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ブータン商標制度の実務ガイド|2001年産業財産法と産業財産規則・絶対的理由と相対的理由の審査・公報公開後3か月の異議・英語願書と翻字翻訳・現地代理人と公証不要の委任状・公費は1区分1,000ニュルタム(約1,700円)・出願日から10年・不使用取消3年・マドプロ補足手数料100スイスフラン・IPAS 4 Cloud移行と執行の実情を弁理士が徹底解説
ブータン王国は、インドと中国(チベット自治区)に挟まれたヒマラヤの内陸国で、面積は九州とほぼ同じ約38,394平方キロメートル、人口は約78.6万人(2023年)です。水力発電による電力輸出と農林業、観光を柱とし、通貨ニュルタム(Nu)はインド・ルピーと等価で固定されています。日本とは1986年に外交関係を樹立し、日本は最大の援助国として長く関係を築いてきましたが、2024年の日本からの輸入は7.65億円、日本への輸出は1.1億円、在留邦人は90人と経済的な結びつきは小さく、日本企業の進出事例も限られています。それでも、インド市場と一体で運営されるブランドや、観光・高級ホテル・飲食・医薬品・食品の分野では、ブータンでの商標登録が必要になる場面があります。商標を所管するのは産業・商業・雇用省メディア・創造産業・知的財産局(DoMCIIP:Department of Media, Creative Industry and Intellectual Property, Ministry of Industry, Commerce and Employment)で、首都ティンプーに産業財産登録所(Industrial Property Registry)を置いています。
制度の根拠は、2001年7月13日に国民議会が可決した2001年ブータン王国産業財産法(Industrial Property Act of the Kingdom of Bhutan, 2001)と、その細則である2001年産業財産規則(Industrial Property Rules, 2001)です。特許・意匠・商標・商号・不正競争を一本の法律で定める構成で、商標は第24〜33条、手続の共通規定は第34〜44条に置かれています。審査は識別力などの絶対的理由と、先行商標・周知商標との抵触という相対的理由の両方について行われ、受理された出願は商標公報(Trademark Journal)で公開されて公開日から3か月の異議申立てに付されます。存続期間は出願日から10年、更新は10年ごとで猶予期間は6か月、不使用による取消は3年と周辺国より短い点が特徴です。公的手数料は出願が1区分1,000ニュルタム(約1,700円)、登録料1,000ニュルタムと極めて安く、マドリッド協定・議定書に2000年から加盟しているため、日本からはマドプロで指定すれば補足手数料100スイスフラン(約19,300円)で保護を求められます。他方、法律と規則は2001年から改正されておらず、電子出願は国際出願(Madrid e-Filing)に限られ、税関に商標専用の水際手続がなく、裁判例も公表されたものが見当たらないなど、制度の成熟度には注意が必要です。本記事では、WIPO Lexが公開する産業財産法と産業財産規則の英文、日本特許庁の日本語訳、産業・商業・雇用省と知的財産局が公開する手数料表・審査マニュアル・商標公報・通知、WIPOのマドリッド制度の加盟国情報と統計、外務省・米国国務省の資料、現地の実務解説を照合し、日本企業がブータンで商標を取得・維持・行使するために必要な事項を弁理士が解説します。
この記事のポイント
- 根拠法は2001年産業財産法(2001年7月13日、第79回国民議会で可決。1997年の産業財産規程に基づく商標登録制度を引き継ぐ)と2001年産業財産規則(商標は第36〜60条)。運用の細目は2023年商標審査マニュアル、商標手数料表、2025年の知的財産代理人認定ガイドラインが補う。所管は産業・商業・雇用省メディア・創造産業・知的財産局(DoMCIIP)で、2016年に経済省知的財産局(DoIP)に昇格し、省庁再編で現在の名称になった。
- 審査は絶対的理由と相対的理由の両方(第25条第3項:識別力の欠如、公序良俗、原産地等の誤認、国章等、周知商標・周知商号との同一・類似・翻訳、先行登録・先願商標との同一・類似)。受理後に商標公報で公開され、公開日から3か月の異議申立て(延長不可、手数料500ニュルタム)ができ、答弁書は2か月以内。拒絶理由への応答は2か月で、応答がなければ取下げ擬制。登録までの目安は6〜9か月。
- 公的手数料は出願1区分1,000ニュルタム、登録料1,000ニュルタム、更新料1,000ニュルタム(猶予期間の割増200ニュルタム)、異議・答弁各500、無効・取消請求1,000、名義変更1,000。本記事では1,000ニュルタム≒1,700円(ブータン王立通貨庁の2026年11月3日のレート、100円=59〜61ニュルタム)で換算した。マドプロ指定は個別手数料の宣言がなく補足手数料100スイスフラン(1スイスフラン≒193円)。
- 存続期間は出願日から10年(第28条第4項)。更新は満了前6か月以内に請求し、満了後6か月の猶予期間は割増を払えば更新できる。登録後3年以上継続して使用されていない商標は、利害関係人の請求により登録官または裁判所が削除できる(第29条第2項)。登録要件を欠く登録は登録日に遡って無効となり、請求期限はない。
- マドリッド協定とマドリッド議定書の双方に2000年8月4日に加盟。拒絶通報期間を18か月に延長する宣言も個別手数料の宣言もしておらず、拒絶通報は国際登録の通知から12か月以内。2024年5月から本国官庁としてMadrid e-Filingを提供し、2025年9月に商標登録所のシステムをIPAS 4 Cloudに移行。設立以来の商標出願は23,697件で、うち17,242件がマドリッド経由、国内出願は6,455件、現地出願人は3%(2025年9月の知的財産局通知)。
- 権利行使は、産業財産法第41条による裁判所の差止命令と損害賠償、故意の侵害に対する拘禁刑または100万ニュルタム以下の罰金、登録官の決定に対する2か月以内の裁判所への不服申立て。ただし公表された裁判例は見当たらず、米国国務省の2025年投資環境報告は「過去10年に公表された知財の訴追事例はない」「税関は模倣品を押収しているが統計は公表されていない」と記す。
- 願書は英語で、英語以外の文字を含む商標には翻字と翻訳を添える(規則第39条)。ブータンに居所も主たる営業所もない出願人はブータンに居住する法律実務家または登録された産業財産代理人を通じて手続をしなければならず(第35条)、委任状は公証不要で写しでもよく、出願から2か月以内に提出する。手数料は現金または現地銀行の銀行手形で納付するため、実務上は代理人経由の納付になる。
- 慎重に扱うべき点:産業財産法の施行日が大臣の告示に委ねられWIPO Lexに記載がないこと、WIPOのマドリッド制度加盟国情報が「不使用取消の規定なし」とする一方で法第29条第2項が3年の不使用削除を定めること、関税法に商標専用の水際手続がなく2017年関税規則の付属書が著作権法のみを参照すること、国内出願の電子出願が確認できないこと、法が「可視的な標識」のみを商標と定義し音の商標を認めないこと、2026年にWTO加盟交渉が再開されTRIPS協定への対応で制度改正が見込まれること。
目次
- ブータン商標制度の全体像:1997年産業財産規程、2001年産業財産法と産業財産規則、2023年審査マニュアル、知的財産局(DoMCIIP)、条約加盟
- 市場環境と統計:年間出願約1,800区分、外国出願人が9割、マドリッド経由が7割、登録まで6〜9か月、日本企業の進出は限定的
- 保護対象と登録要件:可視的な標識、団体標章、周知商標、第25条第3項の不登録事由6項目、商号と詐称通用
- 出願手続の流れ:代理人と委任状、英語願書と翻字・翻訳、方式審査、実体審査と応答2か月、公開と異議3か月、登録料の納付、登録まで6〜9か月
- 費用の目安:公的手数料1区分1,000ニュルタム、登録料・更新料、代理人費用、マドプロ補足手数料100スイスフラン、為替
- 拒絶理由・異議申立て・不服申立て:応答2か月と聴聞、理由書の請求1か月、異議3か月と答弁2か月、裁判所への不服申立て2か月
- 登録・存続期間・更新:出願日から10年、満了前6か月の更新、猶予6か月と割増、更新証明書、公報への掲載
- 無効・取消:登録官または裁判所への無効請求(期限なし・遡及効)、3年の不使用による削除、団体標章の無効
- マドプロ指定の実務:2000年加盟、宣言なし、補足手数料100スイスフラン、12か月の拒絶通報、暫定拒絶への応答2か月、直接出願との比較
- 使用・譲渡・ライセンス:移転の記録、品質管理条項のないライセンスの無効、消尽と並行輸入、商号、団体標章
- 侵害への救済:第41条の差止めと損害賠償、故意侵害の刑事罰、刑法の詐欺的行為、裁判所、執行の実情
- 税関での水際措置:2017年関税法第27条、関税規則付属書Vの制限品目、録記制度の不存在、インド国境の実情
- 日本企業の出願戦略と実務ポイント:インドとの一体管理、マドプロか直接出願か、翻字の設計、区分設計、公報監視、使用証拠、3年の不使用対策
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
- 出典・参考文献
1. ブータン商標制度の全体像:1997年産業財産規程、2001年産業財産法と産業財産規則、2023年審査マニュアル、知的財産局(DoMCIIP)、条約加盟
ブータンの知的財産制度は、1994年のWIPO加盟を起点に、1997年の産業財産規程(Industrial Property Regulation, 1997)によって商標登録制度が最初の知的財産制度として始まりました。当時の通商産業省(Ministry of Trade and Industry)に法務部門が設けられ、同年に商標登録所(Trademark Registry)が開設されています。2001年7月13日、第79回国民議会(Gyalyong Tshogdu Chhenmo)は2001年ブータン王国産業財産法と2001年著作権法を可決し、産業財産規程は産業財産法に引き継がれました。産業財産法は特許(第4〜16条)、意匠(第17〜23条)、商標・団体標章・商号・不正競争行為(第24〜33条)、共通規定(第34〜44条)の5部構成で、WIPOの標準的なモデル法に沿った内容です。第2条は施行日を大臣の告示に委ねており、WIPO Lexには意匠に関する第17〜23条が2009年5月1日に施行されたことのみ記載されています。商標部分については、知的財産局の資料が「規程は2001年法に置き換えられた」と述べ、商標年鑑のCountry Indexが「2001年から施行」と記していますが、正確な施行日は公開資料で確認できませんでした。
手続の細目は2001年産業財産規則が定め、商標については第36条(ニース分類の適用)から第60条(産業財産代理人の登録)までが該当します。規則は産業財産法の施行と同時に施行されるものとされ、2001年以降改正されていません。2025年11月の商標公報も「2001年産業財産規則第46条に基づく公開」「規則第51条と法第29条に基づく無効」と明記しています。運用面では、2023年に商標審査マニュアル(Trademark Examination Manual 2023)が策定され、方式審査・実体審査・ディスクレーマー・マドリッド制度の各章で審査官の判断基準を示しています。また、2023年の省庁再編に伴って産業・商業・雇用省のウェブサイトに商標手数料表(Schedule I)、商標登録のフローチャート、各種様式(TM Form 7〜21)が掲載され、2025年12月には知的財産代理人の認定に関するガイドライン(2年間の暫定措置)が、2025年1月7日には地理的表示規則(GI Rules and Regulations of Bhutan 2025)が施行されました。本記事の条文番号は、WIPO Lexが公開する産業財産法の英文(BT001)と産業財産規則の英文(BT002)によります。日本特許庁も両者の日本語訳を公開しています。
所管官庁は産業・商業・雇用省メディア・創造産業・知的財産局(DoMCIIP)です。産業財産法第36条は産業財産登録所を通商産業省内に置くと定めていますが、その後の組織変更で、2000年に法務部門が知的財産課(Intellectual Property Division)に、2016年に経済省(Ministry of Economic Affairs)の知的財産局(DoIP:Department of Intellectual Property)に昇格し、2022〜2023年の省庁再編で産業・商業・雇用省の下に放送・創造産業の所管と統合されて現在の名称になりました。局内の産業財産課(Industrial Property Division)が商標・特許・意匠・地理的表示の登録を担い、商標公報には産業財産登録官(Registrar of Industrial Property)の名で告示が出されています。所在地はティンプーのKawang Zur Lam 227番地で、公式サイト(domciip.gov.bt)に代理人名簿、様式、商標公報、地理的表示の出願公告が掲載されています。登録所は2006年にWIPOの産業財産自動化システム(IPAS)を導入し、2025年9月19日の通知でIPAS 3.6からクラウド版のIPAS 4 Cloudへの移行完了を公表しました。2019年にはオンラインの商標検索システムが公開されたと局の沿革に記されていますが、本記事の執筆時点で公開URLは確認できませんでした。
条約については、WIPO設立条約(1994年3月16日)、パリ条約(2000年8月4日)、マドリッド協定(ストックホルム改正、2000年8月4日)、マドリッド議定書(2000年8月4日)、ベルヌ条約(2004年11月25日)に加盟しています。マドリッド協定については、国際登録の効果を出願人の明示の請求があった場合にのみブータンに及ぼす旨の第3条の2の宣言をしていますが、マドリッド議定書に関する宣言(拒絶通報期間の18か月への延長、個別手数料、ライセンス記録の効力など)は一切していません。WTO、PCT、ニース協定、ウィーン協定、ハーグ協定、シンガポール条約、商標法条約には未加盟ですが、規則第36条により商品・役務の分類にはニース分類を適用しています。WTOについては1999年に作業部会が設けられた後に交渉が長く中断していましたが、2025年6月に内閣が加盟手続の再開を承認し、2026年9月には作業部会報告書案や物品・サービスの約束表案を含む17の加盟文書をWTO事務局と加盟国に回付することが決まりました。加盟が実現すればTRIPS協定への対応として産業財産法の改正が必要になると見込まれるため、今後の法改正の動向には注意が必要です。
2. 市場環境と統計:年間出願約1,800区分、外国出願人が9割、マドリッド経由が7割、登録まで6〜9か月、日本企業の進出は限定的
外務省の基礎データ(2026年3月)によると、ブータンの名目GDPは29.0億米ドル、1人当たりGDPは3,600米ドル、経済成長率は5.2%(いずれも2022年)、インフレ率は4.2%(2023年)です。2023年の輸出は529億ニュルタム(シリコン、砕石、電力、セメント)、輸入は1,084億ニュルタム(軽油、ガソリン、鉄製品、米)で、輸出入ともインドが圧倒的なシェアを占め、消費財と資本財のほとんどをインドと他国からの輸入に依存しています。通貨ニュルタムはインド・ルピーと等価で固定され、ブータン王立通貨庁(RMA)の2026年11月3日のレートは100円=59.15〜60.80ニュルタム(1ニュルタム≒1.6〜1.7円)、1米ドル=93.50〜96.40ニュルタムです。2024年から第13次5か年計画が始まり、2025年6月にはWTO加盟交渉の再開が決まりました。日本との関係では、日本からの輸入が2024年に7.65億円(自動車、自動車部品、建設・鉱山用機械)、日本への輸出が1.1億円(生鮮・冷蔵野菜、合金鉄)で、在留邦人は90人(2024年)です。ジェトロはブータンの国別ページを設けておらず、日系企業の進出に関する公的な統計もありません。
商標の出願規模は小さいものの、外国出願人の比率が極めて高いのが特徴です。WIPOの統計プロファイル(2024年、2026年6月更新)によると、ブータンの登録所に出願された商標は区分数ベースで1,806件(前年比0.6%増)で、居住者177件(9.8%)に対して非居住者が1,629件(90.2%)を占めます。非居住者出願の出所は中国23.3%、スイス13.4%、米国9.9%、フランス9.8%、ドイツ6.5%で、登録は区分数ベースで1,852件(14.5%増)、審査官1人当たりの出願区分数は602件、登録所の公称の登録所要日数は90日です。知的財産局の2025年9月19日の通知は、登録所の設立以来の商標出願が23,697件で、そのうち17,242件がマドリッド経由の多区分出願、6,455件が国内出願、出願の多い国は米国・中国・インドの順で、現地出願人による出願は全体の3%にとどまると述べています。2017年の経済省の資料では2016年末時点の累計が16,115件、2018年の国家知的財産政策では「出願の99%が外国出願人」とされており、ブータンの商標登録所は実態として外国ブランドの登録窓口として機能しています。2025年11月の商標公報(第122号)に公開された国内ルートの出願116件を見ると、インドの出願人が22件、ブータンの出願人が16件、米国・ネパールが各3件、日本・ドイツ・中国が各2件で、日本企業の直接出願も少数ながらあります。
ブータン企業の海外出願も増え始めており、WIPOの統計ではブータンを本国とする出願が2024年に区分数ベースで286件(前年比144%増、うち海外109件)、海外出願の7.3%がマドリッド経由で、出願先はインドが77%、次いで米国、EUIPO、日本、英国です。2024年4月の世界知的財産の日には、高級ホテルチェーンのPEMAKOが2000年の加盟以来初めてブータンを本国官庁とするマドリッド出願を行った企業として表彰されました。登録までの期間は、商標年鑑のCountry Indexが「異議がなければ出願から1〜3か月で受理の通知、登録まで6〜9か月」とし、2025年11月の公報に公開された出願は2025年2〜8月に出願されたものでしたから、出願から公開まで3〜9か月、公開から3か月の異議期間を経て登録料の納付後に登録、という流れになります。
3. 保護対象と登録要件:可視的な標識、団体標章、周知商標、第25条第3項の不登録事由6項目、商号と詐称通用
産業財産法第24条は、標章(mark)を「企業の商品(商標)または役務(サービスマーク)を識別することができる可視的な標識」と定義しています。「可視的」であることが要件のため、音や匂いの商標は登録できません。WIPOのマドリッド制度加盟国情報(2026年7月15日更新)では、ブータンの登録所が受け付ける標章の種類は文字商標、図形商標、文字と図形の結合商標、色彩のみからなる商標の4種類で、すべての標章に図形的な表示と標章の説明(description)が求められ、色彩を主張する場合は色の指定が必要とされています。審査マニュアルは色彩の主張についてパントン番号などの色コードと、標章のどの部分にどの色が付されるかの説明を求めています。立体商標については法に明文がなく、審査マニュアルは「形状・包装・色彩などは審査官にとって判断が難しい」と記すにとどまるため、立体形状の保護は図形商標としての登録で代替することになります。
団体標章(collective mark)は、「登録された所有者の管理の下でその標識を使用する複数の企業の商品・役務の出所その他の共通の特徴(品質を含む)を識別できる可視的な標識」として登録でき(第24条第2号、第30条)、出願時に使用規則の写しを添付します。証明標章の制度はなく、2019年に通商局が策定したMADE IN BHUTAN(ブランド・ブータン構想の下で2016年に始まった国産品表示)や、2024年4月26日に知的財産局が立ち上げた伝統工芸品のCRAFT BHUTANのロゴは団体標章として運用されています。商号(trade name)は「企業を識別する名称または呼称」と定義され、第32条により登録の有無にかかわらず第三者の違法な行為から保護されます。商号を後に商標や団体標章として使用する行為で公衆を誤認させるおそれのあるものは違法とされ、第33条は混同を生じさせる行為、競争者の信用を毀損する虚偽の主張、商品の性質・製法・特性・用途・数量を誤認させる表示を不正競争行為として禁じています。地理的表示は産業財産法には規定がなく、2025年1月7日施行の地理的表示規則により知的財産局内の地理的表示登録所が登録を扱います。
商標の排他的権利は登録によってのみ取得されます(第25条第1項)。ただし同条第2項は、他人の商品・役務を自己のものと偽る詐称通用(passing off)に対する訴権を妨げないと定めており、未登録商標の使用者もコモンロー型の救済を主張する余地があります。第25条第3項が定める不登録事由は6項目で、(1)他の企業の商品・役務から識別できない標章、(2)公序良俗に反する標章、(3)商品・役務の地理的原産地、性質、特性について公衆や取引界を誤認させるおそれのある標章、(4)国家・政府間機関の紋章、旗、記章、名称、略称、公的な標識や検査印と同一・模倣・包含する標章(権限ある当局の許可がある場合を除く)、(5)他の企業の同一・類似の商品・役務についてブータンで周知の商標または商号と同一・混同を生じるほど類似・またはその翻訳である標章、および周知かつブータンで登録された商標について非類似の商品・役務であっても関連性を示唆し周知商標の所有者の利益を害するおそれがある標章、(6)同一または密接に関連する商品・役務について、他人の名義で登録簿に登録されているか先の出願日・優先日を持つ商標と同一の標章、またはこれに酷似して欺瞞や混同を生じるおそれのある標章、です。審査マニュアルは(1)〜(4)を絶対的理由、(5)(6)を相対的理由として整理し、記述的・慣用的な語、商品の性質・技術的効果から生じる形状、悪意の出願なども絶対的理由として扱うとWIPOの加盟国情報に記載しています。
周知商標について、審査マニュアルは「ブータンで周知の登録商標」と「ブータンで周知の未登録商標であって、パリ条約同盟国の国民または同盟国に住所・現実かつ有効な営業所を持つ者に属するもの(ブータンで事業や信用を有するか否かを問わない)」の双方を対象とし、翻訳も含めて拒絶理由とします。識別力については、使用による識別力の獲得を使用期間・規模、広告、認知度の資料で立証して拒絶を克服でき、先行商標との抵触については先行権利者の同意書(写しで可)を提出すれば、商標と商品が同一であっても自動的に拒絶が解消されるというのがWIPOの加盟国情報に記された登録所の運用です。記述的な要素を含む結合商標については、規則第44条第2項に基づき審査官がその部分の権利不要求(ディスクレーマー)を条件に受理することがあり、マニュアルは「ESTEE LAUDER FOR MEN」の「FOR MEN」のような例を挙げています。出願人の資格に制限はなく、先願主義(第25条第3項第6号は先の出願日・優先日を基準にする)で、先使用者の抗弁を定める条文はありません。
先行商標・周知商標との抵触は審査されますが、審査官の人員は限られ、第三者の情報提供制度もありません
産業財産法第27条第1項により、登録官は方式要件に加えて第24条第1号と第25条第3項のすべての要件、つまり先行登録・先願商標や周知商標との抵触も審査し、審査マニュアルは登録所のデータベースの検索報告書を審査報告書に添付すると定めています。しかし、WIPOの統計では審査官1人当たりの出願区分数は602件で、2025年の知的財産代理人ガイドラインは「登録代理人は4名、うち実働は2名」という実務家の不足を認めています。WIPOの加盟国情報によれば第三者による情報提供(third party observations)は認められておらず、先行権利者の同意書があれば自動的に拒絶が解消されるため、自社の商標を守る手段は公報の監視と公開日から3か月以内の異議申立てに集中します。公報は隔月刊で、知的財産局のウェブサイトにPDFで掲載されます。
4. 出願手続の流れ:代理人と委任状、英語願書と翻字・翻訳、方式審査、実体審査と応答2か月、公開と異議3か月、登録料の納付、登録まで6〜9か月
出願は所定の様式(TM Form 7)により、ティンプーの産業財産登録所に提出します(規則第37条)。産業財産法第35条は、通常の居所または主たる営業所がブータン国外にある出願人に対し、ブータンに居住して業務を行う法律実務家または登録された産業財産代理人による代理を義務づけています。知的財産局のウェブサイトには2026年時点で9名の代理人(法律事務所と知的財産サービス会社)が掲載されており、2025年12月の代理人認定ガイドラインにより、ブータン国民で学位または登録所での5年の実務経験を持ち、5日間の事前研修を修了した者を2年間の暫定措置として新たに認定する制度が始まっています。国内の電子出願システムは確認できず、国際出願についてのみ2024年5月からWIPOのMadrid e-Filingが利用できます。登録所の業務時間は月〜金曜の9〜17時(11〜2月は9〜16時)です。
| 段階 | 内容(根拠条文・期間) |
|---|---|
| 1. 出願前の調査 | 登録簿の閲覧は所定の手数料(1時間500ニュルタム)で請求でき(規則第55条、TM Form 17)、代理人を通じて登録所のデータベース検索を依頼するのが一般的。マドリッド経由の指定も登録所のIPASに取り込まれるため、WIPOのGlobal Brand DatabaseとMadrid Monitorで国際登録の指定を確認する。知的財産局の沿革には2019年のオンライン検索システムの公開が記されているが、公開URLは未確認 |
| 2. 願書と添付書類 | TM Form 7(出願人または代理人が署名)、標章の耐久性のある図形的表示(A4以内、300dpiでの読取りに適した品質)と追加の表示3部(TM Form 7A)、ニース分類の区分ごとの商品・役務の一覧、使用開始日または使用意思の申告、委任状(規則第37〜38条、第43条)。1出願で複数区分を指定でき、手数料は区分数を乗じた額(規則第37条)。団体標章は使用規則の写し(出願人の認証で足り、公証不要)を添付。審査マニュアルは出願人の正式名称・住所、共同出願人全員の署名または委任を求める |
| 3. 言語と翻字・翻訳 | 願書・公報・登録所との通信は英語。英語以外の文字を含む標章には、各語の翻字と翻訳、その言語名を記載(規則第39条)。Country Indexは認証翻訳を求めるとするが、規則にその定めはない。WIPOの加盟国情報では、マドリッド経由の指定にも標章の英訳の記載が必要 |
| 4. 委任状 | TM Form 16による委任状(出願人が複数の場合は全員が署名)。手数料は不要(規則第53条、手数料表)。公証・領事認証は不要で、写しで足りるが、会社の署名と社印が求められる。出願時に添付しないか、既存の包括委任状を引用しない場合は出願日から2か月以内に提出する(審査マニュアル4.1.9)。マドリッド経由では暫定拒絶への応答期限後の提出は認められない |
| 5. 出願日の認定 | 出願人の名称、通信先の住所、標章の表示、商品・役務の一覧、出願手数料がそろった日が出願日となり、登録官は出願番号と出願日を書面または受領証で通知する(規則第43条)。区分の訂正で区分が増える場合、追加区分の手数料を30日以内に納めれば出願日が維持される(審査マニュアル4.1.6)。取り下げても手数料は返還されない(規則第42条) |
| 6. 優先権 | パリ条約に基づく優先権は最先の出願日から6か月(法第26条第2項、審査マニュアル4.1.5)。宣言には先の出願の日付・番号・国を記載し、番号が未定なら出願から3か月以内(さらに3か月延長可)に補充する。登録官が求めた場合は要求から3か月以内に受理官庁の認証した写しを提出し、英語でない場合は英訳を添える(規則第40〜41条)。要件を満たさなければ優先権の主張はなかったものとみなされる |
| 7. 方式審査 | 登録官が第26条第1項と規則の要件(様式、表示、区分と指定商品、手数料、代理人、委任状、優先権書類)を審査し、IPASで方式審査報告書を作成する(法第27条第1項(a)、審査マニュアル第4章)。フローチャートでは不備の補正期間は1か月。審査マニュアルは、類見出しのみの指定を認めず、商品・役務を各区分に属する具体的な名称で記載するよう求める |
| 8. 実体審査 | 登録官が第24条第1号と第25条第3項の要件(識別力、公序良俗、誤認、国章等、周知商標、先行登録・先願商標)を審査する(法第27条第1項(b))。拒絶理由があれば書面で理由を通知し、出願人は通知から2か月以内に補正、意見書の提出または聴聞の請求(TM Form 8、100ニュルタム)をし、応答がなければ取り下げたものとみなされる(規則第44条第1項)。条件付き受理(ディスクレーマー、限定)に異議があるときも2か月以内に聴聞を請求する。Country Indexは1か月の延長が可能とする(TM Form 19、1か月200ニュルタム) |
| 9. 公開と異議申立て | 受理された出願は商標公報(Trademark Journal)に出願日・優先日、標章、区分と商品・役務、出願人、外国出願人の現地代理人を掲載して公開される(規則第46条)。公報は隔月刊でPDFが知的財産局のウェブサイトに掲載され、INIDコードで記載される。利害関係人は公開日から3か月以内にTM Form 10と手数料500ニュルタム、証拠を添えて異議を申し立てる(法第27条第2項(b)、規則第47条第1項)。期間の延長は認められない(WIPO加盟国情報)。出願人は公開後、登録された場合と同じ権利を主張できる(法第27条第2項(e)) |
| 10. 答弁と決定 | 登録官は異議書の写しを出願人に送付し、出願人は送付から2か月以内にTM Form 11と手数料500ニュルタム、証拠を添えて答弁書を提出する。提出がなければ出願を放棄したものとみなされる(法第27条第2項(c)、規則第47条第2項)。登録官は当事者の求めに応じて聴聞を行い、登録の可否を決定する |
| 11. 登録料と登録証 | 異議がないか異議が出願人に有利に決定されると、登録官は登録料(TM Form 12、1,000ニュルタム)の納付を求め、納付後に標章を登録簿に記録し、登録の参照を公報に掲載し、登録証(TM Form 12A、手数料不要)を交付する(法第27条第3項、規則第48条)。登録には標章、登録番号、所有者と代理人、出願日と登録日、優先日、区分ごとの商品・役務が記載される |
| 12. 所要期間 | Country Indexは異議がなければ出願から1〜3か月で受理の通知、登録まで6〜9か月とする。2025年11月10日の公報第122号に公開された116件は2025年2〜8月の出願で、公開まで3〜9か月、その後3か月の異議期間と登録料の納付を経て登録となる。WIPOの統計では登録所の公称の登録所要日数は90日。権利は出願日から発生する(存続期間は出願日起算) |
注意すべきは、拒絶理由通知への応答期限(2か月)と異議に対する答弁期限(2か月)を徒過すると、いずれも出願を取り下げまたは放棄したものとみなされる点です。登録官は第38条第2項により期間経過後であっても期間延長を認める裁量を持っていますが、WIPOの加盟国情報は異議申立期間を「延長不可」、委任状を「暫定拒絶への応答期限後は提出不可」としており、延長に頼らない期限管理が必要です。また、2001年の規則は標章の表示を「印刷ブロックの提出」を求めるなど紙ベースの手続を前提としており、手数料も「現金または現地銀行の銀行手形」で納付するため、日本からの直接出願は現地代理人の立替えを通じた納付になります。
5. 費用の目安:公的手数料1区分1,000ニュルタム、登録料・更新料、代理人費用、マドプロ補足手数料100スイスフラン、為替
公的手数料は、産業・商業・雇用省のウェブサイトに掲載された商標手数料表(Schedule I)に定められています。出願手数料は1区分1,000ニュルタムで、審査マニュアルは「45区分を指定すれば45,000ニュルタム」と例示しています。本記事では、ブータン王立通貨庁の2026年11月3日のレート(100円=59.15〜60.80ニュルタム)に基づき1,000ニュルタム≒1,700円で換算しました。ニュルタムはインド・ルピーと等価で固定されているため、欧州中央銀行の同日のレート(1インド・ルピー≒1.67円)とも整合します。
| 項目(様式・根拠規則) | 公的手数料(ニュルタム) | 円換算の目安 |
|---|---|---|
| 商標登録出願(TM Form 7、規則第37条) | 1区分1,000(区分数を乗じる) | 約1,700円/区分 |
| 追加の標章表示(TM Form 7A)・委任状(TM Form 16)・登録証・更新証明書 | 無料 | — |
| 聴聞の請求(TM Form 8、規則第44条第3項・第57条)/決定理由書の請求(TM Form 9、規則第45条) | 各100 | 約170円 |
| 異議申立て(TM Form 10、規則第47条第1項)/答弁書(TM Form 11、規則第47条第2項・第51条第2項) | 各500 | 約850円 |
| 登録料(TM Form 12、規則第48条第3項) | 1,000(Country Indexは1商標当たりとする) | 約1,700円 |
| 更新(TM Form 13、規則第49条) | 1,000(猶予期間内の納付は割増200) | 約1,700円(猶予期間は約2,000円) |
| 無効請求・不使用による削除請求(TM Form 14、規則第51条第1項) | 1,000 | 約1,700円 |
| 名義変更の記録(TM Form 15、規則第52条第1項)/ライセンシーの記録(TM Form 20、規則第59条) | 各1,000 | 約1,700円 |
| 登録簿の閲覧(1時間ごと)/登録簿の認証謄本/誤記の訂正(TM Form 17・18、規則第55〜56条) | 各500 | 約850円 |
| 期間延長の請求(TM Form 19、規則第56条第3項) | 1か月(またはその端数)ごとに200 | 約340円 |
| 産業財産代理人の登録申請(TM Form 21、規則第60条) | 50 | 約85円 |
| マドプロ指定(ブータン分の補足手数料。個別手数料の宣言なし) | 100スイスフラン(3区分を超える区分ごとの追加手数料100スイスフランは指定国全体で課される) | 約19,300円 |
直接出願で1区分の商標を登録まで進めた場合の公的手数料は、出願1,000+登録料1,000の2,000ニュルタム(約3,400円)にすぎず、これに現地代理人の出願・登録料納付・登録証取得の手数料と、翻字・翻訳の作成費用が加わります。代理人費用の公表された目安はなく、現地事務所や国際的な商標登録サービスの料金は数百米ドル台が中心です。マドリッド経由では、基本手数料653スイスフラン(色彩商標は903スイスフラン)と3区分を超える区分ごとの追加手数料100スイスフランに、ブータン分の補足手数料100スイスフランが加わります(WIPOの手数料表、2026年11月時点)。ブータンはマドリッド協定と議定書の双方に加盟していますが、日本は議定書のみの加盟国のため、日本を本国とする指定には議定書が適用され、補足手数料が課されます。更新時もブータン分は補足手数料100スイスフランです。
手数料表の読み方と納付方法の注意
手数料表は「Schedule I」として様式ごとの金額を列挙しており、登録料(TM Form 12)が区分ごとか商標ごとかを明示していません。Country Indexは「登録料は1商標1,000ニュルタム」としていますが、本記事ではこの点を未確定として扱います。商標公報の告示によれば、手数料は現金または現地銀行を支払人とする銀行手形で産業財産登録官宛てに納付し、現金は当面ティンプーの地域通商産業事務所で「産業財産規程管理手数料(FAIPR)」の科目で受け付けるとされています。海外からの送金による納付手段は公表されておらず、日本からの直接出願では現地代理人の立替払いが前提になります。手数料表には「様式1〜6(特許)の手数料は別途公表」とあり、2023年3月に省のウェブサイトに掲載された版以降の改定は確認できませんでした。
6. 拒絶理由・異議申立て・不服申立て:応答2か月と聴聞、理由書の請求1か月、異議3か月と答弁2か月、裁判所への不服申立て2か月
実体審査で登録要件を満たさないと判断されると、登録官はすべての関連事項を記載した拒絶理由を書面で通知し、出願人に補正、意見書の提出、または聴聞の申請を求めます。応答期限は通知の日から2か月で、期限内に応じなければ出願を取り下げたものとみなされます(規則第44条第1項)。審査マニュアルによれば、審査官は絶対的理由と相対的理由を一括した審査報告書を発行し、先行商標との抵触がある場合は登録所のデータベースから抽出した検索報告書を添付します。応答では、識別力の獲得を示す使用の証拠(使用期間・規模、広告、認知度)、先行権利者の同意書(写しで可)、記述的部分のディスクレーマー、商品・役務の限定などが有効です。登録官が補正・条件・ディスクレーマー・限定を付して受理する決定をした場合、出願人は2か月以内に聴聞の申請か意見書の提出で異議を述べることができ、受け入れる場合はその旨を通知して願書を補正します(規則第44条第2項)。聴聞の請求はTM Form 8と手数料100ニュルタムで行い、登録官は少なくとも1か月前に期日を通知します。産業財産法第39条は、登録官が裁量権を当事者に不利に行使する前に聴聞の機会を与えることを義務づけています。
聴聞または意見書の検討を経て出願が拒絶された場合、出願人は通知から1か月以内にTM Form 9と手数料100ニュルタムで決定の理由と判断資料を記載した理由書を請求できます(規則第45条)。登録官のあらゆる決定(登録、拒絶、異議・無効の決定など)に対しては、産業財産法第40条により利害関係人が決定の日から2か月以内に裁判所に不服を申し立てることができます。法は「管轄権を有する裁判所」としか定めておらず、知的財産専門の裁判所や審判部はありません。ブータンの裁判所はドゥンカク裁判所・県(ゾンカク)裁判所、高等裁判所、最高裁判所の階層で構成されており、ティンプーの県裁判所が第一審になると考えられますが、産業財産法に基づく不服申立ての公表された裁判例は確認できませんでした。WIPOの加盟国情報では、マドリッド経由の指定については暫定拒絶への応答が2か月、登録所の決定に対する不服申立て(appeal)も決定から2か月で、「登録所に提出する」と記載されています。
| 手続 | 期限・流れ(産業財産法・産業財産規則・WIPO加盟国情報) |
|---|---|
| 拒絶理由通知への応答 | 通知の日から2か月以内に補正・意見書・聴聞申請。応答なしで取下げ擬制(規則第44条第1項)。延長はTM Form 19(1か月200ニュルタム)で請求でき、Country Indexは1か月の延長が可能とする |
| 条件付き受理への異議 | 通知から2か月以内に聴聞申請または意見書。応答なしで取下げ擬制(規則第44条第2項) |
| 聴聞 | TM Form 8、100ニュルタム。登録官は1か月以上前に期日を通知(規則第44条第3項、第57条) |
| 決定理由書の請求 | 拒絶の通知から1か月以内、TM Form 9、100ニュルタム(規則第45条)。裁判所への不服申立ての準備に用いる |
| 異議申立て | 公報での公開日から3か月以内。利害関係人が第24条第1号・第25条第3項の要件不充足を理由に、TM Form 10と500ニュルタム、証拠を添えて提出(法第27条第2項(b)、規則第47条第1項)。延長不可。マドリッド経由の指定にも同じ3か月の異議期間が適用され、異議があれば登録所がWIPOに異議に基づく暫定拒絶を通報する |
| 答弁書 | 異議書の送付から2か月以内、TM Form 11と500ニュルタム、証拠。提出なしで放棄擬制(法第27条第2項(c)、規則第47条第2項)。マドリッド経由では現地代理人を通じて提出し、WIPO加盟国情報は異議に基づく暫定拒絶についてTM Form 19と200ニュルタムでの期間延長を認める |
| 異議の決定 | 登録官が答弁書の写しを異議申立人に送付し、当事者の希望により聴聞を行い、登録の可否を決定(法第27条第2項(d))。一部の商品・役務のみの異議には部分拒絶 |
| 裁判所への不服申立て | 登録官の決定の日から2か月以内に利害関係人が裁判所へ(法第40条)。登録・拒絶・異議・無効・削除のいずれの決定も対象 |
| 期間の延長・徒過の救済 | 登録官は書面の請求により、期間経過後であっても期間を延長できる(法第38条第2項、規則第56条第3項)。ただしWIPO加盟国情報は異議期間を延長不可、委任状の応答期限後の提出を不可とするため、延長を前提にしない |
異議申立ての実務上の注意
異議の理由は第24条第1号(可視的な標識であること)と第25条第3項(識別力、公序良俗、誤認、国章等、周知商標・商号、先行登録・先願商標)に限られ、第三者による情報提供の制度はありません。異議を申し立てる側も、ブータンに居所・営業所がなければ現地の法律実務家または登録代理人を通じて手続をする必要があります(第35条)。公報は英語で隔月に発行されますが、月によって掲載件数は数十件から百件超と幅があり、公報の掲載から3か月の期限は延長できないため、代理人またはウォッチングサービスによる定期監視が実務の要になります。異議申立人が勝訴しても、出願人は2か月以内に裁判所へ不服を申し立てることができます。
7. 登録・存続期間・更新:出願日から10年、満了前6か月の更新、猶予6か月と割増、更新証明書、公報への掲載
商標の登録は出願日から10年間有効で、所定の更新料を納めれば10年ごとに何度でも更新できます(産業財産法第28条第4項(a)(b))。更新の請求は登録の満了前6か月の期間内にTM Form 13により登録名義人または代理人が署名して行い、更新料1,000ニュルタムを納付します(規則第49条第1項・第2項)。満了日を過ぎても6か月の猶予期間内であれば、割増金200ニュルタムを加えて納付することで更新できます(法第28条第4項(c)、手数料表)。更新は登録簿に記録されて公報に掲載され、登録官は登録番号、更新日と満了日、所有者、区分ごとの商品・役務を記載した更新証明書(TM Form 13A、手数料不要)を交付します(規則第49条第3項・第4項)。更新時に使用の証拠や使用宣誓書を提出する必要はなく、WIPOの加盟国情報も「使用の証明は求められない」としています。マドリッド経由の指定については、国際登録の更新をWIPOに対して行えば足り、ブータン分は補足手数料100スイスフランです。審査マニュアルによれば、国際登録の更新はWIPOからの通知が登録所のIPASに自動的に取り込まれます。
登録の効果として、登録名義人以外の者が登録商標をその指定商品・役務について使用するには名義人の同意が必要となり(第28条第1項)、名義人は同意なく商標を使用する者、または侵害が生じるおそれのある行為をする者に対して訴訟を提起できます。この権利は登録商標に類似する標識の使用、および登録された商品・役務に類似する商品・役務についての使用にも、公衆に混同が生じうる限り及びます(第28条第2項)。他方、登録名義人またはその同意を得た者がブータン国内で市場に置いた商品については権利が及びません(第28条第3項)。商標公報の第4部には登録された商標が「規則第51条および法第29条に基づく無効請求のため」に掲載され、第6部には更新された登録が掲載されます。登録証や登録簿の認証謄本は、権利行使や税関への申請の際の疎明資料として代理人を通じて取得します(TM Form 17、500ニュルタム)。
8. 無効・取消:登録官または裁判所への無効請求(期限なし・遡及効)、3年の不使用による削除、団体標章の無効
無効(invalidation)は、利害関係を害された者(aggrieved person)が裁判所または登録官に請求し、第24条第1号または第25条第3項の要件(識別力、公序良俗、誤認、国章等、周知商標・商号との抵触、先行登録・先願商標との抵触)のいずれかが満たされていないことを請求人が立証すれば、登録は無効とされます(産業財産法第29条第1項)。請求の期限は定められておらず、無効は登録日に遡って効力を生じ、記録のうえ公報に掲載されます。登録官に対する請求はTM Form 14に手数料1,000ニュルタムと証拠を添えて行い、登録官は請求書の写しを登録名義人と記録されたライセンシーに送付します。名義人は受領から2か月以内にTM Form 11で答弁書と証拠を提出し、登録官は当事者の求めに応じて聴聞を行って決定します(規則第51条)。WIPOの加盟国情報によれば、マドリッド経由の指定について名義人が応答しなければ、不服申立てや再審査の機会なく無効とされ、現地代理人がいない場合は議定書共通規則第23条の2に基づきWIPO経由で名義人に通知されます。悪意の出願は審査マニュアルとWIPO加盟国情報で絶対的理由として扱われているため、冒認登録に対しても無効請求が可能と考えられます。
不使用による削除(removal on grounds of non-use)は、請求の1か月前までの時点で、登録後に登録名義人またはライセンシーによる使用が3年以上継続して行われていない場合に、利害関係人の請求により裁判所または登録官が登録簿から標章を削除する制度です(第29条第2項)。指定商品・役務の一部のみを対象とする削除も可能です。ただし、特別の事情により使用が妨げられ、かつ当該商品・役務について使用しない意思や放棄の意思がなかったことが示されれば削除されません。3年という不使用期間は、周辺国(インド5年、ネパール1年、バングラデシュ5年)と比べても短い部類であり、登録後に使用を開始していない商標は早期に削除請求の対象になります。団体標章については、第29条第1項の理由に加えて、登録名義人のみが使用している場合、使用規則に反して使用または使用を許諾している場合、商品・役務の出所その他の共通の特徴について公衆や取引界を欺くおそれのある使用の場合にも無効とされます(第30条第3項)。
WIPOの加盟国情報と産業財産法の食い違い
WIPOのマドリッド制度加盟国情報(2026年7月15日更新)は、ブータンについて「国内法は不使用による登録取消を定めていない」「不使用以外の理由による取消も定めていない」と記載する一方、「無効」の項では「不使用を理由とし、または第24条第1号・第25条第3項が満たされない場合に無効にできる」とし、第29条第2項の3年の不使用削除の条文を引用しています。これは登録所が「取消(cancellation)」と「無効・削除(invalidation / removal)」を用語として区別して回答したものと考えられ、産業財産法第29条第2項の3年の不使用削除は有効な制度として扱うべきです。本記事では法文を優先しつつ、この点を未確定事項として記しておきます。実際に削除請求が認容された事例は公表資料で確認できませんでした。
9. マドプロ指定の実務:2000年加盟、宣言なし、補足手数料100スイスフラン、12か月の拒絶通報、暫定拒絶への応答2か月、直接出願との比較
ブータンは2000年5月4日にマドリッド協定(ストックホルム改正)とマドリッド議定書の双方に加入し、2000年8月4日に発効しました。アジアでは早期の加盟国で、2018年の国家知的財産政策は「加盟後の18年間でブータンを指定する国際出願が大きく増えた」と述べ、2025年9月の知的財産局通知では設立以来の出願23,697件のうち17,242件(73%)がマドリッド経由でした。日本の出願人は、日本特許庁への基礎出願または基礎登録に基づく国際出願でブータンを指定できます。ブータンは議定書に関する宣言を一切しておらず、拒絶通報期間は原則どおり国際登録の通知から12か月、手数料は個別手数料ではなく補足手数料100スイスフランです。ライセンス記録の効力に関する宣言(共通規則第20条の2第6項(b))もないため、国際登録簿へのライセンスの記録はブータンでも効力を持つことになりますが、第34条第5項の国内記録との関係は明確でありません。審査マニュアル第10章は、WIPOから毎週届く国際登録・事後指定の電子通知をIPASに取り込み、国内出願と同一の基準で審査し、拒絶理由があれば12か月以内に職権または異議に基づく暫定拒絶を通報し、拒絶理由がなければ保護認容声明を送付し、商標公報に3か月の異議期間を設けて公開すると定めています。暫定拒絶を12か月以内に通報しなければ、登録所は拒絶の権利を失い、標章はブータンで登録されたものとみなされます。
WIPOのマドリッド制度加盟国情報(2026年7月15日更新)によれば、ブータンを指定する際の留意点は次のとおりです。標章の英訳の記載、名義人が法人の場合は法的性質、自然人の場合は国籍の表示、色彩商標の色彩の主張が求められます。指定商品・役務はニース分類のアルファベット順一覧の用語のみが受け入れられ、類見出しや「衣類」のような一般的な用語は認められないため、第25類なら「シャツ、ズボン、靴下」のように具体的に記載する必要があります。暫定拒絶への応答と異議への反論は通報の発行日から2か月以内に、ブータンの現地代理人を通じて英語で行い、期限後の委任状の提出は認められません。応答がなければ指定は全商品・役務について放棄されたものとみなされます。登録所の決定に対する不服申立ては決定から2か月以内で、異議に基づく暫定拒絶については「登録所に対して」TM Form 8で行うとされています。登録所は中間ステータス(共通規則第18条の2)の通知は行わず、国際登録ごとに保護認容声明を送付し、現地の保護証明書は登録所に直接請求します。分割・併合、代替(replacement)、変更(transformation)については国内法に規定がありません。
| 比較項目 | マドプロ指定(議定書) | 直接出願(産業財産法・規則) |
|---|---|---|
| 公的費用 | 基本手数料653スイスフラン(色彩903)+3区分を超える区分ごとに100スイスフラン+ブータン分の補足手数料100スイスフラン(約19,300円)。更新も補足手数料100スイスフラン | 出願1区分1,000ニュルタム+登録料1,000ニュルタム(1区分で約3,400円)+現地代理人費用。更新1,000ニュルタム |
| 現地代理人 | 出願時は不要。暫定拒絶・異議・無効・名義変更・保護証明書の請求などブータンでの手続には現地代理人が必要(委任状は写し可、署名と社印) | ブータンに居所・営業所のない出願人は出願時から法律実務家または登録代理人が必要(法第35条)。委任状は出願から2か月以内に提出 |
| 審査と拒絶の期限 | 国内出願と同一基準。暫定拒絶の通報は国際登録の通知から12か月以内。応答は通報から2か月(現地代理人経由、英語) | 拒絶理由通知への応答は通知から2か月(聴聞申請可)。応答なしで取下げ擬制 |
| 公開と異議 | 登録所が商標公報に掲載し、公開日から3か月の異議期間。異議があれば異議に基づく暫定拒絶をWIPOに通報。反論は2か月(TM Form 19で延長可) | 受理後に商標公報で公開、公開日から3か月の異議(延長不可)、答弁2か月 |
| 登録の証明 | 保護認容声明(国際登録ごとに送付)。現地の保護証明書は登録所に請求 | 登録証(TM Form 12A)を交付。登録簿の認証謄本は500ニュルタム |
| 存続・更新・使用 | 国際登録日から10年、WIPOで一括更新。使用証明は不要。不使用3年の削除請求(法第29条第2項)の対象 | 出願日から10年、満了前6か月に更新、猶予6か月(割増200ニュルタム)。不使用3年の削除請求の対象 |
| 基礎出願への依存 | 国際登録日から5年間は日本の基礎出願・登録の拒絶・取消の影響を受ける(セントラルアタック)。ブータン国内法に変更(transformation)の規定がない | 依存なし |
| 向いているケース | インド・ネパール・バングラデシュなど周辺国と同時に出願する場合、区分数が多い場合、出願時の現地代理人費用を抑えたい場合 | 国内登録証を確実に得たい場合、商標がブータン向けに固有(ゾンカ語表記など)の場合、基礎出願が不安定な場合 |
マドプロ指定で注意すべき点
ブータンの登録所は類見出しや包括的な商品名を受け付けないため、日本の基礎出願で「被服」「菓子」のような包括表示を用いている場合、国際出願の指定商品をニース分類のアルファベット順一覧の用語に書き直しておかないと、ブータンでは暫定拒絶の対象になります。暫定拒絶への応答は2か月と短く、現地代理人の選任と委任状の準備を通報受領後に始めると間に合わないおそれがあるため、ブータンを指定した時点で代理人候補を決めておくのが安全です。また、WIPOの加盟国情報に記載された登録所のウェブサイト(ipbhutan.gov.bt)と担当者のメールアドレス(@moea.gov.bt)は旧経済省時代のもので、様式へのリンクは機能していません。現在の様式は知的財産局の新サイト(domciip.gov.bt)に掲載されています。
10. 使用・譲渡・ライセンス:移転の記録、品質管理条項のないライセンスの無効、消尽と並行輸入、商号、団体標章
商標の登録または出願の所有権の変更(譲渡・承継)は書面で行い、利害関係人の請求により登録官が記録し、出願を除いて公報に掲載します。記録されるまで第三者に対抗できません(産業財産法第34条第1項)。記録の請求はTM Form 15と手数料1,000ニュルタムで行い、公報には対象の権利、出願日・優先日・登録日、旧所有者と新所有者、変更の性質が掲載されます(規則第52条)。商標の譲渡は、商品・役務の性質、出所、製法、特性、用途について欺瞞や混同を生じるおそれがある場合には無効となり(第34条第4項)、団体標章の所有権の変更には大臣の事前承認が必要です(第34条第2項)。商号の所有権の変更は、その商号で識別される企業またはその一部の移転とともに書面で行わなければなりません(第34条第3項)。WIPOの加盟国情報によれば、マドリッド経由の指定についても登録所は名義変更の請求を審査しますが、「効力を有しない」旨の宣言をWIPOに送ることはありません。
ライセンスについては、商標の登録または出願に関するライセンス契約はライセンサーがライセンシーの商品・役務の品質を有効に管理することを定めなければならず、品質管理の定めがないか、管理が実際に行われていない場合、ライセンス契約は無効とされます(第31条第1項)。団体標章の登録・出願はライセンスの対象にできません(第31条第2項)。ライセンス契約は登録官に提出され、登録官は内容を秘密に保ちつつ記録し、その参照を公報に掲載します。記録されるまで第三者に対抗できない(第34条第5項)ため、ライセンシーの記録(TM Form 20、1,000ニュルタム、規則第59条)を怠ると、ライセンシーの使用を不使用削除の抗弁に用いる際に争いが生じるおそれがあります。記録されたライセンシーには無効請求の写しが送付され(規則第51条第2項)、権利者が訴訟提起を拒否または怠った場合にはライセンシー自らが差止めなどを求めることができます(第41条第2項(a))。
権利の消尽は第28条第3項に規定され、登録名義人またはその同意を得た者がブータン国内で市場に置いた商品には商標権が及びません。文言上は国内消尽であり、外国で正規に販売された商品の並行輸入を商標権で差し止められるかは条文からは判断できませんが、ブータンの消費財の大半がインドからの輸入であり、インドとは自由貿易の取決めで国境管理が緩やかであることから、インド市場向け正規品の流入を商標権で止めることは実務上困難と考えるべきです。商号は登録の有無にかかわらず保護され(第32条)、他人の商号を商標として出願する行為は第25条第3項第5号(周知商号)または第33条(不正競争)の問題になります。団体標章の使用規則の変更は登録官に届け出て記録されるまで効力を生じず(規則第50条)、規則に反する使用や所有者のみの使用は無効理由になります(第30条第3項)。
11. 侵害への救済:第41条の差止めと損害賠償、故意侵害の刑事罰、刑法の詐欺的行為、裁判所、執行の実情
産業財産法第41条第1項は、権利者の同意なく第28条の行為(登録商標またはこれに類似する標識の、指定商品・役務またはこれに類似する商品・役務についての使用で混同のおそれがあるもの)をブータン国内で行うことを侵害と定義します。権利者(権利者が訴訟を拒否または怠った場合はライセンシー)の請求により、裁判所は侵害または侵害のおそれを防止する差止命令、損害賠償、その他一般法上の救済を命じることができ、商号の不正使用(第32条第2項)と不正競争行為(第33条)についても同じ救済が認められます(第41条第2項(a))。不正競争については、権限ある当局や生産者・製造業者・商人の団体も救済を求めることができます(同項(b))。第41条第3項は、侵害または違法行為を故意に行った者を「国の法律に従った拘禁刑、または100万ニュルタム(約170万円)以下の罰金、またはその併科」で処罰すると定めており、商標権侵害に刑事罰が用意されています。登録名義人は、公開後登録前の期間についても登録された場合と同じ権利を主張できますが、被告は当時その標章が有効に登録され得なかったことを抗弁として主張できます(第27条第2項(e))。
2004年刑法は第307条で「偽造医薬品、偽造通貨、硬貨または銀行券を故意に製造・流通・販売する」偽造罪(第4級重罪:3年以上5年未満の拘禁刑)を定めていますが、商標の偽造そのものは対象ではありません。第309条の詐欺的行為(deceptive practice)は「物品を原物または真正品のように見せるために製作または改変する」行為や、虚偽の表示で財産を取得する行為を含み、軽罪(1か月以上1年未満)、公衆衛生に危険な飲食物の製造・販売を伴う場合は中罪(1年以上3年未満)とされており、模倣品の製造・販売に適用される余地があります。産業財産法には差止め・損害賠償以外の民事救済(侵害品の廃棄、証拠保全、仮処分など)の明文がなく、これらは「一般法上の救済」として民事訴訟法と裁判所の裁量に委ねられます。裁判所は「管轄権を有する裁判所」とのみ定められ、知的財産専門部はありません。
| 手段 | 根拠・内容 | 実務上の評価 |
|---|---|---|
| 警告書・交渉 | 登録証・登録簿謄本を示して現地代理人から送付 | 市場が小さく事業者が特定しやすいため、まず試みる手段。知的財産局への相談も可能 |
| 民事訴訟 | 法第41条第2項:差止命令、損害賠償、一般法上の救済。商号・不正競争も対象。ライセンシーの訴権 | 公表された商標の裁判例は確認できない。仮処分・廃棄の明文なし。県裁判所→高等裁判所→最高裁判所 |
| 刑事手続 | 法第41条第3項:故意の侵害は拘禁刑または100万ニュルタム以下の罰金(併科可)。刑法第309条の詐欺的行為 | 米国国務省は「過去10年に公表された知財の訴追事例はない」とする。王立ブータン警察・検察への告訴が前提 |
| 登録官の手続 | 公開から3か月の異議、無効請求(期限なし)、不使用3年の削除請求(第29条) | 冒認出願・冒認登録への対応の中心。登録官の決定には2か月以内に裁判所へ不服申立て |
| 税関 | 2017年関税法第27条の制限・禁止権限、関税規則付属書Vの制限品目(知的財産権:知的財産局、著作権法) | 商標専用の録記・差止手続はない。押収事例はあるが統計未公表(第12章) |
| インド側での対応 | ブータン市場の商品の多くがインド経由。インドの商標登録と裁判所・税関での対応 | 2026年にはデリー高等裁判所がブータンの醸造会社によるインド商標の侵害を仮に差し止めた例があり、インドでの権利確保が実効性を左右する |
執行の実情:裁判例と統計がほぼ存在しない
米国国務省の2025年投資環境報告は、ブータンの知的財産権の執行について「インフラ、法的認識、資源の制約から課題がある」「高価値の知財を伴う商業活動が限られるため侵害事件は比較的少ないが、電子機器・衣料・高級品を中心に模倣品市場は存在する」「過去10年に裁判所で訴追された大きな知財侵害の公表事例はない」「税関は国境を越えて密輸された模倣品を押収しているが、公表された統計はない」と記しています。ブータンは米国通商代表部のスペシャル301条報告書にも悪質市場報告書にも掲載されていません。2001年法に基づく商標訴訟の判決は本記事の調査では確認できず、警告書と登録官の手続、インド側での対応を組み合わせた実務が中心になります。
12. 税関での水際措置:2017年関税法第27条、関税規則付属書Vの制限品目、録記制度の不存在、インド国境の実情
ブータンの税関は財務省歳入関税局(Department of Revenue and Customs)が所管し、根拠法は2017年関税法(Customs Act of Bhutan 2017)と2017年関税規則、関税率については2021年関税法(Customs Duty Act 2021)です。2017年関税法第5章第27条は、政府が国益を守るために命令・告示、他の現行法、または議会が批准した国際条約に従って物品の輸出入を制限または禁止できると定め、関税規則第114条と付属書Vが制限品目と禁止品目を列挙しています。付属書Vの制限品目の第19項には「知的財産権(Intellectual Property Right)」が掲げられ、所管機関は知的財産局、根拠法令は「2001年著作権法」とされています。つまり、知的財産に関わる物品は所管機関の許可を要する制限品目として扱われる枠組みはあるものの、産業財産法や商標への言及はなく、権利者が商標を税関に録記して疑義貨物の通関を保留させる手続(録記・差止申請・担保・鑑定)は存在しません。産業財産法にも国境措置の規定はありません。
実態として、ブータンの輸入の大半はインドとの陸路国境(プンツォリン、ゲレフ、サムドゥプ・ジョンカルなど)を通り、インドとの間では自由貿易の取決めにより検査が簡素化されています。米国国務省の報告は「税関当局は、特に国境を越えて密輸された模倣品を押収してきた」としつつ、公表された統計も模倣品押収の公開登録簿もないと指摘しています。したがって、ブータンでの水際対策は、(1)インドで商標を登録しインド税関の知的財産権録記制度(2007年の知的財産権(輸入品)執行規則)を利用して上流で止める、(2)ブータンでは登録証を添えて歳入関税局と知的財産局に模倣品の情報を提供し、関税法第27条と付属書Vの枠組みでの対応を求める、(3)市場での発見後は産業財産法第41条の民事・刑事手続に移行する、という組合せになります。WTO加盟交渉の再開に伴い、TRIPS協定第51条以下の国境措置を導入する法改正が行われる可能性があるため、関税法と産業財産法の改正動向を継続的に確認する必要があります。
税関手続についての未確認事項
本記事は、歳入関税局が公開する2017年関税法と2017年関税規則の英文を確認して記載していますが、付属書Vの「知的財産権」の項目が実際にどのような許可手続で運用されているか、商標権侵害品を対象とする職権差止めの通達や内部指針があるかは公開資料で確認できませんでした。2021年関税法(Customs Duty Act)は関税率に関する法律で、国境措置の規定は含まれていません。実際に水際対応を検討する場合は、現地代理人を通じて歳入関税局に確認することをお勧めします。
13. 日本企業の出願戦略と実務ポイント:インドとの一体管理、マドプロか直接出願か、翻字の設計、区分設計、公報監視、使用証拠、3年の不使用対策
- インド市場と一体で管理する。ブータンの消費財の大半はインドから流入し、通貨もインド・ルピーと等価です。インドで事業を行う日本企業は、インドの商標登録とブータンの登録をセットで考え、ブータンでの模倣品対策はインド側の登録・税関録記・裁判手続を上流に置くのが現実的です。周辺国の制度はインド、ネパール、バングラデシュの各記事をご覧ください。
- マドプロ指定を基本に、必要に応じて直接出願を併用する。ブータン分の補足手数料は100スイスフランで、インド・ネパールなどと同時に指定できます。直接出願は公的手数料こそ1区分1,000ニュルタムと安いものの、出願時から現地代理人が必要で、手数料の納付も現金・銀行手形に限られます。基礎出願が不安定な場合やブータン固有の表記を登録する場合は直接出願を選びます。
- 指定商品・役務はニース分類のアルファベット順一覧の用語で具体的に記載する。登録所は類見出しも「衣類」のような一般的な用語も受け付けません。日本の基礎出願で包括表示を用いている場合は、国際出願の指定商品を書き直すか、ブータン向けに限定を付けます。
- 英語以外の文字を含む商標には翻字・翻訳を添え、ブータンでの呼称を設計する。規則第39条により各語の翻字と翻訳、言語名の記載が必要です。日本語やローマ字の造語商標は意味がないことを説明し、ゾンカ語での表記を使うなら別途出願を検討します。英訳の記載はマドリッド経由の指定にも求められます。
- 公開から3か月の異議期間を監視する。公報は隔月刊でPDFとして公開され、異議期間は延長できません。ウォッチングサービスか現地代理人による定期監視を契約し、インドの出願人による類似出願を早期に発見します。
- 先行権利者の同意書を交渉の選択肢に入れる。WIPOの加盟国情報によれば、先行権利者の同意書(写しで可)があれば商標と商品が同一でも拒絶が自動的に解消されます。先行登録が存在する場合、無効・不使用削除の請求と並行して同意書の取得を検討します。
- 登録後3年以内に使用を開始し、使用証拠を保存する。不使用削除の期間は3年と短く、請求の1か月前までの継続的不使用が基準です。ブータンでの販売実績、代理店契約、請求書、広告、インドからの流通記録を保存し、ライセンシーの使用に依拠するならライセンシーを登録簿に記録します。
- ライセンス契約には品質管理条項を必ず入れ、登録官に記録する。品質管理の定めがないライセンス契約は無効であり、記録されるまで第三者に対抗できません。譲渡も同様に記録が対抗要件です。
- 委任状と期限管理を先回りする。委任状は公証不要で写しでよいものの、出願から2か月、マドリッド経由では暫定拒絶の応答期限内に提出しなければなりません。拒絶理由への応答・異議への答弁は2か月で、徒過すれば取下げ・放棄擬制です。
- 周知商標の資料を整えておく。第25条第3項第5号は未登録の周知商標(パリ条約同盟国の国民のもの)も保護します。ブータンでの売上や広告、インドを含む周辺国での知名度、国際的な登録状況の資料を用意しておくと、冒認出願への異議・無効請求で役立ちます。
- 執行は現実的な手段から組み立てる。公表された裁判例はなく、刑事訴追の実績も報告されていません。警告書、登録官の異議・無効手続、知的財産局と歳入関税局への情報提供、インド側での対応を優先し、民事訴訟は費用対効果を見極めます。
- 法改正の動向を確認する。2001年法は改正されておらず、WTO加盟交渉が2025〜2026年に再開されたため、TRIPS協定対応の改正(国境措置、証明標章、非可視的な標章、執行規定)が将来行われる可能性があります。出願・更新の際に知的財産局の最新の告示を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ブータンへの商標出願はマドプロでできますか?費用はどのくらいですか?
できます。ブータンは2000年8月4日にマドリッド協定と議定書の双方に加盟しており、日本の基礎出願・基礎登録に基づく国際出願でブータンを指定できます。個別手数料の宣言をしていないため、ブータン分の費用は補足手数料100スイスフラン(約19,300円)です。基本手数料653スイスフラン(色彩商標は903スイスフラン)と、3区分を超える区分ごとの追加手数料100スイスフランは指定国全体で課されます。直接出願の公的手数料は出願1区分1,000ニュルタム(約1,700円)と登録料1,000ニュルタムで、これに現地代理人の費用が加わります(第5章・第9章)。
Q2. 審査では先行商標との類似も判断されますか?異議はいつまでに申し立てますか?
判断されます。産業財産法第27条第1項により、登録官は識別力や公序良俗などの絶対的理由に加えて、第25条第3項第5号(周知商標・周知商号)と第6号(登録簿上の先行商標、先の出願日・優先日を持つ商標)との抵触を審査し、審査報告書に検索報告書を添付します。受理された出願は商標公報で公開され、利害関係人は公開日から3か月以内にTM Form 10と手数料500ニュルタムで異議を申し立てます。この期間は延長できません。出願人は異議書の送付から2か月以内に答弁書を提出しなければ、出願を放棄したものとみなされます(第4章・第6章)。
Q3. 日本語やローマ字の商標はそのまま出願できますか?
出願できます。願書は英語で作成し、英語以外の文字を含む標章には、各語の翻字(発音をローマ字で示したもの)と翻訳、その語が属する言語名を記載します(規則第39条)。マドリッド経由の指定でも標章の英訳の記載が求められます。造語であれば意味を持たないことを記載し、翻字は商標の同一性の判断に影響するため社内で統一してください。現地の消費者向けにゾンカ語の表記を使う場合は、その表記を別途出願することを検討します(第4章・第13章)。
Q4. 現地代理人や委任状の公証は必要ですか?
ブータンに通常の居所も主たる営業所もない出願人は、ブータンに居住して業務を行う法律実務家または登録された産業財産代理人を通じて手続をしなければなりません(産業財産法第35条)。知的財産局のウェブサイトに代理人名簿が掲載されており、2025年12月のガイドラインで新たな代理人の認定が始まっています。委任状はTM Form 16により出願人が署名したもので足り、手数料は不要、公証・領事認証も不要で写しでもよいとされていますが、会社の署名と社印が求められます。出願時に添付しない場合は出願から2か月以内に提出します。マドリッド経由の指定では、出願時に現地代理人は不要ですが、暫定拒絶への応答や異議への反論には現地代理人が必要です(第4章・第9章)。
Q5. 存続期間・更新・不使用取消の要件を教えてください。
存続期間は出願日から10年で、10年ごとに更新できます(第28条第4項)。更新は満了前6か月以内にTM Form 13と更新料1,000ニュルタムで請求し、満了後6か月の猶予期間内は割増金200ニュルタムを加えて納付すれば更新できます。更新時の使用証明は不要です。他方、登録後に登録名義人またはライセンシーによる使用が3年以上継続して行われていない場合、利害関係人の請求により登録官または裁判所が登録簿から削除できます(第29条第2項)。特別の事情により使用できず、放棄の意思がなかったことを示せば削除されません。登録要件を欠く登録の無効請求には期限がなく、無効は登録日に遡ります(第7章・第8章)。
Q6. 模倣品を見つけたらどうすればよいですか?税関で止められますか?
産業財産法第41条により、裁判所に差止命令と損害賠償を求めることができ、故意の侵害には拘禁刑または100万ニュルタム以下の罰金が定められています。ただし公表された裁判例はなく、米国国務省は過去10年に公表された知財の訴追事例がないと報告しています。実務では、登録証を添えた警告書、登録官に対する異議・無効・不使用削除の手続、知的財産局と歳入関税局への情報提供を先行させます。税関には商標を録記して通関を保留させる手続がなく、2017年関税規則の付属書Vが「知的財産権」を制限品目に掲げるにとどまるため、インド経由で流入する模倣品はインドでの商標登録と税関録記で上流で止めることが重要です(第11章・第12章)。
Q7. 制度の改正予定はありますか?電子出願はできますか?
2001年の産業財産法と産業財産規則は改正されていませんが、2018年の国家知的財産政策が法制度の見直しを掲げ、2025年6月にWTO加盟交渉の再開が決まり、2026年9月には加盟文書がWTO事務局に回付されました。加盟が実現すればTRIPS協定への対応として国境措置や執行規定を含む改正が見込まれます。運用面では、2023年に商標審査マニュアル、2025年に地理的表示規則と知的財産代理人ガイドラインが整備され、2025年9月には登録所のシステムがIPAS 4 Cloudに移行しました。電子出願は、本国官庁としての国際出願についてWIPOのMadrid e-Filingが2024年5月から使えるのみで、国内出願の電子出願システムは確認できませんでした(第1章・第4章)。
まとめ
ブータンの商標制度は、2001年産業財産法と2001年産業財産規則を根拠に、産業・商業・雇用省メディア・創造産業・知的財産局が絶対的理由と相対的理由を審査する登録主義・先願主義の制度です。公開日から3か月の異議申立て、拒絶理由への2か月の応答、出願日から10年の存続期間と6か月の猶予、3年の不使用削除、期限のない無効請求が備わり、公的手数料は1区分1,000ニュルタム(約1,700円)、マドプロの補足手数料は100スイスフランと費用は極めて軽く、委任状の公証も不要です。2000年からマドリッド協定・議定書に加盟し、出願の7割がマドリッド経由で、2024年からはMadrid e-Filingも使えます。
他方、法律と規則が2001年から改正されていないこと、国内出願の電子出願がなく手数料の納付が現金・銀行手形に限られること、出願時から現地代理人が必要なこと、類見出しや包括的な商品名が認められないこと、不使用削除の期間が3年と短いこと、税関に商標の録記・差止手続がないこと、公表された裁判例や執行統計が存在しないこと、WTO加盟交渉の再開に伴う法改正の可能性が、この国で実務を行う際の注意点です。日本企業としては、インドでの権利確保と一体でブータンの登録を設計し、マドプロ指定を基本に指定商品を具体的に記載し、公報の監視と3か月の異議、使用証拠の保全とライセンスの記録、現地代理人の事前選定までを一連の運用として整えることが重要です。
周辺国の制度はインド、ネパール、バングラデシュ、中国の各記事を、各国の商標制度は世界の商標制度ガイドをご覧ください。
ブータンへの商標出願は弁理士にご相談ください
マドプロ指定と直接出願の使い分け、指定商品・役務のニース分類用語への書換え、翻字・翻訳の設計、現地代理人の手配と委任状、先行商標調査、公報監視と異議申立て、周知性の立証、譲渡・ライセンスの記録、更新・不使用対策、登録官・裁判所・税関での権利行使まで、ブータンでのブランド保護を一貫してサポートします。インド・ネパール・バングラデシュとの組合せもご提案します。
出典・参考文献
本記事は、以下の一次資料および専門家による解説を基に作成しています(いずれも2026年11月閲覧)。各項目に、本文のどの記述の根拠としたかを付記しています。産業財産法と産業財産規則の条文番号は、WIPO Lex掲載の英文(BT001・BT002)に基づきます。
法令(WIPO Lex・産業・商業・雇用省・日本特許庁)
- WIPO Lex「Industrial Property Act of the Kingdom of Bhutan, 2001」(ブータン、英文・ゾンカ語、BT001)/2001年7月13日の第79回国民議会での可決、第2条施行日、意匠部分の2009年5月1日施行、第24条定義、第25条登録による権利取得・詐称通用・不登録事由6項目、第26条出願と優先権、第27条審査・公開・異議・答弁・登録、第28条権利・消尽・10年・更新・猶予6か月、第29条無効と3年の不使用削除、第30条団体標章、第31条ライセンスの品質管理、第32条商号、第33条不正競争、第34条移転・ライセンスの記録、第35条代理人、第36条登録所、第37条登録簿と公報、第38条期間延長、第39条聴聞、第40条裁判所への不服申立て2か月、第41条侵害・差止め・損害賠償・刑事罰、第42条条約の優先、第44条定義の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/5211 - WIPO Lex「Industrial Property Rules, 2001」(ブータン、英文、BT002)/規則第1条の施行、第36条ニース分類、第37条Form 7と多区分、第38条標章の表示と追加表示3部、第39条翻字・翻訳、第40〜41条優先権書類、第42条取下げ、第43条出願日の要件、第44条拒絶理由への応答2か月と条件付き受理、第45条理由書の請求1か月、第46条公報での公開、第47条異議3か月と答弁2か月、第48条登録料と登録証、第49条更新と猶予、第50条団体標章、第51条無効・削除の手続、第52条名義変更、第53条委任状、第55〜56条閲覧・訂正・延長、第59条ライセンスの記録、第60条代理人の登録の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/5212 - 産業・商業・雇用省(MoICE)「Industrial Property Act of the Kingdom of Bhutan 2001(English Version)」(PDF)/産業財産法の政府公開版。条文の照合に使用。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2023/03/1.-Industrial-Property-Act-of-the-Kingdom-of-Bhutan-2001-English-Version.pdf - 産業・商業・雇用省「Industrial Property Rules 2001」(PDF)/産業財産規則の政府公開版。条文の照合に使用。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2023/03/3.-Industrial-Property-Rules-2001.pdf - 日本特許庁「ブータン産業財産法(日本語訳)」(PDF)/産業財産法の日本語訳。用語の訳出の参照。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/bhutan-sangyou.pdf - 日本特許庁「ブータン産業財産規則(日本語訳)」(PDF)/産業財産規則の日本語訳。用語の訳出の参照。
https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/document/mokuji/bhutan-sangyou_kisoku.pdf - 日本特許庁「Kingdom of Bhutan: The Industrial Property Act enacted on July 13, 2001」(英文、PDF)/2001年7月13日の制定の確認。
https://www.jpo.go.jp/e/system/laws/gaikoku/document/index/bhutan-e_sangyou_act.pdf - WIPO Lex「Penal Code of Bhutan, 2004」/第307〜308条偽造罪(偽造医薬品・通貨、第4級重罪)、第309〜310条詐欺的行為と量刑、第11〜13条刑の等級の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/legislation/details/10980 - 財務省歳入関税局(eCMS)「Customs Act of Bhutan」(2017年関税法・2017年関税規則・2021年関税法のPDF)/関税法第5章第27条の輸出入の制限・禁止、関税規則第114条と付属書Vの制限品目第19項「知的財産権(知的財産局、2001年著作権法)」、2021年関税法の性質の根拠。
https://ecms.gov.bt/publication/customs-act-of-bhutan
運用資料・統計(知的財産局・産業・商業・雇用省・WIPO)
- 産業・商業・雇用省「Trademark Fee Schedule(Schedule I)」(PDF)/出願1区分1,000ニュルタム、聴聞・理由書100、異議・答弁500、登録料1,000、更新1,000と猶予割増200、無効・削除1,000、名義変更1,000、閲覧・謄本・訂正500、延長200、ライセンシー記録1,000、代理人登録50の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2023/03/Trademark-Fee-Schedule.pdf - 産業・商業・雇用省「Trademark Examination Manual 2023」(PDF)/IPASによる方式審査報告書、優先権6か月と書類3か月、追加区分手数料30日、委任状2か月、使用・使用意思の申告、絶対的理由と相対的理由の区分、周知商標の定義、ディスクレーマー、類見出しの不受理、審査報告書と検索報告書、第10章マドリッド制度(本国官庁の要件、指定官庁としての週次通知のIPAS取込み、12か月の暫定拒絶、保護認容声明、3か月の公開)の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2026/05/Trademark-Examination-Manual-2023.pdf - 産業・商業・雇用省「Flow Chart for Registration of Trademark」(PDF)/受付・データ入力・方式審査(補正1か月)・実体審査(補正2か月)・公開3か月・異議と答弁2か月・登録・10年ごとの更新・登録後の不使用削除と無効の流れの根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2023/03/Flow-Chart-for-Registration-of-Trademark.pdf - 産業・商業・雇用省「Guidelines on Certification of Industrial Property (IP) Agents 2025」(PDF)/2年間の暫定措置、登録代理人4名・実働2名、国籍・学位または5年の実務経験、5日間の事前研修の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2025/12/IP-Agent-Guideline.pdf - 産業・商業・雇用省「Geographical Indication Rules and Regulations of Bhutan 2025」(PDF)/2025年1月7日の施行、知的財産局内の地理的表示登録所の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2026/02/GI_Rule_Final_Version_2025.pdf - 産業・商業・雇用省「Acts, Rules & Regulations, Policies & Guidelines」/産業財産法・規則、2018年国家知的財産政策、審査マニュアル、手数料表、フローチャート、代理人ガイドライン、地理的表示規則の掲載状況の根拠。
https://www.moice.gov.bt/?page_id=263434 - 産業・商業・雇用省「Notification on Industrial Property Automation System (IPAS)」(2025年9月19日、MoICE/DoMCIIP/C1/2025/C2/131)/IPAS 3.6からIPAS 4 Cloudへの移行、設立以来の出願23,697件(マドリッド17,242件・国内6,455件)、収入1億3,730万ニュルタム、上位出願国(米国・中国・インド)、現地出願人3%の根拠。
https://www.moice.gov.bt/?p=277537 - 産業・商業・雇用省「Trademark Official Bulletin No. 122」(2025年11月10日、PDF)/規則第46条に基づく3か月の公開、規則第51条・法第29条に基づく登録の掲載、手数料の現金・銀行手形納付、登録弁護士の告示、Form 10による3か月の異議、INIDコード、2025年2〜8月出願の116件の公開と出願人の国籍の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2025/11/TM-Journal-No.-122.pdf - 産業・商業・雇用省「Department of Media, Creative Industry & Intellectual Property」(局の沿革)/1994年WIPO加盟、1997年法務部門と産業財産規程、2000年知的財産課、2001年二法の制定、2016年局への昇格、2018年国家知的財産政策、2019年オンライン検索システムの根拠。
https://www.moice.gov.bt/?page_id=262253 - 産業・商業・雇用省「DoMCIIP Announcements」/2025年6月10日の国家地理的表示制度の開始、商標公報第121号、IPAS通知の掲載の根拠。
https://www.moice.gov.bt/?cat=172 - メディア・創造産業・知的財産局(DoMCIIP)公式サイト/所在地・連絡先、産業財産課、代理人名簿(9名)、様式(TM Form 7〜21)、商標公報(第126〜128号、2026年)、地理的表示の出願公告(BT/GI/03・04)の根拠。
https://domciip.gov.bt/、https://domciip.gov.bt/ip-agents/、https://domciip.gov.bt/forms/、https://domciip.gov.bt/trademark-bulletin/ - エネルギー・天然資源省(旧経済省サイト)「Revenue Earnings from Registration of Trademarks」(2017年5月26日)/1997年の産業財産規程による登録所の設立、規程の2001年法への置換え、2016年末の累計出願16,115件、2000年のマドリッド協定・議定書加盟の根拠。
https://www.moenr.gov.bt/?p=668 - 通商局「Rules and Regulations for the Collective Mark MADE IN BHUTAN」(2019年7月、PDF)/ブランド・ブータン構想(2016年)とMADE IN BHUTAN団体標章の根拠。
https://www.moice.gov.bt/wp-content/uploads/2023/03/Rules-and-Regulation-for-Collective-Mark-Made-in-Bhutan-.pdf - WIPO「Intellectual property statistical country profile 2024: Bhutan」(PDF、2026年6月更新)/区分数ベースの出願1,806件、居住者177件・非居住者1,629件、出所国の比率、登録1,852件、審査官1人当たり602件、登録所要90日、ブータンを本国とする出願286件と海外出願先、マドリッド出願1件の根拠。
https://www.wipo.int/edocs/statistics-country-profile/en/bt.pdf - WIPO Lex「Member Profile: Bhutan」/WIPO設立条約(1994年3月16日)、パリ条約・マドリッド協定・マドリッド議定書(2000年8月4日)、ベルヌ条約(2004年11月25日)の加盟日、法令一覧の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/members/profile/BT - WIPO Lex「Madrid Protocol: Bhutan(加入・宣言)」/2000年5月4日の加入と2000年8月4日の発効、議定書に関する宣言がないことの根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/parties/remarks/BT/8 - WIPO Lex「Madrid Agreement: Bhutan(加入・宣言)」/ストックホルム改正への加入と第3条の2の宣言(明示の請求がある場合にのみ効力)の根拠。
https://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/parties/remarks/BT/21 - WIPO「Madrid System Member Profiles: Bhutan」(2026年7月15日更新)/登録所の連絡先、受け付ける標章の種類と表示・説明の要件、団体標章、類見出しとアルファベット順一覧、絶対的理由と相対的理由、使用による識別力、同意書、第三者の情報提供の不存在、3か月の異議と500ニュルタム、現地代理人の要件と委任状2か月、暫定拒絶への応答2か月、不服申立て2か月、延長200ニュルタム、使用証明の不要、不使用取消と無効の記載、分割・代替・変更の規定の不存在、名義変更1,000ニュルタムの根拠。
https://www.wipo.int/madrid/memberprofiles/selectmember#/BT - WIPO「Madrid Protocol and Regulations: Declarations and Notifications by Madrid System Members」/ブータンがいずれの宣言・通知の一覧にも含まれないことの根拠。
https://www.wipo.int/en/web/madrid-system/members/declarations - WIPO「Madrid System: Individual Fees」/ブータンが個別手数料の宣言国に含まれないことの根拠。
https://www.wipo.int/en/web/madrid-system/fees/ind_taxes - WIPO「Schedule of Fees under the Madrid System」/基本手数料653・903スイスフラン、追加手数料100スイスフラン、補足手数料100スイスフラン、更新時の補足手数料の根拠。
https://www.wipo.int/en/web/madrid-system/fees/sched - WIPO「Madrid e-Filing Now Available in Bhutan」(2024年5月2日)/2024年5月からのMadrid e-Filingの提供、南アジアで最初の提供国、産業・商業・雇用省サイトからのアクセス手順の根拠。
https://www.wipo.int/en/web/madrid-system/w/news/2024/madrid-e-filing-now-available-in-bhutan - WIPO「Explore IP Landscape: Bhutan」/1994年のWIPO加盟、国内官庁がDoMCIIPであることの根拠。
https://www.wipo.int/en/web/country-profiles/BT
政府資料・報道・実務解説
- 外務省「ブータン王国 基礎データ」(2026年3月5日)/面積・人口・GDP・成長率・インフレ率、2023年の貿易額と品目・相手国、通貨と為替、第13次5か年計画、日本との外交関係と2024年の貿易額、在留邦人数の根拠。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/data.html - ブータン王立通貨庁(RMA)「Exchange Rates」(2026年11月3日)/100円=59.15〜60.80ニュルタム、1米ドル=93.50〜96.40ニュルタム、1スイスフラン=113.80〜117.00ニュルタムの根拠。
https://www.rma.org.bt/exchangeRates - 欧州中央銀行「Euro foreign exchange reference rates」(2026年11月3日)/1スイスフラン≒193円、1インド・ルピー≒1.67円の換算の根拠。
https://www.ecb.europa.eu/stats/policy_and_exchange_rates/euro_reference_exchange_rates/html/index.en.html - 米国国務省「2025 Investment Climate Statements: Bhutan」/知的財産の執行の課題、侵害事件の少なさと模倣品市場、過去10年の訴追事例の不存在、税関の押収と統計の不存在、スペシャル301条報告書への不掲載の根拠。
https://www.state.gov/reports/2025-investment-climate-statements/bhutan - The Bhutanese「Bhutan resumes WTO accession process, submits 17 key documents for review」(2026年9月5日)/2025年6月の内閣承認、17の加盟文書の回付、作業部会交渉の見通しの根拠。
https://thebhutanese.bt/?p=42944 - ブータン放送協会(BBS)「“CRAFT BHUTAN” logo to protect and promote local arts」(2024年4月27日)/CRAFT BHUTAN団体標章と国家地理的表示ロゴの発表、PEMAKOの初のマドリッド出願の根拠。
https://www.bbs.bt/202843/ - Country Index(SMD Group)「Bhutan」(商標年鑑)/2018年国家知的財産政策の発表、WIPO・パリ・ベルヌ・マドリッドの加盟日、ニース分類第12版、出願日の要件、認証翻訳、現地代理人、受理通知1〜3か月、応答2か月+1か月、登録まで6〜9か月、出願1区分1,000ニュルタムと登録料1,000ニュルタムの根拠。
https://www.country-index.com/country_surveys.aspx?ID=10 - S.S. Rana & Co.「Trademarks in Bhutan and Filing Procedure」/産業財産法に基づく出願・異議・権利行使の実務概要の参照。
https://ssrana.in/global-ip/international-trademark-filing-registration/trademark-bhutan/ - Live Law「Delhi High Court Temporarily Restrains Sale Of 'THUNDER 15000' Beer In InBrew's Trademark Suit」(2026年)/ブータンの醸造会社に対するインドの裁判所の仮差止めの例の根拠。
https://www.livelawbiz.com/trademark/delhi-high-court-temporarily-restrains-bhutan-based-kinjore-brewery-from-selling-thunder-15000-protecting-inbrew-thunderbolt-beer-brand-546320
※本記事は2026年11月時点の法令・料金・統計に基づく一般的な解説であり、個別の案件に関する法的助言ではありません。産業財産法の商標部分の正確な施行日、登録料が区分ごとか商標ごとか、税関における知的財産権の制限品目の運用、産業財産法に基づく裁判例の有無は公開資料で確認できませんでした。WTO加盟交渉の再開に伴い法改正が行われる可能性があります。実際の出願・権利行使にあたっては、最新の情報を確認の上、弁理士および現地代理人にご相談ください。