標は4,290ディナールの加算です(料率番号107)。異議がなく登録に進むと、登録料(最初の10年分)として3区分まで42,740ディナール(約364ユーロ、約6.4万円)、追加区分6,410ディナール、図形要素6,410ディナールの加算を納付します(料率番号116)。文字商標・3区分・電子出願の庁費用の合計は約58,780ディナール(約500ユーロ、約8.9万円)で、図形要素があれば約10,700ディナール(約1.6万円)が加わります。更新料は登録料と同額の42,740ディナール(+追加区分6,410、図形6,410)で、満了後6か月の猶予期間は50%割増です。異議申立は24,970ディナール(約213ユーロ、約3.7万円、料率番号134m)、不使用取消請求と無効請求は各42,740ディナール(料率番号124)、優先審査請求は10,660ディナール(料率番号128)、国際出願(マドプロ)の取次は10,660ディナール(料率番号107)です。団体商標・証明商標は出願42,740ディナール、登録53,420ディナールと約2倍になります。
| 手続(料率番号) | 手数料(ディナール) | ユーロ換算 | 円換算の目安 |
|---|---|---|---|
| 出願(3区分まで、文字商標)(107) | 21,390 | 約182ユーロ | 約3.2万円 |
| 同・電子出願(25%引き) | 約16,040 | 約137ユーロ | 約2.4万円 |
| 4区分目以降、1区分につき | 4,290 | 約37ユーロ | 約6,500円 |
| 図形要素・ロゴ化文字の加算 | 4,290 | 約37ユーロ | 約6,500円 |
| 登録料・最初の10年分(3区分まで)(116) | 42,740 | 約364ユーロ | 約6.4万円 |
| 追加区分・図形要素、各 | 6,410 | 約55ユーロ | 約9,700円 |
| 出願〜登録の合計(文字・3区分・電子出願) | 約58,780 | 約500ユーロ | 約8.9万円 |
| 更新(10年、3区分まで)(116)/猶予期間は50%増 | 42,740/64,110 | 約364/546ユーロ | 約6.4万/9.7万円 |
| 異議申立(134m) | 24,970 | 約213ユーロ | 約3.7万円 |
| 不使用取消請求/無効請求(124) | 各42,740 | 約364ユーロ | 約6.4万円 |
| 優先審査請求(128)/国際出願の取次(107) | 各10,660 | 約91ユーロ | 約1.6万円 |
| 移転・ライセンスの記録(125)/名称・住所変更(126) | 6,410/3,200 | 約55/27ユーロ | 約9,700/4,800円 |
| 期間延長(初回30日)(122)/原状回復(121)/登録証(123) | 2,160/5,320/4,290 | 約18/45/37ユーロ | 約3,300/8,000/6,500円 |
| 庁の先行商標調査(3区分まで)(134k) | 2,780 | 約24ユーロ | 約4,200円 |
| マドプロでセルビアを指定(補足手数料、個別手数料なし) | CHF 100 | 約107ユーロ | 約1.9万円(基本手数料CHF 653は別) |
| EUTM(参考) | 850ユーロ(1区分) | EU27か国 | セルビアには効力なし |
※共和国行政手数料法の料率表(2026年7月1日施行の調整額)と知的財産庁の手数料ページによる。ユーロ換算はセルビア国立銀行の公定中値(2026年10月、1ユーロ≒117.4ディナール)、円換算は1ディナール≒1.5円、1ユーロ≒175円、1スイスフラン≒185円の概算。現地代理人の費用は含みません(事務所により異なりますが、出願から登録までで10万〜25万円程度が一つの目安です。出典のない経験則としてご覧ください)。
マドプロでセルビアを指定する場合、WIPOの個別手数料の一覧にセルビアは含まれておらず、補足手数料CHF 100(約1.9万円)で足ります。日本の基礎出願から1か国だけ指定すると、基本手数料CHF 653(白黒)+補足手数料CHF 100+4区分目以降の追加手数料CHF 100/区分+特許庁の手数料9,000円で、3区分までならCHF 753(約14万円)です。国内出願の約8.9万円(庁費用)に現地代理人費用を加えた額と比べると、セルビア1か国だけならマドプロの費用優位は小さく、複数国(例えばセルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニア、アルバニアの西バルカン5か国)をまとめる場合にマドプロの効率が生きます。マドプロ指定でも、セルビア庁は絶対的理由と相対的理由の両方を職権審査し、暫定拒絶が出れば現地代理人の選任が必要になります(第12条)。国際登録に対する異議期間は、WIPO公報に掲載された月の翌月1日から3か月です(第46条)。
6. 公告後3か月の異議:答弁60日・使用証明・24か月の和解中断
異議申立(prigovor)は2020年法で初めて導入された制度で、先行権利の権利者が、公告日から3か月以内に、第6条(相対的理由)と第7条(商号、代理人の冒認出願)を理由として、商品・役務の全部または一部について申し立てます(第34条1項)。異議期間は延長できず、期間後の追加証拠は、決定に重要で、かつ遅延に正当な理由があると庁が認めた場合にのみ受け入れられます(同条3項)。複数の先行権利を根拠にできますが、すべて同一の権利者に属している必要があります(同条4項)。異議の根拠となる先行商標について不使用取消や無効の手続が係属中であれば、その確定まで異議手続は中断します(同条2項)。異議手数料は24,970ディナールです。
庁は異議の適格性(申立人、期限、記載事項)を審査し、要件を満たせば出願人に異議の写しを送付して60日以内の答弁を求めます(第35条)。この期限も延長できず、出願人が答弁しなければ、異議の範囲で出願は拒絶されます(同条5項)。答弁があれば本案審理に入り、出願人は、先行商標が出願日(または優先日)に登録から5年以上経過している場合、出願日前5年間のセルビアでの真正な使用の証明を異議申立人に求めることができます(第36条2項)。庁は申立人に60日以内の回答を求め、使用も正当な不使用理由も証明できなければ異議は棄却されます。証明があれば出願人に60日の反論機会が与えられ、その後、庁が異議の当否を判断します。先行商標が一部の商品・役務についてのみ使用されていれば、その部分についてのみ登録されているものとして扱われます(同条7項)。必要があれば庁は口頭審理を開くこともできます(第35条7項)。当事者は共同の申請で、和解のために最長24か月の手続中断を求めることができ(第37条)、和解が成立して異議が取り下げられれば手続は終了します。異議が認められれば出願は全部または一部拒絶され、認められなければ出願は登録料の納付段階に進みます。異議の決定も庁の最終決定であり、不服は行政裁判所への提訴によります(第9条)。2025年の異議件数は66件(国内出願41件、国際登録25件)と、国内出願2,648件に対して2.5%程度にとどまり、職権審査で大半の抵触が事前に排除されていることがうかがえます。
| 異議手続の段階 | 期限・内容(根拠条文) |
|---|---|
| 申立期間 | 公告日から3か月、延長不可(第34条)。国際登録はWIPO公報の掲載月の翌月1日から3か月(第46条)。手数料24,970ディナール |
| 申立人・理由 | 先行権利の権利者。第6条の相対的理由、第7条の商号・代理人の冒認出願。同一権利者の複数の先行権利を併用可 |
| 出願人の答弁 | 通知受領から60日、延長不可。無答弁は異議の範囲で拒絶(第35条) |
| 使用証明の要求 | 先行商標が登録から5年超の場合、出願日前5年間の使用の証明を要求可。申立人の回答60日、出願人の反論60日(第36条) |
| 和解のための中断 | 共同申請で最長24か月(第37条) |
| 決定と不服 | 全部・一部拒絶または異議棄却。行政上の不服申立てはなく、送達から30日以内に行政裁判所へ提訴(第9条、行政訴訟法第18条) |
7. 登録・存続期間・更新:出願日から10年、満了後6か月の猶予
商標権は登録簿への記録によって発生し、出願日に遡って効力を持ちます(第57条)。存続期間は出願日から10年で、申請と手数料の納付により何度でも10年ずつ更新できます(第58条1項)。更新の申請は満了日の6か月前から可能で(同条3項)、満了日までに手数料を納めなかった場合も満了後6か月の猶予期間内に割増手数料(料率表では50%増)を添えて更新できます(同条4項)。庁は満了の6か月前以降に権利者へ通知しますが、通知漏れについて責任を負いません(同条5項)ので、更新期限の管理は権利者側の責任です。一部の商品・役務についてのみ更新することもでき、更新の効力は従前の期間の満了日の翌日から生じます。更新料は3区分まで42,740ディナール、追加区分と図形要素は各6,410ディナールで、権利者が自然人の場合の軽減はありません。登録後の手続として、登録の分割(第60条)、名称・住所変更(第61条、3,200ディナール)、移転(第63条、記録により第三者対抗力。団体・証明商標は移転不可)、ライセンス(第65・66条、記録が必要。専用実施権者は権利者が30日以内に提訴しない場合に自ら提訴可(第91条3項))、質権(第67条)、フランチャイズの記録があり、移転・ライセンス等の記録手数料は1件6,410ディナール(複数件は1件あたり4,290ディナール)です。登録簿は電子化され公開されており(第10条)、庁の電子商標登録簿(e-Registar žigova)で出願・登録の書誌情報を無料で検索できます。
8. 不使用取消と無効:知的財産庁の行政手続(42,740ディナール)
商標権者は商標を真正に使用する義務を負い(第59条)、登録日または最後の使用日から継続5年間、正当な理由なく国内市場で指定商品・役務について真正な使用をしなければ、利害関係人の請求により庁が全部または一部を取り消す(prestanak žiga zbog nekorišćenja)ことができます(第82条1項)。使用の立証責任は権利者にあり、識別力を変えない態様での使用や輸出専用品への使用も使用と認められ、権利者の同意を得た第三者の使用も権利者の使用とみなされます(同条2・3項)。正当な不使用理由は、国家機関の決定、輸入禁止など権利者の意思と無関係の障害に限られ(同条4項)、商品を入手できない広告や更新料の納付、譲渡・ライセンス契約の締結は使用になりません(同条5・6項)。5年経過後に使用を再開していれば取消は免れますが、請求を予期して請求前3か月以内に始めた使用は考慮されません(同条7項)。取消の効力は請求日に生じます(第83条)。このほか、普通名称化、品質・産地の誤認、公序良俗違反を理由とする取消(第84条)、団体・証明商標の規約違反による取消(第85条)があります。手続は書面の請求で開始し(第86条)、庁は権利者に回答を求めたうえで決定します。手数料は42,740ディナールです。2025年に庁が処理した国内商標の無効・不使用取消は27件、国際登録については19件でした。
無効(oglašavanje ništavim)は、登録時に第4〜7条の要件を満たしていなかった商標について、保護期間中いつでも利害関係人または検察官が請求できます(第74・75条)。相対的理由(第6・7条)に基づく無効請求は先行権利者(またはその授権を受けた者)のみが行え、先行商標権者が後の商標の使用を知りながら5年間黙認していた場合は、後の商標が悪意で出願されたのでない限り無効を請求できなくなります(第75条3項)。識別力の欠如・記述的・慣用の理由は、無効請求時までに使用により識別力を獲得していれば無効になりません(第76条)。請求人の先行商標が登録から5年を超えている場合、被請求人は無効請求日前5年間(および後の商標の出願日前5年間)の使用の証明を求めることができ、証明がなければ請求は棄却されます(第77条)。無効が認められた商標は初めから効力がなかったものとみなされます(第81条)。手数料は42,740ディナールです。2026年5月の改正法案は、出願時の悪意を独立の無効理由として第74条に明記することを提案しています(現行法でも悪意出願に対しては第104条の裁判所への「出願人・権利者としての地位の確認請求」が用意されており、ベオグラード高等裁判所で悪意を認めた判決が控訴審で維持された例が報告されています)。
日本企業の使い方:障害となる先行商標への対処
セルビア庁は先行商標を職権で引用するため、現地で使われていない古い登録が自社出願の障害になる場面が少なくありません。有効登録143,783件のうち約10万7,000件はマドプロ経由の国際登録で、セルビア市場で実際に使われていないものも多いと考えられます。登録から5年を過ぎた先行商標であれば、不使用取消請求(42,740ディナール)を自社出願と並行して庁に申し立て、第34条2項により異議手続を中断させるか、拒絶理由への意見書で取消請求の係属を主張する設計が有効です。立証責任は相手方にあるため、請求人側の負担は比較的軽いのが特徴です。
9. 庁の決定への不服:行政裁判所への30日以内の提訴
2009年法の下では庁の決定に対して政府の行政委員会への不服申立てが可能でしたが、2020年法はこれを廃止し、庁の決定は最終的(konačna)で、争う手段は行政訴訟(upravni spor)のみとしました(第9条2項)。行政訴訟は行政裁判所(Upravni sud)が3人の裁判官の合議体で審理し(行政訴訟法第8条)、訴えは決定の送達から30日以内に提起しなければなりません(同法第18条)。行政裁判所の判決に対しては、法定の要件の下で最高裁判所への再審査請求(zahtev za preispitivanje sudske odluke)を判決の送達から30日以内に行うことができます(同法第51条)。行政裁判所は庁の決定の適法性を審査し、違法と判断すれば決定を取り消して庁に差し戻すのが通常です(審理期間の公的統計は公表されていません)。2025年に商標分野で庁の最終決定に対して提起された行政訴訟は42件(前年比16.7%増)でした。拒絶査定、異議の決定、取消・無効の決定のいずれも同じルートで、日本の審判制度のような庁内の審理段階がないため、審査段階の意見書と異議・取消手続での主張立証を尽くしておくことが重要です。
10. 侵害訴訟:ベオグラードの高等裁判所・商事裁判所の専属管轄と救済
商標権侵害訴訟の第一審は、当事者の属性で2つの裁判所に分かれます。裁判所組織法(Zakon o uređenju sudova、官報10/2023号)は、著作権・特許・意匠・商標・地理的表示などの紛争について、事業者(会社、企業、協同組合、個人事業主とその団体)間の紛争は商事裁判所(Privredni sud)(第27条1項2号)、それ以外(自然人や非営利法人が当事者)は高等裁判所(Viši sud)(第25条1項7号)の管轄と定め、裁判所所在地法(Zakon o sedištima i područjima sudova i javnih tužilaštava、官報101/2013号、9/2026号、56/2026号)が、知的財産紛争についてはベオグラード高等裁判所(Viši sud u Beogradu)とベオグラード商事裁判所(Privredni sud u Beogradu)がセルビア全土を管轄すると定めています(第4条4項、第5条2項)。したがって、日本企業が現地の模倣業者(法人・個人事業主)を訴える場合はベオグラード商事裁判所、個人を訴える場合はベオグラード高等裁判所が第一審です。控訴はそれぞれ商事控訴裁判所(Privredni apelacioni sud)とベオグラード控訴裁判所(Apelacioni sud u Beogradu)が扱い(第26・28条)、侵害訴訟と商標の争いについては第二審判決に対する上告(revizija)が常に認められます(商標法第108条、最高裁判所Vrhovni sud)。
侵害は、商標権者の排他権(第49〜52条)を無断で行使する行為で、包装・ラベル・真正品証明用の装置への標章の付与や輸出入などの準備行為も含まれます(第50条、第90条)。原告適格は権利者、出願人、ライセンシー(権利者の同意が必要。専用実施権者は権利者が30日以内に提訴しなければ自ら提訴可)、団体・証明商標の使用者です(第91条)。請求できる救済は、①侵害の確認、②侵害行為とそのおそれのある行為の差止め(違反時の金銭的制裁付き)、③損害賠償、④被告費用による判決の公表、⑤侵害品の廃棄・流通からの排除、⑥侵害品の製造に用いた材料・器具の廃棄で、仲介者(サービス提供者)に対しても請求できます(第92条)。損害賠償は逸失利益と侵害者の利益を考慮して算定し、裁判所は適法に使用した場合のライセンス料を下回らない一括賠償を命じることができ、侵害が故意または重過失でない場合は侵害者の得た利益相当額を賠償額とすることができます(同条5〜7項)。出訴期間は侵害と侵害者を知った日から3年、侵害行為から5年(継続的侵害は最後の行為から)で(第93条1項)、侵害訴訟は緊急手続として扱われます(同条2項)。被告は原告商標の提訴前5年間の使用の証明を求めることができ、その場合、裁判所は被告に庁への不使用取消請求を促し、庁の決定まで訴訟を中止します(第91条5項、第93条4項)。
仮処分(privremena mera)は、侵害またはそのおそれを疎明した者の申立てにより、侵害品の差押え・流通からの排除、製造用の材料・器具の差押え・処分禁止、侵害行為の禁止を命じるもので、仲介者にも命じることができ、賠償の回収が困難になるおそれがあれば相手方の動産・不動産の差押えや口座からの支払禁止も可能です(第95条)。裁判所は相手方を審尋せずに仮処分を発令でき、本案提訴前に発令された場合は30日以内に本案を提起しなければなりません(第96条)。侵害がなかったと判断された場合などには相手方への損害賠償義務が生じ、裁判所は担保の提供を条件にできます(第97条)。証拠保全(第99〜101条)と、侵害者や侵害品を扱った者に対する情報提供命令(第102条)も用意されています。さらに、悪意の出願や契約違反の出願に対しては、裁判所に自己を出願人・権利者と認める判決を求めることができ(第104条)、パリ条約6条の2の周知商標の権利者は、冒認登録から5年以内であれば同様の請求ができます(第105条)。2026年5月の改正法案は、仮処分の種類に「侵害品の申立人への引渡し」を追加し、無審尋で発令された仮処分について相手方に事後的な意見陳述の機会を保障し、担保を金銭以外(銀行保証、有価証券など)でも認める内容で、EU執行指令2004/48との整合が目的と説明されています。
裁判例:模倣自動車部品と悪意の出願
ルノーとダチアが、ダチア・サンデロ用のヘッドライト、ドアミラー、グリルの模倣品を輸入販売していたセルビア企業を訴えた事件では、ベオグラード商事裁判所が2021年7月19日に意匠権侵害を認めて損害賠償を命じ、商事控訴裁判所を経て、最高裁判所が2023年12月28日の決定で上告を退けました(代理人事務所の報告によると、鑑定人は意匠と商標の両方の侵害を認定し、2014〜2020年の販売数量(ヘッドライト200個、ミラー30個、グリル71個)に基づいて損害額が算定されました)。提訴は2017年11月で、第一審判決まで約4年を要しており、セルビアの知的財産訴訟の所要期間の一例です。また、他社の名称「Petroprocess」を商標出願した事案では、ベオグラード高等裁判所が出願人の悪意を認定し、控訴裁判所が2024年初めにこれを維持したと代理人事務所が報告しています。悪意の無効理由の明文化は2026年の改正法案に盛り込まれています。
11. 刑事罰・経済犯罪・軽犯罪:刑法238条と商標法の罰則
商標侵害の刑事罰は刑法(Krivični zakonik、官報85/2005号〜63/2026号)第238条「他人の商号その他の商品・役務の特別な表示の無断使用」が定めます。①顧客を欺く目的で他人の商号、地理的表示、商標その他の表示を使用し、またはその要素を自己の表示に取り込んだ者は罰金または3年以下の拘禁刑(1項)、②販売目的で大量または高額の侵害品を取得・製造・加工・流通・賃貸・保管し、または他人の表示を無断で使用して役務を提供した者は6か月以上5年以下の拘禁刑(2項)、③②の行為者が転売者・仲介者の網を組織し、または150万ディナール(約225万円)を超える利得を得た場合は1年以上8年以下の拘禁刑(3項)で、対象物は没収されます(4項)。2026年8月には、ノビ・パザルで有名ブランドの商標を無断で付した衣料品を製造する工場が内務省の経済犯罪捜査部門と市場監督官の合同捜査で摘発され、推定価値約1,362万ディナール(約2,000万円)の商品と工業用プレス機・ミシンが押収、経営者が第238条の容疑で逮捕されました(知的財産庁ニュース、2026年8月10日)。
刑法のほかに、商標法自体が経済犯罪(privredni prestup)と軽犯罪(prekršaj)の制裁を定めています。会社その他の法人が商標または出願に基づく権利を侵害した場合、法人に30万〜300万ディナール(約45万〜450万円)、責任者に5万〜20万ディナールの罰金が科され、侵害品と製造用具は没収・廃棄され、判決は公表されます(第109条)。個人事業主の侵害は5万〜50万ディナール、自然人は1万〜5万ディナールの軽犯罪罰です(第110条)。また、代理人登録簿に登録せずに代理業務を行った法人には10万〜100万ディナールの罰金が科されます(第111条)。刑事事件は検察官の起訴によりますが、商業規模の模倣品については、市場監督官(Tržišna inspekcija)による行政的な押収・廃棄と並行して、権利者が被害届と鑑定協力で刑事手続を後押しするのが実務です。欧州委員会の2025年報告によると、市場監督官が2024年に押収・廃棄した模倣品・海賊版は1,215,425点(2023年739,750点)と大幅に増えています。
12. 税関と模倣品対策:関税法250〜258条と2024年の差止め10万点
国境措置は関税法(Carinski zakon、官報95/2018号、91/2019号、144/2020号、118/2021号、138/2022号)第250〜258条と、その施行令である国境における知的財産権保護措置の条件と方法に関する政令(Uredba、官報38/2019号)が定め、EUの税関執行規則608/2013にならった仕組みです。知的財産権を侵害する物品の持込み・持出しは禁止され(第250条)、税関は権利者の申請(個別申請または包括申請)に基づき(第251条)、または職権で(第252条)、侵害の疑いがある物品の通関を停止し留置します。職権で留置した場合、税関は荷主・申告者、権利者(住所が判明している場合)、知的財産庁に直ちに通知し、通知から10営業日以内(正当な理由があればさらに10営業日延長)に本案手続の開始または仮処分の通知がなければ物品は解放されます(第254条)。権利者、輸入者、所有者は税関監督下で物品を検査する権利を持ち(第255条)、旅行者の手荷物中の非商業的物品や権利者の同意を得て製造された物品(契約数量超過品を含む)には措置が及びません(第256条)。税関は申請の承認・延長・取消と留置物品の数量・種類・価額・原産国・経路などを記録する電子データベースを整備し、公開しています(第258条)。政令は簡易廃棄手続を定め、権利者が通知から10営業日(腐敗しやすい物品は3営業日)以内に侵害品である旨と廃棄への同意を書面で示し、荷主が異議を述べなければ、侵害の有無を裁判で確定することなく税関監督下で廃棄されます。廃棄・保管費用は権利者負担です(米国務省2025年報告)。
欧州委員会の2025年セルビア報告書によると、税関が留置した物品は2023年の290,866点から2024年には103,894点へ減少した一方、市場監督官の押収・廃棄は前述のとおり約164%増えました。2025年の年間統計は、税関・市場監督・警察で集計方法が統一されておらず(米国務省報告)、知的財産庁の調整機関が「執行機関共通の統計プラットフォームの構築」を政府に提案している段階で、本稿執筆時点で税関の2025年総数は公表されていません。個別の事案では、2026年8月にベオグラードの倉庫検査でLEGO風の玩具約3トン(約7,000個)の輸入通関が知的財産権侵害の疑いで停止されるなど、税関の職権留置が続いています。オンライン対策では、EUの支援プロジェクトEU4IMの下で2026年9月29〜30日にベオグラードで「インターネット上の知的財産権執行パイロットプロジェクト」のセミナーが開かれ、EUIPO、OLAF、スペイン国家警察に加え、Alibaba、Temu、Amazon、Ananas、TikTokのプラットフォームとNike、Puma、Adidasの権利者が参加し、スポーツ衣料の模倣品を題材にOSINT(公開情報調査)とフォレンジックの手法を共有しました(知的財産庁ニュース、2026年10月1日)。
| 執行手段 | 根拠・機関 | 特徴・数字 |
|---|---|---|
| 税関の国境措置 | 関税法第250〜258条、政令38/2019号。税関局(Uprava carina) | 申請または職権で留置。10営業日(+10)で本案提起、簡易廃棄は10営業日(腐敗品3営業日)の同意。2024年の留置103,894点(2023年290,866点) |
| 市場監督 | 市場監督官(Tržišna inspekcija) | 国内流通の模倣品の押収・廃棄。2024年1,215,425点(2023年739,750点)。スボティツァの露店市が模倣衣料・靴の拠点として欧州委員会に指摘 |
| 民事 | 商標法第90〜108条。ベオグラード商事裁判所・高等裁判所 | 差止め、廃棄、損害賠償(ライセンス料相当額・侵害者利益)、無審尋の仮処分、証拠保全、情報提供命令 |
| 刑事 | 刑法第238条。警察・検察・基礎/高等裁判所 | 3年以下、商業規模6か月〜5年、組織的または150万ディナール超の利得1〜8年。2026年8月ノビ・パザルの模倣衣料工場摘発 |
| 経済犯罪・軽犯罪 | 商標法第109〜111条。軽犯罪裁判所 | 法人30万〜300万ディナール、個人事業主5万〜50万ディナール、没収・廃棄・判決公表 |
| 調整機関 | 知的財産権保護調整機関(議長は知的財産庁長官) | 2025年に8回会合。押収品保管予算、オンライン侵害対策、郵便小包の税関能力強化、共通統計プラットフォームを政府に提案 |
13. マドプロ・EUTMとの使い分けと日本企業の実務ポイント
セルビアで商標を保護するルートは国内出願とマドプロ指定の2つで、EUTMは使えません。EU向けにEUTMを持っている日本企業でも、セルビアに生産拠点や販売網があるなら別途の手当てが必要です。セルビアがEUに加盟すればEUTMの効力が自動的に拡張されますが(過去の加盟国の例)、加盟時期は見通せず、加盟後も先行する国内権利が優先するため、今のうちに国内権利を確保しておくことに意味があります。マドプロは、日本の基礎出願・登録に依拠する5年間のセントラルアタックのリスク、商品・役務の記載を基礎出願の範囲内に収める必要がある点、暫定拒絶が出れば結局現地代理人が必要になる点を踏まえ、西バルカン複数国をまとめて指定する場合に向いています。セルビア1か国だけなら、職権審査で先行商標が引用される可能性に備えて現地代理人が最初から関与する国内出願のほうが、拒絶理由への対応や同意書・不使用取消の併用を含めて設計しやすいのが実情です。
実務上の留意点を挙げます。第一に、キリル文字とラテン文字です。セルビア語は両方の文字で表記され、公文書はキリル文字が原則ですが、商業上はラテン文字が広く使われます。ブランド名をセルビア語で音訳して使う計画があれば、ラテン文字のほかキリル文字表記の出願も検討します。第二に、国際消尽(第53条)です。セルビアは世界のどこで流通に置かれた真正品も消尽の対象とするため、第三国からの並行輸入を商標権で止めることは原則できません(改変・劣化があれば別)。EU加盟日にEU・EEA域内消尽へ切り替わります(第112条4項)。第三に、代理人の冒認と商号です。現地の販売代理店が自社ブランドを自己名義で出願するリスクに対し、第7条の異議、第52条の移転請求、第104条の裁判所への地位確認請求がありますが、いずれも時間と費用がかかるため、代理店契約に商標の帰属条項を入れ、自社名義の出願を先行させるのが基本です。第四に、税関登録です。関税法第251条の包括申請を税関局に提出しておけば、職権留置の際に権利者として直ちに通知を受け、簡易廃棄に進めます。第五に、使用の記録です。登録から5年で不使用取消の対象になり、異議・無効・侵害訴訟でも使用証明を求められるため、セルビア国内向けの請求書、カタログ、ウェブサイトの現地向け表示など使用証拠を保存します。輸出専用品への使用も使用と認められる点(第82条2項)は、セルビアを生産拠点として使う日本企業にとって有利です。
| 比較項目 | セルビア国内出願 | マドプロでセルビア指定 | EUTM |
|---|---|---|---|
| 庁費用(3区分) | 出願21,390+登録42,740ディナール(電子出願で約8.9万円) | 補足手数料CHF 100(基本手数料CHF 653は別) | 850ユーロ〜。セルビアに効力なし |
| 審査 | 絶対的理由+相対的理由を職権審査、公告後3か月の異議 | 同じ。暫定拒絶は現地代理人で対応 | 絶対的理由のみ、異議3か月 |
| 代理人 | 外国人は登録代理人または国内弁護士が必須 | 出願時は不要、暫定拒絶・異議で必要 | EEA外の出願人は手続に代理人が必要 |
| 存続期間・使用義務 | 出願日から10年。登録から5年で不使用取消 | 国際登録日から10年。使用の起算はWIPO通知から1年経過時(第48条) | 出願日から10年。EU域内の使用で足りる |
| 向いている場合 | セルビア単独、先行商標との調整が必要、商品記載を現地に最適化 | 西バルカン複数国や非EU国をまとめて指定 | EU27か国向け。セルビアは別途手当て |
マドプロの制度全体や費用の考え方は国際商標出願(マドプロ)の解説記事を、EUTMの制度は欧州連合商標(EUTM)の解説記事をあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 登録までどのくらいかかりますか?
知的財産庁は滞貨がなく、出願から1.5〜2か月で実体審査に入り、公告後3か月の異議期間を経て、拒絶理由も異議もなければ出願から約5か月で登録されると庁は説明しています(米国務省2025年投資環境報告の引用)。先行商標が引用されて意見書のやり取りがあれば数か月、異議が入れば答弁60日・使用証明の往復・最長24か月の和解中断で1年以上延びることがあります。権利は登録後、出願日に遡って発生します。
Q2. 知的財産庁は先行商標を調べてくれますか?
はい。セルビアは欧州では少数派の相対的理由の職権審査国で、庁が先行する出願・登録(国内登録と国際登録の両方)と抵触すると判断すれば、公告前に拒絶理由が通知されます(第30・31条)。そのうえで公告後に先行権利者の異議も受け付けます。したがって出願前の調査が重要で、庁の有料調査(3区分まで2,780ディナール)か電子登録簿での検索、現地代理人によるキリル文字・ラテン文字両方の調査をおすすめします。
Q3. 現地代理人は必要ですか?
セルビアに住所も本拠もない日本企業は、知的財産庁の代理人登録簿に登録された代理人または国内弁護士を通じて手続する義務があります(第12条)。マドプロ指定であれば出願時に代理人は不要ですが、暫定拒絶や異議が来た段階で選任が必要です。委任状は私署で足り、公証・認証は求められません。無資格者による代理は10万〜100万ディナールの罰金の対象です(第111条)。
Q4. EUTMを持っていればセルビアでも保護されますか?
いいえ。セルビアはEU加盟候補国であってEU加盟国ではないため、EUTMの効力は及びません。セルビア国内の生産・販売、CEFTA域内向けの輸出に備えるには、国内出願またはマドプロでのセルビア指定が必要です。将来EUに加盟すればEUTMが自動的に拡張されますが、それ以前に取得された国内権利が優先するため、早めに国内権利を確保しておくことを勧めます。
Q5. 使われていない他社の登録が障害になっています。どうすればよいですか?
登録から5年を過ぎていれば、知的財産庁に不使用取消を請求できます(第82条、42,740ディナール)。使用の立証責任は権利者側にあり、取消の効力は請求日に遡ります。自社出願と並行して請求し、拒絶理由への意見書で取消請求の係属を主張するか、異議手続であれば第34条2項により確定まで中断させる設計が一般的です。先行権利者から明示の書面による同意を得て登録する道も法文上はあります(第6条6項)。
Q6. 模倣品が見つかった場合、まず何をすべきですか?
輸入段階なら、税関局に関税法第251条の包括申請を提出しておき、留置の通知を受けたら10営業日以内に侵害品である旨と廃棄への同意を書面で出します。国内で流通している場合は、市場監督官への通報による押収・廃棄、ベオグラード商事裁判所への無審尋の仮処分(第95・96条)と証拠保全、商業規模であれば警察・検察への刑事告発(刑法238条)を組み合わせます。民事の出訴期間は侵害と侵害者を知ってから3年です。
Q7. 費用の総額はどのくらいですか?
文字商標・3区分・電子出願で、庁費用は出願約16,040ディナール+登録42,740ディナールの合計約58,780ディナール(約500ユーロ、約8.9万円)です。図形要素があれば約10,700ディナール、4区分目以降は1区分あたり約10,700ディナール(出願4,290+登録6,410)が加わります。これに現地代理人の費用(事務所により異なり、出願から登録まで10万〜25万円程度が目安)が加わり、拒絶理由対応や異議があれば別途かかります。10年後の更新は42,740ディナールです。
まとめ
セルビアの商標制度は、2020年2月施行の商標法の下で、知的財産庁が絶対的理由と相対的理由の両方を職権審査したうえで公告し、公告後3か月の異議も受け付ける二重チェック型です。費用は出願21,390ディナール(電子出願は25%引き)+登録42,740ディナールの二段階で合計約8.9万円、存続期間は出願日から10年、不使用取消と無効は庁の行政手続(各42,740ディナール)で、庁の決定への不服は行政裁判所への30日以内の提訴のみです。侵害訴訟はベオグラード商事裁判所(事業者間)とベオグラード高等裁判所が全国を専属管轄し、無審尋の仮処分とライセンス料相当額・侵害者利益の賠償が使え、刑事は刑法238条で最長8年、税関は関税法250〜258条の申請・職権留置と簡易廃棄で対応します。EUTMの効力が及ばないため、EU向けとは別に国内出願かマドプロ指定(個別手数料なし、CHF 100)が必要で、国際消尽、キリル文字表記、代理店による冒認、2026年の改正法案(悪意の無効理由の明文化)が設計のポイントです。
各国の商標制度は世界の商標制度ガイドをご覧ください。
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出典・参考文献
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年10月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。
法令(Paragraf法令データベース・知的財産庁の公式英訳)
- 商標法(Zakon o žigovima、官報6/2020号)セルビア語原文(Paragraf統合版)/改正がなく官報6/2020号が現行法であること、商標の種類(第2条)、標識の要件(第4条)、絶対的理由(第5条)、相対的理由と同意(第6条)、異議固有の理由(第7条)、行政手続と行政訴訟(第9条)、外国人の代理義務(第12条、原文「mora zastupati」)、出願・出願日・優先権(第14・19・21・23条)、審査順序と優先審査(第26条)、方式審査(第27条)、実体審査と第三者意見(第30条)、拒絶理由通知(第31条)、公告(第33条)、異議(第34〜38条)、登録(第39・40条)、国際登録(第41〜48条)、権利の範囲と準備行為(第49・50条)、代理人の冒認(第52条)、国際消尽(第53条)、制限(第54条)、発生と存続期間・更新(第57・58条)、使用義務(第59条)、分割・移転・ライセンス(第60〜67条)、無効(第74〜81条)、不使用取消(第82〜89条)、侵害と救済・出訴期間(第90〜93条)、仮処分・証拠保全・情報提供(第95〜102条)、地位確認請求(第104・105条)、上告(第108条)、経済犯罪・軽犯罪(第109〜111条)、経過規定(第112条)の根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/zakon_o_zigovima.html - 知的財産庁「Law on Trade marks」(商標法の公式英訳、2020年)/上記各条文の英語での確認。
https://www.zis.gov.rs/wp-content/uploads/Trademark-Law-prevod-na-engleski-2020-3.pdf - 共和国行政手数料法(Zakon o republičkim administrativnim taksama)料率表(Paragraf統合版、官報54/2026号の調整額を含む)/出願21,390ディナール・追加区分4,290・図形要素4,290(料率番号107)、国際出願の取次10,660(同)、登録・更新42,740・追加区分6,410(料率番号116)と猶予期間の50%増、原状回復5,320(121)、期間延長2,160(122)、登録証4,290(123)、不使用取消・無効42,740(124)、移転・ライセンス記録6,410(125)、変更3,200(126)、優先審査10,660(128)、調査2,780(134k)、異議24,970(134m)の根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/zakon_o_republickim_administrativnim_taksama.html - 裁判所組織法(Zakon o uređenju sudova、官報10/2023号)/高等裁判所の知的財産紛争の第一審管轄(第25条1項7号)、控訴裁判所(第26条)、事業者間の知的財産紛争についての商事裁判所の管轄(第27条1項2号)、商事控訴裁判所(第28条)の根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/zakon_o_uredjenju_sudova.html - 裁判所・検察庁所在地法(Zakon o sedištima i područjima sudova i javnih tužilaštava、官報101/2013号、9/2026号、56/2026号)/ベオグラード高等裁判所(第4条)とベオグラード商事裁判所(第5条)が知的財産紛争についてセルビア全土を管轄することの根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/zakon_o_sedistima_i_podrucjima_sudova_i_javnih_tuzilastava.html - 行政訴訟法(Zakon o upravnim sporovima、官報111/2009号)/行政裁判所の3人合議(第8条)、提訴期限30日(第18条)、最高裁判所への再審査請求30日(第51条)の根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/zakon_o_upravnim_sporovima.html - 刑法(Krivični zakonik、官報85/2005号〜63/2026号)/第238条(他人の商号その他の表示の無断使用)の法定刑(罰金または3年以下、6か月〜5年、1〜8年、150万ディナールの基準、没収)の根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/krivicni_zakonik.html - 関税法(Carinski zakon、官報95/2018号、91/2019号、144/2020号、118/2021号、138/2022号)/国境措置(第250〜258条):持込み・持出しの禁止、申請と職権による留置、損害賠償、通知と10営業日(+10営業日)、検査権、適用除外、電子データベースの根拠。
https://www.paragraf.rs/propisi/carinski-zakon.html - 国境における知的財産権保護措置の条件と方法に関する政令(Uredba、官報38/2019号、知的財産庁掲載PDF)/対象権利の定義、適用除外、簡易廃棄の同意期限(10営業日、腐敗品3営業日)、廃棄の定義と費用負担の根拠。
https://www.zis.gov.rs/wp-content/uploads/Uredba_o_uslovima_i_nacinu_za_primenu_mera_za_zastitu_prava_intelektualne_svojine_na_granici.pdf - Paragraf「Nacrt zakona o izmenama i dopunama Zakona o žigovima」(商標法改正法案の条文と理由書、出所:経済省ウェブサイト2026年5月8日)/悪意を無効理由とする第74条の改正案、国際登録の転換に関する第46a条の新設案、仮処分・証拠保全の改正案(第95〜102条)とEU指令2004/48・2015/2436との整合という趣旨の根拠。
https://www.paragraf.rs/dnevne-vesti/150526/150526-vest12.html
知的財産庁(ZIS)・税関局・政府機関の資料
- 知的財産庁「Годишњи извештај 2025 / Annual Report 2025」/2025年の出願7,130件(国内2,648件:国内出願人1,784件・外国出願人864件、マドプロ4,482件)、2021〜2025年の推移、外国出願人の国別(米国192、中国186、スイス50、英国35、韓国29、日本24)、上位区分、国際出願286件、登録6,582件(国内2,246件、マドプロ4,336件)、審査完了7,656件、公告中478件、異議66件(国内41・国際25)、行政訴訟42件、無効・不使用取消の処理27件+19件、有効登録143,783件(国内36,823件、国際106,960件)、調整機関の会合8回と政府への7提案、マドリッド制度からの収入CHF 1,311,529の根拠。
https://www.zis.gov.rs/wp-content/uploads/zis-godisnji-izvestaj-2025.pdf - 知的財産庁「Trademark」(英語の手続案内ページ)/出願様式Ž-1(2026年6月4日版)、電子出願、調査依頼、手数料ページへの案内、代理人一覧、商標審査方法論(2026年4月)の根拠。
https://www.zis.gov.rs/en/rights/trademark/ - 知的財産庁「International protection of trademarks」/マドリッド協定(旧ユーゴ官報2/74号)・議定書(同2/98号)に基づく国際出願の手続、様式MŽ-1・MŽ-2、国際登録に対する異議期間がWIPO公報掲載月の翌月1日から起算されることの根拠。
https://www.zis.gov.rs/en/rights/trademark/international-protection/ - 知的財産庁「Таксе」(手数料ページ、2026年7月1日施行の調整額の注記付き)/商標関係の料率番号107〜134mの金額、電子出願の25%割引、分割(108)、審査結果通知(109)の根拠。
https://www.zis.gov.rs/prava/takse/ - 知的財産庁「List of IP Representatives」/代理人登録簿の存在と公開の根拠。
https://www.zis.gov.rs/en/list-of-ip-representatives/ - 知的財産庁ニュース「Откривен производни погон за израду робе са неовлашћено употребљеним жиговима」(2026年8月10日)/ノビ・パザルの模倣衣料工場の摘発、推定価値約1,362万ディナール、刑法238条の容疑での逮捕、市場監督官との合同捜査の根拠。
https://www.zis.gov.rs/vesti/2026-otkriven-proizvodni-pogon-za-izradu-robe-sa-neovlasceno-upotrebljenim-zigovima/ - 知的財産庁ニュース「Пилот-пројекат за спровођење права интелектуалне својине на интернету」(2026年10月1日)/2026年9月29〜30日のEU4IMセミナー、EUIPO・OLAF・スペイン国家警察の参加、Alibaba・Temu・Amazon・Ananas・TikTokとNike・Puma・Adidasの参加、OSINTとフォレンジックの手法の根拠。
https://www.zis.gov.rs/vesti/2026-pilot-projekat-za-sprovodjenje-intelektualne-svojine-na-internetu/ - 税関局(Uprava carina)「Заштита права интелектуалне својине」/税関の知的財産権保護サービス、申請様式、法令の案内の根拠。
https://www.carina.rs/servisi/e_servisi/zastita-intelektualne-svojine.html - セルビア国立銀行(NBS)公定為替相場/2026年10月の中値(1ユーロ≒117.4ディナール、100円≒66.2ディナール)による換算の根拠。
https://www.nbs.rs/en/indeks/
EU・米国・WIPO・外務省・専門家の解説
- 欧州委員会「Serbia 2025 Report」(第7章 知的財産法)/知的財産庁の評価、2024年の出願2,600件・登録1,935件、市場監督官の押収・廃棄739,750点(2023年)→1,215,425点(2024年)、税関の留置290,866点→103,894点、執行調整部門の設置、情報共有プラットフォームの未稼働、司法の処理能力の課題の根拠。
https://enlargement.ec.europa.eu/document/download/6e68ce26-b95b-48e1-921a-c60c12da8f00_en?filename=serbia-report-2025.pdf - 米国務省「2025 Investment Climate Statements: Serbia」(知的財産権の節)/滞貨なし、出願後1.5〜2か月で実体審査、問題がなければ約5か月で登録、押収品の廃棄と費用負担、統計手法の不統一、税関への権利登録の推奨、WTO非加盟とTRIPS整合の根拠。
https://www.state.gov/reports/2025-investment-climate-statements/serbia - WIPO Lex「Serbia – Treaties」(条約加盟情報)/マドリッド協定(1992年4月27日発効、2006年9月19日継続適用宣言)、マドリッド議定書(1997年11月17日批准、1998年2月17日発効)、ニース協定・パリ条約(1992年4月27日)、シンガポール条約(2010年11月19日発効)の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/ShowResults?code=RS - WIPO「Individual Fees under the Madrid Protocol」/セルビアが個別手数料を定めていない(一覧に含まれない)ことの根拠。
https://www.wipo.int/madrid/en/fees/ind_taxes.html - 外務省「セルビア共和国 基礎データ」(令和8年2月19日更新)/面積、人口約659万人、GDP901億米ドル、1人当たりGNI、EU加盟交渉(2014年1月開始)、外国直接投資52億ユーロ、2025年の対日貿易(輸出約77億円・輸入約442億円)、日系企業7件の直接投資(JTI、矢崎総業、ハイレックス、関西ペイント、前川製作所、TOYO TIRE、日本電産)、在留邦人248人、2025年9月のブチッチ大統領の大阪・関西万博参加の根拠。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/serbia/data.html - 外務省「投資の促進及び保護に関する日本国とセルビア共和国との間の協定の署名」(2025年12月)/2025年12月24日(現地時間)にベオグラードで日・セルビア投資協定が署名されたことの根拠(2026年7月30日発効)。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_03170.html - ジェトロ ビジネス短信「日・セルビア投資協定が7月30日発効、両国の投資促進と経済関係の発展に期待」(2026年7月9日)/日・セルビア投資協定の2026年7月30日発効、セルビアの日系企業拠点数35社(2024年10月1日時点)の根拠。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/07/fa1bf961d12df151.html - PETOŠEVIĆ「Serbian Supreme Court Issues Important Decision on Fake Car Parts」(2024年7月17日)/ルノー・ダチアの模倣部品事件:2017年11月提訴、ベオグラード商事裁判所の2021年7月19日判決、商事控訴裁判所、最高裁判所の2023年12月28日決定、鑑定人による意匠・商標侵害の認定、販売数量に基づく損害算定の根拠。
https://www.petosevic.com/node/4854 - Zunic Law「Trademark Bad Faith Challenge: Zunic Law Wins Case」(2024年1月)/「Petroprocess」商標出願の悪意をベオグラード高等裁判所が認定し控訴裁判所が維持したことの根拠(代理人事務所の報告)。
https://zuniclaw.com/en/victory-for-zunic-law-trademark
※本記事の情報は2026年10月時点のものです。手数料は毎年調整され、商標法の改正法案(2026年5月公表)が成立すれば無効理由や仮処分の規定が変わる可能性があるため、実際の出願にあたっては知的財産庁の最新情報と現地代理人の確認をおすすめします。円換算は1ディナール≒1.5円、1ユーロ≒175円、1スイスフラン≒185円の概算です。