弊所によく寄せられる商標登録についての質問を、弁理士がQ&A形式でわかりやすくまとめました。商標出願や管理の際に役立つポイントを整理していますので、ぜひ参考にしてください。
トルコ商標制度の実務ガイド|TÜRKPATENTの審査・異議2か月・2024年開始の行政取消・2026年費用・模倣品対策を弁理士が徹底解説
トルコは人口8,500万人を超える欧州・中東・中央アジアの結節点で、国内出願人による商標出願件数が世界6位・欧州1位という商標大国です。日本企業にとっては製造拠点・販売市場であると同時に、模倣品の経由地としても注意が必要な国であり、商標の早期確保と権利行使の準備が欠かせません。制度面では、2017年施行の産業財産法(IP Code)でEU型の制度に移行したうえ、2024年1月から不使用取消などがトルコ特許商標庁(TÜRKPATENT)の行政手続で行えるようになり、2025年3月には実施規則、2026年1月には手数料が改定されるなど、動きの多い制度です。
本記事では、TÜRKPATENTの公式手数料(2026年1月改定)・2025年の統計・2025年3月の規則改正・最新の判例を一次資料として、出願から登録・異議・行政取消・権利行使・マドプロ活用までを弁理士が実務目線で整理します。
この記事のポイント
- 根拠法は産業財産法(IP Code 6769号、2017年1月施行)。外国出願人はトルコの商標代理人を通じて手続する
- TÜRKPATENTは絶対的拒絶理由に加え、同一・区別できないほど類似する先行商標を職権で拒絶する。混同のおそれ(類似)は異議でのみ争われる。公証済みの同意書(letter of consent)で拒絶を回避できる
- 出願庁費用は1区分TRY 2,820、登録料TRY 7,010(2026年1月改定)。異議期間は公告後2か月、異議手数料はTRY 1,150
- 2024年1月10日から不使用取消・普通名称化などの取消がTÜRKPATENTの行政手続で可能に。請求手数料と供託金で合計TRY 70,640
- 不使用取消の猶予は登録から5年。異議・侵害訴訟でも「不使用の抗弁」が使える
- 侵害には民事(差止め・損害賠償、損害賠償は調停前置)・刑事(最長4年の懲役)・税関差止めで対応。2025年の破毀院判決で悪意出願の判断基準が整理された
目次
1. トルコ商標制度の全体像と法的枠組み
LEGAL FRAMEWORK
産業財産法(IP Code 6769号・2017年1月10日施行)+実施規則(2025年3月15日改正)+TÜRKPATENT審査ガイドライン。EU商標指令に沿った制度設計
トルコの商標は、特許・意匠・地理的表示とあわせて産業財産法(Sınai Mülkiyet Kanunu、法律第6769号)で規律されています。2017年1月10日の施行により、それまでの政令ベースの制度からEU商標指令に沿った近代的な制度に移行し、異議期間の3か月から2か月への短縮、不使用の抗弁、行政取消、同意書制度などが導入されました。所管はトルコ特許商標庁(TÜRKPATENT、アンカラ)です。
トルコはEU加盟国ではないため、欧州連合商標(EUTM)の効力は及びません。1999年からマドリッド議定書に加盟しており、日本からはマドプロ国際商標出願でトルコを指定するか、現地の商標代理人を通じてTÜRKPATENTに直接出願します。
TÜRKPATENTの発表によると、2025年の国内出願人による商標出願は164,657件、商標登録は113,722件で、産業財産権全体の出願は220,757件と過去最多でした。WIPOの統計でもトルコは国内出願人の商標出願件数で世界6位(中国・ロシア・インド・米国・ブラジルに次ぐ)、欧州では1位です。それだけ登録簿が混み合っており、日本企業が使いたい商標がすでに登録されているケースや、日本ブランドの先取り出願も珍しくありません。
外国出願人の要件
トルコに住所のない出願人は、TÜRKPATENTに登録された商標代理人を通じて手続します。出願時に委任状の提出は不要ですが、代理人は署名済み委任状を保管し、庁の求めに応じて提出します。手続言語はトルコ語で、優先権証明書は出願から3か月以内に提出します。多区分出願が可能で、電子出願が標準です。
2. 保護対象と拒絶理由:同一商標は職権拒絶、類似は異議で
文字・図形・立体・色彩・音などを含め、商品・役務を識別でき、登録簿上で明確に特定できる標識は商標として登録できます。2017年法で図形的表現の要件が緩和され、非伝統的商標の出願が容易になりました。
TÜRKPATENTが職権で審査する絶対的拒絶理由(IP Code 5条)
- 識別力の欠如、記述的表示、一般名称、公序良俗違反、品質・産地の誤認
- 同一または区別できないほど類似する先行商標が、同一または同種の商品・役務について存在する場合(5条1項ç号)。トルコ独特の規定で、日本の相対的拒絶理由の一部を絶対的拒絶理由として職権審査する
- 国旗・紋章、宗教的象徴、登録された地理的表示を含む標識
一方、先行商標と類似し混同のおそれがあるにとどまる場合(6条1項)や、周知商標との抵触、悪意による出願(6条9項)は職権では審査されず、異議申立があって初めて判断されます。つまり「そっくりな商標は庁が止めるが、似ている程度なら権利者が異議を出さなければ登録される」制度です。
同意書(letter of consent)で職権拒絶を回避:IP Code 5条3項により、先行商標権者が公証済みの同意書を提出すれば、同一・類似商標でも登録が認められます。外国企業が作成する同意書は公証に加えてアポスティーユ(領事認証)が必要です。グループ会社間や共存合意がある場合の有力な手段で、日本の2024年導入のコンセント制度と同じ発想です。
3. 出願から登録までの流れと期間
PROCEDURE
出願 → 方式審査 → 実体審査(2〜5か月) → 商標公報に2か月公告 → 登録料納付(通知から2か月) → 登録。順調なら8〜12か月
- 出願・方式審査:電子出願後、書類・手数料・分類をチェック。不備があれば通常2か月以内に補正します。
- 実体審査:絶対的拒絶理由(同一先行商標を含む)を審査し、拒絶理由があれば通知。出願人は通知日から2か月以内に意見書を提出できます。一部の商品のみ拒絶された場合、残りの範囲で公告に進みます。方式・実体審査で2〜5か月が目安です。
- 公告:商標公報(Official Trademark Bulletin)に2か月公告され、異議を受け付けます。
- 登録料納付・登録:異議がなければ登録料(TRY 7,010)の納付通知が届き、通知から2か月以内に納付すると登録され、登録証が発行されます。期限内に納付しないと登録されません。
- 期間の目安:拒絶理由も異議もない場合、出願から登録まで概ね8〜12か月です。異議や審判があれば1〜2年以上かかることがあります。
4. 費用一覧(2026年1月1日改定)
TÜRKPATENTの公式手数料は毎年改定され、2026年1月1日の改定では前年比およそ20〜25%の引上げとなりました。トルコリラ(TRY)建てで、インフレと為替の影響が大きいため、円換算額は出願時点で確認が必要です(2026年9月時点で1TRY≒3.5円前後)。
| 項目 | 庁費用(TRY) | 備考 |
|---|---|---|
| 出願(1区分) | 2,820 | 2区分目2,820、3区分目以降3,150/区分 |
| 登録料 | 7,010 | 登録料納付通知から2か月以内 |
| 優先権主張 | 3,420 | — |
| 異議申立 | 1,150 | 公告後2か月以内 |
| 更新(2区分まで) | 8,730 | 3区分目以降750/区分 |
| 猶予期間内の更新(2区分まで) | 15,420 | 3区分目以降1,310/区分 |
| 行政取消請求 | 35,320+供託金35,320 | 合計70,640。供託金は全部認容で返還、全部棄却で商標権者へ |
| 分割 | 4,190 | — |
| 譲渡登録/ライセンス登録 | 5,960/9,870 | 契約書は公証・認証が必要 |
これに現地代理人費用が加わります。マドプロでトルコを指定する場合はTÜRKPATENTの個別手数料をWIPOに一括納付し、国内での登録料納付は不要です。金額はWIPOの手数料計算ツールで確認できます。
補助金の活用:中小企業のトルコへの商標出願費用は、INPIT外国出願補助金(費用の1/2、商標1出願あたり上限60万円、冒認対策出願は30万円)の対象になります。
5. 異議申立:公告後2か月・不使用の抗弁・再審査審判部
- 期間・手数料:商標公報の公告から2か月以内、手数料TRY 1,150。代理人経由の場合は委任状を添付しないと方式不備で却下される
- 理由:絶対的拒絶理由・相対的拒絶理由(混同のおそれ、周知商標、先使用)に加え、悪意による出願(6条9項)も主張できる
- 申立人:利害関係人。相対的理由は先行権利者、絶対的理由は競業者なども申し立てる
- 答弁:出願人は異議通知から約1か月で答弁書を提出。マドプロ指定の場合、異議はWIPO経由の暫定拒絶通報として届くため見落としに注意
- 不使用の抗弁:異議の根拠商標が登録から5年を経過していれば、出願人はその使用証拠の提出を求められる。証明できなければ異議は退けられる(または証明できた範囲に限定)
- 決定・不服:決定まで約6〜8か月。不服なら決定通知から2か月以内にTÜRKPATENT内の再審査審判部(YİDD)へ、その決定にも不服ならさらに2か月以内にアンカラ知的財産裁判所に取消訴訟を提起する
監視が必須:類似商標は庁が止めてくれません。年間16万件超が出願されるトルコでは、商標公報の監視サービスを入れ、2か月の異議期間内に動ける体制が必要です。期間を過ぎると、裁判所での無効訴訟(相対的理由は登録から5年以内)でしか争えなくなります。
6. 2024年開始のTÜRKPATENT行政取消と裁判所での無効
行政取消(administrative cancellation):2024年1月10日開始
IP Code 26条は取消の権限をTÜRKPATENTに与えていましたが、7年間の経過措置を経て2024年1月10日から実際に庁での取消手続が始まりました。2025年3月15日の実施規則改正(官報32842号、規則30/A条)で手続が具体化されています。
- 取消理由:①登録から5年以内の不使用、または継続5年間の不使用、②普通名称化、③商品の性質・品質・産地についての誤認惹起、④団体商標・保証商標の規約違反
- 請求人:利害関係人(法的利益を有する者)。電子申請で登録番号・理由・対象商品を特定
- 手数料:請求手数料TRY 35,320に加え、2025年3月から同額の供託金が必要(合計TRY 70,640)。供託金は請求が全部認められれば返還、全部棄却なら商標権者に支払われ、一部認容なら庁の収入になる
- 商標権者の対応:通知から1か月以内に使用証拠または正当理由を提出(1か月の延長が1回可能)。取消請求前3か月以内の駆け込み使用は考慮されない
- 効果:原則として請求日から将来に向かって取消。取消理由がそれ以前に生じていた場合は、請求により遡及させることも可能
- 不服:再審査審判部に2か月以内、その後アンカラ知的財産裁判所に2か月以内
無効(invalidity):裁判所の管轄
登録時に拒絶理由があった場合の無効は、引き続き知的財産裁判所への訴訟で争います。相対的理由に基づく無効請求は登録から5年以内に限られますが、悪意による登録には期間制限がありません。また、先行権利者が後行商標の使用を知りながら5年間放置すると黙認とみなされ、無効・差止めを請求できなくなります(黙認による失権)。無効の効果は登録時に遡ります。
7. 使用義務・更新・ライセンス登録
使用義務:登録から5年
出願・登録・更新のいずれでも使用宣誓や使用証拠は不要ですが、登録から5年以内にトルコ国内で真正な使用を開始しないと取消の対象になります。使用許諾を受けたライセンシーの使用は権利者の使用とみなされ、輸出専用商品への使用や識別力を変えない範囲での変更使用も認められます。侵害訴訟でも、原告商標が登録から5年を経過していれば被告は不使用の抗弁を出せるため、権利行使の前に使用証拠を整えておくことが不可欠です。行政取消が容易になった今、5年ごとに主要商標を再出願して権利期間をリフレッシュする防衛策も実務では検討されています。各国の使用義務は商標の登録後の維持義務 世界比較で整理しています。
存続期間・更新
存続期間は出願日から10年(日本の登録日基準と異なる)で、10年ごとに何度でも更新できます。更新は満了の6か月前から申請でき、満了後6か月の猶予期間内は割増手数料(2区分までTRY 15,420)で更新可能です。猶予期間を過ぎると失効し、回復できません。
ライセンス登録
ライセンス契約は登録しなくても当事者間では有効ですが、第三者に対抗するにはTÜRKPATENTへの登録(TRY 9,870)が必要です。契約書は公証が必要で、外国で締結した契約はアポスティーユも要ります。契約で定めがなければ非独占ライセンスとみなされ、独占的ライセンシーは原則として自ら侵害訴訟を提起できます。
8. 権利行使:民事・刑事・税関と最近の判例
| 手段 | 内容 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 民事訴訟 | 知的財産裁判所(アンカラ・イスタンブール・イズミル等)で差止め・廃棄・損害賠償・判決公示 | 損害賠償請求は2019年から調停前置。仮処分後2週間以内に本訴提起。時効は侵害を知ってから2年・行為から10年 |
| 刑事告訴 | 検察の捜査・捜索差押え、最長4年の懲役または罰金、押収品の没収・廃棄 | 和解手続が先行。損害賠償は別途民事で |
| 税関差止め | 税関への商標登録(recordation)で疑義貨物を通関保留 | 欧州・中東を結ぶ物流拠点のため、主要ブランドは登録推奨 |
実務に影響する近時の判例
- 破毀院第11民事部 2025年3月18日判決(2024/3844 E.、2025/1879 K.):周知商標「Stayer」と紛らわしい「Stayer+」の出願について、悪意による出願と認めた控訴審を維持。悪意の判断では出願時の目的と出願人の行動(先行ブランドを知りうる立場か、便乗の意図か)が重視されることを確認しました。日本ブランドの先取り出願に対抗する際の指針になります。
- 憲法裁判所 2024〜2025年の判断:商標登録を得ていても、先行権利に基づく侵害主張に対する免責にはならないことを確認。登録があるからといって安心できないことは、権利者・被疑侵害者双方が留意すべき点です。
- 行政取消の定着:2024年の開始以降、不使用商標の整理が裁判より低コストで進むようになり、2025年の規則改正で供託金制度が加わりました。濫用的な請求を抑えつつ、本気の請求は通しやすくする設計です。
9. マドプロ指定と直接出願の使い分け
| 観点 | マドプロ指定 | 直接出願 |
|---|---|---|
| 向いているケース | EU・中東など複数国と同時に出願する場合 | トルコのみ、同意書や指定商品の調整が必要な場合 |
| 審査 | 国内出願と同じ基準。TÜRKPATENTは指定通知から18か月以内に暫定拒絶を通報 | 8〜12か月で登録 |
| 異議の通知 | 出願人に直接届かず、WIPO経由の暫定拒絶として通知。見落としリスク大 | 代理人に直接通知 |
| 現地代理人 | 暫定拒絶・異議への対応時に必要 | 出願時から必要 |
| 費用 | 個別手数料をWIPOに一括納付(国内登録料は不要) | 出願料+登録料+代理人費用 |
| セントラルアタック | 5年間、日本の基礎商標に連動。失効時は3か月以内に国内出願へ転換可 | なし |
日本語など非ラテン文字の商標は、国際出願時にローマ字転写と英訳を付しておくとTÜRKPATENTの審査が円滑です。指定商品は日本の類似群コードが通用しないため、明確な商品表示にしておくと補正指令を避けられます。
10. 日本の商標制度との比較
| 項目 | トルコ(TÜRKPATENT) | 日本(特許庁) |
|---|---|---|
| 先行商標の職権審査 | 同一・区別不能な類似のみ。混同のおそれは異議で | 類似・混同のおそれまで職権審査 |
| 同意書 | 公証済み同意書で登録可(5条3項) | 2024年からコンセント制度 |
| 異議申立 | 公告後2か月・登録前・TRY 1,150 | 公報発行後2か月・登録後 |
| 不使用取消 | 5年・TÜRKPATENTの行政手続(2024年〜) | 3年・審判 |
| 存続期間 | 出願日から10年 | 登録日から10年 |
| 出願件数(2025年・国内出願人) | 約16.5万件(世界6位) | 約13万件前後 |
| 刑事罰 | 最長4年の懲役 | 最長10年の懲役 |
11. 日本企業がトルコ出願で押さえるべき実務ポイント
- 早期出願で冒認を防ぐ:年間16万件超の出願がある先願主義の国。市場参入前に出願し、必要なら冒認対策出願として補助金も活用する。
- 出願前の調査は「同一」と「類似」を分けて考える:同一商標は職権拒絶されるので同意書の可否を、類似商標は異議リスクを見積もる。
- 公報監視と2か月の異議期限:類似商標を庁は止めない。マドプロ指定なら異議はWIPO経由で届くため、現地代理人に監視を委ねる。
- 登録から5年以内の使用と証拠化:行政取消が低コスト化した今、不使用商標は狙われる。ライセンシーの使用も証拠になる。
- ライセンス・譲渡は公証+アポスティーユで登録:未登録では第三者に対抗できない。
- 侵害には調停前置と時効を意識して動く:損害賠償は調停を経る。侵害を知ってから2年以内に提訴。税関登録で水際対策。
- 悪意の立証資料を残す:2025年の破毀院判決のとおり、相手が自社ブランドを知りえた事情(取引履歴・展示会・報道)が決め手になる。
よくある質問(FAQ)
Q1. EUで商標登録していれば、トルコでも保護されますか?
保護されません。トルコはEU非加盟のため、EUTMの効力は及びません。マドプロでトルコを指定するか、現地代理人を通じてTÜRKPATENTに直接出願する必要があります。
Q2. 登録までどのくらいかかりますか?
拒絶理由も異議もなければ、出願から登録まで8〜12か月が目安です。審査に2〜5か月、公告に2か月、登録料納付に最大2か月かかります。異議や審判があれば1〜2年以上になることがあります。
Q3. 費用はいくらかかりますか?
2026年の庁費用は出願TRY 2,820(1区分)と登録料TRY 7,010で、1区分なら合計約TRY 9,830(約3.5万円)です。これに現地代理人費用が加わります。中小企業はINPIT外国出願補助金で費用の1/2の助成を受けられる場合があります。
Q4. 自社商標にそっくりな先行登録があって拒絶されました。
先行商標権者から公証済みの同意書を取得して提出すれば登録できます(外国企業の同意書はアポスティーユも必要)。先行商標が登録から5年以上不使用なら、TÜRKPATENTの行政取消(TRY 70,640)で障害を除去する方法もあります。
Q5. 日本ブランドをトルコで先取り登録されました。
公告中なら2か月以内に悪意(6条9項)と周知性を理由に異議を申し立てます。登録後は裁判所で悪意による無効を請求でき、悪意の無効請求に期間制限はありません。相手が自社ブランドを知りえた事情を示す証拠(取引記録・展示会・報道)が決め手になります。
Q6. 模倣品がトルコ経由で流通しています。
税関に商標を登録して水際で差し止めるとともに、悪質な場合は刑事告訴で捜索差押えを求めます。損害賠償を請求する場合は調停を経てから民事訴訟を提起します。
まとめ
トルコの商標制度は、EU型の枠組みに「同一商標の職権拒絶」「同意書」「2か月の異議」「行政取消」というトルコ独自の運用が組み合わさった制度です。出願件数が欧州最多という環境では、早期出願・公報監視・5年以内の使用という基本動作が、日本以上に権利の価値を左右します。2024年に行政取消が始まり、2026年に手数料が改定された今、既存の登録の棚卸しと使用証拠の整備をあわせて進めることをお勧めします。
トルコを含む各国の商標制度は世界の商標制度ガイドで地域別に整理しています。中東の隣接市場についてはサウジアラビア・エジプトの記事もご覧ください。
トルコ・中東への商標出願は弁理士にご相談ください
マドプロ指定と直接出願の選択、同意書・冒認対策、現地代理人との連携、INPIT外国出願補助金の申請まで、知的財産事務所エボリクスが一貫してサポートします。初回相談は無料です。
※本記事はトルコ特許商標庁(TÜRKPATENT)の公式手数料表(2026年1月1日改定)および2025年統計の発表、産業財産法(法律第6769号)と実施規則(2025年3月15日改正・官報32842号)、Gün + Partners・Aksoy IP・Kırcı等の法律事務所およびManaging IP・Lexologyによる行政取消・悪意出願・判例(破毀院第11民事部2025年3月18日判決)の解説、WIPOの統計を基に、2026年9月時点の情報で一般的な情報提供を目的として作成しています。手数料・運用は変更されることがあります。個別案件の具体的判断には、専門家へのご相談を推奨します。
AUTHOR / 執筆者
杉浦 健文 (SUGIURA Takefumi)
知的財産事務所エボリクス(EVORIX) 代表弁理士
特許・商標・意匠・著作権の出願から審判・侵害訴訟まで、IT・製造・スタートアップ・ファッション・医療など幅広い業種のクライアントを支援。AI・IoT・Web3・FinTech等の先端分野の知財戦略にも精通。日本弁理士会/アジア弁理士協会(APAA)/日本商標協会(JTA)等 複数団体所属。